ドラゴンスピリット
【どらごんすぴりっと】
| ジャンル | 縦スクロールシューティング |  | 
| 対応機種 | アーケード | 
| メディア | ナムコシステムI | 
| 発売・開発元 | ナムコ | 
| 稼動開始日 | 1987年6月 | 
| 配信 | バーチャルコンソールアーケード 【Wii】2009年9月8日/800Wiiポイント(税5%込)
 アーケードアーカイブス
 【PS4】2022年3月3日/837円(税10%込)
 【Switch】2022年3月3日/838円(税10%込)
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| 判定 | 良作 | 
 
概要
同社の『ゼビウス』以来となる対空・対地撃ち分けタイプの縦スクロールSTGである。
これまでのナムコシューティングの要素を取り入れた集大成的作品となっている。
ストーリー
主人公アムルは魔神ザウエルにさらわれた恋人・アリーシャ姫を救出するため、太陽神アーリアから授かった剣の力によってブルードラゴンへと姿を変え飛び立つ。
特徴
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既存のファンタジーRPG等において強大な敵として扱われることが多かった「ドラゴン」が主役となり、STGでは珍しい「剣と魔法のファンタジー世界」を舞台としている。
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体力&残機制。敵、敵弾または障害物に接触することによってライフが1消耗し、0になるとミスとなる。
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ライフを増やす方法は無いが、残機はスコアによるエクステンドが2回、またはハートのアイテムを3つ回収することによって増やすことができる。
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ハートのアイテムが中途半端に残った場合、次のプレイに持ち越されるという細かい点も。これは『ギャプラス』の仕様を取り入れている。
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道中にチェックポイントがあり、ミスした場合はそこまで戻されて再開となる。
 
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レバーでブルードラゴンを操作する。
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横移動のほうが縦よりも移動速度が若干速いため、敵弾の回避などには横移動を主に用いる。これも『ギャプラス』と同様である。
 
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対空・対地ファイヤーボタンでそれぞれの敵を攻撃する。これは『ゼビウス』を踏襲している。ただし本作では対地ファイヤーも対空同様に連射可。
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だが首が1本だとボタン同時押しをしても対空・対地同時攻撃は出来ない。2本の場合は一方が対空だけ・もう一方が対地だけになる。両ボタンの交互押しをすれば見掛けは同時攻撃っぽくなる。
 
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白く点滅する敵を撃破するか卵を破壊することによって出現するアイテムを取ることによってパワーアップ(場合によってはダウン)する。点滅する敵から出るアイテムはランダム。
    
    
        | + | アイテム詳細 | 
赤玉
3つ集めることによって対空ファイヤーの威力がアップ。最大2段階まで。主に赤い卵から出る。
ただし第2段階にしてしまうとワインダー能力が加わる反面、連射能力が弱まり肝心な時に目の前の敵を攻撃できなくなるため、事実上第1段階のほうが強い。
 
青玉
ドラゴンの首が増える。最大3本まで。主に青い卵から出る。
これも3本にしてしまうと当たり判定の大きさの割に画面内に表示できる弾の限界を越してしまう所謂「弾切れ」が発生する(2段階目を除く)ため、首2本で進めるのが基本となる。
 
Sマークの玉(スモールドラゴン)
首が1本となる代わりに当たり判定がかなり小さくなる。下記のワイドと併用すると火力不足も余裕で補えるが、出現はランダム。
 
Wマークの玉(ワイドファイヤー)
左右斜めにファイヤーが追加される。火力は初期段階となるがそれを補えるほどの広範囲への攻撃力を誇る。これも出現はランダム。
 
火球の玉(ファイヤーブレス)
ノーマル時の8倍の攻撃力の貫通力のある長い対空ファイヤーを放つ。壁も貫通し、かつラスボスも瞬殺できる火力を誇る。
しかしファイヤー2段階と同じく肝心な時に目の前の敵を攻撃できないためザコラッシュには案外脆い。
 
