鈴木爆発
【すずきばくはつ】
ジャンル
|
爆弾を解体するゲーム
|

|
対応機種
|
プレイステーション
|
発売元
|
エニックス
|
開発元
|
ソル
|
発売日
|
2000年7月6日
|
定価
|
5,800円
|
判定
|
バカゲー
|
ポイント
|
鈴木さん シュールな実写パートと緊張感のある解体パート 無駄に豪華な脇役陣
|
概要
主人公の「鈴木さん」の目の前にあらわれるさまざまな時限爆弾を解体していくゲーム。
エニックス(現・スクウェア・エニックス)がPS円熟期に発売した、いかにもプレステのゲームらしい奇妙なゲームであり、
同社が前年に出した『せがれいじり』とはまた別の方向性に振り切ったバカゲーである。
企画は『ストライダー飛竜』『ミラージュ 妖獣麻雀伝』『キャノンダンサー』を手がけた四井浩一氏。四井氏が過去に手がけた『ノスタルジア1907』の爆弾解体パートが元になっている。
特徴
ゲームは分岐のあるステージ制で、各ステージは「実写パート」と「解体パート」に分かれている。
実写パート
鈴木さんが爆弾に出会うまでの経緯が、実写の静止画を多数繋げた紙芝居形式の動画で説明される。
しかし、その説明というのが
-
宅配業者がみかんを差し出してきたと思ったら中は爆弾だった
-
「のどが渇いた」だけでわざわざサイパンに出向いてアイスコーヒーを注文。飲もうとしたら中が爆弾だった
-
春一番(アントニオ猪木のモノマネで知られる芸人)の公演を見に行ったら舞台上に車のエンジンが置いてあり、よく見たら爆弾だった。しかも解体ショーが始まった
といった不条理なものばかり。
この不条理な世界観とハウス&ラウンジミュージックで評価の高いFantastic Plastic Machineの音楽、リリー・フランキー、水木一郎、YOU、SHELLYなどの割と豪華ではあるが選考基準のよく分からない出演者が相乗効果となって、独特のシュールな雰囲気が醸し出されている。
登場する爆弾の種類も豊富で、「みかん」「エンジン」はまだしも、「アイスコーヒー」「海」「影」といったとても爆弾になるとは思えないものが登場したり、「こたつ」の中が宇宙空間になっている、「カワイ リカ」(ゲーム中の歌番組に登場するアイドル)が描かれた浮世絵が立方体として登場するなど、爆弾そのものが不条理であったりする。最終ステージでは鈴木さんと同じく、謎の理由で解体師となった「伊藤さん」を解体することになる。
+
|
... |
|
 爆弾「海」オープニング
|
 最後の爆弾「伊藤さん」
|
|
解体パート
-
ドライバー、ニッパー、スパナ、六角レンチ、セロハンテープなどの道具を駆使して、制限時間内に爆弾を解体していく。
-
使用できる道具は解体する爆弾によって大きく異なり、必要のない道具は表示されない。解体に道具が不要な爆弾もある。
-
解体を補助?する道具として虫眼鏡があり、時間はロスするが、爆弾の決まった箇所を調べて情報を得たり、爆弾魔が残したメッセージを読んだりできる。
-
一定の留め具を外すことで爆弾の外側が外れ、より内側の部分への解体に移るというギミックになっている爆弾も複数存在する。
-
爆弾にはさまざまなトラップが仕掛けられている。基本的に何らかのきっかけで起爆装置が作動してしまうもので、トラップが起爆装置に触れないようにねじを回したり、起爆装置が作動する前に仕掛けを解除したりといったアクション性が要求される場面も多い。特にネジの回す方向には間違えただけでゲームオーバーになる爆弾がある。
-
また、「緊急起爆装置」という仕掛けがあり、特定のねじやナットを回すと突如緊急タイマーが表示され、時間切れになる前にほかのねじを解除して素早く止めるといった要素もある。
-
必ずしも全ての仕掛けやネジ止めなどに意味がある訳ではなく、特に意味のないハズレや逆にトラップとなるものも一部だが混じっている。
評価点
-
爆弾解体の緊張感はそれなりにある。
-
前述のトラップや緊急起爆装置、制限時間間際のBGMなど、焦りを誘う演出は良くできている。
-
爆弾の最後には必ず、時限爆弾の定番要素である赤と青のコードを切らなければならない。これが「いかにも」爆弾を解体しているという印象を与えてくれる。もちろん、間違えたコードを切ると爆発してしまう。
-
爆弾を爆発させた時(ゲームオーバーになった時)に流れるムービーも極端に規模が大きかったりするので笑える要素ではある。
-
部屋が吹き飛ぶという控えめなものから、関東圏壊滅、
地球ごと爆発
、というレベルまでさまざま。
-
解体パートでは鈴木さんが事あるごとに喋り、その内容も相当にシュール。
-
「おう?」「わあー」といった一言から、「ちょっと待って、シャツ脱ぐ」と突然言い出したり、生々しい交友関係のグチをねちねち言ったり、脳内マージャンを始めたり、笑いっぱなしになったりとさまざま。
-
それぞれのステージには遊び心のある演出が多数含まれている。例えば「エンジン」ステージでは制限時間が残り40秒になるとアントニオ猪木引退時のスピーチが流れ出し、最後に「1、2、3、ダァー!!」で爆発するなど。
問題点
-
