七ツ風の島物語

【ななつかぜのしまものがたり】

ジャンル アドベンチャー
高解像度で見る 裏を見る
対応機種 セガサターン
発売元 エニックス
開発元 ギブロ
発売日 1997年11月27日
定価 6,800円
備考 初回限定版はCD-ROM2枚組(設定資料など)
判定 良作


概要

  • サイドビューで主人公である「竜人」を操作し、絵本のような架空の世界を歩き回るアドベンチャーゲーム。開発は『ワンダープロジェクトJ』シリーズを手掛けたギブロによるもの。
  • ゲームデザイン・キャラクターデザイン・シナリオは、映画監督の肩書きも持つ(どちらかと言えば特撮系の監督として有名だが)雨宮慶太が務めた。

ストーリー

~ 黒い風に吹かれて 失われた物語…
  そして あなたがつくる 新しい物語… ~

ずんぐりむっくりとして背中に小さな羽の生えた
不恰好な竜人「ガープ」は、「七ツ風の島」の上空でサナギから孵った。

この島の住民の一生は「前身年」、「後身年」という区切りがあり、
前身年を終えた者はサナギの形態を経て、新しい生き物に生まれ変わる。

今新しく後身年を迎える竜人が、新しく紡いでいく物語。それが「七ツ風の島物語」。

システム・特徴

  • ゲームを開始すると、生まれたばかりで何もわからない竜人に対し、まずチュートリアルがてら導入部の物語が始まる。ここで自宅を手に入れたら、「自分の名前」と「好きな物」「嫌いな物」の入力を要求される。
    • ちなみに公式設定では、竜人の名前は「ガープ」、好きな物は「リンゴアメ」。
  • 全10章構成。あちこちを移動したり、見つけたアイテムを使ったりしてフラグ立てをするとストーリーが進み、節目節目でそれまでの体験が絵本になる。
    • 完成した絵本のページは、自宅で閲覧可能。
  • 竜人は風使いとなり、島に時折吹く「黒い風」が引き起こす様々な問題に対し、七色の風を操って解決していく。
    • 謎解きは簡単。人の話をよく聞いていれば、特に詰まるような部分はない。
  • 話の中で、竜人は3人の友達と出会う。友達はそれぞれ竜人にはできない特技を持ち、島の探索や謎解きの手助けをしてくれる。
    • 友達になる時にもらえる角笛を吹くと駆けつけて来てくれるが、一度に1人しか連れ歩けない。
  • 島の住人は、既存の有機物・無機物が融合したような独特の風貌をしている。人間のキャラクターはおらず、また人語は操らない(セリフは字幕で表示される)。
  • 島には植物・石・虫・魚などのコレクションアイテムがある。虫取り器や釣竿といったアイテムを手に入れたら、草むらや水辺で探してみるのもいいだろう。集めたコレクションアイテムは図鑑に載り、自宅のキャビネットに飾る事もできる。

評価点

  • 温かく、ちょっぴりリアルな絵本風のグラフィックは、原画の魅力をほぼそのまま写した見事な出来栄え。
    • 一枚絵の背景も島の住人も細かくよく動くし、多関節アニメの大型キャラも登場する。表情のあるキャラは豊かに顔を作り、そうでないキャラは多彩な仕草と音(声)で感情を表現する。
    • 風や水といった環境音を中心とする音の演出からも、神秘的で穏やかな世界観がひしひしと伝わってくる。
    • 島は10階層分近く高低差のある地形をしていて、海が近い下層、草がおいしげる中層、岩のごつごつした上層といった景色のバリエーションが豊富。
  • OPデモのアニメムービーや、ゲーム途中で挿入されるムービー(人形アニメーション)の出来が良い。
    • ゲーム中は環境音が多いが、OP・EDやムービー中にかかる曲はメロディアスな名曲。
  • 「失われた記憶の中に眠る真実」と「名前」をからめたストーリーの内容は深く切なく、大人の鑑賞にも耐えうる。というか、大人にこそ是非お勧めしたい。
+ 物語の核心部のネタバレ

