本ページでは『Dishonored』と、そのHDリマスター版『Dishonored HD』について記載しています。 どちらも判定は「なし」です。
Dishonored
【でぃすおなーど】
ジャンル
一人称視点ステルスアクション
対応機種
プレイステーション3 Xbox 360 Windows
発売元
ベセスダ・ソフトワークス
開発元
Arkane Studios
発売日
2012年10月11日(日本)
定価
通常版 5,696円(税別) GOTY版/3,800円(税別)
レーティング
CERO:Z(18才以上のみ対象)
判定
なし
ポイント
練られた世界観 自由な攻略法 お約束のフリーズ 翻訳ミス多し
概要
ベセスダ・ソフトワークスから発売された一人称型ステルスアクションアドベンチャー。
開発を担当したArkane Studiosは『Arx Fatalis』や『Might&Magic』シリーズのスピンオフである『Dark Messiah of Might and Magic』といった作品を手掛けたフランスのデベロッパー。
2010年8月にベセスダの親会社であるZenimax Mediaに買収されており、ベセスダから発売するのは今回が初となる。
FPSとRPGの融合ジャンルの初期の名作として名高い『Deus Ex 』の主要開発者や、『Half-Life 2 』の舞台をデザインした開発者がチームを牽引した。
なお、「dishonored」という英単語には「汚名を着せられた」「(不名誉により)屈辱を与えられた」という意味がある。
ストーリー
王室護衛官コルヴォと女王ジェサミン・カルドウィン、王女エミリー・カルドウィンは謎の暗殺者集団による襲撃を受ける。
コルヴォは敵の超常能力により身動きを封じられ、王女が誘拐され、女王が殺害されるのを見ているしかなかった。
騒ぎを聞いて駆けつけた衛兵によりコルヴォは逮捕・投獄され、王室の陰にうごめく陰謀により女王暗殺の汚名を着せられた。
王政支持派の人々の助けにより脱獄したコルヴォは彼らと協力し、王女を救うことを誓う。
謎の人物「アウトサイダー」から超常能力を与えられ、様々なガジェットを身につけたコルヴォは仮面で顔と身分を隠し、ダンウォールを暗躍する。
ダンウォールに潜む数々の陰謀を暴き、己の名誉と王女を取り戻すべく、コルヴォは「復讐」に命を捧げるのであった。
特徴
一人称視点のステルスアクションゲーム
「一人称視点」といえば『DOOM 』や『Call of Duty 』といったFPSを思い浮かべるかもしれないが、本作は「ステルスアクション」を主眼としており、『メタルギアソリッド 』のように「敵に見つからずに隠れて進む」ことがメインになる。死角となる背後や左右からの接敵に注意を払いながら、アイテムや世界設定、美しい景色などを一人称視点で間近に体験し、ストーリーを追っていく。
一人称視点ゆえに死角からの敵の接近に細心の注意を払いたいところだが、「胴体が敵に見つかれば発見扱い」 となるため、曲がり角や窓から大胆に覗き込みをしても意外と発見されないので活用すべし。また、後述の「超常能力」を上手く使用することで不意の接敵を回避することもできる。
本作の舞台、架空都市ダンウォール
19世紀初から20世紀までのロンドンやエディンバラをモチーフとしており、「グリストル」「ティビア」「モーリー」「サーコノス」の4つの島からなる「諸島帝国」の首都。
ネズミによって蔓延した疫病が深刻な問題となっており、疫病で死んだ人間の遺体は袋に入れて路上に投げ捨てられていたり、狂暴化した疫病の感染者「ウィーパー」は人々に襲い掛かるという荒んだ状況。
そのネズミが非常に恐ろしく、人々に襲いかかり肉や骨を貪り食う、半ばモンスターのような存在として描かれている。
ウィーパーは健常者を発見すると即座に襲い掛かる「走るゾンビ」のようなもの。しかし人間には変わりないので殺すと殺害数に加算されてしまう。
政府は疫病を根絶すべく、街の至る所に衛兵や「光の壁」と呼ばれる電気ゲートを配置し、あらゆる手段を用いて感染者の隔離・排除に尽力している。
漁業と捕鯨の中心地であり、鯨油はあらゆるものの動力源として、街にとってなくてはならない資源という設定。
その鯨油を入れた「鯨油タンク」というアイテムが存在し、ゲーム中のあちこちに設置されている。停止したエレベーターを作動させたり、衝撃を与えて爆発させるなど、攻略に欠かせないものとなっている。
「アウトサイダー」と超常能力
謎の存在「アウトサイダー」は市民の前に現れて魔術(超常能力)を授け、その力を使う様を愉しんでいる。
一体何者なのか、目的は何なのか。その答えはゲーム内でも明かされていない。続編でも断片的に語られた程度である。
アウトサイダーから魔術を授けられたものは異端者・魔女と呼ばれ、畏怖の対象となっている。
