L the proLogue to DEATH NOTE ~螺旋の罠~
【える ざ ぷろろーぐ とぅ ですのーと らせんのとらっぷ】
ジャンル
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推理バトルアドベンチャー
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対応機種
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ニンテンドーDS
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メディア
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512MbitDSカード
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発売元
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コナミデジタルエンタテインメント
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開発元
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コナミデジタルエンタテインメント キャビア
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発売日
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2008年2月7日
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定価
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3,990円
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判定
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良作
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ポイント
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Lをバックにつけて脱出ゲーム
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少年ジャンプシリーズリンク
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『この事件(ゲーム)、降りるわけにはいきません』
『悪に立ち向かう覚悟は、ありますか?』
概要
週刊少年ジャンプの漫画『DEATH NOTE』の主要人物「L」が登場するアドベンチャーゲーム。
時系列としては原作よりも前の物語であり、L以外のキャラクターは出演していない。
本作が発売された当時は、部屋内の様々な箇所(机の引き出しや額縁の裏など)をクリックしてアイテムや謎の手がかりを集め、閉鎖空間から脱出する「脱出ゲーム」と呼ばれる物が、Web上のブラウザゲームなどで流行していた。
本作もその類のシステムではあるが、通信機で離れた場所にいるLと会話・協力しながらゲームを進めていく点が最大の特徴であり魅力である。
ストーリー
まだ経験の浅いFBI捜査官であるプレイヤーは、調査中に何者かの罠にかかって拉致され、見知らぬ施設に軟禁されてしまう。
近くには何故か、PDA型通信端末が。そこに、世界的に有名な探偵「L」からの通信が入る。
プレイヤーは、今回のネゴシエーター(交渉人)に指名されたというLのバックアップを受けて、施設のあちこちに仕掛けられた爆弾の罠を回避しつつ、脱出を試みる。
特徴
脱出ゲーム部分は、一般的な脱出ゲームとは少し異なるアプローチあり。
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本作のゲームとストーリーは、施設内で動く主人公(名前は自由、性別選択可)と、外部からコンタクトしているLとのコンビプレーで進む。
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主人公は部屋の探索と爆弾処理、Lはカメラを通じての状況判断や犯人のプロファイリングといったサポートを行う。
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Lは相当に注意深く周囲の様子を見ているようで、常に上画面に陣取り、限られた情報からの推理で鋭く事件の真相に迫ろうとする。その分、脱出の謎解きや爆弾処理において積極的な助言はしない。
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脱出パートには時間制限があり、移動・調査など何か1つ行動するごとに1分経過する。超過した場合はゲームオーバー。
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セーブは探索中なら常時可能であり、やり方次第では当然、どうあがいても時間の足りなくなる「詰み」が発生する。その場合は、メニュー画面から「再捜査」を選択すると、キーアイテム以外の要素を引き継いで最初からプレイできる。
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脱出の謎解きはフロア単位で行われ、次の階層へのキーアイテムを順に手に入れて先へ進む事の繰り返しが基本的なゲーム構造。
フロアにはいくつかの部屋があり、怪しい箇所を調べたり仕掛けの謎を解いたり。このあたりは普通の脱出ゲームとほぼ同じ。
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しかし本作の軸は、サブタイトルに示される「罠」にある。
罠はそこら中に仕掛けられていて、探索の際に発見してしまうと起爆装置が作動する。プレイヤーは爆発する前に罠を解除して身の安全を図らなければならない。また、通常の罠よりも難易度の高いフロアボス的立ち位置の罠もあり、キーアイテムはこれを解除する事で手に入る。
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部屋の中には「ハサミ」「ドライバー」といった消耗品がたくさん落ちていて、後述する爆弾処理における作業を補助する。これらの入手はクリアに必須ではなく、使用は1回きりの使い捨て、また確率で効果を発揮せず壊れる事もある。
