Grand Theft Auto: Chinatown Wars
【ぐらんどせふとおーと ちゃいなたうんうぉーず】
ジャンル
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クライムアクション
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 PSP版
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対応機種
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ニンテンドーDS プレイステーション・ポータブル iOS Android
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発売元
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Rockstar Games サイバーフロント (日本語版)
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開発元
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Rockstar Leeds Rockstar North Grove Street Games (スマホ版)
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発売日
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【DS】2009年10月29日 【PSP】2010年3月11日 【iOS】2010年1月17日 【Android】2014年12月18日
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定価
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【DS/PSP】6,090円(税込) 【iOS】800円(税込)
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レーティング
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CERO:Z(18才以上のみ対象)
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判定
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良作
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ポイント
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初代路線への原点回帰 良質なローカライズ DSで唯一のCERO:Z指定タイトル
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Grand Theft Autoシリーズ
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概要
世界中で大ヒットしているクライムアクションの金字塔『Grand Theft Auto』シリーズのスピンオフ。
日本のニンテンドーDS用のソフトでは唯一のCERO:Z(18歳以上のみ対象)に区分されるソフトである。
ストーリー
主人公ホァン・リーは中国マフィア「トライアド」の構成員であると同時に、トライアドのボスである父親を持つ御曹司。
それ故に幼少の時から何不自由なく育てられてきたがある時、ホァンの父親が何者かによって暗殺されたという報せを受ける。
一族がトライアドを率いる証である剣「ユウ・ジアン」を新しく家長となった叔父のケニー・リーに届けるよう頼まれたホァンはクーロンから単身リバティーシティに渡る。
だがリバティーシティに到着した彼を待っていたのは「ユウ・ジアン」を狙う殺し屋からの襲撃であった。ホァンは殺されかけた挙句「ユウ・ジアン」も奪われてしまう。
アメリカ最悪の街「リバティーシティ」の裏世界へ巻き込まれる形となったホァンは「ユウ・ジアン」を取り戻し、そして父親暗殺の真相を追うべく動き始めるのであった…。
特徴
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システムは『IV』とほぼ同じであるが、初代や『2』とやや同様の見下ろし型の視点である。
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舞台はデフォルメされながらも3DCGで描かれた、『IV』のリバティーシティとなっている。
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ゲーム中に挿入されるイベントシーンのグラフィックはアメコミ風のテイストとなり、ゲーム画面もトゥーンシェードによる描画を採用。
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タッチペンやマイクを使用するアクションが多く盛り込まれており、タッチペンを使って後述のアクションをしたり、マイクを使ってタクシーを呼んだりと、DS独自の操作を盛り込みながらも『GTA』の雰囲気を活かした作品となっている。なによりもそれがあまり煩わしくないのがポイント。
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日本語版の規制は麻薬取引でのドラッグの名称とアイコンが差し替わっている程度で、内容はほとんど北米版と変わらない。ほぼ満点のローカライズ。
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例えば人の心臓を素手で取り出すイベントシーンやミニガンやチェーンソー、爆発物で攻撃すると人体がバラバラになるなど、『日本語版SA』だったらまず規制されるようなものも全く自重していない。
評価点
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街のグラフィックがDSながらキチンと3Dで再現されており、クオリティも高い。
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見下ろし型の視点だが『IV』のシステムをベースに改良が入っており、同じ視点の初代や『2』と比べて格段に遊びやすくなっている。
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攻撃ボタンを押すと近くの敵を自動的にロックオンしてくれるため、遠距離からの銃撃が当てやすい。従来通り手動でのロックオンも可能。
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本作ではYボタンでローリング(前転)を行える。ローリング中は銃撃に対して無敵になり、囲まれた際の切り抜けで重宝するアクション。
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車両の運転では路上走行中に進路が自動的に真っすぐになる補正がかかるアシストが標準でオンになっており、見た目以上に快適に運転できる。
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ミニゲームや、やりこみ要素も充実している。ユニークスタントや殺戮ミッションといったお馴染みのものから、スクラッチくじやタトゥー掘りなどDSの機能を活かしたものも。
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ガソリンスタンドで火炎瓶を密造、停車している車の配線をいじってエンジンをかけたり、防犯装置を無効化する手順もタッチ操作で行う。
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『VCS』以来となる、車を「買う」ことができる。種類もスポーツカー、バイク、ブルドーザーなどと多彩で中には『IV』には登場しなかった戦車も。
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武器はピストル、マシンガン、ロケットランチャーなどの定番だけでなく復活したチェーンソーやミニガン、火炎放射器。さらにテーザー銃、センサー式地雷といった変わり種も。
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武器の購入方法は武器屋の通販を利用して注文する他のシリーズ作では見られない独自の方式。注文後、その時点で一番近い隠れ家からある程度離れているとその隠れ家の前に届けられる。
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また、通販とは別に武器屋のトラックが路上を走っていることがあり、トラックを強奪後、指定の隠れ家に持っていくことで武器を1つタダで手に入れることができる。
