ワンダと巨像
【わんだときょぞう】
ジャンル
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アクションアドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション2 プレイステーション3 プレイステーション4
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メディア
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【PS2】DVD-ROM 【PS3/PS4】Blu-ray Disc
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発売元
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【PS2/PS3】Sony Computer Entertainment 【PS4】Sony Interactive Entertainment
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開発元
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【PS2】Sony Computer Entertainment 【PS3/PS4】Bluepoint Games
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発売日
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【PS2】2005年10月27日 【PS3】2011年9月22日 【PS4】2018年2月8日
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定価(税込)
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【PS2】7,140円 【PS3】3,980円 【PS4】5,292円
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廉価版(税込)
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PlayStation 2 the Best 2006年6月8日/2,800円 2010年2月4日/1,800円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:12歳以上対象 |
判定
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良作
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上田文人作品 ICO - ワンダと巨像 - 人喰いの大鷲トリコ
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PlayStation Studios作品
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概要
『ICO』の製作チームが手掛けたアクションアドベンチャー。同作と同じく上田文人氏がディレクターを務めている。
端的に内容を説明すると、「アクションゲームにおけるボス戦に特化したゲーム」となっている。
ストーリー
青年ワンダは愛馬アグロと共に、命を失った少女を抱えてこの地へやってきた。
魂を操る術を持つというドルミンを訪ね、彼女に命を吹き込んでくれるよう懇願するために。
ドルミンは告げた。「少女を生き返らせたければ、この地に住まう16体の巨像を倒せ」と。
特徴
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シームレスに繋がっている広大なフィールドを探検する、いわゆるオープンワールド形式のゲームである。
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かなり広大なため、愛馬アグロでの移動が基本となる。広大すぎて迷うことも多い。しかし寄り道してみるのも本作の面白い点である。
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地図も最初から所持しており、これまでに戦った巨像の跡や、いずれ戦う巨像のいる場所の地形をおおまかに把握することができる。
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ステータスは画面上に数値が表示されない、シンプルな独自の仕様。画面上で確認できるのは「ライフ」の残量を示すバーと「腕力」を示す円の2つだけである。
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ライフは高い場所から落ちたり巨像の攻撃を食らうことで、腕力は崖や巨像に掴まったり水中に潜ることでそれぞれ減っていく。アイテムなどで瞬時に回復する手段は無く、どちらも時間の経過と共に回復する。
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これらのステータスは、フィールドに落ちている特定の物を拾い食いすることでパワーアップできる。
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本作は周回プレイに対応しており、強化されたライフと腕力は引き継ぐことができる。
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だが表示的限界が無いため、腕力を示す円が限りなく大きくなり最終的には画面一杯に覆い尽くす。ある意味ハードになる。
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ライフ・腕力ともに初期値でもクリアができるので、あると楽になる程度の要素である。
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ゲーム進行
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拠点となる祠でドルミンの声が次の巨像のヒントを示し、それに従い巨像を探しこれを撃破 → イベントが発生して拠点に戻され、またヒントに従い巨像を……のサイクルを繰り返す。16体の巨像を撃破すればエピローグとなりゲームクリア。
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次に戦う巨像のいる場所は、日のあたる場所で剣を掲げることで、剣の光が収束する方向によって示される。これを目印にしつつ、地図を見ながら手探りで進んでいくことが基本となる。
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本作における「敵キャラクター」と呼べるものは実質巨像のみであり、巨像との戦いに特化したバトルとなっている。
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巨像の上に登って弱点を探し出すのが基本となる。巨像に取り付くためには地形を利用したり、巨像の習性を利用するといったパズル的な要素も多分に含まれる。
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巨像に取り付いた後は振り落とされないようにしがみつきながら弱点へと向かって行き、そこへ剣を突き立てて戦うこととなる。