暗殺とスタイリッシュの両立
本作は暗殺がメインではあるが、敵に発見されないように恐る恐る進むのではなく、瞬間移動などの超常能力(後述)を用いてスタイリッシュにゲームを進めることができる。
建物の屋根を渡り歩くもよし、廃墟となった家を通り抜けるもよし、衛兵の気を逸らしてその隙に走り抜けるもよし。はたまた高所から飛び降りて真下の敵を暗殺するもよし、物陰からクロスボウで狙撃するもよし。
それだけにとどまらずピストルやグレネードを構えて真っ向勝負を挑むもよし、敵を一切無視して駆け抜けるもよし。思いつくままにプレイすることができる。
チャプター毎に変わるステージ
各ステージで変化に富んでおり、また目標までの攻略ルートが豊富であり、高さを利用した立体的なマップ設計がなされている。繰り返しプレイすることで新たなルートが発見できる自由さがある。
刑務所、売春宿、富裕層のパーティー会場、荒廃した市街区、要塞などのステージが存在し、プレイヤーを飽きさせない緻密なデザインが施されている。
「ルーン」と「ボーンチャーム」
ステージの各所にはルーンとボーンチャームが配置されている。ルーンは超常能力の強化に必要なアイテム。ボーンチャームは装備する事で様々な効果が得られる、RPGで言う「アクセサリー」にあたる。
これらの在り処は「心臓」を装備する事で大凡の位置が判る。ただし、距離と方向しか判らないので簡単に手に入るとは限らない。
「カオスシステム」
「ハイカオス」「ローカオス」といった判定が存在し、プレイヤーが人物(敵・一般人問わず)を殺害するとカオス値が上昇する。この数値が上昇すると次のチャプターで街の荒廃が進み、ネズミやウィーパーが増えたり、衛兵の警備が強化される。
カオス値によって登場人物が非協力的になったり、裏切ったりすることもある。
カオス値によってエンディングにも変化が現れる。ローカオスなら希望のある未来が、ハイカオスなら絶望の未来が描かれる。
注意すべき点として、一度カオス値が上がると下げられない。
評価点
様々な攻略法
超常能力やガジェットを駆使して多種多様な攻略が可能。
瞬間移動「ブリンク」・透視能力「ダークビジョン」・動物に乗り移る「ポゼッション」・時の流れを遅くする「ベンドタイム」・風で吹き飛ばす「ウィンドブラスト」・ネズミの群れを召喚する「ラットスワーム」などの超常能力と、仕込み剣・ピストル・クロスボウ・グレネード・カミソリの刃を撒き散らす地雷 等のガジェットを駆使してゲームを進めていく。ゲーム開始時はブリンクしか所持していないが、アイテムを回収することで別の能力を取得したり、新しいガジェットを開発することができ、それらを組み合わせることでプレイの幅が広がる。以下はその例。
時間を遅くした状態でクロスボウを撃ち、敵を同時に倒す。
召喚したネズミにカミソリ地雷を載せ、敵のところまで走らせる。
瞬間移動で高所から落下している途中でネズミに乗り移り、無傷でやり過ごす。
特にブリンクは非常に有用な能力。移動できる距離の制限はあるものの、高所・遠方への移動や敵に見つかった際の緊急退避などに便利で、移動先を決定するまでは時間経過がスローになるため使い易い。
ブリンクだけでもゲームクリアは充分であり、実績/トロフィーにも「ブリンク以外の能力を取得せずにゲームをクリアする」という項目がある。
強化すれば移動距離も伸び、利便性が向上する他、思いがけないルートを発見出来たりする。
本作は高所に居るほど発見されにくいので、ブリンクで上手く高所を伝って行けるルートを探すのも面白い。電灯や柱の上と言った小さな足場にも乗れるので、正に人目を掻い潜って進む暗殺者の気分を味わえる。
+
こちらを見て頂くと理解が深まるだろう
VIDEO
音による陽動も可能であり、壁や床を剣で殴打すれば、敵は疑いながらこちらへ向かってくる。ステージ内に配置された空きビン等を投擲すれば、破裂音に気づいた敵がそちらへ移動するなど、敵の注意を逸らして不必要な戦闘を避けることもできる。鯨油タンクを投擲すると爆発し、一気に警戒状態になるので注意されたし。
上述した通り、攻略ルートは非常に豊富。一見、堅牢な守りでもよく観察すると抜け穴があったり、回り道で危険地帯が避けられたり、或いは正攻法が手っ取り早かったりと、実に様々なルートが用意されている。
ブリンクがあるので移動の自由度も極めて高い。例えば建造物に潜入する場合でも、敵の目を掻い潜って着実にターゲットを目指しても良し、外から即座にターゲットの部屋に乗り込んでも良し。 自分なりのルートを好きに編み出そう。
「暗殺」「復讐」を前面に押し出してはいるが、誰も殺害せずに進行する「不殺プレイ」も可能である。無論、誰も殺さずにクリアして獲得できるトロフィー/実績もある。
