EVE rebirth terror
【いぶ りばーす てらー】
ジャンル
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コマンド選択式アドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション4 プレイステーション・ヴィータ Nintendo Switch (DL専売)
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発売元
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Red Flagship
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開発元
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El Dia
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発売日
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【PS4/PSV】2019年4月25日 【Switch】2020年2月27日
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定価
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【PS4 通常版】8,000円 【PS4 限定版】9,000円 【PS4 DL版】7,000円 【PSV 通常版】6,800円 【PSV 限定版】7,800円 【PSV DL版】5,800円 【Switch】6,380円(税込)
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レーティング
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CERO:D(17才以上対象)
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判定
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良作
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ポイント
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帰ってきた『EVE』 正統続編の名に偽りなし
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EVEシリーズ
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概要
シリーズの沈黙を破り発表された、シリーズ1作目『EVE burst error』の一年後を舞台とした続編。
一作目のリメイク・リブートである『バーストエラー イブ・ザ・ファースト』以来9年ぶり、完全な新作としては『EVE new generation』以来13年ぶりのシリーズ新作にして、『burst error』オリジナルから実に24年ごしの正統続編である。
開発元は一作目のリマスター版である『EVE burst error R』を製作したEl Dia。シナリオ担当はさかき傘氏。
久しぶりの新作を喜ぶ声もある一方、今までのシリーズのこともあり不安視する声もあったが、その内容は「正統続編」という強気な文言に違わぬ出来栄えであった。
一方で今までのシリーズにあった『burst error』にプラスアルファするチャレンジ要素への期待感は「正統続編」という強気な文言を打ち出してる割には弱く、『burst error』のファンに媚びる事を目的とした続編の域を超えられたとは言い難かった。
ストーリー
バーストエラー事件から1年。
氷室恭子を所員に迎えたあまぎ探偵事務所は、かつてより多くの依頼をこなすようになったものの、依頼はペット探しなどが主で天城小次郎はくすぶっていた。
そんなある日、音無橘花という少女から失踪した教師を探してほしいという依頼を受ける。
橘花が通い、その教師が勤めていた学校は、1年前の事件にもかかわった「エール外国人学校」だった。
一方、ここ1年現場から離れていた内閣情報調査室の捜査官法条まりなは、後輩の桐野杏子から本部への出頭要請を受ける。
本部長から告げられた任務は、食品会社の研究所で起こった事故か事件か自殺かも分からない研究者の不審死の再捜査。
捜査に向かったまりならに対し、研究所の所員は何かを隠しているそぶりを見せる。
それぞれの事件を追う2人。やがてどちらの前にも再び、エルディアの影が色濃く現れ始める……
特徴
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シリーズ恒例のマルチサイトシステムで、天城小次郎と法条まりなの2人の物語を切り替えながらそれぞれの事件を追っていく。
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システムやUIなどは『burst error R』と同一のものとなっており、『R』で追加されたナビゲーション機能なども本作に引き継がれている。
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PS4版は『burst error R』が、PSV版はミニビジュアルノベルが同梱されている。
評価点
雰囲気
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EVEシリーズは全体的に問題が多々あった『Lost One』を筆頭に、シナリオ単体の評価は良かったがシリーズものとしてみた場合に賛否あった『new generation』など、テイストやキャラの扱いなどが『burst error』から乖離していっていたが、本作はかなり高いレベルで『burst error』の空気感を再現することに成功している。本作はなによりもまずそこが評価されている。
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テキストの雰囲気の再現度が高く、相変わらず豊富なネタコマンドを選択した際のノリも、従来でもっとも『burst error』に近い。
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背景は『burst error』でも登場した場所は塗り直し等がされているものの流用されており、BGMも『burst error』の曲のアレンジが使用されているなど、世界観の統一が図られている。
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『burst error』の一年後ということで、作中は90年代。電子機器の発展具合が昔懐かしい。
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いわゆる「総当たり」システムにより、様々な個所を調べることができるのだが、その中にも多くの話の種や伏線が仕組まれている。
