機動戦士ガンダム Target in Sight
【きどうせんしがんだむ たーげっといんさいと】
| ジャンル | アクション・シューティング |  
 | 
| 対応機種 | プレイステーション3 | 
| 発売元 | バンダイナムコゲームス | 
| 開発元 | ベック | 
| 発売日 | 2006年11月11日 | 
| 定価 | 6,980円(税別) | 
| レーティング | CERO:A(全年齢対象) | 
| 廉価版 | PLAYSTATION3 the Best 2008年3月19日/3,800円(税別)
 | 
| 判定 | ゲームバランスが不安定 | 
| ポイント | PS3を活かしたリアルな重力戦線 部位破損で状況は良くも悪くも揺れ動く
 徹底的に史実路線
 | 
| ガンダムシリーズ | 
 
概要
PS3と同時に販売された、アニメ『機動戦士ガンダム』の世界で宇宙世紀0079年に起こった「一年戦争」をリアルタイムムービーで体感できる作品。
特徴
- 
再現された重力戦線
- 
戦場は地球。所属軍を決めて、遊撃部隊の隊長となり基地や山岳地帯など様々な場所で任務をこなしていく。
- 
地球連邦軍にMSの配備が本格化した宇宙世紀0079年10月3日からゲームが始まる。
- 
公式の時系列では10月3日はブルーディスティニー1号機が完成した日であり、10月4日はガルマが戦死した日となっているので、連邦軍の本格的な反攻作戦の始まった日と見るべきか。
 
- 
オーストラリアではコロニー落としによる残骸が突き刺さっていたり、ワールドマップに大穴が開いている。
 
- 
戦闘、部隊システム
- 
戦闘では機体が部位ごとに破損していく、例えば手が破壊されれば持っていた武器も使えなくなる。
- 
破損部位は日数が経過すると修復される。あえて部位破損したまま無理やり出撃する事も可能。
- 
連続で出撃するとパイロットの疲労も溜まっていく。疲れた状態では各種ステータスに影響する。
- 
モビルスーツ、パイロットは任務報酬のポイントを使う事で要請していく。機体改造も可能。
- 
はじめはジムやザクしかないが、月日が進むにつれて高性能な機体がリストに追加されていくようになる。
- 
ただし、特定の期日までにある程度戦果をあげて(ミッションをクリアして階級を上げて)いないといけない。やはりエースへの道は厳しい。
 
- 
ロックオンで敵に狙いを絞って攻撃するのはもちろん、どの機体でもスナイプモードが搭載されていて、簡易的な狙撃が可能。
- 
最大3機で部隊を組み、出撃。十字キーで指示を出す事で簡単な指揮も取れる。
 
- 
画面を二分割する事で2人で対戦する「VS MODE」もあり、「SINGLE MODE」で機体解放さえすれば改造段階や装備は自由に操作可能。
 
評価点
- 
ガンダムゲー随一のリアルな描写
- 
建物の崩壊やちぎれる部位等他のガンダムゲーには無いリアルな要素が非常に多い。
- 
各行動も機械的で、動作もプログラムのような決められたモーションを行う形となっている。
- 
全てのモーションがゆっくりとしており、一部の複雑な行動では行動不能や、タイムラグも発生する。
 
- 
右腕を部位破損したときは、盾を捨てて壊れてない左手で武器を構えるような複雑なモーションも行える。
- 
ボタンごとに武器が割り当てられているため
同時打ちも可能
で、
『第08MS小隊』でおなじみの「倍返しだぁーっ!!」を本当にやることができる。
この操作が可能なガンダムゲーは現在でも少なく、本作以外では『機動戦士ガンダム 戦士達の軌跡』などと貴重である。
 
- 
スラスターの青い炎や、ロックオンする際にはカメラアイが発光したりと、細かい点でも力が入っている。
- 
時には天候が荒れて霧や砂煙が発生したり、散布されたミノフスキー粒子で敵機が探しにくい事も。
 
- 
マニアックなモビルスーツを取り揃えたラインナップ
- 
ジオンの水陸両用機、通称水泳部はもちろん、モビルスーツでは無い為に冷遇されがちなタンクタイプに当時出たばかりのジム・ストライカーやドム・キャノンといったマニアックな機体も収録されている。
- 
自分で操縦はできないが重力戦線らしい戦闘ヘリや戦車も登場、素早い動きをする航空機は脅威。
- 
機体改造ではショットガンを持ったドムや、マシンガンを装備したガンキャノンやゲルググ、シールドを持ったケンプファーといった原作には無い組み合わせの機体を使う事ができる。
- 
各地形に合わせたセッティングも可能、性能とカラーリングが大きく変わるのでなかなかユニーク。
- 
パイロットはアムロといった有名所はもちろん、『MSV』や『コロニーの落ちた地で…』のような外伝からも多数参戦している。
 
- 
良質なBGM
- 
本作は緊張感や壮大さに溢れたBGMが多く、後のガンダムゲーム(機動戦士ガンダム戦記など)に流用された楽曲も多い。
- 
またブリーフィング画面のBGMは月によって変わる仕様であり、11月には勇ましいBGMが流れるが終戦が近づく12月になると悲しげなBGMへと変化する。
 
