SWAN SONG

【すわん そんぐ】

ジャンル アドベンチャーゲーム

画像掲載自粛

対応機種 Windows 98/98SE/Me/2000/XP
廉価/DL版:Windows XP/Vista/7
発売・開発元 Le.Chocolat meets FlyingShine
発売日 2005年7月29日
定価 8,800円(税別)
レーティング アダルトゲーム
廉価版 2008年7月31日/5,800円
配信 2012年6月1日/3,024円(税8%込)
判定 良作
ポイント 大震災後に生きる人々を描く
一般小説に近い文体


その時、人は絶望に試される。


概要

FlyingShineが開発し、Le.Chocolatブランドで発売されたアダルトゲーム。

原画は「川原誠」、シナリオは「瀬戸口廉也」が担当。
2004年5月14日に発売されたS.M.Lの『CARNIVAL』と同じ組み合わせである。

タイトルロゴとUIデザインを担当したのは『さよならを教えて』で有名な長岡建蔵氏。

ストーリー

クリスマスイヴの日に起きた大地震により世界は一変した。
地面は裂け、建物は崩れ、人々は悲鳴をあげる。
奇跡的に生き延びた尼子司と八坂あろえは教会へ出向き、同じく生き延びた若者と出会う。

主要キャラクター

男性

  • 尼子 司
    • 一人暮らしの学生。冒頭はこのキャラの目線で語られる。
    • 基本的に無表情なため、性格を掴みづらい。
  • 田能村 慎
    • フリーターの青年。明るい性格でカリスマがある。
    • 運動神経が優れており、活躍の場が多い。
  • 鍬形 拓馬
    • オタクの青年。正義感が人一倍強い。
    • 自分にコンプレックスを持ち、ネガティブ気味。

女性

  • 佐々木 柚香
    • 美人の大学生。料理が得意。
    • 周りを気遣う性格で仲間と助けあう。
  • 川瀬 雲雀
    • 柚香と同じ大学に通う学生。気が強く思ったことははっきり言う。
    • わがままな面もあるが、仲間を励ます一面も見られる。
  • 八坂 あろえ
    • 自閉症の少女。コミュニケーションに難がある。
    • 自分の好きなように行動して、周りを引っ掻き回す。

特徴

  • ビジュアルノベル形式
    • テキストウインドウは設けられていない。
    • 左半分にCG、右半分にテキストといった表示もある。
    • 立ち絵は存在せず、一枚絵やカットインで人物が表現される。
  • 群像劇
    • 主要キャラクターの項目で述べたうち、あろえを除く5人の目線で進行する。
  • 選択肢が何度かある
    • 選択肢によっては即座にバッドエンドに到達する。
    • 一度エンディングを見ることで増える選択肢もある。

評価点

  • テキスト
    • 淡々としながらも事実を分かりやすく描写している。
    • 心理描写は特に優れており、非日常で生きる人々の不安や希望を力強く訴えてくる。
    • 難読漢字にはルビが振られている配慮もある。
  • 先の見えない恐怖と緊張感
    • 冒頭で平和な一時が一瞬で奪われ、現状の把握に勤しむこととなる。
    • ラジオが通じず、地震の被害範囲がはっきりと把握できない。
      • 数日してもヘリコプターなども見当たらず、「自分達が最後の生き残りかもしれない」と思わせる説得力がある。
    • 雪が降り続けることで、体力の消耗が激しいことも絶望に拍車をかける。
    • やっと人と出会えたと思ったら、無秩序となったのをいいことに暴力を振るう人物であったりと、緊張感が保たれている。
    • プレイヤーの倫理感を問う選択肢も緊張感を高めている。
  • ほのかに光る希望
    • 絶望的な舞台のために、協力できる人物やコミュニティを見つけられたときの喜びは一塩。
    • そんな中でも食糧の危機などの問題が山積みであり、緊張感も保たれている。
  • キャラクターの信念
    • 群像劇であることを生かし、主要人物の内面を色濃く描写している。
    • カットインの存在しない人物も、自分本位な大人や力なき子供など様々な人生観が語られる。
    • 殺人を厭わない人物についても、倫理感はともかく心情的には理解できるように描写されている。
    • Normalエンドにおける、絶望の中で生き延びた人物の最後の行動の評価は演出も相まって特に高い。
  • グラフィック
    • 萌えとは違うキャラデザであり、衣装も現実的なものに落ち着いている。
    • 作風にあったデザインだと言える。
  • BGMやSEは効果的に使われている。

