The Black Onyx
【ざ ぶらっく おにきす】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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PC-6001mkII、PC-8001、PC-8801、PC-9801、 FM-7、X1、MZ-2500、MSX、SG-1000/SC-3000、 ファミコン、ゲームボーイカラー
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発売・開発元
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【PC88他】BPS
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発売元
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【MSX】アスキー 【SC-3000/SG-1000】セガ 【GBC】タイトー
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開発元
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【GBC】アトリエドゥーブル
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発売日
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【PC88】1984年1月 【MSX】1985年 【SC-3000/SG-1000】1987年3月 【FC】1988年7月14日 【GBC】2001年3月2日
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定価
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【PC88】7,800円 【MSX】6,800円 【SC-3000/SG-1000】4,300円 【FC】5,900円 【GBC】4,500円
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判定
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良作
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ストーリー
秘宝「ブラックオニキス」を手にすれば、無限の力と富を授かるという。
それはウツロの街のブラックタワーのどこかにあると伝えられていた。
この話を耳にしたあなたは、この神秘の宝を求める事を決意する。
そして、ブラックタワーに通じると言われている街の廃墟へと向かった。
概要
日本において、RPGというものがなんなのか最初にプレイヤーに刻みこんだゲーム。
『Wizardry』系統のRPGだが、シンプルに作られており、またビジュアル重視で分かりやすいものになっている。
「イロ イッカイ ズツ....」は本作の最大の謎であり、象徴。
特徴
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『Wizardry』系統の3DダンジョンタイプのRPG。RPG最初期のゲームで、いわばRPG入門とも言えるもの。
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職業・魔法・宝箱・罠・毒等と一般のRPGでよく見られる要素は全くない。本当にシンプルにできている。
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状態や、武装、敵などが数字や文字ではなく、ビジュアルで表現されている。
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キャラクターメイキングで出来るのは、最低限。
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冒険のために最低1人はキャラクターを作らないといけないが、本作ではこのメイキングが非常にシンプル。やる事は名前と見た目を決めるだけなのだ。
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この点も分かりやすい見た目からの作りになっている。一方パラメーターなどは、いじるどころか見る事すらできない。パラメーターは勝手に決められる。
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パーティのメンバーは、作ったキャラばかりじゃなくてもいい。町やダンジョンで声をかけたNPCを加える事もできる。
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NPCの名前については自動生成される。一応、生成される名前はなんとなく読めるような名前にはなる。
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画面構成はビジュアルに気を使ったもの。
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ビジュアルに気を使ったと言っても、演出的という意味ではない。状況が絵的に分かりやすいものという意味。LIFE(HPの事)と経験値がゲージで表示されている。
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パーティも全員が絵で表示され、一目でどんな武装をしているか分かるようになっている。モンスターが出現した場合も表示される。それが10匹以上の集団でも、一匹ずつ全部表示されるのだ。当時としては臨場感溢れるものだった。
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3Dダンジョンタイプで描写された世界。
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メインの冒険場所となる地下やタワーが、3D描写されてるのは当然だが、武器を買ったり、治療したりする町自体も3Dで描写されている。町や迷宮はシンプルなワイヤーフレームで表示されていた。
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町にはNPCがよく闊歩しており、何かと出会う。大抵は友好的だが、中にはケンカを売って来る連中もいる。まれにモンスターが一匹でうろついてる事もある。運が悪いと、冒険に出る前に死んでしまう事も。
