ALIEN: ISOLATION
【えいりあん あいそれーしょん】
ジャンル
|
SFサバイバルホラー
|
|
|
対応機種
|
プレイステーション4 Xbox One
|
発売元
|
セガゲームス
|
開発元
|
The Creative Assembly Ltd.
|
発売日
|
2015年6月11日
|
定価
|
パッケージ版:7,990円 ダウンロード版:【PS4】7,990円/【One】7,980円
|
レーティング
|
CERO:Z(18才以上対象)
|
判定
|
なし
|
ポイント
|
良くも悪くもファンアイテム ホラー>アクション
|
概要
1979年に公開された映画『エイリアン』の世界観を受け継いだ、FPS視点のSFサバイバルホラー。
時系列的には、映画の『1』と『2』の中間に当たる。
ゲーム内のギミックは細部に至るまで"原作再現"を徹底しており、ファン垂涎とも言える程に拘っている。
今作の開発を担当したThe Creative Assemblyは、RTSでは有名な『Total War』シリーズを手掛けたことで知られるセガ傘下のデベロッパーだが、本作のような「1人称視点で展開するSFサバイバルホラー」を開発するのはこれが初である。
ストーリー
ノストロモ号事件から15年の月日が流れた。
しかし、消息を絶ったままだった船のフライトレコーダーが発見され、セヴァストポリ宇宙ステーションで回収されたというニュースが入る。
エレン・リプリーの娘、アマンダ・リプリーは未だ行方不明になったままの母の消息を求め、クルー達と宇宙ステーションへ向かう。
しかしそこは、エイリアンに蹂躙された地獄と化していた……。
特徴・評価点
アマンダ・リプリー
-
主人公であるアマンダはエンジニアであり、船に落ちているパーツを集める事でアイテムを作成出来る。
-
体力を回復する『メディキット』、一定範囲の視界を奪う『スモーク爆弾』、アンドロイドの動きを一時的に止める『EMP爆弾』など7種類。
-
集めた部品や作ったアイテムの所持数には限界がある上、拾える部品の数も限られているので、計画的に使う必要がある。一部アイテムは新しい設計図を手に入れる事で強化が可能。
-
ストーリーを進める毎に武器が入手可能で、マルチレンチから始まり、リボルバー、火炎放射器などパワーアップしていく。アイテムと合わせて適宜使いこなし、先に進まなければならない。勿論、手に入る弾薬や燃料にも限りがある。
-
エイリアンに侵略された宇宙ステーションという密閉空間が舞台という事で、限りある資源を効率良く活用しなければならない点は、初期のバイオハザードに通じるものがある。
-
また、武器としても使えるマルチレンチやバーナーなどを使う事で特定のロックされたドアを開ける事が可能になる。
-
ストーリー序盤で手に入るアクセスチューナーを使う事で、船内のコンピューターにハッキングし、ロックされたドアを開けたり出来る。その際にはミニゲームが挿入され、クリアする事でアクセスが可能となる。
-
ミニゲームにも幾つか種類があるが、どれも落ち着いてやれば素早くクリア出来る。逆に言えば、冷静にならないと小さなミスを繰り返してゲームオーバーの羽目になる(後述)。
エイリアン
-
映画『エイリアン』で人類の天敵として登場した最強の生命体であるエイリアンは、H.R.ギーガーのデザインの意匠を高いレベルで受け継ぎ、モデリングされている。CGの無かった'79年当時では見る事の出来なかった、狭い宇宙船内を縦横無尽に駆け回るエイリアンを再現。ファンの度肝を抜いた。
-
静かな船内でドスッドスッと足音を響かせながら奇声を発して走り迫るエイリアンは、たった一体しかいないにもかかわらず圧倒的な恐怖感を演出している。
-
そして、エイリアンに捕まる=即死を意味する為(振り切る手段は一切存在しない)、まさに命がけの隠れんぼをしなければならないのである。
-
そして一番恐ろしい事には、エイリアンに対しては一切の武器が通用しない。火炎瓶を使っても、物語終盤で手に入る最強武器でも、怯む事さえしない。
-
唯一火炎放射器を一定量放射する事でのみ一時的に撃退出来る。アイテムに関しても、精々がスモーク爆弾を自分の周囲で爆発させて見つからないように運に任せる他無い。
-
ただし何度か使用すると学習をし、火炎放射器でも撃退が不可能になる(後述)。
-
この点が他のサバイバルホラーゲームと一線を画している点である。大抵のサバイバルゲームにおいては、武器を使って敵を倒す、若しくは一切武器を使えなくとも隠れたり走り切ったり時間経過だったりで振り切る事が可能である事が多い。が、本作は前述した火炎放射器以外にエイリアンから生き延びる術が無いという、絶対的な恐怖を演出しているのである。
-
