水夏弐律
【すいかにりつ】
| ジャンル | 夏涼薫風ノベル |  
 | 
| 対応機種 | Windows XP~7 | 
| メディア | DVD-ROM 1枚 | 
| 発売・開発元 | CIRCUS | 
| 発売日 | 2011年9月30日 | 
| 定価 | 初回限定版:8,800円 通常版:7,800円(共に税別)
 | 
| レーティング | アダルトゲーム | 
| 配信 | FANZA:2017年4月24日/3,800円 | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | 足かせとなってしまった前作 エロはおまけ
 シナリオだけなら佳作~良作
 しかしラストシーンはあっさり
 やや消化不良な点も
 | 
 
概要
CIRCUSの名作と名高い『水夏 ~SUIKA~』の続編。
間に過去編『AR ~忘れられた夏~』が発売されているため、シリーズとしては3作目にあたる。
ストーリー
赦すことは、愛すること──
訪れてしまう死、過ぎてしまった過ちを後悔しても仕方がない。
それらを受け入れて生きること、人間らしく生きること。
舞台は鬼女伝説が語り継がれる古隠村。
のんびりとした田舎に生きる人たちは、みな明るい表情を見せる。
しかし、その明るい表情の下に、それぞれの深い因縁を背負い続けていた。
夢見がちな少女、真実を追い求める報道部部長、過去に囚われ続ける女、名前の無い女の子。
彼女たちが抱える問題は、やがて10年前の交通事故に収束される。
10年前、ズレてしまった運命の歪みは、彼女たちにどんな結末をもたらすのか?
平和な村に起こる不思議な物語たち。
二胡が奏でる旋律と共にお楽しみください。
(各通販サイトの商品説明より抜粋)
特徴
- 
縦読みのテキスト、キャラクターの立ち絵は基本的にテキストの左側に表示される。
- 
選択肢無しのノベルゲーム。
- 
章により主人公、視点が変わる。
- 
5つのシナリオとサブシナリオ(最終章の別視点からのシナリオ)、エピローグで構成されている。
- 
シナリオは「報道部編」「施設編」「過去編」に大きく分けられ、これらの話が交互に展開されていく。
 
- 
前作はオムニバス形式のシナリオで、シナリオ同士の繋がりがあまり強くなかったが、今作はシナリオ同士の繋がりが強くなっている。
- 
また、前作との繋がりは一部登場人物を除いてほとんど無いため、前作をプレイしていなくても問題なくプレイすることができる。
登場人物
主要人物
    
    
        | + | クリックで開閉。 | 
綾瀬良(あやせ りょう)
古隠村の施設で管理人代理を務めている少年。名無しの女の子に餌付けして懐かれてしまい、そのまま寝食を共にするようになる。
精神的に幼かった彼も、名無しの女の子や、兄である高志と関わることで、大人へと成長していく。
 
名無しの女の子
死に近い所に現れる不思議な女の子、名前がないので“名無しの女の子”。良に「ポチ」と名づけられる。
死に近しい者にしか見えない名無しの女の子は、時折死神呼ばわりされることもあった。
孤独の中で生きてきた彼女は、一人の少年との出会いにより、“生きている理由”を探すようになる。
自分が何者なのか、自分が何のために生きているのか。人々と触れあうことによって、それが少しずつひも解かれていく。
前作のヒロイン『名無しの少女』は具体的な正体が描写されたが、彼女は最後まで正体が明らかにされていない。詳細は賛否両論点を参照のこと。
 
ニーチェ
名無しの女の子が抱いている、黒いウサギのぬいぐるみ。
動くことは出来ないが、人々の心に直接語りかける声を持っている。
名前の由来はドイツの哲学者「フリードリヒ・ニーチェ」
 
蔵木亜美(くらき あみ)
携帯小説を書くのを趣味としている文学系少女。自分の書いた小説の評価を常に気にしており、時間が空いたら感想のコメントを確認したがる。
学校生活では、クラスメイトとコミュニケーションを取るのを煩わしく感じており、友人と呼べる人間は一人もいない。
亜美の唯一の理解者である、向日信二のことは信じ続けているが……。
願いを何でも叶えてくれるというオマジナイと出会った夢見る少女は、変化に少しずつ飲まれていく。
 
