エストポリス伝記
【えすとぽりすでんき】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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8MbitROMカートリッジ
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発売元
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タイトー
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開発元
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ネバーランドカンパニー
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発売日
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1993年6月25日
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書換
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ニンテンドウパワー 1997年12月1日/1,000円/F×2・B×4
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判定
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なし
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ポイント
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シリーズ1作目としてまずまずの滑り出し ストーリーと音楽は次作にも劣らぬ良好な出来 独自システムはあるが、戦闘関連を中心にやや旧時代的 エンカウントの高さとおつかい要素が難点
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エストポリス伝記シリーズリンク
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概要
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『エストポリス伝記』シリーズの1作目。当初3部作として予定されていたシリーズの礎となった作品である。
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後に本シリーズ含め多くの良作を手掛ける、ネバーランドカンパニーの初作でもある。
ストーリー
その空中に浮かぶ島と、「恐怖」「破壊」「混乱」「殺りく」を司る4人の神は突如として現れた。
人々はそれら神々を「四狂神」と呼び武力で抵抗したが、絶対的な強さを誇る神に敵うことはなかった。
最後に希望を託されたのはマキシム、セレナ、アーティ、ガイの4人の戦士。
彼らの戦いの末に神々は倒され、空中に浮かぶ島・虚空島も落下して水没した。
後に、「虚空島戦役」と呼ばれる戦いである。
それから99年、世界は平和に包まれていた。
マキシムの子孫である主人公が所属する騎士団にも弛んだ雰囲気が漂っていたが、それは滅多なことで戦いのない生活の証でもあった。
そんな中、シェラン王国にモンスターが現れたことを聞いた主人公は、心配になってついてきた幼馴染のルフィアと共にシェランへ向かう。
そこに現れたのは、戦役で死んだはずの「破壊」を司る四狂神・ガデスであった。
特徴
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『ドラクエ』式のコマンド戦闘。
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攻撃者やダメージ量が文章でなくエフェクトで表される点は『メガテン』や『FF』に近いが、それ以外はほぼドラクエ型である。
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一方、画面手前には味方キャラクターが2×2列に並ぶ形で表示されており、味方側の戦闘モーションも見ることができる。
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クリティカルが出た際は、「てごたえあり!」(攻撃時)「やりやがったな!(やったわね!)」(被攻撃時)と表示される。
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本シリーズでは攻撃、魔法、アイテムといった行動選択が縦や横に並んでいるのではなく、十字キー+決定ボタンの組み合わせで行動を選択する。
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上+決定で魔法、左+決定でアイテム、右+決定で防御、下+決定で逃走、ニュートラルに決定ボタンで通常攻撃となっており、僅かながらテンポ改善に役立っている。
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もっとも、それ以降の「どのアイテムや魔法を使うか」を選択する部分は、一般的なRPGと同様に表形式で並んだ一覧から選択する形式だが。
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魔法の選択画面では、魔法の消費MPのほか「現在のMPでその魔法が何回使えるか」も表示される。
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物陰や「いかにも何かありそうな場所」を調べるとアイテムが手に入ることがある。
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その場所は、主人公が進むことができないようになっている。透明な宝箱が置いてあると考えると分かりやすいか。
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アイテムの取得率はある場所で教えてもらうことができ、これがやりこみ要素にもなっている。
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次作以降と異なり、雑魚戦は常にランダムエンカウントである。
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全編に渡るランダムエンカウントが本作限りとなった理由は、おそらく後述の問題点絡みだろう。
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今まで売ってしまったアイテムを販売している街、「質流れ島」が存在する。
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誤ってレアアイテムを売ってしまってもここで買い戻せる、単純ながら画期的なシステムである。
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アイテムを整理する際にどれがレアか分からなくなっても、無くなることはないので安心して「とりあえず売る」選択ができる。
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『2』の大きなやりこみ要素である「いにしえの洞窟」は本作の時点で登場しているが、仕様は異なる。
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基本的には単なる脇道ダンジョンで、それなりに良いアイテムが落ちているほか、特定のアイテムを見つけてくると報酬が貰える。
