ワイルドアームズ アルターコード:F

【わいるどあーむず あるたーこーど えふ】

ジャンル RPG
対応機種 プレイステーション2
発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
開発元 メディア・ビジョンエンタテインメント
発売日 2003年11月27日
定価 7,140円
レーティング CERO:全年齢対象
廉価版 PlayStation 2 the Best
2004年9月16日/2,667円
2006年10月19日/1,714円
判定 良作
ワイルドアームズシリーズ
PlayStation Studios作品


概要

初代『ワイルドアームズ』(以下『WA』)のリメイク作品。
タイトルの「F」は、「First」と「Fake」のダブルミーニングであり、初代『WA』のフェイクであるという意味が込められている。
設定としては、あくまで初代『WA』のファルガイアにそっくりなパラレルワールドということになっている。

「一から作り直した」と言っても過言ではなく、リメイクではあるがストーリーも含め全てが一新されている。
ただし一新と言っても、後述するがキャラの設定やストーリー展開自体は変わっていない。

次回作、『WA4』へのデータコンバートが可能。

以下に主な変更点を記述する。


変更点

全般

  • キャラクターボイスの追加
    • 基本的に戦闘中のみだが、シリーズ初のキャラクターボイスが導入された。
      • このタイミングでボイスを導入したことについて、製作者は、ボイスの導入によって一悶着欲しかったというような旨の発言をしている。
  • グラフィックの大幅な向上
    • 元々、初代『WA』はPS黎明期のポリゴンでグラフィックに難があったことや、ハードが変わったこともあり、グラフィック全般が大幅に向上している。
      • ただし、いくつか問題点も挙げられている。詳細は後述する。

キャラクター

  • 台詞の大幅な変更
    • ストーリーやメインキャラクターは初代WAとほとんど同じだが、その台詞についてはほとんどが書き直されており、初代『WA』の経験者であっても新鮮な形でゲームを楽しむことができる。
    • 町人などは初代『WA』に比べると人数が減っているが、全ての人物に名前と性格付けがされ、台詞も全て書き直されている。
  • 容姿の変更
    • グラフィックが向上したことも影響しているが、メインキャラクター、サブキャラクター含めて容姿に細かい変更が加えられている。
      • PS版のザックは20代後半とは思えないほどに顔が老けていたが、今回は大分若々しく書かれている。
      • また、ナイトクォーターズの面々やバーソロミュー船長なども大きく変更されている。

フィールドなど

  • サーチシステム導入
    • 『WA2』『WA3』と導入されてきた「サーチシステム」が本作にも導入されている。
      • ちなみにアウトフィールドは初代WAのものを左右反転したものになっている。
  • 街/ダンジョンの構造変更
    • 基本的に、街やダンジョンは初代WAと同じものが存在しているが、中の構造は完全に作り直されている。
      • グラフィックが向上した弊害として、街の規模はかなり小さくなっている。
      • ダンジョンについては当然、謎解き要素も変更されている。
  • グッズの変更
    • グッズのうち半分程度が別のグッズに変更されており、同じ名前のグッズについても仕様が変更されているものがある。

バトル関連

  • 装備の概念を削除
    • 武器防具を装備するという概念は存在せず、キャラクターの強化は基本的にレベルアップや後述するパーソナルスキルによるもののみとなる。
      • ただし、ARMを装備しているロディなどは『WA3』と同様、ARMの改造による強化が可能。
      • なお、初代『WA』ではロディは剣も使用していたが、本作ではARMのみとなっている。
    • ミーディアム(初代『WA』で言うパワープレート)の装備も無くなっている。
  • パーソナルスキル
    • スキルアイテムを各キャラクターに装備させることで、パーソナルスキルを習得可能。
      • スキルアイテムを装備するとスキルポイントを消費し、スキルポイントが足りない場合は装備不可能。
      • スキルは、HPアップ、防御アップ、属性耐性などがあり、強力なものほど必要なスキルポイントが高い。
      • 『WA2』と『WA3』のスキルシステムを合わせたようなシステムだが、本作の場合は『WA2』と違ってスキルの取り外しが可能で、『WA3』のギアと違って取り外してもスキルアイテムは失われないので気軽にカスタマイズ可能。
  • オリジナル/フォースアビリティの減少
    • 各キャラクターのオリジナルはほとんど全て変更され、数が減っている。
      • 数が少ない分、実用性が低いものや、性能が似通っているものはほとんど無い。
    • フォースアビリティは基本的に1人1つとなった。
      • ロディはロックオン、ザックはアクセラレイター等、そのキャラを代表するようなもののみとなっている。
  • その他、バトル関連のシステムは前作『WA3』を基にリメイクされている(クロスファイアシークエンス、経験値レートなど)。
    • 戦闘時の魔法や敵専用技などの戦闘演出面も『WA3』の物が流用されている物が多い。

