グランツーリスモ
【ぐらんつーりすも】
ジャンル
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リアルドライビングシミュレーター
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対応機種
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プレイステーション・ポータブル
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発売元
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Sony Computer Entertainment
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開発元
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Polyphony Digital
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発売日
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2009年10月1日
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定価
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パッケージ版:5,480円 ダウンロード版:4,400円(全て税5%込)
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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廉価版
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PSP the Best:2012年12月6日/2,800円 ダウンロード版:2,200円(全て税5%込)
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判定
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良作
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グランツーリスモシリーズ
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PlayStation Studios作品
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概要
『グランツーリスモ』シリーズ初にして唯一の携帯機向け作品。
タイトルはPS版初代『グランツーリスモ』と同一であるが、移植・リメイクではなく純粋な新規タイトルである。
本作では「シボレー コルベット ZR1(C6)」がパッケージを飾る。
特徴
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全体的に据置機タイトルにおける「アーケードモード」をやや強化した作りになっており、「グランツーリスモモード」の要素は少ない。
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収録車種は830台、コース数は35・コースレイアウトは70とボリュームは従来のシリーズと同等。
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『GT4』からの継続収録となった、全長20km以上に及ぶドイツの難コース「ニュルブルクリンク」も、携帯ゲーム機向けソフトとしては初めての収録となっている。
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主なゲームモードは「ひとりで走る」「アドホックモード」「ミッションでチャレンジ」の3つ。
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「ひとりで走る」はコース・(所持している)車を選んで走ることができる。形式は「シングルレース」「タイムトライアル」「ドリフトトライアル」の3種類から選ぶ。シングルレースはレベルD~SからCPUの強さを選ぶことができるが、最初はレベルDしか選ぶことが出来ず、1位で勝利することによりコースごとに上のランクが解禁されていく。
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「アドホックモード」による他のPSPとの通信では、様々なルール(ハンデ)の対戦レースの他、車のシェア・トレードなどが可能。なお、インフラストラクチャーモードによる通信は用意されていない。
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「ミッションでチャレンジ」は従来の「ライセンス取得」とほぼ同じだが、本作ではライセンスによる出走できるレースの縛りなどがなく、代わりにミッションをクリアすることでクレジットが手に入る。
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上記のゲームモードを遊ぶとクレジットが手に入り車を購入することができるが、そのラインナップは限られているという特殊な仕様。
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従来シリーズの中古車のように、ゲーム内日数(レースをするごとに進む)ごとにディーラー・車のラインナップが変化していく。変化周期・初期車両などはPSP本体ごとに異なっている。
評価点
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流石に相違点も多い(後述)が、「グランツーリスモ」を上手く携帯機に落とし込んでいる。
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例えばトヨタの車を例にすると、プリウスやヴィッツのような大衆車とスープラやMR2のようなスポーツカーで性能差をちゃんと感じられるし、逆に同じトヨタのスポーツカーでも車種やモデルごとに性能が違う。
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さらにまったく同じスープラでもターマック・ダート・スノーロードでそれぞれ挙動が異なる…と、リアル性は損なわれていない。
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「わりと本格的なドライビングシミュレーターを持ち出せるようになった」と言うだけでも特筆に値するだろう。
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念願のランボルギーニ社が参戦。カウンタック2種類のみだが、スーパーカーブームを牽引した名車であるため運転できるようになったのは大きい。
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後述のように「『GT5』の先行収録」と観れば、むしろ妥当な車種チョイスではないだろうか。
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クレジットが貯まりやすい上、レースは一戦勝負かつライセンスの概念がまったくない。結果、サクサクとクレジットを貯める事が可能。
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ショップに並んでさえいれば欲しいクルマを買うのは難しくない。レース仕様車は流石に高額だが。
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グラフィックはシリーズの例に漏れず良好。ベースがGT4ということもあってPS2に迫るレベルのグラフィックを実現している。フレームレートもしっかり(可変)60fps。
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物理エンジンも『グランツーリスモ5 プロローグ』と同レベルの物を搭載しており据置機タイトルと比べても遜色はない。
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ゲームを進めていくと、PSP本体のメモリースティック内にあるMP3ファイルを走行中に再生できるようになる。
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いわゆる「ユーザーBGM」であり、お気に入りの曲を聴きながらドライブできることは地味ながら嬉しい機能である。
賛否両論点
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車にチューニングパーツを付け足すことは一切できない。
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セッティングについても「タイヤの変更」「ASM・TCSの利き具合」「サスペンションの調整」「シミュレーションの違い」といったものしか対応していない。
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全体的にGT5プロローグとほぼ同じシステムとなっている。
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常に購入可能ラインナップが変わっていくため、欲しい車をすぐに手に入れることが出来ず、目当ての車が購入可能になるまでひたすら待たなければならない。
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ゲーム内日数はレース等をしないと進まないため特定の車種が目的ならレース → ディーラーチェックを延々と繰り返すハメに。