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主人公のレベルが5上がるごとに、進める階層が増えるようになっている。
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クリア後には、取得経験値とお金が4倍になる「もういちど」モードを遊ぶことができる。
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本作には多くはないが脇道や取り返しのつかない要素もあるので、それを補完する際やイベントを見直す際には役に立つだろう。
評価点
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インターフェースは他のRPGの模倣と独自システムの両方で工夫しており、システム上の面でイライラを感じさせる点は少ない。
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『ドラクエ』におけるルーラやリレミトにあたる移動の煩雑さを避ける魔法なども揃っている。
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ショップでのまとめ買いやソート機能、前述の質流れ島によるアイテム消失防止などアイテム関連でも工夫は見られる。
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全体で見れば秀逸とまではいかないが、ストーリーは本作の光る部分である。
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「過去の英雄たちのラストバトルがオープニング」という衝撃的な展開は、当時のプレイヤー達の度肝を抜いた。これはオートイベントではなく、Lv80近い英雄マキシムたちを操って実際に四狂神たちと戦う必要があったのである。
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パーティキャラは入れ替わりが無く人数が少ない分、個々のキャラはそこそこ立っており印象的なシーンも複数ある。
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特に、主人公とヒロイン・ルフィアについては序盤から幼馴染かつ両想いな関係が描かれ、優しくルフィアを心配する主人公と、時には嫉妬もしながら強気な性格で主人公にべったり付いていくルフィアとの恋愛要素が物語のファクターになっている。
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当時、こういった明確なヒロイン要素を出したRPG作品はそれほど多くはなく、次作以降にもその影響が感じられる。
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サブキャラクターは多くが使い捨て的で深いエピソードは少ないが、続編『2』と合わせると感慨深い内容も散りばめられている。
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終盤~エンディングの流れは演出も含めて評価は高く、ラストシーンは特に印象的。
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『2』では展開の都合上ラスボスの意外性は非常に薄かったが、本作はそういうこともなくいかにも最終決戦といった感じである。
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BGMの評価は高い。
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『2』には評価でやや負けがちとは言え、戦闘曲・イベント曲ともに質は高く、外すことのできない良曲が揃っている。
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決戦の地である虚空島のテーマ、「最終決戦」は後にシリーズ伝統となる曲で、その壮大さは折り紙付き。
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前述の終盤イベントの評価も、BGM演出がさらにそれを高めている。『2』と異なり、ラスボス戦用の曲も用意されている。
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会話のテンポが早く、メリハリがある。
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プレイヤー同士の会話において、会話のスピードが他作品のRPGと比べても早い。また子どもや老人などそれぞれの登場人物に合わせて音の高さを設定したり大きくしていることで、生き生きとさせた会話になっている。
賛否両論点
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独自システムも見られる本作ではあるものの、戦闘関連で目立ったものは殆どなく、本当に「普通のドラクエ系戦闘」である。
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特技や必殺技の類が一切なく、攻撃手段は通常攻撃と魔法を除くと一部のアイテムぐらいしかない。
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そのため、特にアグロスのような物理攻撃キャラはただ殴るだけの単調な役割に終始しがち。
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発売時期を考えれば仕方のない面もあるのだが、おつかい要素も合わせて「古い時代のRPG」を引きずっている観はある。
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この辺りはある程度好みの問題なので、普通のドラクエ系戦闘で何の問題もないと思って遊べるのなら関係はないのだが。
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仲間の一人であるジュリナが覚える魔法、「ミラール」の使い勝手が良すぎる。
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掛けた味方に対する相手の魔法を反射する、『ドラクエ』のマホカンタ、『メガテン』のマカラカーン、『FF』のリフレクのような魔法なのだが、その強さは効果の汎用性にある。
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効果時間中は魔法系の攻撃全てを何度でも反射可能で、味方の回復・補助魔法は反射されず、魔法扱いでさえあればステータス異常攻撃なども防げる。消費MPはたったの3。
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本作では全体攻撃はほぼ魔法攻撃に分類されているため、これを張っていれば単体物理攻撃しか通らなくなると考えて問題はない。
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単体にしか掛けられず、持続時間も3~6ターン程度ではあるが、アグロス以外のキャラは全員回復魔法を使えるので、ジュリナをミラール専門にさせることは容易。
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雑魚戦では素直に攻撃したほうが早いし、覚えるのは後半も近づいた頃、物理系の敵には全く意味がないことといった欠点もあるが、ミラールひとつで雑魚同然になってしまうボスも複数存在する。
