エターナルダークネス ─招かれた13人─
【えたーなるだーくねす まねかれたじゅうさんにん】
ジャンル
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サイコアドベンチャー
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対応機種
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ニンテンドーゲームキューブ
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メディア
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GC専用8cm光ディスク 1枚
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発売元
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任天堂
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開発元
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Silicon Knights
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発売日
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2002年10月25日
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定価
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6,800円(税別)
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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15ブロック使用
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判定
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良作
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ポイント
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GCでは珍しい本格ホラー クトゥルフ神話をモチーフにした世界観 正気度を測る「サニティシステム」
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ストーリー
2000年、ワシントン州の大学生アレックス・ロイヴァスは夜中に祖父が殺されたという知らせを受け、祖父の屋敷へと向かい、そこで祖父エドワードの惨殺死体を見てしまう。
数週間後、遅々として進まない警察の捜査に業を煮やしたアレックスは自らの手で館の探索を開始する。
その最中、屋敷の隠し部屋で~奇妙な本を発見する。
人間の骨と皮でつくられたその本は、強大な闇の存在「エンシャント」と人類との戦いを記録した「エターナル・ダークネスの書」だった……。
概要
『Legacy of Kain』シリーズの1作目である『Blood Omen:Legacy of Kain』や後に『メタルギアソリッド ザ・ツインスネークス』や『Too Human』を手掛けた、カナダのデベロッパーSilicon Knightsによる、「クトゥルフ神話」をモチーフに作られたサイコホラー・アクションアドベンチャーゲーム。
海外でのタイトルは『Eternal Darkness:Sanity's Requiem』だが、世界観設定はクトゥルフ神話そのままではなく本作独自のものになっている。
後述する正気度を測る「サニティシステム」も、クトゥルフ神話のテーブルトークRPGで使用されてい「SAN値システム」(正気度)が元になっている。
特徴
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子供向けゲームの多いGCでは珍しい正統派ホラーゲーム。
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『バイオハザード』と『ルイージマンション』を除けば、GCのほぼ唯一のホラーゲームと言えるだろう。
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当時CEROレーティングはまだなかったが、パッケージには「この作品には銃撃、暴力、出血などのショッキングなシーンが多く含まれております。」としっかり書かれている。
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実際、『バイオハザード』でもまず出てこないようなグロテスクシーンが本作には含まれている。オープニングで出てくる祖父の死体は特にインパクト大。
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ゲーム進行はチャプター形式になっており、基本的には「アレックスで屋敷を探索 → 他のキャラのチャプターを攻略 → 再び屋敷の中を探索…」を繰り返して進めていく。
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全12章で、さまざまな場所さまざまな時代で12人のキャラクターを操作して進めていくことになる。
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もともとはN64用に開発されていたタイトルだが、90%近くが完成した段階で任天堂とシリコンナイツとの協議により、N64版はキャンセルされ、作り直しの上でGC版がリリースされることになった。
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日本ではいまいち知名度が低いが、海外では「GCのベストアクションゲーム」など数多くの賞を受賞している。
システム
サニティシステム
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エンシャントの眷属たちの視線を浴びたり、正常な人間を殺害したりすると、プレイヤーの正気度が減少していく。
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サニティが低い状態ではプレイヤーはさまざまな「幻聴」「幻覚」に遭遇することになる。
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また、サニティがゼロの状態で敵の視線を浴びると、体力が減少していく。
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サニティは敵に「とどめを刺す」かアイテム、魔法等の手段で回復することができる。
エンシャントの選択
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今作には人類に敵対する強大な闇の存在「エンシャント」が4体登場する。
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ゲームの序盤では、そのうちの3体の中から1体、メインの悪役となるエンシャントを選択することになる。