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とくに前半はこうした『調べる』行動により得た情報で、その後の展開を推理する工程が繰り返されており、アクションの多くなる後半に比べじっくりとミステリーとして楽しむ構成になっている。
シリーズ要素の拾い方が上手い
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主として『burst error』の続編として作られている本作だが、それ以外のシリーズ要素も拾われている。
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『burst error』以外のゲームについては知らなくても困らない程度の要素が物語全体に散りばめられており、知らなくても問題ないが、知っていると楽しめる要素が数多い。
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『ZERO』からは一部の設定が拾われており、『ZERO』で出てきた企業や人物、研究等が間接的にだが出て来る。
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『burst error』の時とはまた別に『悦楽の学園』の登場人物も出ている。
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『burst error』より後の時系列になる作品については後述の桐野杏子以外は直接的な登場はしないが、各作品を思い出す要素がオマージュとして出て来る。
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突然眠るように死んでしまうLOSE ONEという『Lost One』を思い出すようなウイルスが登場する他、アクションシーンでは拳銃対ナイフ格闘という描写が多く、戦闘後の展開等も『The Fatal Attraction』を思い返す要素。
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こういった要素から「遅すぎた続編」と称する声もある。
キャラクター
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キャラの扱いは非常に丁寧で、『burst error』からの続投キャラの描写は、違和感が無いとは言わないが大きく気になるほどでもなく、従来作のような齟齬は生じていない。新キャラも皆十二分に魅力的。
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再登場キャラは、お馴染みの面々以外にもまさかまさかの登場を果たした人物も。
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新キャラも『burst error』の登場人物と意外な繋がりがあるキャラクターが多い。
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出番の多いキャラや重要なキャラの見せ場はもちろん、そうではないポジションのキャラもさりげない活躍や有能であることが分かる描写がされており、極端に不遇な扱いのキャラはいない。
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新キャラたちもいずれも内心や重要な情報を隠した、EVEらしくひとくせもふたくせもある人材がそろっている。そのどれもが魅力的に描かれ、外連味のきいた作風に一躍買っている。
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一応『burst error』からの続投ではあるものの、ほとんど情報のなかったキャラについては、性格や背景が深掘りされている。
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続投キャラの声優は、原則過去に演じた声優がキャスティングされている。
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担当した声優が亡くなられた桂木弥生や甲野本部長の後任も、キャラの雰囲気をできる限り保っている。
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『Lost One』の主人公だった桐野杏子のみ例外で、共通する要素もありつつほとんど新キャラのような状態になっている。詳細は下記。
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『burst error』では弥生の恋敵ではないが小次郎の相棒以上恋人未満だった氷室が、おっかさんのように息子小次郎の日常生活を駄目出ししたり、まりなとの毒舌の応酬が見ものだった本部長があしながおじさんのような見守り要素が強くなったり、マイナーチェンジは各キャラに見られお約束に縛られないキャラクターの掘り下げはあった。
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桐野杏子はまりなを慕いつつも素直な性格ゆえポロっと悪口言ってしまう掛け合いの距離感は『Lost One』の杏子を彷彿とさせており良いお約束はしっかり残すさじ加減は良かった。
シナリオ
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物語の核となる事件は『burst error』の事件とは直接関係のないものだが、その根幹に『burst error』で登場した設定が深くかかわっている。
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細かい部分にも『burst error』の要素や小ネタが散りばめられており、ファンならニヤニヤしたり、驚くようなところも。
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この『burst error』の要素の組み込み方が非常に巧み。設定の拡張に無理がなく、上手く本作の要素につなげている。
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『burst error』含む、これまでのシリーズで何度か繰り返された流れを本作でも踏襲するシーンがある。
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しかし、話が加速する要所ではこれまでになかった展開が組まれていることが多く、こうした「お約束」と「すかし」を両立させた外連味も本作の持ち味。
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このような内容のため『burst error』のプレイは強く推奨される。本作が展開するハードではすべて『burst error R』も販売されているため、合わせてプレイするハードルは特にないので安心されたし。
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本作の物語として単体で見た完成度の高さも評価されている。
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先が見えない展開で魅せ、終盤は怒涛の勢いで様々な謎が集約し伏線が回収されていく。展開も、熱さあり切なさあり。
