O・TO・GI ~御伽~
【おとぎ】
ジャンル
|
アクション
|

|
対応機種
|
Xbox
|
発売・開発元
|
フロム・ソフトウェア
|
発売日
|
2002年12月12日
|
定価
|
6,800円(税別)
|
レーティング
|
IARC:12+ |
判定
|
なし
|
ポイント
|
独特な和風ファンタジー 破壊の爽快感
|
概要
和風ファンタジー世界を舞台とした3Dバトルアクションゲーム。
ただし開発したフロムの認識は「3DアクションRPG」だったりする。
主人公は頼光(ライコウ)。大江山の鬼退治で知られる平安期の武将源頼光(みなもとのよりみつ)がモデルであるが、あくまでモデルでありまったく設定の違う別人。
ストーリー
巫術……それは,自然の理を人の法で統べる術。
巫術の一切を仕切っていた時の朝廷は人の世に「結界」を作り上げ、神の定めた万物の法則から完全に独立した支配を行っていた。
そこでは「死」までもがコントロールされ朝廷の定めた「寿命帖」に従って、人々に施されるものとなっており、それは一部の上位の身分の者しか知らない秘密である。
そこは怯えるものが何もない,理想郷だったのだ。
「死」を扱う巫術士はその中でも特に、天性の能力を必要とされていた。そしてここに、誰よりも「死」に長けた「死を扱う巫術士の一族」であるライコウがいた。
ライコウは「死」を弄ぶ自分を穢れた存在と忌み、ある時父親の寿命を果たす様命じられた際にその役目を放棄して出奔し身を隠す。しかし朝廷がその行為を許すはずがなかった。
刺客として、次々と送り込まれる朝廷の巫術士達。だが、その能力はライコウに及ぶべくもなくいずれも敵ではなかった。
そして作られた平和な世に終わりが来る。
朝廷が巫術で世を統べた千年の間に生じた自然の理との歪みは、ついに結界を破壊し、暗雲と大嵐を呼び込むことになったのだ。
朝廷は崩壊し、世界は真の闇に飲み込まれ、人々に不死の穢れに満ちた妖魔が迫る!
その最中に嵐に吸い上げられたライコウは、薄れ行く意識の中「死を操る能力で妖魔と戦え。さすれば一族の罪を許そう」との声を聞く。
かくして、ライコウの贖罪の戦いが始まった。
システム
-
霊格というレベル制が有り、レベルアップ毎に頼光のパラメータが強化される。最大31で最高値に達すると数値ではなくなり最高値になった事を示す。
-
霊格を上げるには経験値相当の敵を倒した際にドロップする「魂魄」を得る必要が有る。魂魄の数値は敵の撃破数、装備の補正値、ステージのオブジェクト破壊率で変化する。
-
原則魂魄はドロップ品なので回収しないと基本値は増えない。これは装備品の修復や購入を行う際の「お金」相当である「禍魂」も同様の仕様である。
-
Lスティックで移動、Rスティックでカメラ操作、Aでジャンプ、Bで弱攻撃、Yで強攻撃、Xで巫術(魔法)。Rトリガでダッシュ、Lトリガでロックオン。(デフォルト)
-
ライフの要素はやや独特で、アイコン内部のゲージで表される生命力とアイコンの個数で表される体力に分かれている。
ダメージを受けると生命力が低下し、0になると体力が1つ減少。強力な攻撃では一気に複数のアイコンが0状態となり体力数が0になるとミッション失敗。生命力は時間経過で回復し、体力はフィールド内アイテムで一つづつ回復する。
軽微なダメージなら気にしなくてもよいという作りである。
-
初期状態では体力は2つしかないが一部ステージに存在する特殊な敵を倒した初回に得られるアイテム「修羅玉」で一つづ増やせる。最大8。
-
ライフ以外のリソースとして巫力がある。時間経過や巫術の使用で減少し足より上が沈む様な水深の水面に立つと減少値が増える、敵を倒したりフィールド内回復アイテムの取得で回復。無くなるとダッシュ関連操作が出来なくなり生命力は時間経過で減るという通常時と逆転した状態となり先述の水面に立たなければいけない程度の深度の水面に触れると即死する。