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主人公・ワンダの装備は剣と弓が基本。そして重要なのは「掴む」動作であり、これこそが本作を象徴するアクションである。
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R1ボタンで壁や巨像、足元の地面などに捕まる。移動に使うのはもちろん、動く巨像から振り落とされないようにするために必要である。掴んでいる間は腕力のゲージを消費し、離れていると腕力が回復する。
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剣は振ることと、掴んでいる場所に突き刺すことができる。突き刺す動作はボタン長押しで強さを調整できる。
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剣を振り回しても巨像に有効打を与えることは基本的にできず、前述のように弱点部位に剣を突き刺さなければならない。
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強く突き立てればダメージも大きいが、そのために溜める動作が必要で、これは揺さぶられるとキャンセルされてしまう。このため動く巨像から落とされないように大ダメージを与えるのは難しい。
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弓は木の実を落とすなどの使い方の他、巨像の体勢を崩すためのピンポイント攻撃などに使う。
評価点
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圧倒的な表現力を誇るグラフィックの美麗さ
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フィールドのあちらこちらには鳥やトカゲなどが生息し、雄大な自然と数々の遺跡が待ち受けている。砂丘には砂埃が舞い、木々が生い茂る森にはところどころ陽光が差すなど、PS2終盤からなるハードの底力が発揮されている。
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ゲームの雰囲気と設定にマッチした、全体的な演出の完成度の高さ
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主人公ワンダは簡単に巨像を撃破できるような力を持たず、飛びつき、よじ登り、剣を突き立てる個々の動作にはもどかしさすら覚える。
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爽快さや軽快さとは無縁であり、アクションゲームとしては異例の仕上がりだが、生身の人間が圧倒的な存在に挑み苦闘する姿は、いかんなく表現されている。
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戦闘中は、巨像の隙をうかがっている場合や、取り付いて攻撃している最中などでBGMが変化する。戦闘の高揚感を高めており、いずれも名曲揃い。
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特に決着目前で流れる「甦る力 ~巨像との戦い~」はそれまでの不穏な雰囲気を一気に吹き飛ばすカタルシスを得られる名曲として人気が高い。
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そうしてトドメを刺す時、わずかにスローモーションになり、静かな断末魔と共に崩れ落ちていく巨像は言い様のない虚しさを残す。この時「最後の一撃は、せつない。」という本作のキャッチコピーを誰しも体感するだろう。
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愛馬アグロの存在
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ワンダと共に古の地を駆け巡り、時には協力して巨像と戦う。ゲームの孤独感を解消してくれる唯一の心の支えと言える存在であり、まさに愛すべき相棒である。アグロがいなかったらこのゲームの魅力は大きく減っていたと言っても過言ではないかもしれない。
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ある意味では今作の「少女」を差し置いて、前作 『ICO』 のヨルダに近い位置付けのキャラクターと言える。操作体系の関係で尚のことそう思う者も多い。
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移動手段として見ても、その場の地形に合わせて向きを自動補正しながら走ってくれるので快適に移動できる。壁や障害物にぶつかっても、よほど真正面からぶつからない限りは止まらずに向きを補正して走り続けてくれる。
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ちなみに最高速度の状態を維持しようとボタンを何度も押しがちだが、実は押しっぱなしにしていれば現在の移動速度を保ち続けてくれる。
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寡黙に語られ、独特の雰囲気を生み出しているシナリオも演出の出来と相まって高く評価されている。
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劇中の人物はボイスを発するが、全て架空の言語で日本語字幕となっている。
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巨像を倒した後にちょっとしたイベントが発生するが、何が起きているのかは語られないため、ストーリーからちょっとした謎まで多くの考察がファンによって行なわれている。
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前作『ICO』をプレイしていると分かるネタもある。
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アクション性が増えたことに伴って、説明書では『ICO』におけるアクションの説明不足が解消されており、図解も交えた具体的な解説が増えた。
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一方で、物語を表現した挿絵風のビジュアルの裏側に印刷された説明を内側に織り込むようにすることで、説明書然とした解説が前面に出てこないようにされており、前作同様、説明書の雰囲気も大切している。
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クリア後もハードモードやタイムアタック、それに伴う特典などのやりこみ要素もある。
賛否両論点
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フィールドの広大さの割にゲームとしてはやれることが少なく、一本道感もある。
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広大なフィールドを探索しても、やることは「巨像の発見と撃破」「見晴台の発見」「トカゲ狩りや果実の収穫によるステータス強化」ぐらいしかない。
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動物の種類は少なく、生息数も限られている。魚や亀や鳥を発見しても、それが何かゲーム攻略の役に立つということはなく、魚や鳥に一時的に掴まることができるというお遊び要素があるくらい。