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ただし、武器屋のトラックを奪うにはある程度ダメージを与えて運転手を降ろす必要がある上に、降りてきた運転手は強力なショットガンで抵抗してくるため注意が必要。
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個々のミッションが短く、携帯機向き。ミッションに失敗したりで金等がなくなっても、ゴミ箱漁りという救済措置あり。
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シリーズ随一のロードの速さ。オートセーブにも対応しており気軽に遊べる。
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使える武器が制限されるとはいえ、シリーズ初のミッションリプレイ機能を搭載。クリア時間が測られるので早解きにも挑戦でき、タイム次第で金銀銅の3ランクに認定される。
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麻薬取引が地味にハマる。今回はこれが主な資金稼ぎの手段。ルールは単純なので誰でも簡単。ただ、やり過ぎると取引終了後に手配度がつき、警察に追われることになる。
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所属ギャングごとに買取・販売が得意な麻薬が異なり、それらを売買することで利益を得られる。売人の台詞も所属ギャングに応じて変わるので飽きにくい。
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本作の手配度を消す方法はカーチェイスで追手の警察車両を規定数クラッシュさせるという新方式。
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クラッシュの判定は比較的緩めでコツさえ掴めば警察車両をクラッシュさせるのは容易。『日本語版SA』を除けばシリーズの中でも手配されやすい方(下記参照)ではあるが、このシステムのおかげであまり苦にならない。上手くクラッシュさせるよう狙うのが単純に楽しく、これまでにない攻めた立ち回りができるこの方式は好評。
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手配度最高レベルとなる☆6では『VCS』以来の軍隊が復活。本作では戦車で追ってくるだけでなく、砲撃も行ってくるので逃げ切るのはこれまで以上に容易ではない。
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メールの受け取り、目的地へのルート表示など、様々な操作が行えるPDAの便利さ。タッチパネルで簡単に操作できボタン操作にもある程度対応しているなど、ゲーム内容とは裏腹にユーザーには非常に親切。
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ミッション開始時や終了時には紙芝居風のイベントシーンが展開。他の『GTA』ではミッション開始時の会話は相手が一方的に用件を押しつけるだけで主人公はあまり喋らないことも多いが、本作では主人公も比較的よく喋り、またその内容もアメリカンジョーク(主人公は中国系アメリカ人なのだが)に富んでいて楽しめる。
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なお、上記のミッションリプレイの際、各ミッションごとの主人公の心境が綴られたテキストを読むことができる。ストーリーを追いやすくなる他、主人公のブラックかつシニカルな本音が満載。
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後に発売されたPSP/iOS版はDS版よりも大幅なグラフィックの向上が見られる。通常画面の高精細化+ワイド化のほか、DS版でカバンを見せるだけだった売人(グラフィックは全員共通)も顔が表示されるようになり、麻薬の販売エリアごとに異なる顔のグラフィックが用意されている。
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加えて、この2機種だけの追加キャラクター・ミッションが存在する。
問題点
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容量の問題で仕方ないが、一部要素に制約がある。
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カーラジオがボーカルのないインストゥルメンタル曲(要は単なるBGM)のみで曲数が少ない。
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『IV』に登場した「オルダニー島」が削除されている。
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ヘリがイベントでしか乗ることができず、操縦もできない。
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従来作と比べて手配レベルが付きやすい。
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6時~21時までの時間帯は路上での警官とパトカーの出現率が高く、車を盗んだ時や車で走行中にパトカーに接触した時に手配レベルが付くことが多め。
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その一方で、警官の目の前で人を殺しても手配レベルが付かないこともあり、手配度の付く行動の基準がやや不透明な所がある。
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火炎系武器で人、車両を攻撃したり、車両をこちらの武器によるダメージで炎上、爆破させると即座に手配度が付く。
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視点が見下ろし型に戻ったことは、『III』以降から入ったユーザーからはおおむね不評。
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ただし、初代と『2』の見下ろし視点に比べれば、かなり現行作寄りで格段に見やすくなっていることは確かであり、原点回帰として歓迎する声もあるため賛否両論な点ではある。
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PSP版のハード仕様による問題
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PSP版では、DS版の特徴でもあるタッチ操作のミニゲームがアナログスティックとボタンを使った簡素なものに変更されている。ハードの都合上仕方のない仕様だが、比較すると若干面白みには欠ける。
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必然的にタッチで操作するiOS版においても、タッチ操作が要求される場面の一部がPSP版ベースになっている。
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またDS版では移動中に下画面に大きく表示されていたマップが、PSP/iOS版では画面左下のレーダーのみとなるためやや小さく見づらくなっている。
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追加ミッションのプレイに「Rockstar Social Club」の登録が必須で、若干だが手間がかかる。
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当時の同サイトは日本語非対応の為、公式サイトで解説がなされていた。
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さらに現在は、DSのニンテンドーWi-FiコネクションやRockstar Social Clubの一部機能が停止したことで、iOS版を除き新規でのプレイは不可能となってしまった。
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ミッションには本編に登場したある人物が関与しており、ストーリークリア後にプレイすると感慨深いものがある。手段が限られてしまったが、是非プレイしていただきたい。
総評
ミニゲーム化しさらに綿密になった犯罪行為、納得モノの箱庭感、携帯機らしい遊びやすさなど、それらが概ね高水準にまとまっており、充分に良作にあたるといっていいだろう。
近年の同シリーズ作品と比較すると迫力には欠けるが、グラフィックや演出に無理をしていないぶん、割り切って楽しむことができるはず。
見下ろし視点だけでクソゲー扱いするユーザーが非常に多いが、内容自体はいつもの『GTA』である。
旧作の移植などではなく、携帯機だけでしか楽しめない『GTA』の物語と魅力があるので、決して遊んで損はない作品である。
先述のPSP/iOS版が発売されても発売国内外共々そこまで知れ渡らず、隠れた良作と化したところが惜しいところである。
最終更新:2024年05月05日 15:00