スリーパーホールドや麻酔弾で気絶させることにより無力化できる。また、各ミッションターゲットにおいても「炭鉱送りにする」「気絶している間に別の人物に拉致させる」「悪事を証言した音声を放送して衛兵に逮捕させる」など、命は奪わず「社会的に抹殺する」選択肢が必ず存在する。
よく練られた世界観
スチームパンク風で荒廃した汚らしい世界観がよく練られており、一人称視点で目の当たりにすることでゲームへの没入感が増す。
疫病に苦しむ市民と豪勢な生活を享受する富裕層という、身分格差によるコントラストが表現されている。市街区は極端に汚く不衛生であるが、上流階級の邸宅は豪華な装飾と料理、酒に囲まれた清潔な環境である。それでいて、ゲーム全体に澱んだ悲壮感が漂っており、雰囲気は完成されている。
鯨油技術はスチームパンク感を助長しており、電気ゲートや衛兵のライフル、「トールボーイ」と呼ばれる機械化兵などの存在に説得力を持たせている。
ゲーム中にメモや書物等の資料が豊富に置かれており、それらを読むことでこの世界観を深く味わうことができる。
王室の系譜やアウトサイダーの伝説、捕鯨の歴史など、世界設定を掘り下げるのに大変効果的である。
ガジェットの1つ「心臓」を装備して使用すると、現在地や近くにいるNPCの秘密を知る事ができる。これも詳細に設定されている。
問題点
フリーズが多い
ベセスダゲームのお約束として、やはりフリーズが多い。特に発売当初のPS3版においては頻繁にフリーズが発生した。
現在は修正パッチが配信されており、被害は軽減されている。また、HDリマスター版ではほとんど発生しない。
ゲームプレイの制限
ハイカオスクリアを目指したり、クリア結果に拘らない分には思い通りにプレイしても問題はないが、ローカオス・不殺クリアを目指す場合、敵を無力化する手段が限られており手間がかかる。スタイリッシュ感を強調されているだけに、なんとももどかしい。
特にミッションターゲットを無力化する際は、回り道や往復移動、サイドクエストの消化をしなくてはいけないため煩わしく感じてしまうことも。
加えて、殺害せずに無力化した敵を地面に寝かせておくと、ネズミがそれを食い荒らしてしまい、殺害数にカウントされてしまうといったシステム上のミスがある。これを防ぐため、倒した敵を必ず高いところに担いでいかなくてはならないのもまた面倒である。
一方、ターゲットを無力化する為に別の手段を講じるケースは多いとは言えない。
そういうイベントが用意されているのは全9ミッションのうち、半分以下の4ミッション。残りはターゲットがそもそもいなかったり、暗殺ではなく誘拐が目的だったりなどで選択肢自体が無かったり、あってもただ気絶させるだけなどで面白みの無いものばかり。
その反省か、DLCや次回作ではほとんどのミッションに致死、非致死で異なった展開が用意されており、非致死の手段も様々になっている。
翻訳ミスが多い
例えば「妊娠を守る」「倉庫の鍵needed(本来は倉庫の鍵が必要)」が挙げられる。また、資料の一部が英語のままの箇所もある。
本編のセリフの違和感は少ないのだが、NPC同士の会話などはいまいち噛み合わないものが珍しくない。
例・「今夜集まって酒とタバコでも楽しまないか?」→「確かにな。そうかもしれない」など。
総評
「一人称視点のステルスゲーム」で暗殺がメインテーマという癖の強いゲームではあるが、自分で武器や能力を組み合わせて解決していくリプレイ性の高いゲームデザインは非常に良く出来ており、緻密に作りこまれた陰鬱な世界観はゲームへの没入感を加速させる。現在ではGOTY版がお手軽に入手できるので、未プレイの方はぜひ遊んでみてほしい。
余談
CERO:Z (18歳以上のみ対象)なだけに暴力表現が激しめで、敵の手足や首が切断されたり、ネズミに食い荒らされた死体表現が生々しかったりするので苦手な方は注意。
日本語版は「1.首の切断面において、骨が露出する箇所のグラフィックを修正」「2.ネズミが人間を食いちぎるシーンにおいて、食いちぎられた体から内臓が露出する部分のグラフィックを修正」といった規制がなされているが、それでもキツめ。
なお、Win版は言うまでもないがCEROを通していないので無修正。ただし、公式の日本語ローカライズはされていないため、日本語でプレイしたい場合は有志による日本語化MODが必要。
本編の暗殺者集団のボス「ダウド」を主人公にしたDLC「The Knife of Dunwall」「The Brigmore Witches」が配信されており、本編とは違った視点からストーリーを追うことができる。また、ダウドはコルヴォとは違った能力やガジェットを持っており、新しいプレイスタイルを発見できる。
本編同様に暗殺がメインの内容ではあるが、こちらもターゲットを殺さずに排除するノーキルプレイが可能となっている。
