ここでは、オリジナルの『EVE The Lost One』と、Windows移植版について取り扱います。
判定は全て「クソゲー/シリーズファンから不評」です。
EVE The Lost One
【いぶ ざ ろすと わん】
ジャンル
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サスペンスアドベンチャー
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対応機種
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セガサターン プレイステーション
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メディア
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CD-ROM 4枚組
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発売元
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イマディオ(イマジニア)
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発売日
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【SS】1998年3月12日 【PS】1998年12月23日
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定価
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【共通】7,800円(税別)
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レーティング
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【SS】セガ審査:全年齢対象
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廉価版
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ゲームビレッジ・ザ・ベスト 2003年3月27日/2,800円(税別)
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判定
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クソゲー
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シリーズファンから不評
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ポイント
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『EVE burst error』の続編 魅力のない主人公 ぶっ飛んだシナリオ ライターは前作未プレイ
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EVEシリーズ
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概要
『EVE burst error』の3年後を舞台にした続編。
前作の主要スタッフはほぼ退社しており、スタッフは一新。
本作のシナリオライターは山田桜丸(後の桜庭一樹)。
大人気作の続編だけに注目が集まったが、その出来は…。
特徴
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基本は前作と同様、主人公2人の視点を入れ替えながら進むADV
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本作はシリーズで唯一主人公が変わっており、桐野杏子と謎の爆破犯SNAKEの2人が主人公。
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「追う者と追われる者」がキャッチコピー。
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杏子は前作主人公の一人まりなの後輩であり、新人ながら優秀な捜査官。
問題点
とにかくシナリオの粗が目立つ。
人物関係
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ツッコミどころの多い主人公
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前作主人公は二人とも「優秀な捜査能力を持ち」「おちゃらけた一面も持つ」という点では共通しており、一癖も二癖もある相手と対等以上に立ち回るのは見ているだけで楽しく、またギャグもシナリオに上手く緩急をつけていた。
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本作の主人公は「真面目だが未熟な捜査官」と「正体不明の爆破犯」であり、上記のような点は一切なく、前作プレイヤーが『EVE』を期待するとまずここで引っかかる。
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杏子は未熟ながら頑張る姿が努力型の主人公としてはまだ感情移入できるが、SNAKEは正体を隠すために感情移入できるような点が一切描写されないため、はっきり言って主人公として扱うには実力不足、どころか失格。
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「SNAKE編」は正体がバレそうな箇所では一気にシナリオが飛び、感情描写も非常に希薄。
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ちなみに杏子は杏子で、何処に行くか考えずに捜査を開始したり、ハッキングが犯罪だと知らなかったり、機密情報を漏洩したりと優秀な新人捜査官(笑)としか言いようがなかったりする。
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人間関係が希薄。
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本作はとにかく事件を追うことに終始していて、人間関係の描写が非常に薄い。
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前作はマルチサイトシステムを活かして三角関係の恋愛や、それぞれの主人公の第三者視点での描写が行われたり、共通の知人や物語の重要人物等に合う際、主人公ごとに別の顔を見せたりと、システムをシナリオの引き立てに上手く役立てていたのだが、本作はそのシステムの良さを全く活かせていない。
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SNAKE編では正体を隠すために、脅迫者ADONIS以外とのまともな会話がほとんどない。
事件を起こすか、ADONISとの会話をする以外はその辺りをうろつくだけである。
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前作がマルチサイトシステムありきでシナリオがうまく構築されていたのに対し、SNAKE編の数々の問題から見るに、本作はシナリオありきで無理にマルチサイトシステムを入れ込んだ弊害にも見える。それなら無理にマルチサイトに拘らない方が良かったのではないだろうか。
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黒幕及び事件の真相について(ネタバレあり)
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まず性格が非常に小物。
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尊大でオーバーリアクションの多いアメリカナイズされた人物で、いかにもな小物権力者。
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製薬会社が傾きかけている所に特殊な遺伝子情報を裏のルートで入手。研究を進めさせた結果、万能薬と殺人ウィルスの基になる事が分かる。この研究を利用して莫大な富を得ようとするが、殺人ウィルスを作る事への抵抗から研究者に邪魔され、資金面でも難航。
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研究を無理にでも進めさせるために研究者を脅したり、殺人を犯したり、その罪をSANKEに押し付けようとしたりと、やってる事は火サスのような内容。前作が普通の殺人に見えて裏で大きなことが動いていたのに対し、本作の前半は大きな事件に見えてその実態はショボいという盛り上がりに欠けるオチ。
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一度退場後のキャラも陳腐。
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中盤の話には一切関わらず、最後の最後で狂気に狂ったキャラとして再登場し主人公たちの前に立ちはだかるのだが、退場したまましばらく全く出なかったことで忘れられやすく、狂気キャラも唐突で「何だこいつ」としか思えない。
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狂気的な側面はそれ自体はSNAKEへの指示等で示されてはいたものの、それでも唐突感の方が強い。