御手洗芽衣(みたらい めい)
真実を追い求めるために活動している『報道部』の部長。猪突猛進で、己の直感を第一に信じている。
ポジティブシンキングな考えを持っており、常に面白そうなことを探し求めている。
芽衣は、ある出来事がきっかけで、村に古くから伝わる“鬼女・紅葉伝説”に疑問を持ち始める。
自分の直感を信じ、報道部部員の明智光彦を巻き込んで、伝説の真実に迫っていく。
 
明智光彦(あけち みつひこ)
報道部の一部員として活動している少年。
御手洗芽衣に半ば強引に報道部に入れられ、彼女に振り回される日々を過ごしている。
彼女と共に紅葉伝説を調査するうちに、紅葉伝説の真実、それに関わる自身の家系の秘密を知ることとなる。
 
阿藤遥(あとう はるか)
村の病院で看護師として働いている女性。明るく素直で、面倒見の良い性格をしている。
しかし、自身を襲う辛い過去を胸に秘めており、それが原因で実の父親を憎み続けている。
病院の入院患者である“綾瀬高志”との出会いが、彼女の囚われ続ける過去に変化をもたらす。
 
綾瀬高志(あやせ たかし)
自分のペースを決して崩さず、入院患者でありながら自由奔放な行動をする。
時間があれば、絵本創作をしたり、得意のギターを奏でたりして子供達を楽しませる。
身体に負担のかかる行動を起こしてしまうことがあり、看護師の遥によく怒られる。
 | 
その他登場人物
    
    
        | + | クリックで開閉。 | 
日向信二(ひむかいしんじ)
若き天才外科医の青年。亜美が憧れている相手であり、信二も亜美に対して優しく接している。しかしその正体は……。
 
美守一樹(ひだもりいっき)
街の病院に勤めている内科医。亜美の叔父にあたるが、だらしないせいもあって仲はあまり良くない。
 
湘南八重(しょうなんやえ)
明智家に仕えている女中さん。
光彦のために頑張って張り切るが、空回りしてしまうドジっ子。
物語の中で光彦から意味深な言及をされるが……。
 
上代蒼司(かみしろそうじ)
前作第二章の主人公。本作では万屋『ひまわり堂』の主人を務めており、報道部をサポートする。
店番をかなでに任せ、店を離れていることが多い。報道部に的確なアドバイスを送ったり、何かと頼りになる存在。
 
白河かなで(しらかわかなで)
報道部の部員が調べ物をする際に訪れる万屋『ひまわり堂』の看板娘。
視力を失っているとのことだが、そう感じさせない立ち振る舞いを周りに見せる。
人を見通すような雰囲気を持っているため、彼女の前ではみんな素直な態度を取る。
前作に登場した「白河さやか」の従妹にあたるが、その設定がメインシナリオに絡むことはない。
 
明智修一(あけちしゅういち)
古隠村の名家。明智家の現当主であり、光彦の父親。
明智グループを確固たるものにしようと、強い野心を持ち続けている。
 
明智さつき(あけちさつき)
光彦の腹違いの姉。極度な潔癖症であり、普段は明智の家の離れに1人で暮らしている。
修一による明智グループの繁栄に大きく関わっているようだが……。
 
阿藤洋(あとうひろし)
タクシーの運転手だった、遥の父。
過去に起こした交通事故から職を失い、自暴自棄になって酒に逃げ続けている。
 
紅葉(くれは)
過去の物語の登場人物、“鬼女・紅葉伝説”に登場する紅葉本人。
行き倒れとなっていたところを日兵衛に発見され、神社で暮らすこととなる。
人当たりがよく、村人からも慕われる存在となるが……。
 | 
問題点
- 
Hシーンが3つしか存在しない。実質実用的なシーンは2つのみ。その実用的なシーンもCG差分が少ないため物足りない。
- 
CGが綺麗なためにHシーンを期待して肩透かしを食らったプレイヤーもいただろう。
- 
また、前作『水夏 ~SUIKA~』ではシナリオゲーだが、実用的なシーンがそこそこあったため、それでガッカリしたプレイヤーもいたと思われる。
 
- 
また、シナリオ的にHシーンを入れてもいいのでは? という場面が幾つかあるのだが、そのような場面でHシーンが存在しないため物足りない。はっきり言ってエロ目的で買うゲームではない。
- 
回想モードが無い
- 
3つしかHシーンがないためあまり必要なものではないが。また、回想モードは存在しないが、既読のシナリオを部分的に読み返す「シナリオ回想モード」が存在する。
- 
しかしシナリオ回想モードでは何故かバックログが使えず、使い勝手が悪い。
 
