謎惑館 ~音の間に間に~
【なぞわくやかた ~おとのまにまに~】
| ジャンル | 立体音響アドベンチャー |  
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| 対応機種 | ニンテンドー3DS | 
| メディア | 3DSカード | 
| 発売・開発元 | カプコン | 
| 発売日 | 2011年8月4日 | 
| 定価 | 4,800円(税別) | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| レーティング | CERO:C(15歳以上対象) | 
| 判定 | 怪作 | 
| ポイント | 身内ネタ・ブラックネタ盛りだくさん 使われている技術と声優陣が地味にすごい
 音声認識が最大の敵
 このゲームそのものが「謎」
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概要
主にカプコンに入社したばかりのスタッフが中心になって作られたアドベンチャーゲーム。
立体音響「オトフォニクス」と音声認識を最大のウリとしている。…が、それ以上にゲームの世界観があまりに「謎」すぎる作品になってしまった。
システム
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突然謎の館「謎惑館」に迷い込んでしまった主人公を導き、館から脱出するのが目的となる。
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アドベンチャーゲームだが、基本的に途中に選択肢や分岐は一切ない。ゲーム内で指示された内容に成功すると先に進め、失敗するとやり直し、というだけの部屋がいくつも連続している。
 
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全6シナリオを順にプレイする。それぞれのシナリオ間に繋がりは全くなく、実は
シナリオごとに主人公自体が全くの別人だったりする
(ネタバレのため隠し)。
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第一話 光る目
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ホラー調の不気味なシナリオ。ネズミ退治を頼まれた主人公は、天井裏に潜むネズミを追うことになるが、その途中様々な不気味な目に遭い…?
 
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第二話 モテすぎる男
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エロティックで大人な雰囲気のシナリオ。妖艶な女に誘惑される主人公は、彼女から逃げ惑ううちに種々多様な魅力的な女性と出会う。最後に主人公が選んだのは…。
 
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第三話 四季
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日本の四季を夏から冬まで追う、どこかしんみりとした雰囲気のシナリオ。なぜ「四季」というタイトルでありながら春がないのかはラストで明らかになる。
 
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第四話 デートの結末
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青春風の爽やかなシナリオ。可愛い彼女と付き合い始めたばかりの主人公は、デートの計画を練ることに精いっぱいで…。
 
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第五話 白い部屋
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第三話、四話から一転、恐怖感を煽るホラーシナリオになる。謎の白い部屋に閉じ込められた主人公。部屋の中では「反省しろ」「償え」という言葉が彼を苛む。その言葉から逃げるうちに主人公は恐ろしい目に遭うことになる。
 
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第六話 謎惑空間
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ラストを飾るのは、それぞれに繋がりも不明な無数のシナリオ。バーベキューから始まり、音楽のレッスン、探偵事務所、密室など変な場所をいくつも巡ることになる。最後に主人公を待ち受けていたのは…。
 
 
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操作方法は、基本的には「音声認識」がメインとなる。上画面に音符のアイコンが出たらマイクに向けて話しかけることで場面に応じた指示を出せる。
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時折「ジャイロ操作」や「タッチ操作」が必要になることも。
 
評価点
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「立体音響」の出来が非常に良い。
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本作の売りの一つだけあり、この演出はとても臨場感がある。
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説明書などで推奨される通り、ヘッドフォンを付けてプレイするのが本作の基本となる。実際ヘッドフォンを付けてプレイすると、背後にまで音が回ってくるような臨場感を楽しめる。
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これが最大限生かされるのが「白い部屋」のシナリオである。「かごめかごめ」や「スズメバチ」のヤバさは実際に体験するとわかる。本気で嫌になるレベルで。
 
 
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演出関連のスタッフはとても頑張っている。
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イラスト担当は上杉忠弘。彼の独特なタッチはゲーム内で最大限再現されている。
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声優陣がとても豪華。全50名以上で、藤原啓治、釘宮理恵、井上喜久子など有名声優が目白押し。もちろんフルボイス(というか本作に字幕が出るシーンは一切ない)。
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メインキャラクターである案内人は茶風林が担当。ゲーム中何度も会話することになるキャラクターだが、どこか人を食ったような不気味なキャラクターがよく出ていてはまり役である、
 