評価点

リメイク前の良い所はそのまま

  • 銃を手に荒野を旅する西部劇的な雰囲気や、そこに上手くファンタジー要素を混ぜ込んだ世界観自体は変わっておらず、荒野の冒険を楽しむことができる。
    • その上で全体的に綺麗になっているため『WA』を今やるにはグラフィックが辛い人にも勧めやすい。
    • 会話などが一新されたものの根本的なシナリオ自体は好評だった『WA』から変わっていない。
  • シリーズ恒例のなるけサウンドはアレンジ、新規含めて高評価。
    • アレンジ曲では、特にアーデルハイド城下町の曲に人気がある。
    • また、麻生かほ里氏の歌う挿入歌も非常に評価が高い。
  • グッズを使用した謎解き要素
    • 謎解き自体が一新されたため、既に『WA』を遊んだ人も新たな謎解きを楽しめる。
      • 謎解き自体は難解で行き詰るほどの物は基本的にないので、もちろん新規プレイヤーも楽しめる。
  • 戦闘バランス
    • 『WA』よりもできることが増えた分だけ戦略に幅が広がったが、その分ボス戦の戦闘難易度は少々上がった。
    • 全体的にゲームバランスは良く、キャンセルできるからと戦闘を回避し続けでもしないかぎりは良好なゲームバランス。
      • 後述するが、今作のキャンセルは少々使いづらい点もあるため、ずっと避け続けることが難しく、逆に適度な戦闘回数は行うようになっている。

やり込み要素が豊富

  • モンスター図鑑や、パズルボックス等々、やり込み要素がシリーズ一二を争う程多い。
  • 『WA3』以降、恒例となっているやり込みの証「Exファイル(キー)」の種類も本作が最も多い。入手方法がかなりきついものも少なくないが…。

仲間キャラの追加

  • 追加されたのは、ジェーン、エマ、マリエル、マクダレン、隠しキャラの5人。
    • その内、最終的に仲間となるのはジェーン・エマ・隠しキャラの3人。マリエルとマクダレンは途中で離脱する。
    • 魅力的なライバル冒険者として描かれていたジェーンの加入に喜んだファンは多い。
+ 隠しキャラについて
  • なんと敵である魔族のゼットが仲間になる。
    • ゼットは初代『WA』ファンからは「仲間にしてほしかった」という要望が特に強かったため、ファンの願いが叶った形となった。子安武人氏の名(迷?)演技も相まって、その存在感はさらに濃いものに。
      • 戦闘開始時の「お茶の間のアイドル、見参!」から、ファンからの主な呼び名は「お茶の間のアイドル」で定着してしまった。

既存キャラのピックアップ

  • 上記した通り、マリエルやマクダレンは一時的とはいえ仲間になり戦闘参加するなど、ほとんど出番のなかったキャラの活躍が増えている。
    • また、マリエルに関してはガーデニングによる回復アイテムの育成などもできるようになっており、仲間から外れた後も会いに行く機会が増えた。