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代わりにお金自体は手に入りやすく、超高額なレーシング仕様の車両以外は手軽に買える調整となっている。
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上記のセッティングシステムや買った車を売却できない仕様も合わさって、「1つの車に愛着を持って乗り続ける」のではなく「次々と乗り移り続けて様々な車を楽しむ」というスタイルが推奨されるゲームデザインになっていると言える。
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GT4をベースにしているため、収録車種は『GT4』とほぼ同じ。GT4は2004年発売、本作は2009年発売と5年の間はあるが、その間に登場した車両の収録数は少ない。
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完全新規収録マシンはパッケージを飾る「シボレー コルベット ZR1(C6)」や前述の「ランボルギーニ・カウンタック」など、一部がGT5から先行収録されている程度。
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上記以外にもアウディのコンセプトカー2種やシャパラルのレーシングカー2種など、『GT4』では見かけなかった車両がいくつかあるが、これらは『GT4』の海外版にのみ収録されていた車両であり、厳密にいえば新規収録ではない。
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とはいえ、PSPの実在車両を使ったレースゲームにおいて車種の多彩さに関しては本作が頂点であろう。ただし、車種数については後述の問題点もある。
問題点
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対人/CPU問わず同時出走車両数は4台。PSPの性能的限界を感じさせる仕様である。
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しかし、これまで2台までしか走行できなかった一部シティコース、ダート・スノーコースも4台での走行が可能となっている。
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コースの時間帯は全て昼・晴れ。ウェット路面や夜間レースは用意されていない。
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このためか、初期から登場するオリジナルコース「スペシャルステージ ルート5」などは本作に収録されていない。
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シングルレースのCPUのレベル上げが作業になりやすい。
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レベルDからC、CからBに上げるのに1回、BからAに上げるのに2回、AからSに上げるのには3回も1位を獲得する必要があり、レベルSまで上げるのに最低でも7回走る必要がある。
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他の順位で1位分のポイントを獲得するには、2位であれば2回、3位であれば3回獲得する必要があり、4位に至ってはポイントを獲得できないという仕様上、もし1位以外の順位を獲得した場合、必要レース回数はさらに増える。
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収録車種の水増しと言われても仕方がない多数の海外仕様車。
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収録車種数自体は『GT4』から100台近く増えているが、そのうち日本の車両の国外販売仕様が大半を占めている。性能は同じで、ハンドル位置や細かなエンブレムの違いという点のみで差別化されている。
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例えば、「マツダ・ユーノスロードスター」の海外版として「マツダ・MX-5」及び「マツダ・MX-5ミアータ」が収録されているが、前者の7種類あるバリエーション全てに後者2種の海外仕様が存在するため、7×3=21車種とこれだけでかなりの数を占めている。
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また、車名が同じ場合は末尾に(US)(EU)とつけて日本仕様と海外仕様が区別されている場合もある。
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これは本作が『4』までと違い海外版が存在しないこと、また『GT5』にクルマを移すことができるというコンセプトのもとに開発されていたためと思われる。
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GT4から削除されている車両が十数台ほどある。
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理由は不明だがアストンマーティンがメーカーごと未収録となっているほか、他メーカーにも何台か削除されている車両が存在する。
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セーブデータがPSP本体に紐づけられており、最初にセーブデータを作成したPSP本体以外では読み込みができない。
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他のPSP本体で読み込もうとするとセーブデータの初期化を促すメッセージが表示される。セーブデータのコピーはできるが、コピー後のセーブデータも同じPSP本体でないと読み込めない。
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また、他のPSP本体への引継ぎ方法も用意されていないため、本体の買い替え、故障による交換や基板交換レベルの修理を行ってしまうとそれまでのセーブデータは使用できなくなってしまう。
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前述したとおりディーラーの販売車両の変化周期・初期車両などがPSP本体ごとに異なっているため、それに関連しての仕様と思われる。
総評
携帯機ならではの短時間の軽めのプレイを意識した独特な縛りが鼻についてしまうプレイヤーも見られるが、基本的には従来作と同じくリアル志向の良質なレースゲームであり、携帯機でもシリーズの魅力を充分に出している。
据え置き機のナンバリングタイトルに比べると本作は入門向けの作りになっているとも捉えることもでき、本シリーズの足がかりとして遊ぶのに適すと言える一方、本格的なやり込みに関してはやはり最新作を遊ぶ方が良いであろう。
余談
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元々、PSP版のグランツーリスモはPSP本体が発表された時点で発売予定ソフトとして告知されており、本作発売のかなり前から構想としては存在していたと思われる。
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当初は『グランツーリスモ4モバイル』の名称で2004年に発表。この時点では発売予定こそ未定であったが、シリーズ生みの親である山内一典氏は「携帯機でも『GT4』並みの品質を実現する」とコメントしていた。
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その後一旦2005年春に発売予定と告知されたが、『グランツーリスモ5』の制作を優先するとのアナウンスもあり、再び発売未定に。その後はカタログなどの発売予定ソフトからも消えてしまい、表立った進展は無かった。
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しかし2009年、現在のタイトルに改題した上で改めて発表、発売された。当初の予定から4年以上かかっての発売と、かなりの紆余曲折があったことがうかがえる。
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本作は発売日の繰り上げが行われ、当初発表された発売予定日より1週間早く発売された。
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繰り上げ自体がゲームソフトとしては非常に珍しい上に、グランツーリスモシリーズはそれまで発売延期が当たり前と言っていいような状態であったため、ファンからは驚きの声が多数上がった。
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発売時には店舗別予約特典キャンペーンが行われ、予約した店舗に応じた限定カラーの車両を入手できた。
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本作のテレビCMは「エリーゼ・コルベット Stingray(C3)・カウンタック 25th Anniversaryが富士スピードウェイでレースする」というもの。
このCMはゲーム映像ではなく実写であり、当然実車のコルベットやカウンタックを使用して撮影されている。
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しかもレース中互いにガンガン車体をぶつけ合っており、撮影後は使用した車両の内2台が旧車ということもあって数百万もの修理費がかかったという。
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現在は閉鎖されているが、公式サイトではこの3台の車載カメラの映像を見ることもできた。
最終更新:2024年11月18日 06:07