飛龍の拳III 五人の龍戦士
【ひりゅうのけんすりー ごにんのどらごん】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売・開発元
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カルチャーブレーン
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発売日
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1990年7月6日
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定価
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6,300円(税別)
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判定
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なし
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ポイント
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レベル・探索要素廃止で一本道化 全体的に難易度が上昇 一部の敵が超攻撃力・超回避 グラフィック・演出面は進化
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飛龍の拳シリーズ
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概要
心眼システムによる格闘対決が特徴のアクションゲームのファミコン3作目。
副題の「五人の龍戦士」の「龍戦士」は「ドラゴン」と読む。
格闘家である主人公たち5人(龍飛・ハヤト・ワイラー・昇龍・ミンミン)は天界の龍戦士が地上に転生した者たちであり、大魔神の復活を企む暗黒界の結社「龍の牙」の牙闘士と対決する際には龍戦士の姿に変身して戦う。
全5章構成。1~4章は『ドラクエ4』のように各キャラクターの章が展開され、5章は前半は対決パートが連続する世界選手権に主人公が挑み、後半は5人の龍戦士が集結し、最終決戦に挑むという構成になっている。
システム
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基本的には前々作『飛龍の拳 奥義の書』(以下『I』)前作『飛龍の拳II ドラゴンの翼』(以下『II』)と同じく、ステージ道中であるアクションパート(横スクロールアクション)と心眼システムによる対決・変身パートがある。
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『II』で好評だった探索型ARPG要素は廃止され、一本道のアクションパートに度々対決・変身・大魔獣パートが挟まれる、という構成になった。
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体力の表示は数字表記から『I』のゲージ制に戻った。
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前作で廃止された残機制も復活。3機固定で得点やアイテムによるエクステンドは無し。
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難易度設定はチビッコモード、ふつうモード、マニアモードの3段階。
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チビッコモードでは、前作のように心眼の教え伝授とフーズフー戦など1作目から振り返ることになる。
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操作設定には通常の「マスター」以外に、上段や下段などの判断をすることなく攻撃や防御が可能な「ビギナー」がある。
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マスターモードのアクションパートの斜めジャンプが、方向キー入力とABボタン同時押しのどちらでも可能になった。しかし方向キーでは、キーの上を押してジャンプ中に横を押す必要があるため、やりづらい。
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ボタン操作でのジャンプは「A+B同時押し」、「A又はBボタンのどちらかを押しながらもう片方を押す」とジャンプが可能。これなら斜めジャンプも楽々。
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ビギナーモードでは、ジャンプが十字キー上ではなくAボタンに割り振られるので普通に斜めジャンプできる。
アクションパート
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道中の特定の場所では中ボスが登場する。
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また、特定の章では巨大凧やヘリコプターから続々と出現する敵と戦うシーンや牙闘士が騎乗するドラゴンと戦うシーンもある。
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アイテムはザコ敵が落とす交換用アイテムが廃止された。
対決・変身パート
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心眼システムとは、上段・中段・下段の3つの部位のどこか敵に隙がある場所やこちらに殺気が向けられている場所が表示され、敵に表示されたらその部位を攻撃、自分に表示されたらそこを防御するか回避する必要があるという、シリーズ伝統の対戦格闘ゲーム的な戦闘システム。
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一定時間一方的に攻撃できるラッシュ攻撃マークや一撃必殺の秘孔マークも『II』から継続して登場。
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防御に成功するとするとKOゲージが増え、ダメージを受けるとKOゲージが減る。満タンになればシリーズ伝統の必殺技「飛龍の拳」を出せる。
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前作は攻撃を当てると増える仕様だったが、今作では防御に成功すれば増えるようになった。
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戦闘中、たまに聖水(ストック可能な回復アイテム)がふよふよ上空を飛んで行く。これもシリーズ伝統。