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いかにも何かありそうな場所はあちこちにあるのだが、特に何も無かったりする。
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これは「プレイヤーの想像をかき立てる」という『ICO』から続くコンセプトであり、閉ざされた古の地という設定や本作の作風上、多種多様な動植物がいたり、あちこちでミニゲームやサブイベントなどの遊びができても、それはそれで問題ではある。
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とはいえ、先に進むための仕掛けがあったり風車やら水路やら墓所やらバリエーションに富んでいた『ICO』に比べると、あまりにもフィールドに何も無さ過ぎ変化に乏しすぎて想像で補うにも限度がある。
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巨像を倒す順番が完全に固定されている。
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クリアに必須ではない巨像や、隠し巨像などの類は存在しない。
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もしも後の順番の巨像がいる場所に早い段階で辿り着いても巨像は出現しないので何もすることがないため、結局後になってその場所を再訪することになるという二度手間になってしまう。
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本作にはショートカットルートやワープポイントの開通といった要素も無いので、自由に探索はできても戻ることも考えてしまいがち。
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広大なフィールドを自由に探索することはできるのだが、次に戦う巨像までのルートと関係ない場所へ行く利点はあまりなく、実質的に一本道のようなゲームとなっている。
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操作性
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『ICO』と同じくリアル重視であるため、キャラの挙動は少々モッサリしている。
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掴む・ジャンプ・攻撃などのボタン配置は右手側に集中しているため、巨像に登って攻撃するなどボタンを押し続けるゆえに負担もそれなりにある。必死にしがみついて戦っている感覚の演出とも受け取れるが。
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キーコンフィグで配置の変更は可能。ただし変えてもウィンドウに表示される時はデフォルトのままである。
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また、下突きする際に前転が暴発してしまいがち。
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人によっては巨像戦でストレスが溜まる
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アクションパズルの性だが、倒し方が分からない人は何時間掛かっても分からないし、倒し方が分かったとしてもアクション性が要求されるため、実行に移すのは容易ではない。
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パズルと3Dアクションの両立が求められる上、その両方とも前作より色々と分かりにくい仕様のため、初心者にはややハードルが高い。
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巨像の体の上を移動する際にのぼれる場所・ジャンプで越えられる場所・しがみ付ける場所・立てる場所などが分かりにくい上、先に進みたいのに巨像の挙動に振り回されて身動きが取れないことが多い。
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これらは巨像の体を登るという独特なプレイ感覚を生み出している重要な要素ではあるが、結果として、せっかく巨像の体に取り付いたのに振り落とされてしまって振り出しに戻るハメに陥りやすく、ストレスが溜まりやすい。
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これらは特にアクションゲームやゲーム攻略における「反復学習」が苦手な人にとっては顕著に感じられやすい部分でもある。一応は時間経過でドルミンからヒントが貰えるが、これも微々たる物。
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一部を除く巨像の動きが全体的に緩慢で、こちらがして欲しい行動をなかなかしてくれないこともあり、人によってはじれったく感じられる。
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特に巨像から振り落とされてしまいまた巨像に取り付かなければならない時などは、巨像の行動を利用して巨像の体に取り付くまでに時間が掛かり、ストレスになりやすい。
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苦労の末に倒したからといって、それまでに鬱積されたストレスや多大なプレイ時間に見合うほどの達成感が得られるかと言えば、それもまた人によるため一概には言えることではない。
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巨像戦の圧倒的な雰囲気により、たとえゲームは苦手でも何時間だろうと戦っていられるという声もあるが、人によりけりである。
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巨像を倒した後の展開。
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以下ネタバレ
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撃破後すぐに、ワンダが巨像から現れた黒い触手のようなものに取り付かれて倒れてしまい、そのまま祠に帰される。
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このため崩れ落ちた巨像の体の上を散策したり眺め回したりといった感慨に浸ることが、すぐには出来ない。巨像撃破の達成感を殺す一因となっているとする声もある。
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ただしこれは、「巨像を倒しても報われない」 というストーリーの重さが表れている演出と見ることもでき、その観点で納得のいく要素ではある。
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アクションゲームとしてはフレームレートが低め。
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基本30fps、巨像が激しく動く場面ではそこからさらに落ちる。しかし、それがかえって重みのある独特の視覚効果を生んでいる面もあり、ここは好みによるところでもある。