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これらと時間制限の影響により、本作の脱出ゲームパートの謎解きは攻略上の重要ポイントが一見して分かりやすく(捻ったクリックは求められない)、その代わりに1フロアが広い。細かな探索に時間を費やす総当り作戦よりは、思い切って大胆にプレイすると良いだろう。
爆弾処理
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爆弾処理の際は専用のモードに画面が切り替わる。
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下画面に爆弾の外観が表示され、脱出ゲームパート同様に爆弾を調べていく。
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Lはカメラ越しにアドバイスをくれるので、それに従いつつ対処すべき箇所を探して、順序正しく起爆装置を解体していく。
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適切なアイテム(キーアイテムや消耗品)を持っていれば使用する事も可能で、例えばドライバーを選択してネジ部をクリックすると、ネジを取り外す事ができる。
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爆弾の重要機構に狙いが定まったら、画面下部の「実行」コマンドを選択。
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画面中段に帯状のセーフティーゾーン、それを挟むように上下段にアウトゾーンが表示され、波形軌道でマーカーが動く。セーフティゾーン内でタイミング良くボタンを押しマーカーを止めると、罠が1段階解除される。以上を、完全停止まで繰り返す。
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セーフティーゾーンは、処置が適切・丁寧であれば、範囲が広がっていく。場合によっては、実行コマンドの成功率が100%に達する事も。
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一部の仕掛けは、処置を誤ると主人公にダメージが発生。ダメージは一定量溜まるとゲームオーバーになる。フロアボスともなると、即起爆=即死する罠もある。
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またこの爆弾処理にも時間制限があり、超過するとダメージやゲームオーバーなどのペナルティがつく。
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なお、ダメージは探索中に入手できるアイテムで回復することができる。
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解除に成功すると経験値を獲得し、100溜まるごとにレベルが上がる。これもセーフティーゾーンの範囲を広げる働きを持つ。
推理モード
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脱出ゲームパートに一区切りつくと、Lが犯人側の人間と対話する推理モードが挿入される。
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シナリオ進行に合わせてLが得ていく「キーワード」群の中から正しい組み合わせで4つ選ぶと、Lがそれを根拠に犯人を論破する。正しいキーワードから導かれる推理は、相手に論理ダメージを与える。
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実行前にはヒントとして、選択したキーワードに対するLの推理の一部が公開される。
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ダメージが規定値を超えたら論破成功。至らなかったら、Lが意気消沈しつつもストーリーはどうにか先に進む。
その他の特徴
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探索時の操作仕様について。
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タッチ状態で画面内を動かすと、調査可能な箇所でカーソルの色が黄色に変わる。黄色い状態でタッチを離すと対応する箇所にカーソルが吸着し、その位置でもう一度タッチすると調べる。ボタン入力でも同様。
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救済措置について。
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爆弾処理の際、キーアイテムを必要としないステップはLにヘルプを要請できる。制限時間30分経過につき1回使用でき、100%で1段階解除される。
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一部の推理モードは、論破に成功するとLに余裕ができ「ブラフ」を1回入手する。これは推理モードでキーワードの代わりに1つだけ使用でき、アドリブで揺さぶりをかけて一定のダメージを与える。
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マルチエンディング制。
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ゲーム後半におけるプレイヤーの行動や推理モードの成否でエンディング分岐あり。
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クリアフラグを立てた2周目以降でないと見られないエンディングもある。
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ユーモア成分はほとんどなし。
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無理してギャグを挟む必要など無いのだが、原作漫画はシリアスな作風でありながらファンからネタにされる要素も多々あった。本作は、そのような雰囲気ではない。
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「Lコミュニケーター」という、Lに話しかけたりスイーツをあげたりするおまけモードがついている。一部のセリフはボイス付き。
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普通に話しかけると、DSの時計設定に応じた返答パターンがランダムで返る。
