平成 新・鬼ヶ島 前編/後編
【へいせい しんおにがしま ぜんぺん/こうへん】
ジャンル
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アクションアドベンチャー
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対応機種
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スーパーファミコン
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発売元
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任天堂
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開発元
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パックスソフトニカ 任天堂情報開発部
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メディア (NP版)
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NP版
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SFメモリカセット Fブロック×6 (24Mbit)+Bブロック×1(16Kbit)
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ROM版
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24Mbitロムカセット
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発売日
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NP版
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1997年12月1日
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ROM版
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1998年5月23日
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定価
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NP版
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書き換え価格 3,000円→2,000円
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ROM版
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3,800円
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配信
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バーチャルコンソール
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Wii
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【前編】2010年5月25日/800Wiiポイント(税5%込)
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【後編】2010年6月1日/800Wiiポイント(税5%込)
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WiiU
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【前編】2014年9月14日/823円(税8%込)
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【後編】2014年9月14日/823円(税8%込)
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判定
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良作
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ポイント
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本編補完ストーリー おまけで本編ほぼまるごと 前後編構成ながらどっちからでもプレイ可能 ニンテンドウパワー専用ソフト第1号(半年後解除)
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ふぁみこんむかし話シリーズ 新・鬼ヶ島 / 遊遊記 / 平成 新・鬼ヶ島
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概要
ディスクシステムで好評を博した昔話アドベンチャーゲーム『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』の続編。
SFC向けの衛星データ放送受信用周辺機器「サテラビュー」にて「サウンドリンクゲーム」として配信されていた「BS新鬼ヶ島」のリメイク版である。
1997年にニンテンドウパワーで前編、後編を分けて配信された後、翌年に前編、後編を分けてROM単品のパッケージ販売がなされた。
前作の主人公たちの前世とお供の3匹の動物たちの過去を明らかにした外伝ストーリーと、ディスク版の8章、9章をリメイクした鬼ヶ島での最終決戦の4つのエピソードからなる。
BS版における旧作からの変更点
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「ひとかえる」コマンドの廃止(BS版では制限時間内に謎解きする必要があったため、フラグ立ての複雑化を回避するためと思われる)
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ストーリーの進行上、クリア必須のミニゲームが全てのエピソードに用意されている。
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選択肢の決定に制限時間が設けられる局面が存在する。
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グラフィックウィンドウ内のキャラクターを直接操作するシーンが多くアクション性が高まっている。
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SFC音源と生演奏に近い音源でアレンジされている。
BS版からの変更点
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ディスク版から変更された設定が移植にあたって再変更された箇所がある
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一部、謎解きのプロセスが変更された箇所及び謎解きそのものが移植にあたって変更された箇所がある。
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BGMは、SFC音源とラジオ音声で流されていた生演奏音源風のBGMのうち、後者が改めてSFC音源でアレンジされている。
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BGMが適材適所で細かく切り替わるようになったため、盛り上げ効果がより一層高まった。
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曲調は異なるものになっている。
評価点
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前作からシステム面の大幅な改善
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前作では、たとえば取れるアイテムは無いのに「とる」コマンドはあるなど、意味のないものが多々あり、加えてメッセージ表示も緩慢であるため、間違えて選択した場合はイライラさせられる事もあった。
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また、「いどう」コマンドは東西南北を指定する方式。現実の地図の見方を知らないと移動すら難しくなってしまう。
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今作では画面の上下左右に直感的に移動できるようになり、意味のないコマンドはほぼ廃され、メッセージ表示もかなり高速になっているため快適にプレイできるようになっている。
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ミニゲームが多いが難易度はさほど高くない。
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一部のミニゲームはクリア済なら難しいバージョンに挑戦することが可能になる。
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一定条件を満たした上でゲームを全て終わらせると、ROM版の前編、後編にディスク版の前編、後編が遊べるようになる。
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セリフの一部の修正、音源の変更に伴うBGMの編曲とステレオ化、幕間のデモの追加などの変更点を除き、テキストや演出周りに大きな変更はなし。