-
装備品は祭器(武器)、霊符(魔術)、呪具(アクセサリ)の3種でそれぞれ一つしか装備枠は無い。ステージ内での装備変更も無し。
-
ステージ開始前の装備編制の3ヵ所の組み合わせで頼光のキャラ性能が決まる。装備枠は祭器以外は無装備状態にする事が可能。
-
祭器のみ使用する毎に「霊力」が消耗し諸性能が落ちていくためショップである「死鏡之祠」で「禍魂」を支払い霊力回復の「魂振之儀」を行い回復する。
-
「魂振之儀」は必ず霊力を最大値まで回復する値が要求されるので足りなかったりする場合は行わなくてもよく、また霊力は最低値まで落ちても祭器の最低限の能力は発揮可能である。
-
攻撃ボタンで祭器を振るう事で一部の敵の飛び道具は掻き消したり弾き返す事が可能。
-
巫術は装備品の霊符を装備する事で使用可能となり種類は蒼龍・鳳凰・鵺・胡蝶の4種でそれぞれが属性呼称(鳳凰 → 朱雀、鵺 → 白虎となるが)も兼ねている。また頼光本人の守備属性も装備した霊符に準じた状態になる。
-
また霊符は装備する事で頼光のパラメータの一部を強化する。巫術の威力や使用コスト、パラメータ補正値によって霊符毎に3段階に分かれており計12種である。
-
巫術ボタンを押し続ける事で術を溜めて放つ。溜めにより演出と性能が強化される事になっている。空中での溜め時には落下速度が低下する。
-
状態異常は火炎による炎焼追加ダメージを受ける「赤炎」「青炎」「黒炎」(右に行く毎にダメージ増加)、攻撃力・防御力・ジャンプ力を一定時間半分に下げる「呪縛」、巫力消費量を上げる「霜」、巫術を一定時間使用不可にする「沈黙」が有る。
-
フィールド内限定のアイテムとして「仙露」(体力1回復)、「九曜石」(巫力回復)、「龍眼石」(状態異常即時回復)、「朱雀天草」(一定時間巫力減少停止)、「甲骸」(一定時間防御力強化)、「白金牙」(一定時間攻撃力強化)が存在する。
-
これらはフィールドで取得する事で即効果が発動しストックなどは出来ない。また「霜」の様な巫力減少値上昇状態異常と「朱雀天草」のアイテム効果の様な相反する物に対してはアイテム効果が優先される。
評価点
-
独特の操作感
-
中距離を一呼吸の内に駆け抜けるダッシュ
-
二段ジャンプ・空中ダッシュが標準装備。かつ、空中ダッシュの回数に制限は無く、ダッシュor空中連撃を出している間は浮遊可能という空中での行動の自由度の高さ。
-
切り上げ(ダッシュ+弱攻撃)を出すと少しだが上昇も出来る。こちらはジャンプと違い巫力さえ有れば無制限に繰り出せるので空中での高度上げの基本となる。
-
回転を多用する舞の様な剣撃モーション
-
と、『デビルメイクライ』などの先達作品とは明確に異なる独自の操作感を築いている。空中移動の自由度の高さはステージの構成にも影響しており、広大かつ足場の悪いステージで空中を飛び回りながら戦うというシチュエーションがかなり存在する。
-
破壊表現の爽快さ
-
フィールド内にあるオブジェクトは大抵壊す事が出来る。箱や燈籠の様な小型の物は勿論、大きな壁や家屋までも壊れる物がほとんどであるが、MAPそのものを構成するオブジェクトは流石に破壊出来ない。破壊の際は派手な音と共に破片や瓦礫が飛び散る。本作が発売された当時としては珍しい要素。
-
ちなみに壊す理由は「不死の妖鬼の跳梁跋扈によって穢れてしまっている物を頼光の死を操る力によって死を与え浄化する」という物。その為ステージ破壊率は「浄化度」という表記を採っており破壊率が高い程「清められた」状態を示す表記となっている。
-
敵を強攻撃や巫術で吹き飛ばして当てた(当然自分がされた場合も)時にも壊れる。吹き飛ばし時の叩きつけには独立した属性の追加ダメージがあるので実用性も備えた爽快な攻撃手段である。
-
