theresia -テレジア- Dear Emile
【てれじあ でぃあー えみーる】
ジャンル
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トラップ脱出アドベンチャー
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対応機種
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ニンテンドーDS
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発売元
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アークシステムワークス
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開発元
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ワークジャム
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発売日
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2008年9月11日
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定価
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4,800円(税別)
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セーブデータ
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3個
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レーティング
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CERO:C (15歳以上対象)
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判定
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なし
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ポイント
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角材でつついて安全確認
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概要
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フィーチャーフォン向けアプリとして展開されていた脱出ADVゲーム『theresiaシリーズ』の3作目であり、初のコンシューマー作品。また、シリーズ初の女性主人公作品でもある。
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ニンテンドーDS版という事で、タッチによる操作方法や2画面への対応など、UIは過去作とかなり違う。
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ストーリーの時系列は1作目『theresia-テレジア-』と2作目『theresiaⅡ テレジア -Dear Lizst-』の間に当たるが、ストーリーは直接的な関係は無い。但し、1作目に関連する名前などは一部登場する。
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シリーズ1作目の移植となる「Dear Martel篇」も収録されており、本編「Dear Emile篇」クリア後に解禁される。
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開発のワークジャムは、本作以外にはDSの『探偵 神宮寺三郎シリーズ』を手がけている。
ストーリー
冷たい雫が唇に落ち、女は地下の牢獄施設で目覚めた。
赤い花畑で見知らぬ女性と語り合う、そんな夢から覚めると女は独りだった。
看守の姿も無く、囚人の呻き声も聞こえない。生物の気配が一切、無い。
その牢獄施設には、猟奇的な暴力…「トラップ」が張り巡らされていた。
状況を把握できずに呆然と立ち竦む女の脳裏に、『映像』が流れる。
赤子をあやす「銀髪の女」の記憶。赤子は淡く儚く、薄い光をまとっていて…
――女は記憶を失っていた。
そして女は冷たい牢獄施設を彷徨いはじめる。
失われた記憶を取り戻し、狂気が張り巡らされたその場から這い出るために。
システム
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ジャンルとしては脱出ゲームにあたるが、本シリーズの特徴として部屋の至る所に主人公を襲うトラップが仕掛けられている。
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通路内は3Dダンジョンのような形式であり、通路の曲がり角やドアから敵が出てくるゲームではないのに身構えてしまう。通路内は十字ボタンでも移動できる。
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通路内で調べる価値のある場所には「Door」、「Search」もしくは「Action」というアイコンが表示されるため、他の場所は無視できる親切設計。
…なのだが、むしろこれがないと大変なほどの距離の通路を歩かされるゲームである。
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スイッチを押して変化があったところも地図上に表示してくれる。
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地図には主人公がしたことが自動で記入されていく履歴機能まである。
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脱出ゲームでは珍しく主人公のHPを表すLifeゲージがある。
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トラップに触れると減り、0になるとゲームオーバーとなる。回復は随所に落ちているアンプルを使って行う。
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こう書くとAADVのようだが本作にアクション要素はなく、こちらからトラップに触れないかぎりはLifeは減らない。
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トラップの種類は様々で、例えばゲーム開始地点の室内の机に光るものがあるということで、試しに触ってしまうと「ガラスの破片だった」ということで怪我をしてLifeが減る。
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「見る」コマンドと「触る」コマンドが分離している。
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『探偵紳士シリーズ』でも実装されているシステムではあるが、脱出ゲームとしては珍しい。
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トラップシステムを成立させるために必要だったのだろう。
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前述の最初の部屋の机の例だと、「見る」で机を見ると光るものがあるとなり、この時点ではLifeは減らない。「触る」ことで初めてLifeが減る。
評価点
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トラップ満載
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詰まったら総当りで適当にクリックしまくることになりがちな脱出ゲームに、トラップというアイデアでゲームに緊張感を与えた点は秀逸である。
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怪しいところは角材などのアイテムでつついて安全確認すれば良い。
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なお、トラップがある箇所には、それをほのめかすメッセージが出る場面が多いことと、システム的にセーブ&ロードがいつでも出来る様になっているため、そこまで理不尽でもない。
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ストーリーの構成は秀逸
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記憶をなくした女性が徐々に記憶を取り戻すというストーリーなのだが、記憶を取り戻す順番は何者かに仕組まれているという設定が効いており、迷宮そのものの謎と共に、プレーヤー自身に謎の解明が課されているわけでもないのにあれこれ考えを巡らせてしまう。
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クリア後には、「Diary」メニューから主人公たちのモノローグで過去の出来事を本編で示されたよりやや詳細に知ることが出来る。
問題点
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テンポが悪い
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ドアの前に立った後、専用の「戻る」コマンドを押しているのに「元の位置に戻りますか?」という確認コマンドが出る。
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逆に、通路の場合かつ鍵が開いている場合に限り、ドアの前どころか数歩手前からでも「Door」アイコンをクリックするとドアの向こう側に移動できる。室内の場合はBボタンで部屋から出られる。
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かなり通路を歩きまわる必要がある。しかも通路のCGは単調である。
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グラフィックが洗練されていない
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室内は3Dレンダリングではなく、1枚絵の切り替えで表現されている。
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このため、同じ部屋なのに統一感に欠けていたり、ドアから入ったそのままの向きではない場合が多いため方向感覚が狂いやすい。
方向が変わるのは、部屋から移動する場合の選択肢が「右のドアから出る」という表現であって「西側のドアから出る」というような表現ではないことから、難易度を上げるための演出の一つなのかもしれない。しかしなぜか「Dear Martel篇」では「北の通路に出る」という風に方角を使って表現されており、一貫性がない。
なお、向いている方向は上画面に表示されているmapには分かりやすく表現されている。
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通路のCGも単調で、さらに室内にはそこに通じる扉がないのに通路側には扉の絵(決して開けられない)が描かれていることがあるのは奇妙である(迷わせるための演出だと好意的に受け取るべきなのだろうか?)。
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CGに生々しさがないため、グロ表現にそれほど衝撃がない。
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達成率がない
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前作『Dear Lizst』にはイベントの発生回数及びトラップの回避回数を数値化した"達成率"があったが、より後発の本作には達成率が示されない。達成率が表示されれば、達成率100%を目指したやりこみが出来るのだが。
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本作にはトラップにかかった回数が少なかった場合のみ出現するアイテムがあることから、プレーヤーに提供されていないだけで内部的には実装されている可能性がある。
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共感しにくいストーリー
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主人公らの信条が常軌を逸している。
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しかも、まともな人物は理不尽に殺される。
総評
放棄された地下迷宮を舞台に繰り広げられる愛と狂気のトラップからの脱出。
手当たり次第にクリックしまくれる脱出ゲーとは一線を画す盛りすぎなトラップが、和製でありながら洋ゲーのようなヒリヒリする緊張感を与えるADV。
フロアを跨る大胆な仕掛けがある点も脱出ゲームとしては異色で、記憶をなくした主人公が徐々に記憶を取り戻すストーリーは構成や演出が上手く、脱出だけが売りのゲームではない。
余談
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本作の発売日の翌月の2008年10月30日には早くも英語版が北米及び英国で発売されている。
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「Dear Martel篇」解放を知らせるメッセージが何故か英文なのは、英語版のものが紛れ込んだのだろうか?
後の展開
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「Dear Martel篇」のみ、本作のCGを流用してスマートフォンへ移植されている。
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本作を含むワークジャム関連のタイトル事業にまつわる無体財産権をアークシステムワークスが2016年12月20日付でエクスプライズから譲受した。
最終更新:2023年05月15日 18:58