時間制限性のアイテム
 
×マークの青い玉(ホーミングファイヤー)
一定距離進むと炸裂し敵へ誘導されて行く対空弾。しかし誘導性能が良いとは言えず弾切れも起こすためあまり使えない。
 
緑と赤の×マークに透明の玉(アースクエイク)
一定時間地震を起こし陸上の敵にダメージを与える。これを取ると非常に楽になる場面もある。
 
紫の翼のマークに透明の玉(パワーウィング)
一定時間無敵になる。アースクエイク以上に有利なアイテム。
 
黄色の玉(マジックアイ)
暗闇の中を進む8面のみ出現。一定時間前方の視界が広がる。
 
他アイテム
ドクロ
マイナスアイテム。パワーアップが一段階ダウンする。
ダイヤ・金色の玉
スコアアイテム。それぞれ1000点、10000点。
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評価点
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個性豊かなステージ
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ステージ構成は1面のカルスト台地に始まり、火山、ジャングル、砂漠、洞窟、氷山、海中、暗黒面、魔宮と全9エリアからなっている。
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各種ステージでは、例えば2面は火山が舞台らしく火の鳥が飛び交いつつ中型の火炎弾が飛んできたり、4面は砂漠では王蟲が荒野では悪霊が発生したり、5面の氷山ではマンモスやオットセイといった寒地生物や氷の魔物が出現する等、ステージのテーマに合った敵の顔ぶれで統一されていて、ステージの雰囲気を醸し出している。
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また、ステージ内で起こる演出も「地響きを上げつつ背景の火山が噴火」「画面の左右の壁が迫ってくる」「ステージ全体が暗闇に包まれていて自機の前しかないわずかな視界を頼りにして先に進んでいく」等ゲームを盛り上げてくれる要素が多い
 
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人気の高い楽曲群
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BGMはめがてんこと細江慎治氏作曲。彼のナムコ入社のデビュー作であり、これまでのナムコの作曲者とはまた違う路線であり名曲揃いであった。
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アーケードのオリジナル版と若干の修正が入った後のCD、移植版に収録されたリファイン版が存在する。
 
問題点
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画面内に同時に存在できる弾数の制限が緩い。
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1987年当時アーケードではまだ連射装置が一般的ではなく、手動による完全マニュアルの連射が基本であった。しかし本作では画面内に同時に存在できる自機弾の数が「対地・対空合わせて16発」と非常に多く設定されていた為、プレイヤーが相当速くボタン連打できる場合や、コンパネ改造での連射装置使用の場合においては初期状態に近い貧弱な装備のままでも最後まで問題無く進行できてしまう。
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開発時『ギャラガ』のプロジェクトリーダーから指摘されていた点だったが、修正されることなくリリースされてしまった。
 
 
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やや不安定なゲームバランス
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前述のように連射装置があると並みいる敵を一掃、ボスも一瞬で撃破できてしまう。
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一見ヌルゲーのように思えるが、ゲームバランス上でより大きな問題となっているのは「攻撃判定を持った障害物」である。
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自機ショットで破壊できないのに敵と敵弾だけは通過する、弾をドカドカ吐くザコの盾になる、果ては行き止まり…と非常にいやらしいものとなっている。
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このため、アイテムの引きに左右される場面もあり、無敵が出るか否かで全然違ったり果ては最終面のアイテム地帯の金の玉とハートアイテムの引きで最終スコアが大きく変わる運ゲーの要素もあったりと調整が粗い点がやや目立つ。
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ただし行き止まりに関しては攻撃判定を持っておらず、触れてもペナルティは無く敵弾を通さない。「壁抜け」という裏技を使うことにより突破可能なのだが…というより、最終面はこれを使うと非常に低難度に変貌してしまう場面が多い。
 