賛否両論点

  • 原作からのゲームシステムの変化
    • 原作はいわゆるドラクエやメガテンに近いタイプの比較的スタンダードなRPGだったが、その後シリーズを重ねた本作はRPGとしてはやや特殊なシステムとなっている。
      • 代表的なものとして「装備システムの削除」「HP回復の手段が特殊(HP回復アイテムを店で購入できない)」「MP回復アイテムが存在しない」など。
      • サーチシステムやエンカウントキャンセルなども他のRPGではあまり見かけないシステムである。
    • 洗練されてわかりやすくなった部分もあるが、逆に複雑化し面倒になった部分もあるため一概にどちらかがいいとは言えない。
  • 主人公であるロディにボイスがついた
    • 未プレイの人は疑問に思うだろうが、原作のロディはイベントシーンを含めまったく喋らないキャラであり、これが後半判明するロディのある秘密に合致していたため、「納得の無口」であった。
    • 今作でもやはりイベントシーンでは喋らないのだが、戦闘中とは言えキャラクターボイス全開で喋ることに抵抗があるプレイヤーも多い。
      • ただ、ゲーム内オプションでキャラクターボイスのON/OFFを切り替える機能が存在する(しかも各キャラクター毎に設定できる)ため、気に入らない人はこの設定を変えれば回避は可能。
      • また、ボイス自体もロディのイメージを壊すような声ではないため、「これはこれで」というプレイヤーも多い。
  • シナリオを一新した結果、キャラクターの性格等も一部修正されており、前作をプレイした人間は違和感を感じることも。
    • 例として、魔族のゼットは前作においては「直情的な熱血バカ」であり、考えなしとはいえ言動は普通だった。今作ではギャグ要素がピックアップされ普通の会話シーンでも色々とおかしい。
    • ついでに子安氏のノリノリのボイスも追加されている。
      • キャラを立てた結果とも取れるが、改悪と感じる人間もいる。

グラフィック関係

  • 10年近く前に発売された作品のリメイクに伴い、キャラクターやモンスターなどのデザインもリメイク時に主流だった作風に変更された。
    • 原作は1990年代当時主流だったSF風のシャープなデザインが多かったが、本作では発売当時(2000年代)に人気だったアニメ調のデザインとなっている。
    • 主要人物のデザインは細かい部分を除いてあまり変わっていないが、ゴーレム(ロボット兵器のようなもの)の変貌ぶりが著しい。
  • グラフィックの一新
    • 全体的に『WA3』までの技術でグラフィックは綺麗になっており、特に戦闘シーンのプレイヤーキャラは『WA』が二頭身だった事もあって比較にならない程綺麗になっている。
      • というか、『WA』がPS黎明期のポリゴンだったので荒すぎたのだが。
    • 反面3Dグラフィックはまだ多少粗い面もあり、イベントでアップになるシーンなどから顔グラフィックには批判が多い。
      • セシリアに至っては人によってはきれいなジャイ○ンと呼び、直視できないと言われることも…。
      • 開発も問題と思ったのか、続編である『WA4』『WA5』では、顔グラフィックに非常に力が入れられており、イラストなどと比べてもほとんど違和感が無いレベルにまで綺麗になった。

問題点

システム全般

  • ディスク読み込み不良が起こり易く、特に起動が不安定。
    • 本作の最大の問題点と言えるのがこれ。本作はゲーム容量が大きいため片面2層方式のDVDディスクを採用しており、これが非常に読み込み難い。
    • 主にこの問題が発生するのが起動時で、PS2の型番やレンズの状態によっては、そもそも起動すらしないこともある。
      • 読み込みづらい箇所が起動箇所に集中しているのか、ゲームを始めた後に読み込みでフリーズすることはあまりないのが救い。
      • 特に初期のPS2本体(SCPH-10000/15000)のレンズは性能が低いため、片面2層DVDをまともに読めない場合がある。
    • 一応、レンズクリーニングなどで改善する例もあるが、古い本体ではやはり厳しい場合も…。
  • ゲームのテンポが少々悪くなった。
    • 『WA』はシンプルな分読み込みも少なかったが、グラフィック向上により原作では読み込みが無かった部分で読み込みが入ることも。
    • バトルも綺麗になって動くようになった分、人によっては少々テンポが悪く感じる。
      • 原作が時代が時代だけにシンプルすぎたので、そこまで気になる程でもないが。
  • 街などにおいて、カメラ位置が遠いためキャラクターなどが小さい。
    • 一応右スティックでズームアップ可能だがあまり改善されない。