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詰まるところ小物キャラがありきたりな展開で暴走して終了という盛り上がりに欠ける悪役で終わってしまった。
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前半の「こういったキャラが引き起こした事が後々大きな事件へと繋がっていく」というのは悪くない展開ではあるのだが、はっきり言って世界レベルの規模へと広がった話のラスボスを務めるには役者不足だった。
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シナリオ全般
とにかく超展開の数々が目に付くが、それ以外にも描写が足りずに唐突に感じる展開が多い。
『burst error』と比較しての酷評も多いが、単純に一つのシナリオとしても終わらせ方を含め問題は多い。
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最終章の唐突な舞台変更。
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日本からエルディアへ移動する際の描写はカット。いきなり移動する為、プレイヤーは若干置いてけぼり。
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前作の設定との齟齬。
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前作でエルディア人の半数以上が読み書きすらできないという説明があったが、たった3年で英語での会話に支障のない国になっている。
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その他、前作キャラの性格の違い等もよく問題点に上がる。
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ちなみに山田桜丸は前作をプレイしていないと公言している。
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超展開なシナリオ(ネタバレあり)
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爆破犯を特定する為にイルカの超音波を受信して解析する一高校生
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杏子がイルカの水槽に入ってイルカに質問。その返事を解析。
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パソコンのキー入力一つで世界中に蔓延するウィルス。
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コンピューターウィルスではなく、リアルのウィルスが一瞬で蔓延する。
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世界中に蔓延したウィルスに対抗するワクチンを砂漠のテントの中で素人が作り上げる。
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最終章直前に入る突然すぎるメタネタ。
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SNAKEが「もうお前には従わない」といきなりプレイヤーに宣告する。
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インパクトはあるが正直それだけであり、シナリオ上の必要性もない。
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最後は杏子の視点をメインに話を進めたいのかもしれないが、それにしてもやりようはいくらでもあったはず。
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わざわざこんな仕掛けを作ってまで「従わない」と言っておきながら、その後もSNAKE視点も多少入る。
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前半は殺人事件、後半は「病原菌を広めたのは誰なのか?」という犯人あての要素が入るのだが、両者は同一人物。しかも後半の犯人はビルから転落したことで「前半の犯人は生死の境をさまよっている」と容疑者から外す表現があるのにである。推理のしようがない。
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しかも犯人は重症のはずなのに国を超えて、砂漠にまで追ってくる。
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最後は他に誰もいない砂漠で杏子と恋人の二人でワクチンを打った所で終わる。
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その終わり方と販売時期の関係で「まんまエヴァ」と揶揄される。
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詳細(前作を含めネタバレあり)
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前作最後に眠りについたEVEを叩き起こした上に、プリシアの影武者として殺してしまう。
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しかも殺されるまでの状況が不自然でツッコミ所多数。
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影武者とはいえ王女なのに何故かろくな警護も付いていないプリシア。
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部外者が勝手に歩きまわれる王宮。
事件が起きても主人公たちが到着するまで発覚しない。
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周囲の信頼を失ってるという大司教がたった一人で特に計画もなくあっさり殺人成功。
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さらにその遺体がウィルスに対抗する為のワクチンの材料になってしまう。
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前作のPC98版にのみEDの後に主人公二人とプリシア、EVEの皆で笑うイラストが入ったが、それは不可能になってしまった。
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その他
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前作SS版もそうだが、主人公を切り替えるたびにディスクを入れ替えるのは手間。
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BGM全般が微妙。
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PS版では新規BGMに差し替えられているのでSS版よりは幾分マシになっている。
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物語進行が詰みかねないバグ
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終盤のSNAKE編において、ある場所(A)へ移動する際に、規定の場所(B)以外からAへ移動すると、杏子編のシナリオが進まなくなる。
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本来はSNAKE編においてAへはBからしか移動できないのだが、このタイミングのみ他の場所からもAへ行けてしまう。
BからAへ移動する事でバグ状態から復帰は出来るが、バグってる事に気づきにくく、たまたま運良く復帰できない限り詰みと勘違いしてしまう。
評価点
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杏子編の登場人物
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前述の問題点の通り、シナリオ展開や前作主人公と比較しての格落ち感等はあれど、努力型の新米捜査官であり、明るく行動力のある点等から杏子の人気自体はあり、相棒となる雄二を含めてキャラクター自体はそれなりに好評。
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前作とは別の方向性でのマルチサイトシステム
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二つの視点で一つの事件を描くという点で、追う者と追われる者の2人を主人公にした点は前作との差別化もあってそういう方向性自体は評価する声もある。
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前述の通り、追われる者の視点の評価が低すぎて、上手くいったとは言えないが。
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ムービーの出来は良い。
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『burst error』同様ムービーは効果的に使われており、OPムービーもシナリオを期待させる出来になっている。