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BGMや、体力・腕力・装備アイコンの表示を消せない
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巨像戦で必ず流れるBGMは、映画的な効果を演出する重要な要素ではあるが、BGMが流れない静寂な空気感のまま巨像と戦いたいという声もある。
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前作『ICO』と違い、今作には体力や腕力のゲージといったいかにもゲーム然としたインターフェイスがあることを嫌う向きも少なくない。
問題点
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カメラワーク
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雰囲気重視で見栄えは良いものの、透過処理などは無いため地形では極端に寄ったりして非常に見難くなる場面がある。
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巨像に掴まっている時もカメラが回り込んでしまって進みたい方向と違う方へ行ってしまうことも。
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ただし、透過処理があっても雰囲気を損なってしまう面も否めず、巨像のカメラアングルも操作しやすいような大人しい物になったら本作の魅力を削いでしまうところもあるだろう。
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遠景の貼り遅れ
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シームレスに繋がっているが、地形のテクスチャの貼り遅れが目立つ。プロローグのイベントシーン明けの段階でも少々目についてしまう。とても美しい景観ゆえに惜しまれる所でもあり、PS3版でも改善はされていない。
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行けそうで行けない場所が多い
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世界を散策すればするほど感じることである。崩れた橋の向こう側、崖の遥か下に見える地形、山の向こう側、山の頂上、崖を挟んだ向こう側の地形、古の祠の上部など、「あの場所に行ってみたい」と思わせる場所は随所にあるが、どうやっても行けない場所が多い。
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アイテムを使用したり、巨像の動きを利用した反動ジャンプなどをすれば行けるところもあるが、そのほとんどが地面に接触した瞬間に死亡判定、もしくは地面をすり抜けて落下するかである。
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古の祠は、ワンダの能力をかなり上げればとある場所まではよじ登ることができるものの、それでも全体の半分程度までしか登ることができない。さらに上の方はもっと面白そうな形をしている。
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もっとも、開発上の事情によりそういう場所まで作り込んでいないことは明白であり、3Dアクションゲームにはよくあることでもある。既に充分すぎるほどに広大な世界で、魅力的な場所も数多く存在するため、これは嬉しい悲鳴と言えるものかもしれない。
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正規ではないが、ある方法で行けない所へ行った動画がある。祠の頂上などの光景が見られるが、ここでは割愛する。
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弓矢を構える際に自動照準が効かない。
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リアリティ重視のためと思われるが、構えた後に向きを反転して自分でねらいをつけなくてはならず、向きの固定もできないので狙いがブレ易い。
総評
神秘的な世界観と恐怖を与えてくる巨像との戦いは、さながら映画のようである。
プレイした人の中には「記憶を消して最初からやりたい」という人もいるほど。
『ICO』と並んで、特に海外での評価が極めて高く、IGN主宰の「ベストPS2ゲーム」では国内外の各有名作品を抑えて堂々第1位に選ばれている(参照)。
移植
PS3版
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高解像度化し、立体視にも対応したリマスター作。「雰囲気がまったく変わってしまう」という理由から、『ICO』共々フレームレートは変更されていない。
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ハードのスペック向上のためか処理落ちはほとんどなくなったが、処理落ちの存在を好意的にとらえていた層からは違和感が指摘された。
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また、処理落ちがなくなった結果アクションシーンの難易度が上がった。
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PS2版からして難易度は高めだったため、雰囲気に惹かれた普段あまりゲームをしない層にとってはマイナス要因か。
PS4版
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リマスターではなく、3Dモデルが一から作り直されたリメイク作で、描写が大きく向上した。
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PS4世代に相応しく美しいグラフィックを誇り、遠景の貼り遅れもなくなった。
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フィルターのオプションが追加され、セピアや夜のような画面にするなどもできる。
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PS4 Proの4K HDRにも対応しており、フレームレート優先なら60fpsでプレイ可能になっている。
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前転がワンボタンで使用できるように変更された。これで前述の暴発も無くなった。
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ただしキーコンフィグは、これまでの各ボタンに配置する物ではなく、4種類のキー配置から選ぶ形式になった。
余談
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TBSにて放送されていた「リンカーン」にて、ダウンタウン松本人志氏のハマったゲームとして紹介されていた。
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松本氏は本作を自身のベスト3に入るゲームと言い、本作の魅力を的確に押さえたトークをした…が、残念ながら他の出演者が本作のことを知らなかったために、いまいち伝わりきらないままトークは終了した。
最終更新:2024年11月18日 06:15