ジョイメカファイト
【じょいめかふぁいと】
ジャンル
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対戦型格闘ゲーム
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売・開発元
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任天堂
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発売日
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1993年5月21日
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定価
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4,900円(税抜)
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配信
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バーチャルコンソール 【Wii】2008年3月11日/500Wiiポイント 【3DS】2013年9月11日/500円 【WiiU】2014年5月28日/514円
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判定
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良作
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ポイント
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ファミコンでストIIばりの対戦格闘ゲーム 奇抜でコミカルな動きを繰り広げるロボット達 表現の工夫によるデカキャラ&滑らかな動き FCの対戦格闘ゲームとしては破格のキャラ数 複雑な権利関係で移植に恵まれなかった
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プロローグ
ある所に「リトル・イーモン博士」と「イワン・ワルナッチ博士」という、仲が良く協力してロボット開発にいそしむ2人の研究者がいました。
ある日イーモン博士の研究所が荒らされ、7体のロボットが盗まれてしまいました。
そしてなんと、ワルナッチ博士がTVに出てきてロボットによる世界征服を宣言。
困り果てたイーモン博士は最後の望みとして、カンサイにお笑い修行に出てたお笑いロボ「スカポン」を呼び寄せ、
戦闘用ロボットに改造しワルナッチ博士のロボット軍団に立ち向かわせるのでした。
概要
操作キャラ全員がロボットでありコミカルな作風を特徴とする、ファミコンには数少ない純然たる格闘ゲーム。
「ロボットの頭や手足を分離させ宙に浮かす」という大胆な表現によって、ファミコンにもかかわらず大きめの頭身かつ非常に滑らかに動くキャラクターが話題となった。
ゲーム内容
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操作できるキャラは全部で36体。同社が後に発売したスマブラXが35体である事を考えると(同型高性能キャラが含まれるとはいえ)かなりの数。
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同キャラ対戦も可能。もちろん2Pカラーも全キャラに用意されている。
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一人用モードでは主人公スカポン+第1ステージで奪還した仲間を使用可能。
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対戦モードではスカポンとその仲間+ステージクリアでロックを解除したキャラが使用可能になる。
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練習用のモードがあり、そこで技のコマンドの確認と練習ができる。
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画面上部にコントローラの絵が表示され、押したボタンに応じて、コントローラの絵も動く。技を出すと、その技のダメージ量も表示されるので、研究用としても親切な作り。
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デモで各4つの技の出し方を、テキストと動きで丁寧に教えてくれる。その際にも上部コントローラの絵のボタンが動く為、どのように押せばいいのかが分かりやすい。
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因みに、ここで練習相手となるロボの「ザコ」は2コンで操作する事も可能。
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一人用モードはワルナッチ博士が1ステージにつき8体ずつ繰り出してくるロボを倒して行く。
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8体を倒す順番は自由に選択でき、その都度どのロボで迎え撃つかを手持ちの中から選択する。8体を全滅させるとワルナッチ四天王のうちの1体との対決になり、倒せばステージクリア。全4ステージ。
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一人用モードではステージをクリアすると、そのステージの敵達を倒したときの技のリプレイがその技名付きで流れる為、「いかに格好よく倒すか」という遊び方もできる。
ルール
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ラウンド制ではなく、後の『ヴァンパイアセイヴァー』に近いダウン制。
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ライフがなくなると1ダウンとなり、ライフバーの上に表示されたハートを1つ消費し全回復する。相手を3回ダウンさせる(ハート2つとライフを全てなくす)と勝利。
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制限時間は無く、どちらかのライフが無くなるまで続く。