上空の浮島でサナギから孵ったばかりの竜人は1人ぼっちだったが、本当はそこにもう1人、黒い翼を持つ小さな友達がいた。

前身年で仲良しだった竜人と友達は、生まれ変わってもまた友達になろうと約束し、同じ場所で一緒に前身年を終えてサナギになった。
しかし、ちょっとした事故があって友達はサナギから元の状態に戻ってしまう。
それでも友達は、雨の日も風の日も竜人のサナギに寄り添っていた。

だが、ある日大粒の雹が頭にぶつかり、友達は自分の名前を忘れてしまう。
名付け親は竜人。竜人が前身年の記憶を失っても、また友達になれるように…という願いが込められた名前だった。

この島では、誰からも名前を知られない者は「忘れ去られた者」となる。
後身年に生まれ変わる事ができず、自分自身の名前もわからず、そしてたった1人の大好きな竜人からも忘れられた…
黒い翼を持つ小さな友達は、「忘れ去られた者」となってしまった。
竜人は島の風使いとして、また黒い翼の子の友達として、ずっと忘れてしまっていた大切な事を思い出さなければならない。それがこの物語のクライマックスである。

  • 本作のストーリーの根底には、前身年から後身年への生まれ変わりに象徴される、自然の摂理としての「忘却」がある。
    これと対比する形で描かれる「あなたがつくる新しい物語」が、「七ツ風の島物語」である。

問題点

  • 操作感覚が重い
    • 主人公の移動スピードがノロい、友達の入れ換えがダルい、画面の切り替えもトロい。
      • のんびりとした絵本風世界において丁度いいゲームスピードとは、一般的な感覚でいうと相当遅めなので、気の短い人はプレイに耐えられないだろう。
  • シナリオは一本道であり、章ごとに作られる絵本の内容も細部のマイナーチェンジ以外は大きく変化しない。ちょっとしたガッカリ要素である。
  • 島の住人たちは基本フレンドリーだが、とてもマイペース。
    • 会いたい時にいつでも会えるとは限らないこざっぱりした付き合いが中心になるけども、そういうものと割り切ろう。
  • 入手の機会や時期が限定されているコレクションアイテムがあり、取りこぼすとコンプリートできなくなる。
    • クリア後は無制限・無目的に島を動き回れるようになる仕様だがこういった限定品は取り返せないため、気にする人はストーリー進行中も要注意。

総評

本作の半分は「優しさ」でできている。
誰かのために何かをしてあげて、そのお礼に気持ちのこもったプレゼントをもらう。このやり取りの繰り返しで進んでいく物語は、TVゲームでイベントをこなす事をいつしか「攻略上の損得」で勘定するようになってしまった擦れた心に、じんわりと染み渡る。
グラフィックやBGMの出来も素晴らしく、クリアにがっつかない箱庭ゲームとしての完成度が高い。またストーリーについては、このゲームの空気やテンポに波長が合う人なら感涙保証である。
かなり人を選ぶほどスローテンポなバランスではあるが、仕事に一切の手抜きが見られない渾身の力作。


余談

  • とにかく知名度の低い本作は、強いて言うならば「セールスが振るわなかった事」で知られている。理由はいろいろあるものと思われるが、可能性として考えられるのは「需要(ハードの客層)と供給(作品の方向性)の不一致」あたりか。
    • 更に言えば、人気作DQ・FFを両方ともプレイステーションに取られてシェア争いで水をあけられつつあったサターンユーザー間では、サターンにも有名作品を出して欲しいという願いが非常に強かった。そんな中で「ついにエニックスがサターンに参入」となれば期待するのは当然、新作か旧作リメイクか外伝かはともかくDQ関連作品であったが、そこで発表されたのが当作だったので、コレジャナイという落胆も非常に大きかった。
  • 本作を制作したギブロは多関節キャラクターの表現力に優れた制作集団だったが、この作品を発売後に倒産している。そのため移植も絶望的というのが悔やまれる。
  • なおこの作品で創作された一部のネタは雨宮監督の特撮ヒーロー作品「牙狼」シリーズにおいてセルフパロディ的な形で使用されている。
最終更新:2020年02月01日 01:08