開発陣が最も苦心したと語る、エイリアンのAIプログラムも秀逸。特定のイベント以外では殆ど決まった行動を取らず、コンティニューしてセーブポイントから始めて同じ行動を取ったとしても、エイリアンが同じ場所にいて同じ行動を取るとは限らない。長時間同じ場所をウロウロする事もあれば、換気ダクトにさっさと退散して別の場所へと動き回る事もある。
-
うっかり見過ごす事もあるが、天井の換気ダクトからエイリアンの唾液が滴り落ちている場合がある。真下を通れば即死亡。
-
プレイヤー自身も換気ダクトに入る事が出来る。対アンドロイドや暴徒には有効な逃げ道だが、エイリアンはたまにダクトに侵入し、ダクト内でプレイヤーを発見する場合もある。勿論捕まれば即死。
-
聴覚が異常に鋭く、エイリアンが出現するチャプターで音の出る行動をすれば即座にエイリアンがその場所に駆けつける。
-
高難易度だと特に顕著で、フレアを放り投げても、レンチで壁を叩いても、銃や火炎放射器を撃っても、機械を操作してノイズを出してもすっ飛んでくる。
-
エイリアンが傍に居て机の下やロッカーに隠れている時にうっかり動体探知機を使ってしまえば即座にゲームオーバーである。
-
大きな音を伴う「走る」という行動を取って逃げようものなら一瞬にして距離を詰めてくるので、ステーションの中は慎重に行こう。
-
しかしこの習性を利用して、ノイズメーカーやフレアを使う事でエイリアンに
暴徒達を殺戮して
障害を排除してもらう事も可能。リプリーのキル数にはカウントされないので、トロフィー「ノーキルクリア」を目指すには重要なテクニックとなる。
-
またAIの特徴として学習能力がある。主にプレイヤーの攻撃手段に対して用いられる。
-
例えば、初期であれば火炎放射器で撃退することが可能だが、何度か使用することで「火炎=脅威ではない」ということを学習し、火炎放射器を当てても問答無用で襲い掛かるようになる。
-
慣れない内は何度となくゲームオーバーになるが、エイリアンに殺されるデモシーンはレパートリー豊富。背中から尻尾で貫かれたり、引き倒されて上下逆さ・押し倒されて真正面から食い殺されたり、ダクトに引きずり込まれたりetc…。
-
ちなみに上記のハッキング中を含め、セーブポイントやコンピューターなどのガジェットを操作している最中にも当たり前の様に襲われる為、囮を使うなどして或る程度安全を確保してから落ち着いて行動しなければならない。
-
とにかく作中全編に渡って圧倒的な存在感を放ち、映画と同様、「あくまでも主役はコイツなんだ」という威圧感と恐怖感を与えるキャラクターである。
-
物語途中からは、エイリアンの卵やフェイス・ハガーも登場。ハガーに捕まれば即s(以下略)
その他の脅威
武器で倒せるのは、下記のアンドロイドと人間達だけである。
-
アンドロイド
-
人工皮膚の代わりにシリコンの皮膚をまとった、一目見てそれと分かるアンドロイド。とある事を切っ掛けとして、ステーションの人間達に攻撃・殺戮を始める。
-
手に入る武器の殆どはアンドロイド戦の為にあると思っていい。適切なアイテムや武器を使って倒さないと、無駄弾を使ったりライフを浪費したりしてしまう。一部は人間に従順なアンドロイドもいてストーリーの進行に必要な存在となる。エイリアンはアンドロイドに一切の関心を示さないので、プレイヤーがどうにかしなければならない。
-
住民達
-
エイリアンやアンドロイド達に襲われたセヴァストポリの住民達は恐慌状態に陥り、限られた資源・物資を他人に奪われまいとアマンダを攻撃してくる。が、こうした住民の内何人かはリプリーに手を貸し、ステーションから脱出を試みる事で物語が進んで行く。
原作を意識して作り込まれた設定
-
本作を語る上で欠かせないのが、あくまで原作映画を意識して作られたゲームであるということ。
-
’79年当時から見たレトロ・フューチャーなSF映画であり、オープンリールの音声記憶媒体、ブラウン管ディスプレイのコンピュータ、スイッチを押して開く自動ドア、錆び付いた音を立てて開くダクトシャフト、大きなカードキーを差し込んで数秒待たなければならないセーブポイントなど、細部まで当時の映画の雰囲気を作り上げる事に拘っている。
-
結果として、「本当にあるかも知れない」とプレイヤーに意識させるような没入感の高い舞台を演出する事に成功している。
-
特にファンを歓喜させたのが、映画版でエイリアンの幼体を持ち帰った惑星と廃棄された宇宙人の宇宙船の中を散策するシーンである。アクションやホラー要素は殆ど無いパートであるが再現度は高く、「映画に登場したあのシーンで自由に動き回れる」という、正にファンの為のパートと言ってよいだろう。
-
更には、原作の『エイリアン』をベースにしたミッションをクリアするモード『搭乗員は放棄してよし』『最後の生存者』を収録。何と映画版のキャストが次世代機のCGで蘇り、映画の後半部分を追体験出来る。しかもそれぞれのボイスアクターにも、当時出演したキャストを起用している。
-
その他、宇宙ステーション内に残された職員のIDカードやログ、メッセージの収集がやり込み要素となっている。