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一度ヒットした技は出し終えるまで攻撃判定が消失する仕様から、一見避けられなさそうな技でも防御してしまえば反撃のチャンスが訪れる。
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しかし中には連続ヒットする技もあり、そういった技に関しては普通に受けて吹き飛ばされるより、防御している方がかえって削られる場合も。
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防御は一般的な格ゲーと同様である後方へのキー入力の他、下キーを入れることでもその場に留まりながら防御態勢を保てる。
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防御中は通常攻撃はノーダメージ。必殺技は1/4ダメージを受ける。相手の残りライフが少ないときは、必殺技でガードの上から削ってしまうか、的確に通常攻撃を繰り出すかも問われる。
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1体が扱える必殺技は、投げ技を含めて4つだけ。必殺技の構成はロボにより大きく違い、中には投げ技を持たないロボットもいる。
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それ故に必殺技を連続で出していくのでは無く、必殺技と通常技を組み合わせた戦法も必要になり、相手の動きの読み合いも重要になってくる。
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必殺技の中には、通常と違う操作をすると威力や動きが変化する技もある
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例えば、技を出す際にAとB逆のボタンを使ったり、通常とは違うコマンドを入力したり、ボタン入力を追加するなど。
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ステージは全て背景とBGMが違うだけの、実質全く同じステージ(要するに平らな地面があるのみ)。画面端が存在せず、ループする仕様となっている。
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コマンド入力には斜め入力が存在しないため、入力の繊細さは不要。十字ボタンでも楽に必殺技を出せる。
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連続してある一定量のダメージを受けると「気絶状態」になり、首が外れて無防備な隙を晒してしまう。これに因る逆転劇もあり得、駆け引きを熱くさせる。
評価点
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何と言っても、FCの対戦格闘ゲームとしてはキャラ数が破格に多い事。自分のお気に入りのロボを見つけて精進できる。
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ストーリーモードで使えるイーロボ8体は、それぞれに個性はありながらも全体から見ると比較的平凡であり扱い易い。
しかし、対戦モードで扱えるようになるワルロボは、一癖も二癖もあるロボばかり。
決して扱い易くはないが、時々ワルロボを使って対戦してみるのも面白い。
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上位互換タイプのロボがいるとは言え、ハードの性能面からすればかなり頑張っている。
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技数に関しては通常技6種類、プラス必殺技が4種類でやや少なめだが、ロボによってリーチや隙の大小などはきっちり区別されており、充分許せる範囲内。
細かい技の使い分けも意外に重要で、対戦攻略の研究にも耐え得る。初作にもかかわらず、ここまで丁寧に作り込まれている事は瞠目に値する。
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練習モードは当時としては非常に画期的なシステムである。デモを見ながら丁寧にキー入力を教えてくれる。
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入力したボタンがリアルタイムで画面上に表示されるため、誤った方向にキーが入っている場合はそれに気付いて矯正できる。
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2コンで相手側を操作できるので、うまく使えば様々な状況について練習することができる。
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動きも非常に滑らかで、関節のないロボという見た目だが視認性もそれなりに良好。
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ファミコンでありながら、当時の『ストII』ばりに動き回り技を繰り出せるのは脅威という他ない。
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大ダメージの技を当てた時の「ブワシィ!」というSEと重厚なヒットストップ、そしてみるみるうちに減るライフゲージの爽快感もなかなかのもの。
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BGMの出来が非常に良く、ファンは多い。曲数も多く、サウンドテストでは40曲以上のBGMを聴く事が出来る。
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中にはループまでに1分と満たない短い曲もあるが、それでも決して単調にならず、むしろ短い曲でありながら聞き飽きない曲調に仕上がっている事は評価に値する。
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どちらかのハートが無くなり1回のダウンで決着が着くようになると、BGMが倍速再生になって勝負を盛り上げてくれる。
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多少パターン化される面もあるがCPUは意外と強い。
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ハードモードともなると人間が扱いにくいロボットを平気で扱い、必殺技の派生コマンドも多用してくる。更に、ダウンを奪っていくとアルゴリズムが途中で切り替わるという拘りっぷり。格闘ゲームとしてもしっかりとした歯応えがあり、コミカルな見た目だけで終わっていない。