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さらに輪をかけて初期バージョンではブルードラゴンの縦移動速度が極端に遅かった(ゼビウスのソルバルウ並)上に自機判定も大きかったため、目の前で弾を吐かれたら避ける間もなく終わり、という状況も多々あった。
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この点については開発もリリース前に分かっていたらしく、後にリリースされたニューバージョンでは移動速度を向上、敵弾に対する自機の当たり判定の見直し、コンティニュー時にはパワーアップして再開といった改善が施された。
 
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8面はマジックアイがなければ弾も障害物も一切見えないため、非常に難易度が高い。
 
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4面ボスに致命的なバグがある
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一定以上の火力で撃ちこんでしまうと何もない空間で1ダメージを受けてボスを瞬殺またはボスが無敵となってしまうというもの。
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これを回避するには自力で撃ちこみ速度を変えるか、道中であえてパワーダウンをするしかないため厄介な初見殺しであった。
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こちらはニューバージョンでも修正されなかった。
 
総評
しっかりとした背景設定、クオリティの高い楽曲群、アリーシャ姫の「アムルー!」の呼び声が感動させてくれるエンディング、そしてナムコの当時までの(ほぼ)全作品が紹介されるという壮大なスタッフロールは圧巻。バグやバランス面での問題はあれど、それ以外の面でそれらの問題点を霞ませるほどの魅力に溢れており、『ナムコ黄金時代』の思い出として、この作品を挙げるレトロゲーマーも数多い。
これまでのナムコゲームの集大成的な作品として名高い名作である。
続編
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『ドラゴンセイバー』(1990年12月)
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世界観が中世から近未来に変更され、使用基板であるシステムIIの特徴の一つである拡大縮小機能による演出強化、チャージショット等の新システム等が新たに追加されている。
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1面のボスの目玉パンチや5面ボス第2形態を代表する初見殺し、ライフ制から一撃死制(正確には1ライフ制。基板設定により2-4ライフ制に変更可能)に変更された影響で難度は前作より格段に高くなっており、当時のシューティングの難易度のインフレを象徴した作品になっている。
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1Pの対空対地両方のボタンを押しながらゲームを開始すると、ステージ1-6の道中とエンディングのBGMが、前作のアレンジバージョンに変わる上にエンディングにおまけが追加されるという粋な隠しコマンドがある。
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家庭用移植はPCEのHuカード版、PSの『ナムコミュージアム アンコール』収録版、WiiのVCA版(配信終了)、PS4/Switch用『アーケードアーカイブス』版がある。
 
移植
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PCE版
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移植の関係上避けられない横画面変更・ハード搭載音源の違いを除けば、後半の2ステージがカットされている点以外概ね原作に忠実な良移植。
 
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X68000版
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AC版縦STGの移植で初めて、ディスプレイ縦置き用の画面モードが搭載された。
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AC版で未完成だった1面BGMが完成バージョンになって入っている。
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新旧両バージョンでプレイ出来るが、ニューバージョンでもコンティニューのカウントダウン表示はオールドバージョンのまま。
 
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FCアレンジ版『ドラゴンスピリット 新たなる伝説』
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原作のアレンジ移植。開発はナウプロダクションが手がけている。
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『ドラゴンスピリット 新たなる伝説』とサブタイトルが付加され、文字通り「移植でありながらストーリー的には続編に位置する」という極めて珍しい作品である。
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プロローグは原作ラストにおけるザウエルとの最終決戦を再現した「ステージ0」となっており、ミスしたか否かで本編「ブルードラゴンモード」と、初心者向けの調整が施されたおまけモード「ゴールドドラゴンモード」に分岐する。
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本編「ブルードラゴンモード」の戦闘シーンは概ね原作に沿った丁寧な移植だが、原作には無かったデモシーンが多数追加されているのが最大の特徴。プレイ中の雰囲気をシリアスに盛り上げてくれる。
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おまけの「ゴールドドラゴンモード」はデモシーンでのテキストが全てギャグになるという色々な意味で衝撃的な内容。しかもこのモードのみ、同一シーンでもセリフが数パターンあるという無駄な力の入れよう。そして別のゲームかと思うほど絵柄が異なる、絵本のようにほのぼのとしたエンディングも用意されている。最初から最後まで必見。
 