もっともこの仕様のせいでセーブデータに仔細な破壊状況のデータを逐次保存する為セーブデータの量は比較的大きめかつ書き込み回数が頻繁なのでHDDやメモリ等ハードに負担を掛けやすい。
-
独特な世界デザイン
-
和風ではあるものの現実の日本の歴史とは重なる所の少ないファンタジー世界設定である。
デザイナーのイマジネーションを反映し当時としては美しい幽玄なグラフィックで描かれる主人公、敵、ステージデザインはなかなか秀逸。
-
武器の多さ
-
武器の基本系統は剣、槍・棍、大剣、双剣の4系統だが武器の数は計33種とかなり多い。
かつ、それぞれデザインが異なりフレーバーレベルだが凝った説明文が付いており、また単純な上位互換・下位互換関係の武器もあまりない。
-
フロム・ソフトウェアの看板とも言える武器「ムーンライトソード」も存在。
全てのパラメータが高いあからさまな最強武器であり外見、振った時の効果音共にカッコいい。お馴染みの光波を放つ事も出来る。
ただし入手条件は厳しく、最速でもラストステージの直前でしか入手出来ないのでほぼ2周目プレイ用の武器となっており他の武器の居場所を奪う事にはなっていない。
問題点
-
カメラ関連
-
国内でまだFPS/TPSが流行していない時代の作品だからなのか、カメラ操作の向きがそれらとは逆である。つまり右スティックを右に倒すとカメラは左に向く。2020年代の現在から見ると強烈に違和感を催す操作系であり、またこれを反転させる設定も無い。
-
他にもカメラの旋回速度が遅い、ロックオンしたい敵にロックオン出来ないことが多い、オートカメラ調整が効き過ぎてプレイヤーの意図を反映してくれない事があるなどストレスの溜まる仕様が見られる。
-
技の少なさ
-
基本的に弱攻撃・強攻撃とその押し順により変化するコンボ(最大4段)と切り上げ、ダッシュ攻撃、巫術のみである。
武器が4系統有り系統毎の技は有るとはいえ武器そのものに固有の技があったりする訳ではない。
『デビルメイクライ』や『ニンジャガイデン』辺りに慣れてからだと出来る事が少ない様にも感じられる。
-
装備品の性能の分かり難さ
-
装備品には各種パラメータが存在するが表示されるのはその内の最低限度の物のみ。しかも装備の細かい性格に繋がる様なパラメータは大半が隠しになっている。先述のテキストに記されているのは本当に装備の「基本となる性質」のみである。
-
また大半の武装に防御系のマイナス補正パラメータが存在するがそのほとんどは先述の隠しパラメータ部分に存在する。その為武装の持ち替えをして攻撃を受けるなどした際大抵「弱くなった」感が強くなり結局は武器の持ち替えよりマイナス補正の少ない強武器を使い回す方が得になってしまい、武器を好みで持ち替える意義が薄い。
-
難易度
-
戦闘自体に厳しいものはほとんどなく、フロム・ソフトウェア作品としては簡単な部類ではあるのだがステージの特性で行動を縛ってくるパターンがしばしばあり、イライラさせられることも。
-
ゲーム自体の基本設計が「とにかく素早く敵を攻撃し相手の攻撃は基本移動による回避で躱す」物でかつ巫力はただ突っ立ってるだけでも減っていくので移動や攻撃を急かされ強いられてる感が強い。
-
特にストレスに感じられるのは式神を護衛してゴールまで導くステージ。式神があまりに脆く、攻略法を確立するまでは何度も断末魔を聞くことになる。
-
また自動で敵をホーミングする複数の龍が現れ命中率が非常に高く威力も低くない上に多数の敵にも対応可能である巫術「蒼龍」連射が最適解というシチュエーションがかなり多い。ロックオンすら必要ない場合もあり、アクションゲームとしてはやや問題に思われる。
-
