ウィザードリィ サマナー
【うぃざーどりぃさまなー】
ジャンル
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3DダンジョンRPG
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対応機種
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ゲームボーイアドバンス
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メディア
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32MbitROMカートリッジ
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発売元
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メディアリング
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開発元
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フューパック(一部プログラム、サウンドのみ)
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発売日
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2001年12月21日
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定価
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5,800円
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判定
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クソゲー
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ポイント
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経験値と金のバランスが逆 召喚師1人いれば十分 アイテムが外伝2からの無断盗用 致命的バグの数々
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Wizardryシリーズリンク
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概要
アスキー製のウィザードリィに慣れ親んだファンが待ち望んだGBA初にして唯一のウィザードリィ。
なのだが…
ストーリー
(説明書4・5ページより引用)
何時とも知れぬ時代に起きた、何処とも知れぬ大地の物語。
その国では、「オッサカプティス」という、伝説と神話に語り継がれる禁書を探していた。
多くの時間と労力を伴いながらも、その禁書が、人里はなれた迷宮に隠されているという
手がかりを入手した国家の調査隊一行は、すぐさま迷宮の奥深くへと進み、探索を試みた。
しかし、それ以来、彼らが迷宮の闇から帰ってくることはなかった…。
王宮にて一連の報告を聞いた国王は、これまでにない対応策を発表した。
それは、国の内外を問わず、腕に自信のある者達を集める為の号令だった。
「禁書・オッサカプティスを見事持ち帰った者達に、溢れんばかりの賞金を与えよう!」
かくして、各地よりあらゆる種族の冒険者がこの国を訪れ、夢と欲望が渦巻く迷宮へ足を踏み入れていった…。
問題点
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従来(スターフィッシュ製含)のウィザードリィと同じ感覚でゲームを進めようとすると、まず酒場のパーティ編成で「自動的にカーソルが次のキャラに移動せず、毎回一番上に戻る」ことに違和感を覚えるだろう。
プレイを進めるとその違和感はどんどん大きくなっていく。
システム面
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異常なまでに金が手に入る。3回戦闘をこなせばゲーム中で金に困ることは無くなる。そのくせ経験値は今までのシリーズより圧倒的に入りにくい。おそらく取得ゴールドと取得経験値の数値が逆になっている。
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明らかに数値の設定ミスであるが、後発のPS2版でも修正されていない為、ひょっとしたら仕様という説も。
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戦闘中「眠る」などのステータス異常で動けなくなったキャラは最後列に回されるが、戦闘中に異常が解消されても元の位置に戻らない。
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前衛・後衛の役割がはっきりしているゲームでこれは困る。後衛にいても直接攻撃できるような武器は限られているのでなおさら。
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雑魚敵にレベルが設定されていて、同じ敵でも強くなっていくが、もらえる経験値は変わらない。いわゆるFF8仕様。
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クリア後に行ける追加ダンジョンでは、ダンジョン奥のスイッチで出現敵のレベルを調整できる…とのことだが、上を一回押すだけで敵がLv1000台になってしまい戻せなくなるバグがある。注意されたし。
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こうなると普通には敵を倒せなくなり、ウィッシュ(マハマン)で消すくらいしかできなくなる。元に戻すにはデータを初期化するしかない。
新規…?
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肝である職業「召喚師」は、先に発売したスターフィッシュ製の『ウィザードリィ エンパイア』に既に登場していた。
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アイテムはアスキーの外伝2の完全なパクリ。「シリーズが同じだから似てる」ということではなく、性能や並び順すら完全に同一で、パクリというよりもコピペと言った方がいいぐらい。
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バレにくいように名前だけは変えてあり、ロングソードなどの一般名やカシナートの剣などのシリーズ伝統アイテムの名前はそのまま。
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もっと言えば「なまくらなけん」や「ごうかなかわよろい」などのアスキー独自のネーミングも変えられておらずそのまま。明らかに無断盗用である。
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外伝2名物の五行武器も名前は変えてあるが、アイテムとしての使用効果や「SPを解放して作る人間ロード専用の剣」など特徴的すぎる部分すらそのままなので、外伝2経験者にはすぐにバレてしまうだろう。
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一歩間違えれば企業問題に発展しそうな酷い仕様であるが、
アスキーがゲーム事業から撤退していたため特に大きな問題にはならなかった。
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「装備の性能がそのままならバランスも良いだろう」と考えるのは大きな間違い。入手のバランスが悪すぎるからである。最強クラスの装備もシナリオ中盤頃には手に入ってしまう。
召喚師
タイトルにもあるように、本作は召喚師(サマナー)がメインの売りではあるのだが…。
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他のウィザードリィシリーズにおいては、召喚モンスターはキャラクター枠(最大6人)とは別枠で1グループだけ召喚できる。
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しかし本作では召喚モンスターもキャラと同じ枠内で扱われる。つまり従来シリーズの感覚で6人パーティーを組んでしまうと、モンスターを召喚する余地がなくなってしまう。
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なのに、酒場に用意されているデフォルトパーティは「戦士/盗賊/僧侶/魔術師/召喚師/司教」の6人。司教を酒場で待機させて鑑定専門にしろということだろうか?