 
- 
物語の一部時系列が分かりにくい
- 
シナリオに一部回想シーンを挟むため時系列が分かりにくくなる場面がある。
- 
現在は修正パッチで日付が表示されるようになるため、分かりやすくなっている。
 
- 
前作の主題歌「Fragment」のアレンジが酷い
- 
どちらもギターのアレンジが強くなっており、今作の最後を締める「楓バージョン」は単曲としては出来が良いが、もう一つの「クラシックバージョン」の出来はこの曲単独として見ても出来が酷い。
 
賛否両論点
- 
主人公の一人である御手洗芽衣の容姿、性格が某SOS団団長と酷似している
- 
とはいえ完全なパクリというわけではなく、彼女の個性もあるため物語を進めるうちに気にならなくなるレベルではある。
 
- 
ここぞという場面で主人公が切り替わり、別のシナリオが始まってしまう。人によってはシナリオの続きが気になりやきもきするかもしれない。
- 
特に最初のシナリオ、物語のクライマックスでいきなり主人公が切り替わり全く別のシナリオが始まる。最終的に最初のシナリオと2番目のシナリオは内容がクロスするためシナリオの構成には問題無いのだが。
 
- 
投げやりなラストシーン
- 
とある理由で命が危ぶまれた阿藤遥と当時胎児であった子供の無事は確認できるが、それ以外に詳しい解説も無く終わってしまう。
 
    
    
        | + | 前作のネタバレ、軽度のネタバレ注意。 | 
前作に登場した「名無しの少女」と別個体であることは判明するが、具体的な正体は最後まではっきりしない。作中では「境界に存在せし者、時間の因果とは無関係」であることが語られるのみ。
「名無しの少女」は作中ではっきりと「死神」と明言されているが、「名無しの女の子」は死の匂いを感知する能力があり、死に近しい者にしか見えない、見えない者にも夢を通して意思疎通をする能力がある、異常に長寿、程度の描写しかされない。前作をプレイしていれば「名無しの少女」との幾つかの共通点があることが分かるが、それでも最後まで何者なのか具体的に語られることはない。
阿藤遥の胎児と夢の中で対話をし、死から救い出す描写があるが、これも対話以外の能力を行使したのかどうかは不明である。
物語中盤で、作中の交通事故の被害者の生まれ変わりを仄めかす、前作を彷彿とさせる描写があるが、終盤で結局は別人であることが判明する。
 | 
- 
一緒にいるぬいぐるみ「ニーチェ」の正体については具体的に言及はされていないが、正体についての描写はされている。
- 
八重について、光彦が「ドジな八重を父は何故雇っているのか」「八重は事情があって学校には通っていない」等と言及するシーンがあるのだが、こちらも最後まで理由がはっきりしない。
- 
八重の家が明智家と何らかの関係がある事が読み取れるが、具体的な事は最後まで語られない。
- 
後に過去に八重の祖母が明智家で働いていたことが明らかになるが、これも特に深く掘られることはなく、八重との関連もはっきりしない。
 
- 
『化物語』のパロディシーンがあるが、それが取って付けられたようなものでシナリオから明らかに浮いており、違和感を覚える。
評価点
- 
シナリオの出来が良い。
- 
消化不良な点やラストシーンの問題から、前作と比較して「残念だった」というプレイヤーもいるが、全体的に見ればシナリオは高レベル。視点毎によるシナリオと、シナリオの繋げ方も見事と言える。
- 
前作の出来が良かったため『水夏』のタイトルが足を引っ張ってしまった結果と言える。
 
- 
CGのレベルもかなり高い
- 
反面、問題点にあるようにCGのバリエーションが少なく少し寂しい。先述のHシーンだけでなく、立ち絵の差分も表情差分ばかり。出来自体はかなり良いのだが。
 
総評
決して出来は悪くない作品だが、前作と比較されることが多く、ファンからの受けは良くなかった。
Hシーンが少なすぎるためエロゲーユーザーにも簡単に勧められるゲームではない。
エロゲーとしては微妙であるが、現在は値崩れしており、読み物としては良作であるため、ひと夏の物語を読みたい方はプレイされてはいかがだろうか。
配信
- 
ダウンロード版はFANZAで独占販売されている。
- 
『水夏A.S+』(『水夏』のリメイク)と本作のパック販売もされている。
 
最終更新:2023年04月09日 21:54