他の術は1体から3体の鳳が現れ敵に直線的に突撃する「鳳凰」や、周囲に雷が落ちる「鵺」に加え、蝶の群れが前方一定範囲に発生し飛んでいく「胡蝶」があるのだが鳳凰は貫通や発火の追加ダメージが有るが数が少なくロックオンしても低いホーミング性等、鵺は頼光の周囲を攻撃するが内側に隙間が有ったり属性的に弱点としている敵が少ない事等、胡蝶は唯一溜め無しでも吹き飛ばし属性を持つが吹き飛ばしにより距離が過剰に離れたり弱点としている敵が少ないが相手の攻撃属性や状態異常、トラップが反属性の朱雀(鳳凰)系が多いので弱点が増える等、利点より欠点が目立ち易い。
-
また蒼龍の霊符はパラメータ補正の種類が「ライフ回復力の増加」なので知らずにその恩恵に与ってる場合が多い。他は状態異常変化率低下(鳳凰)、防御力上昇(鵺)、ジャンプ二段目の跳躍力上昇(胡蝶)なので知らないとその恩恵を感じ難い。
-
溜め巫術の使い難さ
-
溜め巫術は使用の際動きが止まり敵の攻撃を受けると解除される。これ自体は別段変わった事でも問題点でもないが先述の通りゲームの基本設計は「移動回避で躱す」なので敵の攻撃が当たり易い。
-
また一応溜めの段階に応じて性能やエフェクトに変化が付く事になってはいるが実際はエフェクトも性能も変化に乏しい。公式攻略本でも「溜め無し」と「溜め有り」の変化は記されている物の「溜めの段階での変化」については記されていない。
-
しかも弱コンボの最終段を巫術にした場合に出せる溜め版巫術が使い易い為増々止まって溜める意義が薄くなってしまう、先述の「蒼龍連射が最適解」というのはこのコンボ版の乱射の使い勝手が良過ぎるのが主因である。
-
キャラの薄さ
-
もはやフロムソフトウェアの芸風とも言えるが、3Dアクションゲームというジャンルでは少々行き過ぎな感がある。
-
ただし、攻略本等でのフロム側の本音としては「もっと書籍等で出したかった設定画などは有る」との事。この辺りは広報系が上手くいかなかった部分も大きいのだろう。
-
キャラクター扱いとして良さそうなのは主人公の頼光、その指示者のヨモツヒラサカヒメ、酒呑童子、ラスボスの4人くらい。酒呑童子とラスボスは特定ステージで出てくるだけのゲスト敵キャラなのでレギュラーキャラと言えるのは頼光とヨモツヒラサカヒメだけである。
-
頼光は全く喋らないし表情や仕草で感情を表すこともない。ただただヨモツヒラサカヒメの指示に従い戦うだけでロボットの様な無機的な印象さえ漂う。キャラデザインそのものはカッコいいのだが。
-
その傾向は一般の自己投影アバター型キャラクターよりも際立っているので却って自己投影がし難い。
-
ヨモツヒラサカヒメはこのゲームで一番喋るキャラ(オペレータ的存在なので当たり前)だが最初から最後まで一切姿を見せない。これはモチーフ元の時代である平安時代の「貴人はみだりに人前に姿を見せない」という価値観に準じた物。ちゃんとした姿の設定画は有るがこちらは意図的にユーザーには伏せる方針となった為社外秘状態になっている。
総評
爽快かつ独特で雰囲気が美しいアクションゲーム。問題のある仕様が多く良作と言い切るにはためらいが残る。
だが、アクションゲームファンまたはフロム・ソフトウェアファンならば一度プレイする価値はあると言える。
続編の『百鬼討伐絵巻』も含めて本作シリーズは「最も評価されなかった賞」を米国で受賞しており、米国内での受けやゲーム自体のポテンシャルは悪くなかった事が窺える。
余談
-
続編『O・TO・GI ~百鬼討伐絵巻~』のスペシャルパックには、本作の海外版『O・TO・GI Myth of Demons』が同梱されている。
-
テキストが全て英語表記となっている他は日本語版との違いはほとんどない。続編をプレイするつもりがあり、独特な金文体フォントの日本語テキストにこだわりがないならこちらで済ませてしまうのもいいだろう。
-
2021年11月にXboxの後方互換ライブラリに続編と共に追加され、One/XSXでもプレイ可能になった。
最終更新:2023年05月20日 16:00