難点
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これだけのキャラ数でその大半が順次敵として登場するので仕方ない面もあるが、ロボによる性能差はかなり露骨。組み合わせによってはほぼまともな対戦にならないくらいの差もある。これはうまく把握すればハンデが付け易いという側面もあるので、経験者と初心者が対戦する際には長所となり得る。
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ラスボスである「ホウオウ」は泣く子も黙る最強ロボ。高威力の技の数々に誘導高速飛び道具、リーチまで長い…と攻守に渡ってほぼ隙がない。
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ラスボスや上位互換キャラを例外としても格差は激しい。後半ステージのキャラや中ボスだからと言って、強いとも限らない。
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所謂「ハメ技」がかなり多く、一度捕まったら相手がミスしない限りそのままダウンを奪われる連携がある。
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本作は、ガード硬直でロボが動けない最中でも投げ技が入ってしまう仕様になっている。この為、「隙の少ない技(ジャンプ攻撃や、突進技等)をガードさせる」→「投げ技」の連携が、タイミングをミスしなければずっと決まってしまう。「投げ技」が1フレーム入力で成立してしまうため、接近戦では高性能すぎるのも拍車をかける一因。
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起き上がりにピタリと重ねられると技を出すこともできないため、無敵技で切り返す、という戦法もできない。
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「気絶状態」の仕様も一癖あるもので、「ロボにより決められた許容ダメージを一定時間内に超えると即気絶」する上に、気絶中に許容ダメージを超える技を叩き込まれると連続で気絶してしまう。一度そういった技を叩き込まれると、これまたダウンまで繰り返されることに。
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その上「ダメージ=気絶値」という単純な設定にしている上、ガードの削りダメージも気絶値が入る為、高威力の連打必殺技などを根元からガードした場合、ガードしているのに気絶してしまうという事もままある。
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技コマンド自体は易しめだが、一部のボタン同時押し判定がやたらとシビアになっている。
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バッテリーバックアップがかなり繊細でデータが飛び易い。シテンノウを含めた全キャラを使用する為には、「ハードモードでクリアしてスペシャルモードをクリア」という超高難度の二度手間を踏むことになるので、その状態を復活させるのは並大抵の苦労ではない。
総評
パーツを浮かせたロボットという設定を活かし、コミカルかつ奇抜な動きの技を繰り広げるキャラクターは、見た目も面白く、操作しても楽しい。
どハデな表現こそはないものの、シンプルな操作性に、基本技と必殺技を活かす戦略性で、硬派な格闘ゲームが苦手な人でも楽しめる内容。
当時はマイナーなゲームだったが、現在ではバーチャルコンソールで容易に入手できるため、気楽に楽しめる対戦ゲームのひとつとして、ダウンロードしてみてはいかがだろうか。
余談
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裏技(隠しコマンド)として、キャラクターが両者ランダムに選択される対戦モードが実装されている。ここでは未開放のキャラも選択対象となる。
決着が付くとすぐにキャラが再選択されて次の試合が始まるので、本作のキャラ性能差も相まってパーティゲーム感覚で気軽に遊べるモードとなっている。
CP同士による観戦モードにも対応しているので、プレイヤーが操作せずとも延々とランダムマッチを流し続けることもできる。
幻のソフトからVCへの配信に至るまで
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毎年行われている「任天堂ゲームセミナー」の原点である、「任天堂・電通ゲームセミナー」の中で開発されたソフトが本作のはじまりである。
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このような経緯から、長い間にわたり権利関係が複雑なソフトと言われてきた。そのためか、移植・リメイク・VC配信・『スマッシュブラザーズシリーズ』への出演もなかった。
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のちに、開発に関わったプログラマの一人、江渡浩一郎の手元に著作権譲渡に関する覚書があることが明らかとなる。
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それを期に権利関係が整理され、十年以上の時を経て任天堂から『ジョイメカファイト』が商標出願された。詳しくはWikipediaの本作の記事を参照のこと。
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『スマブラX』にはフィギュアに貼り付けるシールとして登場、そしてバーチャルコンソールへの配信へと至った。
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『スマブラX』の『マリオブラザーズ』ステージのBGMにも本作のBGMが組み込まれている。
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『スマブラSP』にアシストフィギュアとして「スカポン」が登場する。
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最高階級のLEGENDスピリットとしても登場しており、ファミコンの単発タイトルとしてはかなり優遇されている。
その上、ロックマンと共演を果たしたのだ。
最終更新:2024年01月17日 12:14