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BGMも非常に曲数が多く、質も高い。
 
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一部シナリオは完成度が高いと評判。
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「白い部屋」の中で一番怖いエピソードである「冷蔵庫」はかなりドキッとさせられる。なお、このエピソードのみプレイせずにスキップすることも可能という配慮がある。
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「モテすぎる男」と「四季」の結末はかなり予想外である。
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3DSのインカメラを使用した珍しいギミックもある。これも結構面白い。
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「モテすぎる男」ではエロティックなイベントが多数盛り込まれている。立体音響の無駄遣い。CERO:Cになった理由がよくわかる。
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欲望の丈をぶちまけろ!というイベントがあるのだが、ここで恥ずかしがらずに素の欲望を言ってしまうと最後の最後で恥ずかしい目に…。
 
賛否両論点
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ブラックで不快なネタが結構多い。元々大人向けに作られているものとはいえ。
問題点
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音声認識。本作における最大のネック。
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音声で全てを操るという操作自体はユニークなのだが、全然認識してくれないことが多々ある。
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どうやら場面ごとに認識しやすさに差があり、難易度の高いシーンはあえて認識度を落としているようである。が、そのせいで「さっきはちゃんと認識してくれたのに、突然無反応になる」ということが多発する。
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無反応だとキャラクターが罵って来る場面もあり、かなりイラッとする。
 
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コツとしては「はっきりゆっくり丁寧に」喋ること。「叫べ」と指示されることもあるが、叫んだりするとまず認識されない。
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また、マイク感度の調整も行うべきだ。デフォルトのままでは上手くいかなくても、変えればなんとかなることもある。
 
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ヘッドフォンの使用が推奨されるのは立体音響以外にも「雑音が混じって音声認識が狂う」ことを防止するという理由もある。
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なお、このプレイスタイルを見ればわかる通り、外出先でのプレイはまず不可能。何のための携帯機なのだか…。
 
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ボリュームそのものはかなり薄い。音声認識に手間取る時間を考慮しても通してプレイして5~6時間程度。アドベンチャーとしては…という感じ。
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ゲーム内容は結構濃いのだが、それだけに少々惜しい。
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オマケ要素も一周クリアでほぼ解放される。逆に二周クリアしないと、キャラボイスが解放されない。それだけのためにもう一周するのも一苦労である。
 
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個々のエピソードはそこそこ練られているのだが、全体のシナリオは繋がりがまるでない細切れのショートシナリオの寄せ集め。
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「なぜそうなっているのか?」が全くわからないシナリオの連続なので、その辺りに整合性を求める人にはむしろ不快感が強いかもしれない。
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謎惑館という館が舞台のはずだが、突然のように屋外に出ることなど当たり前。外にいたはずがいつの間にか屋内ということも当然。突拍子のなさにクラクラする。
 
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最後までプレイしてもこの辺りの「謎」は全く説明してくれない。それを本作の「味」と見るか、不快と見るかで本作の印象はガラリと変わるだろう。
 
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全く自重していないおまけシナリオ。
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一言で言うと、カプコンオールスターになぜかゾンビと化してしまった主人公が攻撃されるという意味不明なシナリオである。
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案内人曰く、「ゾンビが攻撃されるのはカプコンのお約束」らしい。
 
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それ以外にもカプコンファンを狙い撃ちしたようなコアなネタが多く、「わからない人には首をかしげるほかなく笑いどころがわからない」というおまけとしては微妙な感じに。受ける人には受けるだろうが…。
 
総評
まとめると、最後の最後まで意味不明なぶつ切りのストーリーを微妙な音声認識の元追いかけていくというだけのゲームである。
個々の演出面には光る部分があるのだが、分岐が全くないためそもそもアドベンチャーと呼んでいいのかも微妙である。
どちらかというと、先進的な技術の実験作という側面が強い。これでフルプライスはちょっと高くはないだろうか?
最後に案内人が「売り上げが良かったら続編が出るかもねぇ」と言って締めるが、現状続編は開発されていないようである。
ニンテンドーeショップで第一話が200円で配信されているので、お試しと思ってこれだけをプレイするのもアリだろう。
最終更新:2018年01月23日 00:52