-
中でも難易度"Nightmare"のレベルがかなりのものに引き上げられている。
-
ステーションではパーツもアイテムも弾薬も、滅多に手に入らない。アンドロイドやエイリアンの視界に僅かでも入ればすぐさま向かってくるといった、ほぼ「見つかったら終わり」という域にまで達している。
問題点
グラフィック
-
人物のグラフィックは良く出来ている。背景も酷いというわけではないが、同時期の作品と比べると次世代機でやるにしては船内の質感が扁平な印象を受ける。
-
完成度の高いエイリアンのモデリングであるが、間近でじっくり見る事が出来ないのが残念である。唯一と言える機会は、エイリアンからの逃走中にロッカーに逃げ込んでエイリアンがロッカーを怪しんでいる時だが、この時は息を殺して身をひそめるアクションを維持しなければならないので、やはり落ち着いて見ようという気持ちになれない。
アイテム
-
他のサバイバルゲーム同様、或る程度慣れてしまえばパーツも弾薬もかなり余る。
-
特にノーキルクリアをしようとすると、必然的に爆弾や火炎瓶などの殺傷武器は殆ど役に立たない(アンドロイドに使えばそれなりの効果はある)。あとは音を出す囮に使うしか使い道が無いが、それならノイズメーカーやフレアで十分である。
ストーリー
-
一本道で、サブミッションなども無し。マルチエンドすら無い上にエンディングはかなりアッサリしており、唐突に終わる印象はある。もう一捻りして欲しかったところ。
-
但し、ストーリー自体は綺麗にしっかり終わっているのが救い。
-
アマンダがどうなるかは映画の『2』で明言されているので、IFストーリーを作れないという理由もあるだろうが…。
+ |
映画版『2』のネタバレ
|
-
『エイリアン2 特別編(’86)』にて。前作ラストでノストロモ号から脱出したエレン・リプリーは装置のアクシデントで超長期間のハイパースリープに入ってしまい、57年も宇宙空間を漂流し、偶然ウェイランド・ユタニ社の宇宙船に回収された。57年ぶりに目覚めたリプリーはそこで、娘のアマンダは既に老衰で死亡していると説明を受ける。
-
同作でエイリアンの襲撃から生き延びた少女・ニュートに見せる強烈な母性への布石となるシーンである。が、何故か通常版ではカットされている。
|
-
また、世界観を壊さないゲームデザインの性質上、メリハリがあまり無い。
-
基本的にはお使いゲーであり、終始「⚪︎⚪︎へ行け」「⚪︎⚪︎をしろ」という指示に従うしかない。
-
エイリアンという絶対的な存在が居る以上、所謂中ボス的キャラが存在しないのも単調さに拍車をかけている。
-
これといって隠された謎や二転三転するストーリーも無いが、ホラー要素に没入するには最適な環境であるとも言える。
その他
-
ローディングが少し長め。サバイバルモードでは、下手をすると5分と保たずにエイリアンに殺されてしまう状況も珍しくないので、何度もゲームオーバーになると次第に面倒くささが先に立ってくる。
-
時にエイリアンが死角から唐突に現れてプレイヤーを発見し猛ダッシュしてくるので、割と本気で心臓に悪い。
-
勿論ホラーゲームとして十分な評価点であるには違い無いのだが。
-
良くも悪くもファンアイテムである為、「原作映画は良く知らない」というプレイヤーにとって、没入感という点ではそれ程ではないかも知れない。近年のSF系のゲームに慣れ親しんだプレイヤーからは、「何故こんな不便な仕様なんだ」という感想も出る事だろう。逆に、普段ゲームに触れない映画ファンは何度もゲームオーバーになると思われる為、もしかしたら途中で投げ出すかも知れない…。
総評
海外で50以上の賞を受賞した、正に映画ファンの為のゲームである。
加えてSFホラーというジャンル故、人によって合う合わないは出てくるだろう。アクション要素も多い方ではないので、爽快感を求めるゲームでもない。
だがホラーゲーム単体として見ればかなりのクオリティを誇っており、ゲームに慣れてくれば慣れてくる程ゲームオーバーの回数も減る為、エイリアンに襲われる際の恐怖は薄らぐ事が無い。というより、エイリアンの存在感が圧倒的で見飽きる事が無い。
骨太な本格ホラーをプレイしたいプレイヤーは試してみるのもよいだろう。
余談
-
本編に登場するキャラクターを使用できる『サバイバルモード』で様々なミッションをクリアし、YouTubeに投稿された動画からセガの公式がベストスコア賞やタイムアタック賞などを選ぶという催し物なども行われた。
-
海外ではWindows版も発売されているが、CS機と違いリテールパッケージ版が無く、残念なことにパブリッシャーがSEGAなので
原則日本からは購入できない「おま国」である。
-
しかし、回避策を使って正規に購入した者がかなりいたのか、少なからず需要があったことは否定できない。実際に有志による日本語化MODが作られたこともその証左とも言えよう。
最終更新:2021年02月23日 20:33