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『burst error』以降のシリーズが抱える問題として、主役2人がすでに友人関係にあるためにお互いを訝しむといった行動がとれず、ザッピングの意味合いが薄い点があげられるが。本作ではそれを逆手にとったトリックも仕組まれている。
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サプライズ的な構成(微ネタバレ)
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シナリオ途中にレギュラーキャラの一人である氷室恭子が視点人物となるパートがある。
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それまでの流れの氷室視点での動きも描かれ、事件周辺の裏事情がいくつか明かされるなど、群像劇的な色味が強まり構成の妙が光る。
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ストーリーも大きく動き、新たな謎も浮上し、そのまま最終章へ転がっていく。
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また、小次郎を巡るダブルヒロイン的な扱いでありながら直接的な絡みが描かれてこなかった弥生との初邂逅も描かれているなど、シリーズファンに嬉しい要素も。
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視点が氷室恭子に移ることで、それまでの主人公だった小次郎、まりな両名が「容疑者」の側に回って、プレイヤーが怪しむ対象となるのもシナリオの奥行きを深めている。
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エンディング(ネタバレ)
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『burst error』すらひっくるめた結末
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エンディングにおいては『burst error』でビターエンドとなっていた要素にも救いを追加する要素があり、大きなハッピーエンドを迎える。原作ファンには嬉しいサプライズとなった。
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これについて『burst error』の余韻を壊すという意見もあるが、大元の原作となるPC98版に存在したラストカットに繋がる展開とも言えるため、決して勝手に追加された展開というわけでもない。
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賛否両論点
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全体的に強すぎる『burst error』要素
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『burst error』の続編として『burst error』の登場人物や舞台、設定を引き継いだシナリオになっており、それが雰囲気づくりの面でも評価点になっている一方、本作独自要素が陰に隠れがちになってしまっている。
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BGMはほぼ流用、行ける場所もほぼ『burst error』と同じ場所に限定され、テキストも『burst error』を意識した物が多く、「ただの『burst error』のファンディスク」と評する声も出る程。それが魅力でもあるが、独自要素の薄さにも繋がってしまっている。
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黒幕について
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最終的に発展する事態がかなり規模の大きい危機となる一方、それを行う黒幕の動機がかなり個人的な感情によるものであり、スケールの落差がある。
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ストーリーで描かれるテーマ的にはだからこその部分もあるのだが。
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小次郎の性格が、『burst error』で危機に陥る少女に義憤に駆られたり、父親代わりに諭されて以降丸くなった性格に合わせているためか、初期の尖った性格からは違和感を感じることも。
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いわゆる『総当たり』システムが2000年代には廃れた影響を受けてか、本作も一応総当たりの形をとってはいるものの非常に簡単で、ひとつずつ選択を試していけば自然と先に進めてしまう。
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さらにヒント機能もあり、従来の何10時間もかけて進む総当たりゲームとは雰囲気が異なる。
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ネタバレ
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また、それまでに示唆する描写や推理するだけの材料は提示されるものの、直接登場するのは最後の最後になってようやくである。
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『burst error』や本作の重要なファクターをミスリードとしており、それ自体は面白いのだが、その兼ね合いの結果どうにもポッと出感が否めないことに。
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過去の続編とパラレルな展開
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本作は「『burst error』の続編」の物語を描くことに徹し、他の作品については、オマージュ的に要素を活かしつつも根本的には切り離しているという作りで作られている。その為、過去に発売された続編とは人物関係や事象など、食い違いが発生している。
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公式はTwitterで公開したこぼれ話にて、「あくまで「burst error」の後であることを意識し、空白を埋めるのではなく「burst error」からの一歩を描くために挑戦しました。」と語っており、シナリオのさかき傘氏もブログで、シリーズ作品の要素は入れつつも『burst error』以外とはパラレルであると明確に述べている。