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町の店は、武器屋・兜屋・鎧屋・楯屋・外科・薬屋・検査機関・銀行がある。宿屋や飲み屋などの看板の店もあるが、プレイヤーは利用できない。怪我は基本的に外科で治す事になる。結構安い。一方で薬は高く、収入が増えるようにならないと、気軽に使えない。そして検査機関だが、実はここでパラメーターを見る事ができる。ただし有料でそう安くない。しかも全部のパラメーターが見られる訳でもないのだ。銀行はお金を預ける所。キャラクターの持てるお金に限界があり、持ちきれない分はここに預けておくのだ。ちなみに金利はつかないし、融資もしてくれない。
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武装は武器と兜と鎧、楯で構成される。
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ほぼ全ての武装は店で買う事になる。たまにだが、モンスターが落とす事もある。最強の防具だけはダンジョンにある。一方で売ることはできない。懐具合には少し厳しいゲームなのだ。
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終盤で特定の敵が店で買えない回避率を非常に高める「魔法のマント」をドロップする。今でいうレアモンスター、アイテムの類である。
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しかし実際のグラフィックは透明になったということで、ただキャラを消しただけであった。
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この「魔法のマント」、確かに便利なのだが「着たキャラクタが敵から狙われにくくなる分、それ以外のキャラが敵に狙われ易くなる」という副作用もあるため、5人全員分が揃うまでは意外とやりくりに苦労させられたりもする。
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武器には片手武器と両手武器があり、両手武器を装備した時は、楯は持てない。片手武器から両手武器に変更した場合は、楯は捨てる事になる。
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武装は値段の高いものほど強く、特殊な機能もない。構成要素はシンプル。
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装備をするとグラフィックが変わり、絵的に何を装備しているのか分かるのだ。武装を新調したという臨場感があった。
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パーティーメンバーの入れ替え。
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レベルアップ時の能力上昇は一定範囲内でのランダムであるため、リセット&ロードでの厳選を行わない場合、レベルが上がるほど各キャラ間での能力値差は見過ごせないものとなる。値の伸びが悪いキャラクターは、NPCを勧誘して入れ替えてしまうのも一つの選択だ。
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仲間にできるNPCとは街やダンジョンで出会う。ダンジョン内のNPCはこちらに合わせてそれなりにレベルが上がっており、中にはストレングスが高めな推定バーバリアン(一般NPCとは見た目が多少違う)などもいる。
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敵も味方も殴り合い。
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魔法や毒などの特殊攻撃がないので、戦闘は殴り合いしかない。いかに相手の数が多かろうと、一匹ずつの殴り合いである。あまり多いと少々うっとうしいが、数が多いものは弱い敵がほとんど。レベルが上がれば勝手に逃げていく。
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戦闘時は攻撃対象を選ぶのだが、例えば三人で同じ敵を攻撃した場合。二人目で敵を倒せてしまうと、三人目は何もしない。攻撃の配分をうまくしないと、戦力を無駄にしてしまうのだ。
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モンスターは不利になるとよく逃げる。だが、逃げられたとしても攻撃した分の経験値は入る。経験値はレベルに応じて変化し、弱すぎる敵では全く入らない。
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セーブがどこでもできる。しかも、自動セーブではなく好きなタイミングでできるのだ。
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ただしそのキャラクターを呼びだすにはセーブ地点での座標でロードする必要があった。またカセットテープにセーブする仕様のものは至極簡単なデータのみで構成されていたため簡単に改造できた。
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なおカセットテープによる保存が出来ないSG-1000版はパスワードによる保存方法だったがあまりにも簡単な暗号方式だったためすぐに解析され最強キャラが作られてしまった。
評価点
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まさしく入門用RPG
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『Wizardry』の流れを組んでいるが、内容はずっとシンプルに仕上がっている。このため、簡単にシステムを覚えられた。馴染みのなかったRPGという新しいジャンルを、そう手間をかけずに楽しむ事ができたのだ。
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ビジュアルで表現されたステータスは、パッと見で分かるものになっている。まさに入門編といった様相。
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戦闘も単純でわかりやすいもの。逃げた敵からすら、経験値とお金を得られる親切設計。
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お金を貯めてより強い武具を買う、チームバトルで敵を倒していく。RPGでは当たり前の事だが、今までにない体験はプレイヤーを魅了するのに十分だった。
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3Dで描写された世界の新鮮さ。
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3D描写そのものが少ない時代。世界全体が3Dで表示されているという臨場感は、それまでにほとんどなかったものだった。
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ただ当時、ワイヤーフレームで町を描写するという方法があまりなかったので、プレイ最初の画面に一体何が表示されてるか分からず戸惑ったプレイヤーも少なくなかった。