- 
救済措置
- 
難易度が四段階に分かれていて、低難易度では敵の装備や動きが目に見えて弱体化、強豪のモビルスーツも早い内から解禁される。
- 
一部のミッション以外は期日が設定されており、クリアせずとも日数さえ経過すれば消滅するので、どうしてもクリアできない場合は無視できる。
- 
デメリット無しで何度でもミッションの初めからリトライ、撃破された場合はコンティニューもしくはブリーフィングに戻る事が可能。
 
賛否両論点
- 
ガンダムゲーの中でもかなりハードな演出面
- 
本作は『アーマード・コアシリーズ』のように人物の顔は表示されずボイスのみ。
- 
また他のガンダム作品ではよくある美人なオペレーターや仲の良い同僚や何度も刃を交える事となる敵エースパイロットという要素は一切存在しない。
- 
よくも悪くもただ黙々と任務をこなしていくだけである。
- 
これをつまらない、盛り上がりに欠けると感じるかこの方がゲームの雰囲気に合っていると感じるかは分かれてくるだろう。
- 
また音声設定はデフォルトが英語となっている。オプションで日本語に変更可能であり、日本語音声なら永井一郎氏によるナレーションを聞くことが出来る。
 
- 
ドムや水陸両用モビルスーツといった原作では強固な装甲を持っていた機体が、今作では防御力を低く設定されている。
 ドムは装甲以外に強力な点がある為、弱体化された物と思われるが、ここは原作再現ができていないとも言える。
- 
同じ一年戦争を舞台にしているものの、『機動戦士ガンダム』本編や各外伝作品といった他作品とはあまり絡まない。例えばオーストラリア近辺の戦場にいても、地球上での一大決戦作戦であった「オデッサ作戦」には参加できない。
- 
一応、原作をリスペクトした要素はいくつか見受けられる。例えばザクIIやゲルググのセッティングを切り替える事でシャア専用機のようなカラーリングになる。
 
- 
パイロットは出撃する度に疲労を貯めていくが、ボロボロな状態でも強引に出撃可能。
- 
デメリットとしてパイロットのステータスが下がるが、ほぼ誤差のような物なので無意味。
- 
リアリティは壊滅的だが、いちいち出撃制限が掛かってしまうよりは良いとも言える。
 
問題点
調整不足故の高難易度
- 
リアル志向で史実に沿っている為か、連邦編と比べ軍備で劣っていたジオン編があまりにも難しい。
- 
連邦軍の機体は大抵副武装として、航空機迎撃や火力の底上げがしやすいバルカン砲が搭載。強力なビーム兵器も多くの機体が装備できる。
- 
逆に言えば頭部バルカンが無い連邦製モビルスーツはイマイチであり、どうにも見劣りしてしまう。(陸戦型ジムなど)
 
- 
対してジオン軍は水泳部を初めとした癖の強い機体が多く、優秀な副武装持ちは非常に少ない。
- 
ジオン編のミッションは異様に難しい物が多い。とてもバランス調整がうまくできているとは思えない。
- 
例として、序盤から大量の敵が配備された基地にたった3機で乗り込む作戦や、格上の護衛が囲む砲撃機体3機を単騎で殲滅する等。無謀すぎる物も多い。
- 
機体の限られる1周目では、正攻法でのクリアが極めて困難な作戦があるほど。
 
 
- 
他にも手足がすぐちぎれてしまう事や、部位をほぼ確実に破壊してくるビーム、バズーカ持ちの敵がいやらしい位置に出現したりとゲームの難易度は全体的に高い。
- 
素早い航空機が相手の場合に射撃武器が使えない、もしくは弾速が遅いと当たらず本当に何もできず、詰む。部位破壊され、武器を落とすと多く陥りがち。
- 
距離が離れると敵の発砲音が一切聞こえない。リアル故なのかもしれないが、無音で攻撃が飛んでくるのはどうにかならなかったのか。
 
かなり弱い水陸両用モビルスーツ
- 
原作では水中戦で敵機を凌駕していたジオン軍の水陸両用機、通称「水泳部」が非常に弱い。
- 
コックピットのある胸部だけでは無く頭部を破壊された時点で撃墜となる。水泳部だけ擬似ガンダムファイト状態。
- 
頭部と胸が一体化しているズゴックやハイゴッグはわかるが、胸にコックピットがあるはずのアッガイも巻き添えを受けている。
 
- 
装甲がかなり薄い上、機体の大きさがそのまま再現されている為にヒットボックスが大きい。
- 
他のモビルスーツなら耐えたり、避けられる攻撃でも大ダメージになりうる。
 
 
- 
通常のモビルスーツが水に浸かると機動力が落ちるが、簡単な水中用セッティングを施す事でどの機体でも克服できてしまう。
- 
そもそも水中戦自体も殆ど無い。中盤からは完全に消滅してしまう。活躍の場がいくらなんでも少なすぎる。
 