単なる番外編ではなく、こちらでダウドと敵対した人物が次回作でも敵役になるなど、本編にも深く関係している。
今作のゲームデザイナーHarvey Smith氏は過去に『Deus Ex』のデザインも行っており、一人称視点やステルス要素などといった共通点がある。
GOTY版ではDLCと予約特典を完全収録しており、ガジェットや超常能力を駆使してクリアを目指すチャレンジ系の「Dunwall City Trials」と、上述の「The Knife of Dunwall」「The Brigmore Witches」に加え、予約特典でありボーナスアイテムを得られる「Void Walker's Arsenal」を楽しむことができる。
後に発売された本作と同じArkane Studiosが開発したFPS『DEATHLOOP』(PS5/XSX/Win)は、本作と世界観を共有していることが公式に明かされている(参照 )。
その後の展開
2016年12月8日には続編となる『Dishonored 2』がPS4/One/Winで発売された。
様々なガジェットを用いたプレイ、ターゲットを含めた敵の生殺与奪の自由、超常能力の駆使と基本的な要素が受け継がれた正統続編となる。
今作のローカオスエンドの15年後の物語であり、今作でも名前が出てきたサーコノス島を主な舞台としている。主人公は成長したエミリーと本作から続投のコルヴォの2人。その関係か、今作では台詞が無かったコルヴォも普通に喋るキャラになっている。
主人公はゲーム開始時に選択する。エミリーを選んだ場合は今作とは逆にコルヴォを、コルヴォを選んだ場合は今作同様にエミリーを助けるために戦うことになる。
さらにスピンオフ作品となる『Dishonored: Death of the Outsider』が2017年の9月15日に発売されている。『2』に登場するミーガン・フォスターことビリー・ラークを主人公にした『2』の後のエピソードであり、本作における「The Knife of Dunwall」「The Brigmore Witches」のようなもの。
本編では言及されなかった「アウトサイダー」の核心に迫る内容となっているが、『1』と『2』をプレイしていないとわからない部分もかなり多いため、両方をプレイしてから臨むことを推奨。
Dishonored HD
【でぃすおなーど えいちでぃー】
ジャンル
一人称視点ステルスアクション
対応機種
プレイステーション4 Xbox One Windows(Steam/Epic Games Store)
発売元
ベセスダ・ソフトワークス
開発元
Arkane Studios
発売日
2015年8月27日
定価
通常版 4,800円(税抜)
レーティング
CERO:Z(18才以上のみ対象)
判定
なし
概要(HD)
『Dishonored 2』とともに発表された本作のHDリマスター版。
DLC3種と予約特典だったボーナスアイテムパック「Void Walker's Arsenal」が収録された完全版となっている。
海外版・Win版は『Dishonored Definitive Edition』として発売・配信されている。
また、PS5/XSXの後方互換機能にも対応しており、最新世代機でもプレイ可能。
評価点(HD)
グラフィックの強化
1080pに対応し、特徴的なシェーディングはそのままに高解像度となったダンウォールを体験可能。ライティングや影の表現が強化され、オリジナル版とは違った印象を与える。
DLCと予約特典を完全収録
GOTY版と同じく、チャレンジDLCやサイドストーリー、ボーナスアイテムなどを1本で楽しむことができる。
問題点(HD)
フレームレートの向上なし
次世代機で発売されるにあたり、60fpsでの快適なゲームプレイが期待されていたが、Win版を除いてオリジナル版と同じ30fpsである。
ローディング時間
次世代機向けではあるが、ローディング時間がオリジナル版とさほど変化なく、次世代機の恩恵を受けているとは言い難い。
後方互換機能のあるPS5版についても上記の2点は同様であるが、XSX版では「FPS Boost」機能をオンにすることで60fps・高速ローディングでのゲームプレイが可能となる。
総評(HD)
性能が大幅に向上したPS4/Oneで前世代機の作品をリリースするにあたり、多くの作品がグラフィックの強化やフレームレートの向上を盛り込んでおり、ユーザーからもそれを期待されるが、今作品はグラフィックの強化のみに留めている。
技術的制約か開発陣の意向かは不明だが、「次世代機で『Dishonored』をプレイできる」という事実には変わりないので、今からこのゲームを楽しみたい方はぜひ遊ばれたい。
最終更新:2025年01月31日 02:22