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マップ移動の導入
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前作は今いる場所から別の場所へ行く際に、現在の場所から移動できる場所を経由して移動する必要があったが、本作はマップ上の地名を指定して移動できるようになった。
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ただ、この方式への変更が上記のバグの原因にもなってしまったようだが……
総評
単体で見てもツッコミ所多数なシナリオの上に、前作が名作として評判が良かった為に、発売後は酷評され一気に値崩れた。
とにかく超展開の連続な上に終わり方もあっけなく、エピローグが入らない為に終わり方も唐突。
山田桜丸(桜庭一樹)の作風を知っている人に言うならば、「氏の破滅的な方面の作風」である。
原作をあえて読まずにアレンジを加える手法はあるが、少なくとも過去作の登場人物も登場する直接の続編でやるのは完全な失敗だったと言える。
ちなみにSS版の後にPS版が発売されたが、PSでは前作は未発売(ソニー据置機はPS2移植版までなし)。
その為、初めてのEVEシリーズが本作だったプレイヤーもいたが、そちらのプレイヤーの評判も芳しくなかった。
THE LOST ONE Last chapter of EVE
【ざ ろすと わん らすと ちゃぷたー おぶ いぶ】
ジャンル
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サスペンスアドベンチャー
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対応機種
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【CD版】Windows 95/98 【DL版】Windows98~XP
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メディア
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CD-ROM
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発売元
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シーズウェア
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発売日
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2000年6月2日
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定価
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8,800円
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レーティング
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ソフ倫:15歳未満禁止
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配信
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2006年10月6日/1,029円
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判定
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クソゲー
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シリーズファンから不評
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ポイント
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足りない部分を補足するシナリオ追加
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変更点
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一部シナリオの追加・変更
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まりな編が追加された。
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内容は杏子達がエルディアへ行った後の日本での描写など、原作を補完する内容
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前作重要人物の殺害シーンが、ギリギリ救出が間に合う形に変更された。
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エンディングに杏子達以外の描写が軽く追加されている。
評価点(Win)
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まりな編
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第三者の視点を追加する事で、描写不足だった点が解消されている。
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シナリオ最終盤で黒幕が唐突に再登場する問題も、その黒幕を追うまりな達のシナリオが追加されたおかげでかなり解消された。
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また、まりな自体の人気もあり、前作キャラの出番も他2編に比べ多いので、まりな編自体はそれなりに好評。
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それ以外の追加・変更シーンもそれ自体は良好
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前作ファンを怒らせた重要人物の殺害がなくなった事で、PC98版バーストエラーのラストシーンにも問題なく繋がるようになった。
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EDで結局二人以外がどうなったか不明だったのが少しとはいえ解消されている。
問題点(Win)
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フルインストールに2Gも必要
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当時は今とは異なり数百Mくらいの容量で済むゲームが大半だった時代である。
総評(Win)
新シナリオを追加した事で、原作の描写不足は改善され、問題のあったシーンも極一部とはいえ修正されている。
また追加シナリオ自体も評判は良い。
シナリオ本編自体は変わっていないため総合的な評価を覆すには至らないものの、もし今『LOST ONE』をプレイするのなら、Win版のプレイを強く推奨する。
余談
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こんな評価の芳しくないEVEを世に出した山田桜丸だが、しばらくの間EVEシリーズのノベライズを担当している。
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本作ロストワンは原作通りのノベライズだが、以降は各作品を元にしたオリジナルストーリーとなっている。
その後の展開
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本作の評価はボロボロだったが本作以降もEVEシリーズは続いた。
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次回作の『ZERO』では前作の過去の話となり、本作のキャラが出る事はなかった。
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さらに続編の『ADAM』では杏子が寿退社した話が出てきており、一応のその後がほんの少しではあるが描かれた。
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『ADAM』を元にした『TFA』では設定が変わっており、寿退社前の杏子が登場。まりなに子供の保護を頼まれるシーンが描かれている。ただ、『TFA』自体後半の展開に色々と問題を抱えており、発売前に公開された杏子が二人を保護するCGは使われず、実際に保護するシーンもなくなってしまっていた。
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2019年にシリーズ再出発となる『EVE rebirth terror』が発売され、本作とはパラレルなシナリオ展開で杏子が登場。本作の評価が上記の通りという事やキャラ自体は人気があった事もあり、本作と繋がらない事に否定的な声もあれど、比較的受け入れられている。
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その続編となる『EVE ghost enemies』にも引き続き杏子が登場。
最終更新:2023年01月25日 09:14