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ノスタルジア1907
【のすたるじあ ないんてぃーんぜろせぶん】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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PC-9800、X68000 FM TOWNS、メガCD
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発売・開発元
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シュールド・ウェーブ(タケル)
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発売日
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【MCD】1991年12月14日
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定価
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【MCD】7,200円
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判定
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なし
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あらすじ
1907年、北大西洋上を行く豪華客船「ノスタルジア」号において、爆弾によるハイジャックが発生。それと同時に犯人による「『ロシアの霧』を探しだせ」との声明文が発見される。
爆弾が日本製であった事から、容疑者とされた乗客唯一の日本人ヤマダカスケは、自らの無実を証明するため、犯人を、そして『ロシアの霧』を見つけるべく奔走する。
特徴・評価点
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グラフィックは全編セピアの色調で統一されているのが特徴。
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シナリオは「探偵もの」だが、ストーリーの背景にはタイトルどおりの1907年、20世紀初頭の日露戦争に日本が勝利した頃の当時の混迷した世界情勢を取り入れており、豪華客船という狭い場所で世界の覇権をめぐる権謀術数が繰り広げられていき、主人公カスケは一歩引いた視点からそれを解き明かしていく。
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登場人物は架空だが、音楽家のストラヴィンスキーや、ファッションデザイナーのココ・シャネル、心理学者のカール・グスタフ・ユングを模した人物が出てくる。このうちユングを模した「カール老」は、ストーリーの核心に関わる人物として登場する。
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また、テキストはシナリオライターの独特なセンスの塊。その感性に合った人にとっては名台詞の宝庫である。
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BGMは優しさと哀しさを併せ持ったまさに「ノスタルジア」の名に相応しい曲が揃っている。
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客船内のどこに行くかという選択肢はなく、メッセージを送ることで自動で物語が先に進んでいく。ACTION1~4の全4章構成。
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人物に取り調べを行う際には、言葉ではなく、「積極的」「消極的」「関心」「無関心」で構成された話すときの態度を、並んだ四角のうちから直感的に選んで進めていくという独特のシステム。ゲームが後半になるにつれ、取れる態度の数も増えていく。
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机を挟んで主人公と取調べ相手の二者が描かれたグラフィックが表示されるが、取った態度によってキャラの絵も変化する。またキャラが話している間はそのキャラのBGMが流れ、態度によって曲調も変化する。
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このシステムのチュートリアルがゲーム開始直後にインディアンポーカーという形で行われる。
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本作の大きな見所が「爆弾解体」。ニッパー、コード、ドライバーを使って、トラップの数多く仕掛けられた時限爆弾を無力化していくシーンが挿入される。
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無音で、カチカチと時計を刻む音とネジを回す音のみが響き、一つ手順を誤れば即爆発する恐怖の中での解体はなかなかに緊張感があり手に汗握る。一方、解体を行う人物は軽くジョークを飛ばしてくれるため、緊張一辺倒にならないほどよいバランスが保たれている。
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この爆弾解体が実は『鈴木爆発』の元になっていることは、本作の無名さもあってあまり知られていない。
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失敗した際にはバッドエンドになり、その際セーブデータも削除されるので、非常に手に汗握る。
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メガCD版では後述の通りセーブ機能がなくなったため、セーブデータの削除はなくなった。
賛否両論点
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操作キャラの口に出さない主観、内面を覗けるウィンドウがあるが、操作するのは主人公のカスケがほとんどであり、演出的にはあまり機能していない。
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ある1シーンで、作中最も謎めいた人物の意味深な言葉が見られる程度。ただし、口に出さない悪態は、言葉選びのセンスもあり見ていて痛快。
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一見大人っぽい雰囲気で、知的な大人の気分を楽しめるゲームではあるが、人によっては高慢で見下すようなテキストが鼻につくかも知れない。
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「犬」「猿」「馬鹿」「露助」「黄色人種は撃ち殺しても問題ない」的なセリフが何度も頻出する事はプレイ前に覚悟しておくべき。
問題点
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エンディングでのセーブデータ削除
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前述の通り、このおかげでバッドエンド回避には慎重になり、緊張感には一役買っているのだが、短期間でのリプレイには向かない。
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メガCD版ではセーブ機能が無く、好きな場面からゲームをスタートさせることができる。
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ただし、2章の爆弾解体以降のパートからゲームをスタートしてしまった場合には4章後半の爆弾解体で最後のコード選択がランダムになってしまう。
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一部を除き総当たりでクリアできてしまう
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取調べで先に進める正解の態度は一つしかないが、間違えてもゲームオーバーになることは無い。
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完全に一本道であるが、緊張感を保つためかバッドエンディングが2種類ある。どちらも後味の悪い展開なので注意。
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メガCD版はキャラの台詞が声付きだが、その演技は結構お粗末。また、カスケの口調はルパン三世の安っぽい物真似。
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その煽りを受けてBGMは非常に音質が悪く、音も小さめ。その代わり、メガCD版はライナーノーツ付きのアレンジサウンドトラックが付属していた。
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北海道のテレビ・ラジオのローカル番組やCMでナレーションの仕事をしている人が声を担当している。広い意味での「声優」だが、仕事の種類としては似て非なるもので、不慣れだったのかもしれない。
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X68000版はコピープロテクトが誤作動しやすい
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マスターのディスクを使っていてもなかなか起動しない事も多かった。
総評
全体のボリュームも2~3時間で済むほどのもので、ゲームとして遊べる部分も少ない。
しかし、一つの作品として見ると、シナリオ・グラフィック・デザイン・音楽・演出のどれをとっても極めて良質。「最高のAVG」と評する熱心なプレイヤーも僅かながら存在する。
ゲームではなく映画を見るようにしてその独特の雰囲気に浸って楽しむ作品としてなら、そのクオリティは保証されるが、その割には少々値段が割高であるとも言える。
余談
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アニメーション作家・映画監督の押井守氏は本作に非常に感銘を受けており、製作者の四井浩一氏にコンタクトを取りに来たというエピソードがある。
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残念ながら電話に応対した担当者が押井氏を知らなかったためにコンタクトをとることができなかったとのこと。
最終更新:2024年12月17日 07:32