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2020年6月18日、Nintendo Switchのオムニバスソフト『ナムコットコレクション』のDLC第1弾ソフトの中の1本として配信。価格は300円(税抜)。
 
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PS版『ナムコミュージアムVol.5』
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旧・新バージョンを選択可能。縦画面モード搭載、メモリーカードへのスコア記録機能もある。ただしエリア切り替わりごとに若干ロードが入ってしまうのが難点。
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また、処理落ちが極めて少ないためプレイ感が少々違う、8面ボスで使用されるBGMが間違っているという単純な移植ミス、といった惜しい点はある。
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プレイ時間・回数などの詳細データを閲覧することができる。
 
 
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PS3版『ナムコミュージアム.comm』
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PSNを用いることにより全世界でのスコア争いができるようになった(新バージョンが対象、工場出荷設定、コンティニュー無し)。
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ランキング対象外のモードでは面セレクトあり、新旧バージョンの選択、BGMにリファイン版を使用できたりアナログ入力による連射速度の変更ができるなどかゆい所に手が届いているHDリマスター版。4面ボスのバグもしっかり再現されている。
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リリース当時は3面ボスの曲が違うバグがあったが修正された。
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2018年3月15日に配信終了。再ダウンロードも不可能。
 
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Wii版『バーチャルコンソールアーケード』
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旧版仕様。ソフト側に連射が装備されているが、縦画面モードにできないのが残念。現在は配信終了。
 
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Xbox 360版『ナムコミュージアム バーチャルアーケード』
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新バージョンの移植。ライフが2個で固定されていて変更不可能で連射機能が無いため、ファンには不評。
 
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アーケードアーカイブス版(Switch/PS4)
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『アーケードアーカイブス』の1作品として配信。旧バージョンと新バージョンを収録しているほか、「こだわり設定」にてゲームスピードの調整や4面ボスで発生するバグを再現するかのON/OFFを設定可能。
 
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この他MSX2版の移植が予定されていたが、末期だったこともあり発売中止となっている。
その後の展開
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『太鼓の達人シリーズ』にて増渕裕二氏がアレンジしたメドレーが収録されていた。2016年現在AC版には隠し曲として再実装。
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曲構成は「エリア1」→「エリア6」→「エリア3」→「エリア1(+エンディング)」となっている。
 
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更に2016年にはタイトーの『GROOVE COASTER 3 LINK FEVER』におけるイベント『超シューティングゲーム祭』にて上記アレンジ版が移植。
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演出も非常に凝ったものとなっており、冒頭の変身シーンまでもが再現されている。更にランキング褒章として称号も存在。
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グルコス移植時点で太鼓では隠し、シンクロニカには未収録という状況で、「ナムコの名作なのにタイトーの音ゲーに収録されて、バンナムの音ゲーではプレイできない」と皮肉な状況になっている。
 
余談
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本作リリースの前年である86年に、黎明期のナムコ開発陣を支えた敏腕プログラマー深谷正一氏が病により逝去した。
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高いプログラミング技術と温厚な人柄で「神」と呼ばれるほどに慕われ、数多くのプログラマーを育てていた氏の若くしての死去は大きな衝撃をもたらしており、このころにリリースされた多くのゲームのエンドクレジットなどに彼に対する哀悼の意を表すキーワードが掲載されるほどであった。
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同時期に出ていた『源平討魔伝』のエンディングメッセージ末尾における「故深谷正一氏に捧ぐ」の一文がつとに有名だが、本作のスタッフロールにも同様の一文が英字で記載されている。
 
 
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リリース当時はD&Dマニアから「ブルードラゴンが火を吐くのはおかしい」という指摘もあったが、その後この火を吐くブルードラゴンは受け入れられた模様である。
 
最終更新:2024年08月02日 10:44