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選んだエンシャントによってゲーム中に登場する敵キャラの種類が変化する。
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「力のチャターガ」を選んだ場合、再生能力を持ったゾンビが雑魚として登場。
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「無限のウーリアス」を選んだ場合、自爆能力を持ったゾンビになる。
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「狂気のゼロタース」を選んだ場合、頭部を破壊されても霊体の頭部で視線を浴びせてくるゾンビになる。
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その他の雑魚敵も選んだエンシャントによってタイプが変化する。
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エンシャントはそれぞれ敵対関係にあり、ゲーム中でも別々の主に仕える眷属たちの争いの場面に遭遇することもある。
スペル
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ゲーム中に「ルーン」というアイテムを集めると魔法が使えるようになる。
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ルーンは力を借りるエンシャントを示すルーンとその他の2つのルーンを組み合わせて作成する。
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ゲームを進めるとそれ以上の数のルーンを組み合わせてより強力な魔法を作ることができる。ただし、3種類1セットの基本は変わらず、空いてるスロットはすべてパルゴンのルーンで埋めることになる。
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基本的にはルーンの他にルーンの意味を示す「コーデックス」や魔法に必要なルーンを示す「スペルスクロール」を揃えることで魔法が使えるようになる。
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ただし、コーデックスやスペルスクロールがなくとも自力でルーンを組み合わせて魔法を作ることもできる。
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攻撃を無効化するシールドや敵にダメージを与えるフィールドを作りだす魔法など、主に戦闘に使用する魔法もあれば、見えないものを暴く「リビール・インビブル」や、障害となる魔法を解除する「ディスペル・マジック」など主に探索に用いる魔法もある。
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魔法の使用にはマジックポイントを消費する。マジックポイントは時間経過やアイテムで回復することができる。
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魔法の使用には詠唱時間が必要になり、ルーンが多い強力な魔法ほど詠唱時間が長くなる。また、魔法の詠唱中に動くと魔法は失敗してしまう。
戦闘
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Rトリガーで武器を構え、頭、胴体、腕などの部位を狙うことができる。
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正気度を下げる視線を出す頭部を先に破壊したり、両腕を破壊して無力化するなどの戦術をとることができる。
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キャラクターにはスタミナがあり、武器を連続で振ったり、走り続けたりすると、息切れして動きが遅くなってしまう。
評価点
凝った幻覚
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サニティが低下した際に発生する幻覚は多くの種類があり、場所やキャラクター独自のものもあり、演出も凝っている。
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画面が妙に傾いたり、天井から血が滴り落ちてくるといったような正統派のものから、ドッキリ系、さらにはプレイヤーの精神を直接狙ったようなメタネタまである。
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幻覚一部ネタバレ
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正統派
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画面が傾く。
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地面と天井が逆になる。
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天井から血が滴り落ちてくる。
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ドッキリ系
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回復魔法を使おうと思ったら突然上半身が爆裂して死ぬ。
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プレイヤーキャラクターの首が突然地面に落ちる。
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メタネタ
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扉をくぐると、敵に囲まれた状態で「コントローラ端子が刺さっていません」
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セーブ画面で「メモリーカードのデータを全て削除しています」
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幻聴も、突然悲鳴が響いたり、他に誰もいないはずなのに足音が聞こえたり…など、様々な趣向が凝らされている。
スペル
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スペルは全部で12種類だが、相手にダメージを与える壁を作り出す魔法や、敵を召喚する魔法などがあり幅広い。
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通常戦闘だけだとやや単調なゲームだが、詠唱に時間がかかる代わりに強力な効果を持つスペルの存在が一種のアクセントになっている。
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ルーンさえ持っていれば、その場ではまだ覚えないはずの魔法も自作できるため慣れれば強力な魔法を先に作ってしまうことも可能。
個性的なキャラクター