ボリュームがやや少ない
-
以上のように、ゲームのコンセプトや雰囲気は抜群なのだが、ゲームそのものの進行は単調であり、爆弾のトラップのバリエーションが少ないため飽きるのが早い。
-
ステージ数は19とやや少なく、1ステージあたりのプレイ時間は1~10分ほど。難易度による変更も制限時間の変動と緊急起爆スイッチの設置程度しかないため、ボリューム不足は否めない。
-
反射神経を要する複雑なトラップが連続する「エンジン」に対して、起爆装置への移動とコードを切るだけで終わる「携帯電話」「アイスコーヒー」があるなど、ステージごとの難易度に両極端なところがある。このほとんど解体しないステージが意外と多く、やはりボリューム不足感を出してしまっている。
-
解体率とステージ評価の両立が不可能
-
ステージクリア時に、ギミックを全体のどれだけ分解したかを示す「解体率」が表示されるが、分解先にメッセージしかないダミーのギミックまで解体率に含まれる。そのため、高難易度になると明らかに解体率100%が不可能なステージがでてくるため高ステージ評価を狙えない。
-
ただし、解体率やステージ評価は自己満足の数値なので、気にしなければそれまでだが。
-
説明不足なストーリー展開
-
間違ったルートやダミーのトラップを外すと、そこに爆弾魔と思しき人物からのメッセージが書かれていることがあり、鈴木さんへの偏執性が感じられるのだが、犯人の正体についてはゲーム中ではまったく触れられないし、解決されない。
-
何故爆弾が仕掛けられているか等も語られないので、釈然としないままゲームを進める事となる。
-
そもそも、最後の爆弾本体が顕微鏡レベルのミクロサイズであったり、起爆すると地球が破壊される(当然、犯人も死亡)爆弾があったりで、普通の人間が作成できるシロモノとは思えない。 犯人を設定した方がむしろ理不尽と思えてしまう世界観である。
-
作品の雰囲気と合わせてストーリー自体がそもそもきちんと設定されていないシュールギャグ的なものであるとも考えられる。
-
不親切なセーブ仕様
-
本作におけるステージ間でのセーブ・ロードの方法は、画面の奥から迫ってくる道路案内標識のうち、行き先が「SAVE/LOAD」と書かれた方を方向キーで選択するという仕様になっている。
-
最初は「直進が次ステージ、右がSAVE」と単純だが(方向キーを押さない場合は直進する)、そのうち「直進がSAVE」「三方向矢印のうち右だけSAVE」「左に降りて立体交差で右に曲がった先がSAVE」だの(この場合は左を押すとSAVE)混乱させる標識が次々出てくる。
-
コツをつかめば正解を選ぶのは難しくないが、標識の移動速度が速く、通過する直前で一時停止するなどの親切心は最初だけ。それ以外は一切ないので、油断するとどちらも選べずにセーブを失敗してしまうことがある。鈴木さん
「あっ…行っちゃった…」
-
ステージ間のセーブチャンスは一度だけなので、スルーしてしまうと次ステージをクリアするまでセーブできなくなってしまう。ゲームオーバー前提の難易度で、ステージのリトライ回数に制限はないが「海」などの高難易度ステージ直後にセーブを失敗していた場合、次ステージを諦めて保存終了しようとしても海からやり直しなので諦めるにも諦められないという、地味に辛い仕様となっている。
-
冗談半分の仕様なのは明らかであり、ネタとして見れば面白さもあるのだが、単純に不便であるため、人によっては苦々しく思う局面も出て来るだろう。
総評
程よい爆弾解体の緊張感、実写で紡がれるアホらしいプロットと悪ふざけとも思える不条理ギャグ、
鈴木さんを演じた緒沢凛のかわいらしさもあってコアなファンの多い作品だが、肝心のゲーム性はあまり奥深いものではない。
良くも悪くも「一発ネタ」のゲームだが、メーカーがはじめからバカゲーのつもりで作り、それがスベらずにプレイヤーに受け入れられた稀有な作品である。
余談
-
お笑いコンビ「極楽とんぼ」の加藤浩次はこのゲームがきっかけで緒沢凛のファンになり、後に結婚している。
-
なお、ソフトはよゐこの有野晋哉より借りた模様。(日本テレビ系情報番組「スッキリ」の2022年4月29日放送回より)
-
本作に同封されているアンケートハガキの質問の中に「爆弾発言してください」という項目がある。
-
本作自体に爆弾発言してくださいという質問内容でもなく、直接本作に関係ないものだが、アンケートハガキにまで「爆弾」というキーワードを入れるとは流石である。
-
本作のプロデューサーの安藤武博氏は本作や『ヘビーメタルサンダー』などの個性の尖ったゲームに携わった後、モバイルゲームの製作に活動の場を移してからは『ケイオスリングス』や『拡散性ミリオンアーサー』などのヒットタイトルを生み出している。
-
テレビ東京のゲーム番組『勇者ああああ』にて本作が紹介されたのだが、ゲーム番組では珍しく、実際のゲーム画像ではなく再現イラストが使用された。
-
恐らく俳優側の事情と思われる。番組自体はスクウェア・エニックスがスポンサーとなっている為、メーカー側の事情では無いだろう。
最終更新:2022年08月10日 22:48