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召喚用に枠を開け、なおさら前衛3後衛3のバランスを保つのは難しい。「回復を担う僧侶」「戦利品入手に必須の盗賊」「範囲攻撃が可能な魔法使い」そして「召喚師自身」のうち誰かが前に出なければならない…。
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要するに、
パーティーには6人までしか入れられないのに、召喚師とモンスターで2枠以上を使うという発想そのものがウィザードリィの基本システムに合わない。
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2chにおいて、極端なやり方ではあるが、他職を入れずに「召喚師+召喚モンスター達」のみで冒険した方がやりやすいとの指摘があった。
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召喚モンスターはキャラ枠を1つ使うが、同一モンスターを複数召喚する事が可能。(『Wiz4』のクラシックバージョンのような方式)
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しかもレベルが高い為、LV1のキャラを新規に作成して育てるより楽である。
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召喚モンスターの種類を増やすには各地の魔法陣で契約を交わす必要があるが、それらを得ていなくても最初からボーパルバニーを召喚出来るので戦力は何とかなる。
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ただ、これだと宝箱の罠を外すキャラもいないため、アイテム収集もせずに突き進むスタイルとなるが、それでも問題なくクリアできてしまう。
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ちなみに、召喚呪文さえ覚えてしまえば転職しても召喚が行えるため、全呪文を習得した召喚師を司教に転職させてしまえば、いよいよキャラ1人で事が足りるようになってしまう。
その他の問題点
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初回プレイ時のみ、オープニングが飛ばせない。
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しかも何が言いたいのか、ストーリー紹介にすらなっていないオープニング。
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初回プレイにも拘らず、ギルドにあるモンスター図鑑が数体埋まっている。
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一部のレアアイテムは売ると在庫が激増する。商店が品物を気に行って大量生産していると解釈するにしても、説明がない。装備etc…
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同じグループの雑魚モンスターが複数いる場合、登場数ぶんだけグラフィックが表示される。
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数が減るたびに移動というか、モンスターのくせに規則正しい整列を繰り返す。このせいでテンポも悪くなる。
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出現数が多すぎると画面に表示しきれなくなる。もちろん画面外にいる敵も攻撃してくる。
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盗賊と忍者は隠れる事ができるが、従来作のような奇襲攻撃がない。
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短距離武器だと後列からの攻撃もできない。隠れれば敵の攻撃が当たりにくくなるというだけである。
賛否両論点
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BGMはそれなりに良い物が揃っている。
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しかし訓練場BGMが楽しげだったり、図鑑を見るときのBGMが勇ましげなど、使いどころは微妙。
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転職すると装備が外れるが、装備し直さなければ攻撃力などは装備したままの状態が維持される。
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ただのバグだが装備の貧弱な召喚師を育てる際には有効に使える。
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召喚師レベル7の呪文「レベルドレイン」
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使用者の1レベルと引き換えに敵モンスターの経験値を吸い取り、レベルを下げるという呪文。吸い取った経験値は戦闘勝利後にパーティー全員に入る。敵のレベルにもよるが、これで数万~数億単位の経験値が稼げる。
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経験値が異常に入りにくいゲームなので、非常に助かる。これを覚えてしまえばもうザコ戦を繰り返して経験値を稼ぐ必要がない。
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れっきとした仕様だが、挙動はバグそのものなのでドレインバグと呼ばれている。
評価点
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モンスター、ダンジョンの内装、街施設などのグラフィック面は美麗。
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訓練場にドワーフ、商店にホビット、寺院に
ノームエルフなどが配置されており、人間だけの世界ではないことを上手く反映させている。
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女性NPCは美人揃い。ちなみにノームはいない。やはり見た目の問題なのか…
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ボーパルバニーなどの召喚モンスターはゴールドよりも経験値が多くなっている。というか召喚モンスターだけ経験値と金が逆のバランスが直っている。レベルドレインを覚えるまでの経験値稼ぎは主にこれで行うことになるだろう。
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ちなみに最も効率が良いと思われる召喚モンスターの名前が「モア」。かつて人間が乱獲した事により絶滅してしまった動物である。皮肉のつもりなのか?