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ウィザードリィ系統なのでマッピングが必要。だが、これが未開の世界を踏破するという事に実感を持たせた。少しずつ書き加えられていくマップに、喜びがあった。
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ダンジョンは中盤まではそう難しくないが、後半は厳しいものに。プレイヤーの成長を考慮した構成。
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中盤当たりまでは比較的分かりやすく、そう陰湿な構造にもなっていない。ワープポイントも少ない。一方通行がやたら多い特殊な階があるが。だが、ダンジョン後半や、ブラックタワーは違う。モンスターが強く、ブラックタワーにおいては、自分の位置取りすらままならぬ厳しいものに。
前半はダンジョン探索の楽しみを学べるように、後半は本格的に攻略に取り組むようになっているのだ。
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さらには最下層では一定までしかキャラは成長しない。さらに鍛えるにはブラックタワーに登る必要があるのだが到達するのに後述のカラー迷路を抜けなければならず、さらには一撃で倒されるほどの攻撃力のある敵を相手にしなければならない。
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エンカウント率は比較的低く、ダンジョン探索を楽しめるものになっている。だからと言って調子に乗って先に進みすぎると、あっさり死ぬが。
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特に井戸の直通階段の最下層で強制エンカウントするクラーケンの強さは今でも語り草。Lv1でエンカウントして全滅したプレイヤーも多い。
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死亡はすなわち消滅。本作には死者の復活などという都合のいいものはない。が、セーブ機能の自由度が高いため、実質死亡はないのと同じだったりする。
問題点
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モンスターは必ずお金を落としていくとは限らない。他のRPGに比べると少々稼ぎがしにくい。
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「イロ イッカイ ズツ....」は最大の謎だった。
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冒険に出る前に見る事もあるこのキーワード。まさか最終盤のブラックタワーに入るのに必要になるとは、プレイ開始時には思わないだろう。もっとも最下階の、それまでとまるで違う彩られたダンジョンを見れば、このキーワードがなんらかのヒントである事は想像がつくものだった。色に関わるものは、それしかないのだから。
総評
まだまだRPGという言葉が十分広まってない時代。RPGがどういうものかを十分に味わえるゲームだった。
システムも、その原点とも言うべき『Wizardry』に比べて非常にシンプル。
このシンプルさはRPGを知らない日本のユーザーにとっては、とっつき易いものだった。
またはじめてRPGを触れる事を考慮し、多くの部分を見ただけで理解できるようになっている点も大きい。
本作をきっかけに、RPGを知ったPCユーザーは少なくないだろう。
RPGの伝道師となった、日本RPGの金字塔である。
余談
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本作は、日本で最初に発売されたRPGではない。最初に発売されたのは光栄(現:コーエーテクモゲームス)の『ドラゴン&プリンセス』。
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PC版のアンケート葉書きにブラックオニキスを発見すると表示されるメッセージを記入してBPS社に送ると先着で本物の黒メノウがもらえるサービスがあったが、キャラクター改造方法が周知されてしまったがために中止されてしまった。
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本作の舞台となるウツロの街の名前の由来は、当時BPSがあった横浜市の菊名にあった交差点「内路(うつろ)」にちなんでつけられたものである。
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続編として魔法の概念が追加された『ザ・ファイアークリスタル』が存在する。
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こちらはカラー迷路が複雑になり、最後の迷宮が「桂馬跳び」の魔法を使わないと絶対にクリアできないというさらに難しいものであった。
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なお、第3作としてウツロの街の外も冒険の舞台となる『ザ・ムーンストーン』、第4作としてキャラクター同士を戦わせることができる『アリーナ』が企画されていたものの、いずれも残念ながら発売中止となった。
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『アリーナ』に関してはゲームボーイカラー版ブラックオニキスにおまけ機能として入れられた。
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ちなみにBPS社内には「『ザ・ムーンストーン』に関わった者は会社を辞める」というジンクスがあった。
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FCでは『スーパーブラックオニキス』としてアレンジ移植されている。魔法の概念が追加されているが、ストーリーや冒険する世界は原作とは大部分が違うものになっている。
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本作のゲームブック版として東京創元社より『スーパー・ブラックオニキス』が発売された。国産ゲームブック最高傑作とも呼ばれる『ドルアーガの塔』3部作と作者が同じ為、こちらも屈指の名作と誉れ高い作品。
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ゲームボーイカラー版はPC版を再現したレガシーモードと、グラフィックやシステムがアレンジされたレジェンドモードの2種類のモードが用意されている。
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レガシーモードで作ったキャラをレジェンドモードにコンバートすることも可能。
最終更新:2022年01月14日 20:20