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また、平成 新・鬼ヶ島本編で条件を満たした際にいったいさんから攻略のヒントを聞くことができる。
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1話3章で、各エピソードはさほど長くはないので、気軽にプレイできる。
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原曲を豊かにアレンジしたBGM
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ディスク版のBGMがSFC版の音源でアレンジされており、情緒あふれる原曲の風情を大事にしたアレンジは好評。
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タイトル画面にて黒一色の画面に浮かび上がるタイトルに前作のタイトルBGMのイントロが流れ出し、終わると同時に前作のパッケージイラストを再現した和綴じの絵本のイラストが表示され、そこから「第2章~いえのなか(よる)」が、ピアノとストリングによるより哀愁溢れるアレンジで流れだすという演出は、旧作ファンには感涙ものだろう。これはSFC版移植に伴う新規アレンジであり、BS版とは異なる。
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BGM演出の刷新
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BS版ではBGNがシーンに沿って細かく切り替わることが少なかったためシリアスなシーンでほのぼのした曲が流れるなどの違和感もあったが、本作ではきちんとシーンの内容に沿ったBGMがあてられるようになった。
賛否両論点
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前作のエピソードを補完する一方で、設定変更の影響で矛盾する点が多い。
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基本的な設定面の変更についてはBS版を踏襲しているが、いずれも矛盾としては目をつぶれる範囲の変更ではある。
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また、ディスク版では草木一本生えない荒野として登場する「しのはら」が本作では自然豊かな大地で地上にやってきた乙姫が一時期を過ごす「竜宮の里」として登場したり、奇怪ヶ森で主人公たちを導くべく待っていた雀の「じゃのう」が本作では偉そうに威張るだけの無能な性格だったりと、相違点が多い。
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この点についてはディスク版の過去の物語ということで、シナリオの構築に当たって設定を膨らましているということでもあるが、明確な補足が作中でほとんどなくプレイヤーの想像に任せている部分も多い(なぜ竜宮の里が「しのはら」となってしまったのかなど)。
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一方、玉手箱が開放された下りについては改めて設定変更がなされており、ディスク版での設定と照らし合わせると、少々納得しづらい理由に代わってしまっている。
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ネタバレ
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「前作の主人公であるどんべは、かつて竜宮城に招かれた後、乙姫から託された玉手箱を持って地上に戻ったところ、数百年近い時間が経過していたため村が跡形もなくなっており、その悲しみから玉手箱を開けてしまった結果、悪を解き放ち罪を償うために生まれ変わった」というのがディスク版における設定である。
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BS版では「村自体は数百年後も健在で、どんべは再び村人たちに受け入れてもらえた」という形でどんべ個人に起きた悲劇はそこで完結しているのだが、竜宮城の使者に託された玉手箱を保管している最中、封じられた暗黒の化身に箱を開ければみんなが幸せになれると唆され、貧しい村人たちを思うがゆえに解放してしまい更なる悲劇に・・・」という設定に変わっている。
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しかし、本作では「玉手箱を預けられた直後、井戸に落ちかけた子供を見て慌てて駆け出し、転んだ拍子に玉手箱を放り出して地面に落としてしまう。そして何も知らない村人たちが箱を持ち上げた結果、ズレた蓋が落ちて完全に開け放たれてしまった」という、身もふたもない設定になっている。
確かに扱い方としてはうかつであったとはいえ、危険にさらされた子供を見たがゆえの反射的な行動である。更に言えば、直接的な開放の原因は、何も知らない村人が箱を持ち上げてズレた蓋を完全に開いてしまったことであり完全な不可抗力である。にも拘らず一方的に罪人扱いされるというのはどうにも釈然としない話しだろう。
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竜との最終対決では「我と一つになれば皆が幸せになれるのだ」と嘯く竜に対して「騙されないぞ!」とどんべが返すという、あっさり騙されてしまった過去の経験との対比的なやり取りがあるのだが、設定変更によってあまりピンとこないものになってしまった。
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問題点
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謎解きの合間のアクションや頭を使うミニゲームなどは気分転換にはなるが、後半になるとアクション一本やりになりがちなので単調。
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ディスク版の販売形態をまねてか、ROM版まで前編/後編に分けられて発売されている。
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ディスク版も収録されているとはいえ、内容自体はそうボリュームが大きいわけでもないのでややコストパフォーマンスは悪い。
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ただ片方だけでSFメモリカセットの最大容量、F*8(32Mbit)のうちF*6(24Mbit)を消費してしまうため仕方ないといえば仕方ないのだが……。
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BGMはSFC版の音質でアレンジされているが、SFC版の音源の高さゆえにアレンジが中途半端な感じが否めず、オリジナル版を再現したグラフィックに対してやや音が弱い。
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雰囲気重視か、それともコスト削減か、キャラビジュアルが貧弱
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取扱説明書や販促チラシなどに使われるキャラクターのイラスト、90年代後半のゲームともなれば、リファインされ、主役級は何枚かは用意されそうなものだが、このゲームは各キャラ墨絵風の白黒イラストが一枚のみ。
おまけに見た目の違う成長後の男主人公の方はイラスト無しという貧相な物になっている。
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ゆえに、後の作品にゲスト出演する場合はディスク版のイラストが30年以上使いまわされる結果に。
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後編ラストの難点(ネタバレ注意)
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ラスボスを倒すとディスク版のヒントがもらえるラストのクイズがある。これが40問と長いわりに問題のバリエーションはそこまで多くなく出題はランダムなので同じ問題はほぼ確実に複数回出題されるため、ムダに冗長感が否めない。
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問題の中でも「今何問目?」というのは物語に関係なく、そのために最初から数える必要があるだけなので煩わしい。
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エンディングは「島が崩れる」+「黒一色の背景に白文字で流れるスタッフロール」とあっさりしすぎて、紙芝居風の一枚絵を交えていたディスク版のような物語の余韻に浸れるような演出がない。
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総評
ディスク版のシナリオをいろいろ補足しつつ、整合性が取れてない点や明らかな設定の矛盾はあるが、昔話のほのぼのとした雰囲気を受け継ぎつつ、SFCならではのグラフィックと情緒豊かなBGMのアレンジ、アクションを取り入れた新たなゲーム性を構築した佳作。いずれかしかやったことのない人や両方やったことのない人は、ぜひ触れてみよう。
余談
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本作でも名前を入れないでスタートすると公式名「どんべ」「ひかり」が自動で入れられる。
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旧作では公式名「どんべ」「ひかり」は「初プレイ時に名前を入れないでスタート」という条件でだったので、それ自体見た人はレアだったが本作では「記憶を消す(カセットデータの初期化)」という機能があるので、公式名を見られる機会が多くなった。
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フィギュアスケートの羽生結弦選手が、好きなゲームの一つとして挙げた事で話題になった。
最終更新:2024年12月11日 12:06