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古代ローマ帝国の兵士、カンボジアの踊り子、小太りな中年医師から、インディ・ジョーンズのような探検家までプレイヤーキャラクターの種類が幅広い。
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キャラクターごとにスタミナ、体力、MP、サニティに違いがあり、それぞれの個性になっている。
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背景設定も紀元前の遺跡、中世の教会、第一次大戦中の診療所など幅広い。
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キャラクターごとに使える武器やアイテムが大きく異なる。
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古い時代の章では、古代ローマの剣グラディウス、ヨーロッパの片刃剣スクラマサクス、インドの投擲武器チャクラム、インドの儀式用大曲剣ラムダオ、アラブの剣サイフなど妙にマニアックな武器が多い。
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近現代においてはフリントロックピストル、第一次大戦中のライフル、ショットガン、ダブルバレルショットガン、エレファントガン、グレネードランチャー付きアサルトライフルなど多彩な火器が登場する。こちらも微妙にチョイスがマニアック。
アドベンチャーの基本がしっかりしている
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アドベンチャーらしく謎解きやパズル要素が多いが、理不尽なものはほとんどなく、注意深くヒントを集め、少し考えればちゃんと解答にたどりつけるものになっている。
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パズルの内容も古代遺跡の仕掛けや金庫破りなどがあり多彩。
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登場する魔法のほぼ全てが戦闘と謎解き両方で使用できるので、謎解きにはプレイヤーの想像力も試される。
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例:武器を強化する「エンチャント・アイテム」は壊れたものを直すためにも使える、敵の防御魔法を剥がせる「ディスペル・マジック」は結界などの魔法の障害を排除するためにも使えるなど。
賛否両論点
プレイヤーキャラクターの末路
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クトゥルフ神話をモチーフにしているので仕方がないのだが、章の最後でプレイヤーキャラクターがあっさり死ぬことが多い。
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死なないまでも、たいていはトラウマが残ったり、狂気に走ったり、悲惨な結末になる。
銃が弱い
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というより近接武器が強すぎる。銃には弾数制限があり、リロードも必要なため使うメリットがあまりない。
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キャラクターによっては近接武器が使用できないこともあるが、近接武器と遠距離武器両方を持つキャラクターの場合、遠距離武器はほとんど使う必要がない。
問題点
ムービー
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もともとはN64で開発されていたゲームのためか一部、それも重要な場面のムービーは低解像度のものがそのまま流用されている。
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1周目はムービースキップができないため、ラスボス戦など低解像度のムービーを何度も我慢して見続けなければならないのはかなり苦痛である。
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2周目以降は一度見たムービーをスキップできるようになるが、選択したエンシャントの違いでわずかでも内容に差があるとスキップできない。
敵の種類
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エンシャントごとにタイプは変わるが、基本の雑魚敵が5種類ほどしかいないため、やや単調。
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最初に選んだエンシャント以外のタイプの敵も一応登場するが、全体を通して数は少なく、しかも基本的な行動パターンや能力は同じ。
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周回プレイ時、基本的にやることが変わらないため、新鮮味に欠けるという問題もある。
総評
「GCのホラーゲーム」としては今となっては『バイオハザード』の影に隠れている感が否めない。
だが、幻覚をテーマにした凝った演出は今でも他に類を見ないこのゲーム独自の要素である。
幻覚以外の戦闘、謎解きといったアクションアドベンチャーの要素は、悪く言えば地味で凡庸だが、
特筆すべき欠点もなく、アクションアドベンチャーの基本はしっかりしている。
サニティシステムの一点で、GCの隠れた名作ホラーゲームと言ってもよいだろう。
余談
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タイトルの「招かれた13人」の13人目はプレイヤーという設定。この13人目の役割は本編を3周クリアした後に解禁されるトゥルーエンドで語られるようになっている。
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N64のデモプレイ版では「ジョセフ」というテンプル騎士のキャラクターがいたがGC版ではプレイヤーキャラクターから外された。
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ただ、ロベルトの章のオープニングで彼にそっくりな騎士が登場する。一見、モブキャラクターにしか見えないが、エンディングのスタッフクレジットで専属の声優が設定されていることから、ジョセフである可能性が高いと見られている。
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また、エリアの章で登場する心臓を持った僧侶もN64のデモプレイ版でプレイヤーキャラクターであった人物である。GC版ではジョセフ同様にイベントキャラクターに変更されることになった。
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2014年5月にSilicon Knightsが倒産し、今作品の権利はパブリッシャーである任天堂が保有しているため続編が作られる可能性は非常に低いが、今作のデザイナーたちが「Shadow of the Eternals」という精神的な続編を製作中とのこと。
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しかし、kickstarterでのクラウドファンディングが失敗に終わったため、本当に製作されるかは危うい状態になっている。
最終更新:2024年06月12日 16:16