賛否両論点

  • 主要キャラクターの性格に多少の癖がある
+ ネタバレ
  • 司と柚香は過去が特殊なため感情移入はしにくい。
  • 慎は戦闘においての活躍が顕著すぎるとも言われる。
  • 拓馬はエロゲーマーが感情しやすいが、途中で性格が一変する。
    • 性格の変化に関して十分な積み上げがあったかは賛否分かれる。
  • あろえは絶望的な状況を理解しておらず、コミュニケーションが独特。
    • あろえ目線が存在しないこともあり、キャラの存在意義に賛否がある。

シナリオゲーとして名を馳せたエロゲのため、キャラに関する様々な見解は賛否共にネット上で見られる。

  • 一部の演出
    • 地震を表現するために文字が揺れる演出があるが、単純にテキストが読みにくくなる。
+ 終盤の選択肢
  • 正しい選択肢で場違いな「ピンポーン♪」という効果音と共に拍手される。
    • 他の選択肢はすべて無音のためインパクトが強い。
    • 「狂気の中では異常が正常」ということを皮肉った演出だが、単に場違いだと感じたユーザーもいる。
  • デザイン重視のシステム
    • タイトル画面やコンフィグの項目が全て英語。かつ走り書きしたようなフォントを採用。
    • 未読スキップは「Stop New Scene skipping」といった具合。
    • 18歳なら常識レベルの英語しか使われておらず、雰囲気作りの一環ではあるが、一見では分かりにくい。
  • Trueエンドの内容
+ ネタバレ
  • いざこざを解決したら、これまでずっと雪空だったところに陽が射して希望を得る。という内容。
    • 大地震が起きた経緯など情景は深く描写されておらず、心理描写に比重が置かれているため、唐突に感じやすい。
    • Normalエンドの方が好きだという意見が根強いが、TrueエンドもNormalとの対比となっており、意味はあるとする意見もある。

問題点

  • エロゲという媒体と噛み合わない点
    • 長文の台詞が結構あり、文字だけならともかくボイスがあるため読みにくい。
    • 細かく描写するテキストのため、絵による視覚的な情報の意味を薄く感じる場面がある。
    • これらは小説であれば自然ではあるが、絵・声・音などを絡ませるエロゲでは不自然に映る。
  • 一部ではあるが誤字や誤変換がある。
    • 修正パッチVer1.2が配信されているが、システム周りしか改善していない。

総評

秩序を失った大震災後の世界で生きる人々を描いた傑作。
一般的なエロゲと違う文体は賛否あるものの、テキストとシナリオに魅入られたユーザーは多い。


余談

  • テックジャイアン2005年7月号の付録に前日談「プレ・スワンソング」が収録されていた。
    • 現在は公式HPで公開されている。
    • 冒頭を遊べる体験版と合わせて、雰囲気を知るのに役立つ。
  • パッケージは雪の中で胸を露出して寝転がるあろえ。
    • パッケージで胸を露出している非抜きゲーは珍しい。
  • 一時期は中古相場が高騰して1万円を超えていた。
    • 廉価版やDL版が発売されたことで、現在は価格が落ち着いている。
    • しかし、ドラマCDは依然として高騰中である。
  • 「佐々木柚香」の声優はキャラ名と同じ「佐々木柚香」である。
  • シナリオライターの「瀬戸口廉也」は「唐辺葉介」に名義を変えて、「PSYCHE」で小説家としてデビューした。
  • 現在「Le.Chocolat」の公式HPは彩文館出版に管理されている。
    • 「FlyingShine」は公式サイトが消滅している。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2021年09月25日 23:14