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象徴的なのがラスボスの連戦で、物理偏重のガデス以外は全て常時ミラールで苦戦せず片付いてしまう。
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補助魔法ということもあり、どちらかと言えば「使ってみて初めて強さがわかる」タイプの魔法なので、その強さに気づかずクリアしてしまった人もそれなりに多くいるとは思われる。
問題点
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ストーリーに、いわゆる「おつかいイベント」が多め。
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「誰かを連れてくる」「誰かに会ってくる」「何かを持ってくる」系のイベントが半分以上を占めている。
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特に中盤は、3つのサファイアを赤・青・緑の塔に嵌めに行くイベントや、壊れた橋を建築家のところに行って直させるイベントなど面倒なものが多い。
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橋を直してもらうイベントを例にとれば、橋が壊れているから建築家のところに行くと「相方を呼んで来い」と行ったことも無い離れた町から連れて来させ、連れてくると「状態を見てこい」と橋のところに行かせ、ようやく橋で仕事を始めたかと思えば「見られていないと仕事ができない」と離れた高台に回り道して登らされるという有様。
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中盤の終わりにある、潜航艇を修理するために7つの「アルミナ」を集めるイベントが本当に面倒くさい。
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アルミナ1つ1つにつきダンジョンを攻略したりイベントをこなしたりしなければならず、終わるころには何のためにアルミナを集めていたのか忘れそうになる。
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長さを考慮してか、途中にストーリー上のイベントも挟まれはするのだが……
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若干ながら、インターフェース面での難点もある。
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いわゆるオートターゲットがなく、敵を倒すと同じ敵に攻撃した後続のキャラは何もない空間を攻撃してしまう。
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全体攻撃の際は1人1人に攻撃エフェクトが順番に出るため、やや冗長。
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BGMの曲数はそれほど多くはない。
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特にダンジョンは、大半が「洞窟系のダンジョンのBGM」「塔系のダンジョンのBGM」のどちらかで、お蔭でダンジョンの単調さが増してしまっている。
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エンカウント率がかなり高い。
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エンカウント率を下げる「せいすい」や、確実に逃げられる「スモークボール」といったアイテムが店売りしているのでフォローこそ可能な造りにはなっているが、これらを以ってしてもなおエンカウントが鬱陶しいと感じるほど本作のエンカウント率は高い。
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ダンジョンに枝分かれやスイッチ、ワープなどのうろうろ歩くことになる要素が多く、それ自体は問題ないがエンカウントは余計に多くなる。
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街や城などの敵の出ない場所以外では歩行速度がやや遅くなるため、進みがだらだらして感じられる点も鬱陶しさを助長している。
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ストーリー、システムともに大きな問題はないだけに、本作の欠点として真っ先に挙げられることも多い。
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バグがある。有名なバグとして、オープニングでマキシム達過去の英雄が装備していた武具やアイテムを、本編に持ち越せてしまうというものがある。
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本作では、マキシムが装備していた剣「デュアルブレード」を主人公が受け継ぐことになるが、このバグを用いればそれ以外にも強力な武具を受け継げてしまう。
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ただ、このバグに関しては意図的に装備をあらかた外すことが必要なため、どちらかと言えば裏技的な扱いである。
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通常プレイでも遭遇しやすいのは、アイテム「ムラサキトカゲ」を取ってくるイベントをスルーできてしまうものだろう。取らなくても、渡す人物に話しかけると先に進んでしまう。
総評
際立った独自性は見つけづらく、見過ごせない難点もあるが、総合的に言えば当時のRPGとしてはまあまあの出来といえる。
本作の一部システムは続編『2』でオリジナリティとして昇華されており、シリーズの礎となったと評価できる。
今でも評価されているのは専らストーリー部であり、おつかい要素は多いが次作の特徴であるキャラクター性や伏線のある話づくりは本作から見られる。
特に終盤の展開は感動が心に残っているプレイヤーも多く、「エンディングだけなら『1』派」という声も割と聞かれる。
「『エストポリス』と言えば『2』」という風潮も見られつつあるが、この『1』も魅力ある作品であり、是非合わせて楽しみたいところである。
余談
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海外版の本シリーズのタイトルは『Lufia』(ルフィア)であり、本作のヒロインの名前が使われている。
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このタイトルの意味は、本作を遊んだ人であれば理解できるはずである。
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なお海外版は『Teknocrest』という海外デベロッパーによってGenesis移植版が計画されていたが開発中止に終わっている。(参考リンク)
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2009年には携帯電話アプリとして移植。
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ゲーム内容そのものはSFC版と変わらないが、公式サイト等ではリニューアルされたイメージイラストが公開されていた(参考)。
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チラシでは3月発売であったが、後に6月25日に延期された。
最終更新:2025年03月29日 19:00