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前作と異なり、1回の使用で体力を完全回復できるようになった。ただしストックできる最大数は3個に減った。
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『I』『II』同様、一部の対戦相手は牙闘士が化けており、特定の行動で正体を暴く必要がある。
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正体を暴いた牙闘士からは「鏡」を入手でき、その章の最後に戦うボスの法力を防御で結界を張って無効化することができる。
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正体を暴くためのヒントは2章以降、サブ画面で「しんじつのたま」を使うことで確認可能。もし正体を暴くことに失敗したまま先の章に進んでしまっても、5章後半で使用できる「ときわたりのたま」でリカバリーが可能。
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牙闘士や各章のボスとの対決では鎧と武器を装備した龍戦士の姿に変身でき、人間相手には行使しない闘気や法力といった攻撃方法が解禁される。
大魔獣パート
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一部のボス戦は巨大な敵との戦いという設定のもと、前作のナーガ戦やラストバトルと同様にRPGのようなターン制のコマンド戦闘になる。
評価点
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久米由基(Q-Mex)によるBGMはなかなか名曲揃い。
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各キャラクターのストーリーが語られるようになったり、『II』では武器は法力習得アイテムに過ぎなかったが、龍戦士や牙闘士が武器を戦闘で使うようになって、個性が強調され「五人の龍戦士」の副題に沿ったものになっている。
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前作では5人の体力が共有だったが、今作では別々になっており、ボスとの相性以外の面でもキャラクター交代の意義が増した。
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演出面も強化。キャラクターの描画については色数は減ったものの、その分頭身が上がってリアル感が増大、またラスタースクロールを用いた演出も多用されより迫力が増した。
問題点
今作では全体的に難易度が上昇している。「チビッコ」モードでもかなり難しいと感じるほど。
アクションパート
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1章から落下で1ミスになる穴や触れると多段ヒットで大ダメージを受けやすい針の床・天井が登場。2章以降は足場の不安定な場所でザコ敵の対処を迫られる場所が多い。
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3・4章では触れると多段ヒットで大ダメージのレーザートラップが登場。初見殺し的な配置も存在する。
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中ボス(モヒカン鉄球男・鎧武者・亜人の3種類)は激しくジャンプで跳ねまわり、こちらの攻撃に対してカウンターをしてくるので無傷での撃破が難しい。
対決・変身パート
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前作同様に心眼システムの入力判定が不安定な部分があり、相手は格闘ゲームのキャンセル技のように反応するのが困難な速度で攻撃を仕掛けてくることがある。
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心眼の表示パターンは対戦相手ごとにある程度固定の順番でループしているので、対戦相手1人1人の行動順や心眼マーク位置を完全にメモってしまうのが攻略の早道。
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どうしても勝てない場合は邪道ではあるが、ポーズで心眼の表示を逐一確認するというテクニックもある。
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前作のメッセージ表示枠が廃止され、体力ゲージなどと切り替わってメッセージが表示されるようになったため、「ラッシュ」発動時、メッセージで敵の体力ゲージが隠れてしまい、与えているダメージ量が逐一確認できない。
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一部の対戦相手の攻撃力が異様に高い。
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2章に登場する「べにかげ」を始めとした一部の中国拳法家タイプの対戦相手はこちらの体力の9割近くを一気に奪う上段攻撃「火吹き」を放ってくる。心眼は普通に表示されるので避けること自体は難しくはないが…
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4章ボスの片割れの「五大明王・コンゴウ」は異様に攻撃力が高く、相対するミンミンは相性が悪い。体力の最大値の低さも相まって直接攻撃を2~3発もらうとミスになってしまう。
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一部の対戦相手に体力が非常に低い代わりに、こちらの攻撃を異様なまで防御・回避する相手がいる。
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2章ボスの仮の姿「げんようさい」や4章ボスの片割れ「五大明王・ヤシャ」などが代表的。
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ただし、KOゲージが満タンになれば心眼無視の「飛龍の拳」であっさり倒せてしまったりもする。
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5章前半の世界大会は6連戦(正体を暴いた牙闘士も含めれば7連戦)で、それぞれが通常の対戦相手が使わない技を使うなど強敵揃い。
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2戦目の相手「マイク・デュラン」は上記の異様な攻撃力と異様な防御・回避を兼ね備えており、本作屈指の難敵である。
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5章後半では復活し、強化された各章のボスと物語の黒幕と連続で戦うことになる。
