WILLOW
【うぃろー】
ジャンル
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アクションロールプレイング
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売・開発元
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カプコン
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発売日
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1989年7月18日
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定価
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5,900円(税別)
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判定
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なし
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ポイント
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影の薄い映画のゲーム化 ハイレベルな演出
不親切なセーブ
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概要
ロン・ハワード監督とジョージ・ルーカス原案による1987年の同名のファンタジー映画を元に作られた、『ゼルダの伝説』ライクのアクションRPG。
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カプコンはほぼ同時期にこの映画を原作としたACゲームをリリースしているが、そちらは『魔界村』に似た2Dアクションアーケードゲームであり、ジャンルは大きく変わっている。
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大元の映画のタイトルが『WILLOW』である事や、その他殆どのウェブサイトにおいて同表記が用いられているためこの記事もそれに倣っているが、FC版パッケージには「W・I・L・L・O・W」と中黒点が1文字ごとに入れられている。「ウィロー」とカタカナのサブタイトルが付属しているのは同じ(パッケージには無いがソフトにカタカナはついている)。
あらすじ
※後述する問題点の部分を分かりやすくするため、原作のあらすじも併記する。
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原作のあらすじ
小人族の農夫兼魔法使い見習いのウィローは、ある時人間の赤ん坊エローラ・ダナンを拾う。
ウィローは村の人々から「エローラを人間の世界に送り返す」使命を押し付けられ村を後にした。
途中で仲間を加えながら旅を続けるウィローは、やがてエローラの「役割」を知り、そして赤ん坊を狙う悪の魔法使いバブモーダとの戦いに巻き込まれていく。
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FC版のあらすじ
天空と大地の使者の魔法によって護られた世界。しかし、長く続いていた平和は、ある時天空からの使者バブモーダが自らを「全ての人の長」と僭称し始めたことで終わりを告げた。
バブモーダは対立していた大地からの使者フィン・ラジールを醜いネズミに変えて封じ込め、世界征服へと乗り出した。
これを止められるのは、選ばれた勇者であるウィローただ一人。
評価点
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アクションRPGとしての出来は良い。
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基本は剣を手に入れて装備し、剣を振る事での攻撃だが、単にボタンを押すだけに留まらず、前(向いている方向)に十字キーを押しながら攻撃すると剣を「振る」のではなく「突く」アクションになり攻撃の質が変わるので使い分けられる。
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その剣を振るアクション1つ取っても、レベルが低いうちに上位の剣を急いで手に入れて装備しても「使いこなせない」ために剣を振るスピードが遅くなるので、場合によっては下位の剣を使い続けた方が良い場面もある。
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敵も一直線に向かってくるもの、ランダムに動き回るだけのもの、地形を無視して飛行してくるものなどバリエーションに富む。
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魔法を使う敵は基本的に剣での攻撃が通じず、攻撃魔法か特殊な剣で攻撃しないと倒せない。倒すとMP回復を落とすので、場合によっては狩る必要も出てくる。
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同一マップでも敵との戦闘中か否かでBGMが切り替わる仕様であり、戦闘中は背景の木々や草むらなどが激しくざわめくなど演出も凝ったものになっている。BGMは総じて良曲が多くSEの完成度も高い。
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登場する敵も原作にかなり忠実。オリジナルの敵も多いが、死の犬、トロル、エボルシスク、ケイル将軍などもちゃんと出る。
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魔法も割と原作通り。敵を石化させるドングリ、変身、子豚など原作を知ってるとニヤリとできる物も。
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後述する設定変更を除けば、NPCの作り込みもしっかりしている。
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容量の問題からか、この時代のゲームは特定の重要キャラ以外は全て同じ顔で特定の汎用セリフを喋るのみ、というケースも珍しくないが、このゲームにおいては会話可能なNPCには全て顔グラフィックが与えられており、セリフのバリエーションも多い。使いまわしが無い訳では無いが、時代を考えればかなり少ないほうと言える。
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出番を削除されてもおかしくなかったマッドマーティガンの友人であるエアク・ソーベアはおろか、ネルウィン村一番の剣士ボンカーまで登場する。
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なおNPCへの対応は全てウィローが自動でやってしまい、選択肢の類は出ない。
問題点
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原作崩壊と捉えられかねない程の大幅な改変。ハードの制約によりAC版を再現できなかったり、主人公以外をキーパーソンに置いたストーリー展開は難しい…といった可能性もあるにはあるのだが、ストーリー展開や役割が原作からあまりにもかけ離れてしまっている。