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ゲーム本編でスイーツのレシピを入手していると、Lにあげられるものが増える。
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繰り返し交流すると親密度が上がり、返答に変化が現れる。
評価点
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Lのキャラゲーとしての質が良い。
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Lを現場から離れた場所に置く事で、Lの常人離れした推理能力を表現しつつも、ゲームの興をぎりぎり冷まさせない(Lは脱出ゲームに過干渉せず、主人公はLにシナリオ上の役割を食われない)。そんなセッティングの上手さがまず挙げられる。
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さすがにフルボイスではないものの、そこそこ多めにボイスが収録されている。音質はザラザラとしているが、いかにも「通信機を通した声」っぽい。
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本作オリジナルのキャラも含め、作画の質は原作通り。3DCGレンダリングと思しき背景グラフィックともよく調和している。
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Lの立ち絵は原作漫画の絵そのまま。新鮮味は無いが、違和感も無し。
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ストーリー進行中の選択肢などで、Lの主人公に対する信頼度が上下する。信頼度が高い時のLの会話は、そういった事をなかなか匂わさないキャラだけに感慨深い。
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シナリオ自体は目立つ大仕掛けのない地味めのものだが、緊張感のあるゲーム内容、Lのキャラクター性といった要素との雰囲気がよく合っている。
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加えて「幾重にもロックされているが何故か内側から開けられる閉鎖空間」という、ジャンル的にお約束かつ本来ならば不自然な舞台装置との整合性も取れている。
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脱出ゲーム自体にそれなりの遊び応えがあり、同じクリック式のミニゲームである爆弾処理も、ボスまで含めると20種類以上ある。ボリュームは十分。
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序盤は謎解きが簡単で、徐々に難しくなるというセオリー通りのバランス調整もなされている。
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クリックミスを軽減する、配慮あるインターフェース。またタッチ&ドラッグを走らせれば「調べられる箇所」とそれ以外はすぐわかる。タッチペン仕様は良い方向に働いていて、操作が快適。
問題点
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爆弾処理の中だるみ。
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同系統の色違いも多数存在する雑魚爆弾は10種類程度。しかし、クリアまでに相手にするであろう雑魚の数はかなりの数に上る。
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辛いのは、ノーマル以外のエンディングを見るためには周回プレイが必要である事。さすがに作業感が増大する。
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謎解きのパターンも、対象を見つけ、時にはアイテムを使い、解除実行…という流れだけを見るとワンパターン気味。慣れてくると、セーフティゾーン30%程度もあれば細かい手間を省いて目押しで勝てる。
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ただし、そういうゲーム展開である事はシナリオ上のポイントの1つでもある。罠の相手をさせ続けられる事に、全く意味が無い訳ではない。
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制限時間のバランス配分が少し厳しい。
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セーブ&ロードを繰り返して時間の浪費を無かった事にする手段はいくらでも取れるが、そうしない場合は後半でキツくなるバランスとなっている。クリアフラグを条件とするエンディングルートもあるため、クリア目前での詰みは悲しい。
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ADVは「気が向いたらその都度やる」ようなゲーム性ではないため、集中的に接すると飽き易いLコミュニケーターとの相性がいまいち。
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たとえばもし本作がスマホに移植されたら、いつでも気軽にLコミュニケーターを通した会話を楽しめるようになるのだろうが、残念ながらそのような予定も無い。
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バックログ・既読スキップなし。少し込み入った物語であり、会話中で次に行くべき場所を細かく指定される事もあるが、聞きもらさないよう注意。
総評
原作の持つ独特のユーモアは反映されていないが、いち脱出ゲームとしてオリジナリティがありLの個性ともよく馴染んだ、良質なADVである。
またLのキャラゲーとしては、画面を通じてLの活躍を見るだけでなく、プレイヤーがLと一緒に捜査する気分を味わえる。この点は、他の『DEATH NOTE』原作の作品にはない本作の特色と言えるだろう。
「『DEATH NOTE』のファン」というよりは「Lのファン」に向けた内容であるものの、作品のテーマに沿った堅実な仕上がりを見せている。
『DEATH NOTE』のDSゲーム化作品は、『DEATH NOTE キラゲーム』『DEATH NOTE Lを継ぐ者』、そして本作の計3作。
いずれも既存ゲームのルールやシステムを拝借した物だが元ネタ選びのセンスが秀逸で、『DEATH NOTE』のゲームとして納得できる作品に仕上がっていると言える。
最終更新:2020年03月29日 05:32