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特に目立っているのが『Lost One』の主人公で本作でも主要人物として登場する桐野杏子関連で、本作のシナリオではどうやっても『Lost One』のシナリオとは繋がらない。EVEシリーズを1つのシリーズとして見ている人にとってはやはり気になる点である。
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一方で、従来作は変に引きずった結果却って無理が生じてしまっていたことや、『Lost One』の出来が出来だったこともあり、無かったことにしていることに好意的な声もある。
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長期続いたシリーズで既存シリーズ作品とはパラレルな続編となるゲームが出ることは本作に限らずあることなので、抵抗なく受け入れてるシリーズファンもいる。
問題点
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『burst error』未プレイには勧められない内容
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1から10まで『burst error』の続きとして作られており、『burst error』未プレイでの本作プレイは勧められない。
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本作だけでも話が理解できないわけではないが、『burst error』を意識した要素が強すぎるだけに、本作だけのプレイでは魅力はかなり薄まってしまう。『burst error』を知っている前提で描写している箇所も多い。
マルチサイトシステムの意義が薄い
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シナリオ自体はちゃんと複数の視点を活かした内容であり、それぞれの視点から物語全体のピースが埋まっていくという面白さは健在で驚かされる仕掛けもあるものの、本作の仕掛けや構成はマルチサイトシステムといまいち噛み合わせが悪く、視点切り替えをゲーム的に活かせているとは言えない。
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小次郎とまりなの視点ががっつり絡むのは序盤の日常的なシーンで直接会っているところくらいで、事件が本格化して以降は終盤合流するまで文字通りすれ違うくらいしか交わらない。
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微ネタバレ
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また、氷室パートは小次郎とまりなのパートとは独立した一本のストーリーになっており、小次郎シナリオとの絡みは多いがあくまで後から裏が明かされるという形でしかない。
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シナリオのためにシステムが犠牲になる形になってしまっており、「まずシステムありき」だった『burst error』に回帰しきれなかった部分と言える。
行動選択場面の減少
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場所移動が自動で行われたり、行動を選択する間もなくストーリーが進行する箇所が多い。
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従来作では総当たりが煩わしくなるといったことが問題点として見られたが、本作はナビゲーションシステムがありストーリーを進めたければサクサク進めることも可能であるため、ただ単に遊びの幅が減少してしまっている。
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せっかくコマンド選択時の細かなノリもうまく寄せられていただけに、惜しいところである。
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一部キャラの未登場
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基本的に『burst error』に登場したキャラで生き残っているキャラは概ね登場するが、一部に言及はあっても登場しないキャラがいる。
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未登場キャラについてネタバレ有
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プリシア(プリン)と松乃広美のみ未登場
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プリシアは事件の裏側では解決に向けて大きく動いてくれている描写はあるのだが、あくまで裏方で一切登場しない。エンディングラストがラストだけに、彼女本人からの言及が一切ないのも寂しい。『burst error』を綺麗に締めくくってくれただけにPC98ラストカットにも登場していた彼女にも出て欲しかったところ。
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松乃広美については本作では同じく『悦楽の学園』が初出であり恋人でもある佐久間裕一がかなり出張る事もあり、それを隠す意味もあっていなくなったと思われる。とはいえ、佐久間からの言及のみで一切出番がないのはやはり寂しいところ。
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立ち絵の出ない登場人物が多い
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物語に一切かかわらないモブがセリフだけあるというのは過去にも多かったが、何度か名前の登場するサブキャラでも立ち絵のないキャラが多い。
Switch版の扱い
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特徴の項にあるようPS4版は前作を丸ごと収録、PSV版は前作を販売していたため代替えでミニビジュアルノベル収録と同梱特典ありだったが、Switch版は最後発でありながら特典なしでさらに据置機扱いのため、PSV版もより価格も高いといいとこ無しとなっている。
総評
『burst error』の内容を密接に交えその雰囲気を再現しつつ、他のシリーズ要素のオマージュも上手く入れ込む等、『EVE burst error』の正統続編という謳い文句に対する大きな期待に見事に応えた快作。
一方で『burst error』や『EVE』シリーズファンへ向けた要素が強いゲームだけに『burst error』ありきのゲームになっており、様々な点で『burst error』には及ばないとする意見も多い。
歴代シリーズ作の中でも文句なしにお勧めできる一本であり、ぜひ『burst error』と合わせてプレイしていただきたい。
その後の展開
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2022年6月30日にSwitch/PS4で続編『EVE ghost enemies』が発売された。
最終更新:2025年02月08日 20:34