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「ふつう」モード以上では以前に相手したキャラでないとボスの法力を無効化することができず、キャラ交代要素の自由度を狭めている。
大魔獣パート
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前作同様、攻撃や防御の成否は運任せ。体力の減った相手が法力で結界に隠れて体力を回復することも多く、運が悪いと戦いが長引いたり最悪の場合聖水を使い切っても勝てないことがある。
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前作と違い、聖水の使用にターンを消費するようになった上、防御選択時にしか使用できず、さらに敵の攻撃が聖水の使用より先行することがある。
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「にげる」コマンドがあるが、使うメリットが薄い上、3章の「ハリティモ」とラスボス「合体明王」戦で逃げるとその前の対決パートからやり直しになる。
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4章で昇龍が戦う「マカカーラ」は分身する法力を使うと全ての攻撃が2回攻撃になる。元々最大体力の低い昇龍にとってさらに不安定な戦いを強いられることになる。
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通常攻撃で分身を消すことが可能なのだが、それすら成功の可否は確率で確実に消すことはできない。
その他
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メッセージ速度の選択が廃止されたうえ、ビジュアルシーンのメッセージ速度が遅い。
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セレクト+スタート+Aでシーンスキップが可能な裏技があるが、会話内容がわからなくなってしまうので初見では勧められない。
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前作にあったRPGモード・対戦モードがない。
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グラフィックは向上しているのにROM容量は前作と同じなので、仕方ないことではある。
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各章のボス戦前や5章前半の世界大会では対戦前に体力が全快するのだが、KOゲージも初期状態にリセットされてしまう。
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5章後半ではミス後の復帰時、体力が全快するのは直前で操作していたキャラのみ。
総評
前作から演出面・ストーリー面が大きく強化され、キャラクターの個性もより強化されるなど順当な進化を果たしている。
ただ前作から大幅に引き上げられた難易度が間口を狭めているのが厳しいところ。
前作経験者向けのマニアモードはともかく、せめてチビッコモードでもう少し易しめの難易度調整をしていればまた違った評価を受けていたかもしれないだけに惜しい作品である。
余談
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本作エンディングで大魔神がついに復活して第4弾が予告されるのだが、この後シリーズは格ゲージャンルの道に進んでしまい、ストーリー性の希薄化に伴いシナリオの進みも非常に遅くなってしまった。そのため予告されたようなストーリーは描かれていない。
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不良在庫が10年後に『飛龍の拳烈伝GB』(GBC)の初回生産分の付録として用いられた。
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GBAで『飛龍の拳1・2・3プラスワン』というカップリング移植が発表されていたが開発中止。
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大魔獣戦では裏技コマンドを入力することでキャラ性能を大幅アップ可能。裏技を使うなら、大魔獣パートで負ける心配はなくなる。
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ただし、相手もパワーアップして場合によっては即死級になるのでタイミングを間違えると大惨事になる。
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裏技で前半の操作キャラクターを変更可能。ただし法力防御は対応キャラクターではないので出来なくなってしまう。
移植
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現在は『I』と『II』と『飛龍の拳スペシャル ファイティングウォーズ』スーパーファミコンで発売された『飛龍の拳Sゴールデンファイター』と『SD飛龍の拳』と共に『Retro-bit Generations 3』の本体に内蔵(収録)されており、『レトロデュオ』で遊べる「8ビットコレクション カルチャーブレーン Vol.1」にも収録されている。
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しかし、9,400円もするほど高価であり、中古販売されているものより高くなっている。
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その代わりに、ステートセーブをSDカードにセーブできる。
その後の展開
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本作発売から5ヶ月後に発売されたゲームボーイ用ゲームソフト『飛龍の拳外伝』が、1年後にファミコン用ゲームソフト『飛龍の拳スペシャル ファイティングウォーズ』が、2年後にスーパーファミコン用ゲームソフト『飛龍の拳S ゴールデンファイター』が、4年後にスーパーファミコン用ゲームソフト『SD飛龍の拳』が、さらに7年後にプレイステーション用ゲームソフト『バーチャル飛龍の拳』が発売された。
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ただし、『飛龍の拳外伝』以降から大魔獣戦が廃止され、ボス戦が対決パートのみとなった。
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その一方で『飛龍の拳S ゴールデンファイター』からスーパーファミコンに移行したため、ボタンの数が増え、操作性もグラフィックも向上し、キャラクターの頭身も『ファイナルファイト』並のでかさとなっている。しかし、『SD飛龍の拳』から対戦格闘ゲームに変更されたため、心眼システムが廃止された。
最終更新:2025年01月03日 09:09