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旅立ちの理由であるエローラ・ダナンが冒頭に出てこない。これによりウィローの旅立つ動機が「エローラを人間界に帰す」ことから、「悪い魔法使いがいるからやっつけてこい!」という良くも悪くもテンプレの動機に差し替わってしまっている。
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エローラは原作では冒頭で殺された乳母が保護していて、ゲーム中盤に登場する。ただ、既にウィローはバブモーダと戦うことを決意してるわけで、ストーリー的にもちょっと変な感じがする。
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原作のウィローは農夫兼見習い魔法使いであり、魔法を使って困難に立ち向かうものの肉弾戦は殆どしない。肉弾戦は仲間の剣士・マッドマーティガン等が担うのだが、FC版ではウィローが剣も使う。
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映画では小人症の俳優ワーウィック・デイヴィス氏がウィローを演じており、ウィローにとって荒事はまさしく命懸けであるという描写が説得力を持っていた。また、ウィローが荒事向きではないからこそ、肉弾戦を担うマッドマーティガンという人物も引き立っていたのだが。
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マッドマーティガンはウィローと会う度に誰かに捕まっているというありさまなので、もはやネタキャラ化している。
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パッケージにも出ている重要人物のサーシャ姫は道を塞ぐNPCとして登場。それだけ。
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大地の神フィン・ラジールも単なるNPCとして登場。ウィローの魔法でネズミから元の姿に戻すのだが、ウィローのレベルが足りないと別の動物に変わってしまう。なぜか変化する動物は無駄に種類が多い。
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ちなみに相手を別の生き物に変える「リニュー」はバブモーダが使う高等魔法のはずだが、FC版ではなぜか普通の雑魚敵が使ってくる。ウィローも使う事ができるが何の敵に変化するか不明で、元の敵よりも強化してしまうこともある。
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一方で脇役だったはずのエアク・ソーベアはウィローに伝説の剣を渡し、道を指し示し、格好いい台詞でウィローを激励するなどなぜかの大抜擢。
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パスワードの仕様が極めて不親切。本作は1時間や2時間で終わるようなボリュームではないため、途中の中断が必須である。このゲームではパスワードによる再開という形で中断が可能なのだが、パスワードは死んでゲームオーバーにならないと表示されない。中断するためにはわざと死ななければならない。
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ゲームオーバーからの再開時はレベルアップ後に稼いだ経験値が消失してしまう。また、手に入れたアイテムやイベントの進行状況なども巻き戻ってしまう。
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そのため中断したいときは一旦拠点に戻ってイベント進行状況を記録し、さらに経験値を無駄にしたくなければ次のレベルになるまで稼いでから終わらなければならないという、なんとも面倒な仕様になっている。
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最後に強制させられるレベル上げ。
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前述のフィン・ラジールを元に戻すイベントをこなさないとラスボスに勝てない。これ自体はレベルを上げればいいだけだが、実はそこからさらにレベルを上げないとMPが足りずにやっぱりラスボスに勝てない。
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レベルが足りないままラスボス戦になると死ぬしかなく、経験値リセット。そこからレベルを上げようにも、最も経験値をくれる雑魚敵を100体以上倒さなければ次のレベルに上がらない。
総評
アクションRPGとしては理不尽な中断の仕様さえ除けば丁寧に作られており、さすがはキャラゲーに定評のあるカプコンといったところ。
しかし、原作映画のファンの人が忠実なゲーム化を期待してプレイすると「何これ」感に襲われるであろう改変の嵐は賛否両論である。
余談
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特定条件下で「あらゆる地形を素通りして好き勝手に歩いて進めるようになる」という(おそらく)デバッグ用の裏技がある。ただし、「特定のパスワードを使用して開始し、尚且つ2コンを併用しないとできない」裏技なので、普通にプレイする分には全く影響は無い。
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パッケージ裏に載っているプレイ画面サンプルが「スタート地点でレベル1なのに経験値9万を持っている」という裏技を使っているようにしか見えない物である。もっとも当時はデバッグ用の画像をそのまま使っているのか、パッケージ画像の数値が滅茶苦茶な写真は本作以外にも多かったが。
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作中には原作には出ていないワシ族といった亜人が出るが、実は設定ではちゃんと存在しており、続編小説にもちょっとだけ出てたりする。
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サクセスのシューティングゲーム『コットン』(1991年)において主人公コットンの好物「WILLOW」は菓子の「ういろう」と本作(の原作映画)を掛けたパロディと思われる。シリーズ化した事や2003年にはパチスロにもなったため、2000年代の日本ではパロディの方が有名と言う事態に。
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ただし「WILLOW」自体は和訳すると「柳」、つまり一般名詞なので偶々被っただけの可能性も無いわけではない。
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現在でも本作(及びアーケード版)を遊びたいほどリメイクを望む声があるが、版権の問題であってかバーチャルコンソール、Nintendo Switch Online、プロジェクトEGGでの配信すら困難である。
最終更新:2024年04月25日 03:39