- 
強力なビーム兵器を搭載しているが、初期状態では弾数がかなり少ない。かなり改造しなければ使い物にならない。
- 
終盤かつ、ある程度階級を上げておけば、ほぼ上位互換のビームライフルが使えるゲルググが手に入るので、必死に改良してもほぼ無意味。
 
- 
特に酷いのはゴッグ。原作では強固な装甲にメガ粒子砲を売りとした機体だったが…
- 
フタを開けてみると射撃武器が胸に付いているので歩きながら撃てないわ、装甲が薄いのでガードすると腕がすぐもげる動く棺桶。
 
役に立たない僚機
- 
僚機は頭が悪く、とことん役に立たない。攻撃頻度も少なく、放っておくと敵を追いかけて前線に飛び出し撃破される。
- 
もちろん撃破されたら機体は長い間修理行き。これでは使い潰される為にパイロットを載せているような物である。
 
- 
障害物が認識できない。壊せない、乗り越えられない巨大な壁とぶつかった場合は、完全に動かなくなる。
- 
対策として僚機は壁ごしにロックオンが可能という斜め上の対策が取られている。
 
- 
敵機や自機が使えるブースターでの高速移動を何故か行わない。常に徒歩で移動するので、とにかく遅い。
- 
さらにはこの僚機、原作キャラクターを乗せる事もできるがそれでも動きは残念なまま。せめて敵と同じぐらいの動きはできなかったのだろうか?
システム面の問題
- 
機体の性能を変更する「セッティング」が存在するが、殆どが局地に特化したカスタマイズとなっている。
- 
ストーリーが進むごとに戦場も変わっていくので、序盤でしか行けないエリアのセッティングは後半では無意味となる。
 
- 
操作のチュートリアルが無い。練習ができる訓練モードも特定のミッションをクリアするまで解放されない。
- 
連邦編では最初に訓練のような物があるが、申し訳程度。ジオン編ではゲーム開始後すぐに実戦へと投入される。
 
- 
処理落ちが最後まで付きまとう。モビルスーツが6機程出現したり、海が表示されると若干重い。
 動作が軽いミッションは航空機しか出ないような、ほぼモビルスーツが活躍しない物のみと物悲しい。
- 
先述の僚機に関連する問題点として、僚機に対して最初に使える指揮が「その場で待機」と「プレイヤーに追従」のみ。選択肢と実用性の双方に乏しく、もはや犬同然である。
- 
階級が上がるごとに「集合」「散開」などが追加される仕様だが、こんな簡単な命令の権限すら最初から持ち合わせていない隊長ってどうなの…?と思わざるを得ない。
- 
最終的には味方を本格的に攻撃に参加させられる「一斉射撃」「一斉攻撃」も追加されるが、これらが最初から使用できれば僚機にも使い道があったのだが…。
 
- 
また、実戦では味方にどんな指示を出したかわかりにくい。指示を出しても返答などはなく、突然動き出すだけ。
 
- 
特定のミッションで酷い音割れが発生する。治すにはゲームを再起動するしか無い。
- 
ダッシュ切りと高速移動の使い方が取扱説明書に載っていない。
総評
戦闘面では一騎当千の活躍はできず、集中砲火を喰らえばすぐ撃墜の厳しいゲームバランスのガンダムゲーは他に無い。しかしそれが本ゲームをよりリアルに際立たせる。
画質面では、リアルタイムムービーで織り成される美麗かつも汚れを帯びたモビルスーツは他のゲームには無い。
PS3初期の作品だけあって粗も多いとはいえ、ガンダムゲーとしては十分遊べるタイトルであろう。
余談
- 
取扱説明書には、没にされたであろうコックピット視点らしき画像が写っている。
- 
仕様上プレイヤー次第では、体調がいくら悪くと毎日出撃、ろくに働かない僚機を従えて一人で次々撃墜するエースパイロットが完成する。
 ゲームなので仕方ないのかもしれないが、人間かどうか疑いたくなる…。
- 
本作のパッケージは、「撃破したザクIIを見下ろす陸戦型ガンダム」という構図になっているが、これは『機動戦士ガンダム 第08MS小隊 VHS1巻』の表紙、「撃破した陸戦型ガンダムを見下ろすザクII」のオマージュである。
- 
海外でもあまり好ましい評価は得られず、メタスコアは33というかなりの低数値となっており、それを根拠に世界で最低の評価をされたシミュレーションゲーム(Worst-rated simulation videogame)という
ギネス世界記録
に認定されてしまった。
- 
補足しておくとギネス世界記録とは「客観的に確認可能な基準で世界一」であればギネスは認定するシステムであり、ネタ的な世界記録申請は星の数ほど行われていてギネス側もどんどん申請するように営業をしている。その審査・認定料金がギネスの重要な収入源だし
- 
このため「世界で最も◯◯であるゲーム」などは数えきれないほど登録されており、本作だけがアンチに狙われて不名誉な世界記録を付けられたというわけではない。20万円を越える申請手数料を払ってよくやるもんだと思うが
 
最終更新:2025年01月11日 14:45