戦闘面

  • ザックの相対的な弱体化
    • 初代『WA』ではザックは全体的にパラメータが高く、攻撃の要であったが、本作では他のキャラクターが大幅に強化されており、相対的にザックが弱い。
      • 相対的に、と書かれている通り、キャラ単体で見れば決して弱いわけではない。
    • 攻撃役としてはロディなどの方が優秀である上に、本作のザックは原作と違って回復技や補助技なども無いので潰しが利かない。
    • 「早撃ち」(ザックのオリジナル)の熟練度システムにも批判が多い。
      • 各技ごとに特定回数使うごとに熟練度が上がり消費MPが下がる仕様だが、ザックのMPが低いため熟練度が低い内はMP切れを起こしやすい。
      • 敵とのレベル差があると補正が入るため、非常に熟練度が上がりやすくなる*1
      • これを利用して、レベルは非常に高いが攻撃がそこまで強力ではない雑魚敵を相手に熟練度稼ぎなども可能。
      • ただし、下記周回要素においてはこのシステムが足を引っ張ることになる。
    • 周回時において「早撃ち」熟練度がシステム的に非常に不遇。
      • 周回プレイ時にはこの熟練度が引き継がれないが、レベルはそのまま引き継がれる。
      • 結果として、ザックを鍛えれば鍛えるほど、次周では自身よりレベルが高い敵がいなくなる。
      • そのため、レベル差を活かした熟練度上げも不可能になり、他が引き継ぎ要素で強力な中、1人だけ1周目よりも辛い熟練度上げが必要になる。
    • 本作では仲間が増えており、戦闘メンバーを選択できるため、終盤ではザックは出番がほとんど無くなる事も。
  • エンカウントキャンセルの仕様
    • 本作のエンカウントキャンセルは、WA3のものとほぼ同じだが、キャンセルし続けると不意打ち率などが上がるという仕様がある。
      • 全ての戦闘をキャンセルできても問題なので、バランスを取ろうとした結果なのだろうが、デメリットの不意打ちが少々きつすぎるのが問題。
      • さらに、この不意打ちはスキルを駆使しても100%回避することは不可能。
      • しかも不意打ちが増えるという説明がない。そのため「6回連続不意打ちに遭った、乱数調整したのか?」「スキルで防げるはずだが効果がない、バグか?」という意見が出てきた。
    • 前作で回数に上限があり初期は回数も多くなかったため、上限をなくす方向での調整結果だが、人によっては改悪との意見もある。
      • 今作の批判点は後の作品では改善されている。

その他

  • 原作から削除されたダンジョンやアイテムが多く、原作のファンだったプレイヤーの中には残念に思う者も。
    • ストーリーに大きく関わらない一部のダンジョンはなくなっており、ガーディアン(召喚獣のようなもの)も接触自体はあるものの力を借りることができない場合が多い。

総評

原作となったWA1がPS黎明期のポリゴンを使用したゲームであったため、見た目は完全に別ゲームとなっている。
また、キャラやシステムなどもリメイク時の技術で洗練されており、原作プレイヤーもほぼ新作に近いゲームとして楽しめる出来になっている。
ただし、全体的に「変わりすぎている」点は原作ファンには賛否両論で、原作をやりこんだプレイヤー程どこかしら気になってしまう事が多い。
システム的にはやはり片面2層方式による読み込みにくさが最大の難点で、本体によっては起動自体不安定なのはさすがに辛い。

最新作までの技術でもってシリーズ初代作品をリメイクすることには成功したと言え、初代『WA』をプレイした事のない人間でWAシリーズに興味を持った人間には、古い本体でなければ安心して勧められる作品になっている。
ただしWAを既にプレイしていた人間にとっては、変えすぎた点や一部のシステムでプレイヤーによって非常に意見の分かれるゲームになってしまったのが残念である。


余談

  • キャラクターチェンジバグ
    • バグ技を使用すると、パーティメンバーの入れ替えが可能。まだ仲間になってないキャラに変更したり、同じキャラを複数並べたりといったことも可能。
      • これを使用すると期間限定加入のマリエルやマクダレンを最後まで使えるようになる上、基本的に変更でフラグがおかしくなるといったこともない。問題があるとすればいないキャラのグッズが使えないくらいだが、必要ならまたキャラを変えれば良いので詰む事もない。
      • 特にマリエルは戦闘能力は非常に低いがサポートキャラとしては非常に優秀。通常プレイでは加入が極短期だが、高レベルで習得するスキルもあり育て甲斐もある。
  • 本作でロディのキャラクターボイスを担当した声優・鈴村健一氏も初代『WA』プレイ経験があり、自分がロディの声を当てた時をイメージしながらプレイしていた。
    • プロデューサーの金子彰史氏はその話を聞いて感動すると同時に「なんだかスゲェ照れた」とのこと。
最終更新:2024年11月18日 06:09

*1 必要回数30回、ザックLv10、敵Lv13の場合、1回使用するごとに熟練度が3上がり、10回の使用で熟練度が上がる。