総評
致命的なプログラムミスやバグ、wizシリーズ以前の破綻したゲームバランスで数多くのファンを激怒させたと同時に、アスキー製のウィザードリィの出来の良さを改めて実感せしめた作品。アスキー製wizもバグは多かったが、本作のような致命的・破滅的なものは僅少で、いずれも普通にプレイするにはなんら支障のないものばかりだった。
当時アスキーはゲームの制作業務から撤退してそれほど日も経っていなかった為、改めて涙したユーザーも少なくない。
その後の展開
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後にPS2に移植されて発売されているが、根本的なゲームデザインの時点で色々とおかしいので、やはり評判は芳しくない。
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「商店での買い物時に、そのキャラが装備出来ない事を示す♯が表示されない」「CD-ROMを採用している為読み込みでもっさり」と、上位機種で後発なのに何故か劣化。
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しかも『ベスト版』として廉価版を発売。何かの冗談ですか。
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PS2版サマナーの発売を担当したタイトーは後に外伝シリーズを手がけたスタッフによるWindows用『ウィザードリィ外伝~戦闘の監獄』のPS2移植版を発売するが、原点回帰と言える簡素なグラフィックやマウス前提の画面構成・操作性をゲーム機用にアレンジすることなくベタ移植しておりあまり評判は良くない。
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なお元のPC版は一定の評価を得ており、ベタ移植のためゲーム内容自体は悪くは無い。但しPC版の有料追加シナリオはない。
余談
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一部バグの修正されたバージョンが存在する。レベル1000バグなどが修正されている。
そんなことより経験値と金が逆なバグを直してくれ
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なおドレインバグも
バグではないのに修正されているのでレベル上げがとにかく大変である。
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ソフトには、隠しボスをあしらったカードが封入されている。
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カードには隠しボスのイラストと、謎の文字列が記載されている。カードゲームでもやらせるつもりだったのか?
攻略本
このように散々な評価が下されているウィザードリィサマナーであったが、新紀元社から攻略本が出ている。
新紀元社は神話関係の書籍を多数出版している大手出版社で、マジック・ザ・ギャザリングの解説本を多数出してたりとゲーム関係の出版実績もある。
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ドワーフのモーガン、エルフのきき、ノームのメイソン、ホビットのラッキー、人間のアルビレオと言った著者のオリジナルキャラがキャラ作成からゲーム攻略までを、特徴的な語り口で教えてくれる。
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ゲームはアレだが、このキャラ達の掛け合いは割と面白い。
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64ページに私的[Wizardry]考察と題したコラムが掲載されている。
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当時のFC版ウィザードリィ発売当時の思い出などが語られている事から、筆者は結構なウィザードリィファンであった事が窺える。
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サマナーの攻略本だから当たり前だが、サマナーを誉めており、コラムの最後の項では『続編を希望したい』などと書いている。
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にも拘らず、その前の項では『本当の「ウィズ」は世界観やシステムが受け継がれている1から3、そしてGBで発売された外伝だけだ』とサマナーを全否定している。5以降を抜いている上に外伝を入れていることから原典尊重の謙遜というわけでもないようだ。
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このコラムを誰が書いたのか解らない(文責の記名が無い為)。奥付にある著者の名前3人のうちの誰かが書いているのだろうが、心中お察しします。
参考
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「得物屋24時間」という国内最大のwiz攻略サイトの掲示板のサマナー専用掲示板には当時のログがそのまま保存されており、当時購入したユーザーたちの悲痛な叫びが生々しく残っている。
最終更新:2022年12月31日 00:21