セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~
【せかんどのべる かのじょのなつ じゅうごふんのきおく】
| ジャンル | 青春-自己-探索-ミステリアス-認識-アドベンチャー |  
 | フラグメントモード | 
| 対応機種 | プレイステーション・ポータブル | 
| 発売元 | 日本一ソフトウェア | 
| 開発元 | テクスト。 | 
| 発売日 | 2010年7月29日 | 
| 定価 | 4,980円(税別) | 
| 判定 | 賛否両論 | 
| ポイント | 良くも悪くも人を選ぶシステム 豪華ライター&絵師によるゲーム小説
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概要
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やや複雑な発売経緯を持つ。
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元は『True Color,』というパソコンでの配信が予定されていた作品を、コンシューマ向けに再構築したものが本作である。
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詳しくはげっちゅ屋のインタビューを参照。
 
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予約特典は『ファーストノベル文庫』という文庫1冊。
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作中作でもあり、ゲーム内でもすべて読むことができる。
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5人のライターと絵師による小説が、オムニバス形式で5つ収録されている。
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ライター及び、絵師がとても豪華であり、話題を呼んだ。
 
    
    
        | + | 作品と担当者一覧 | 
『二十一番の喪失』 市川環 イラスト:いとうのいぢ『終わらない階段』 田中ロミオ イラスト:o-ji
 『音の色』 唐辺葉介 イラスト:若月さな
 『夏影』 海猫沢めろん イラスト:亜方逸樹
 『たまねぎ現象には理由がある』 元長柾木 イラスト:kashmir
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ライターとスクリプトを担当したのは『書淫、或いは失われた夢の物語。』等を担当した深沢豊氏。
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物語と密接に結び付いたゲーム性が特徴で、癖の強い作品が多い。
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商業ゲームとしての活動は10年ぶりだが、相変わらず癖の強い作品に仕上がっている。
 
ストーリー
「ねぇ、こんなお話知ってる?」
久しぶりに母校を訪れた直哉の横で、綾野は『物語』を語りはじめる。
それは、どこかの高校を舞台にアヤノやユウイチという生徒が登場する話……
どうやら高校時代の綾野が、自分たちをモデルにして書いていたものらしい。
直哉と綾野は『物語』を通じて、懐かしい高校生活をたどっていく。
高校2年の夏、直哉は大切なものを2つ失った。
親友だったユウイチは、後者の屋上から転落して命を落とした。
そのあとを追うように、直哉がひそかに想いを寄せていた少女――綾野も屋上から飛び降りた。
あれから5年――
今の綾野は、現在の記憶を15分しかとどめておけない。
飛び降りた時の強い衝撃により、記憶障害を抱えている。
彼女の心の時間は、17歳の夏から止まったままだ。
自分がなぜ飛び降りたのかも、記憶の混乱により思い出せずにいる。
綾野が語る『物語』は、彼女の高校時代の物語。
この『物語』の先を知ることで、自殺と結論付けられたユウイチの死、
それに続く綾野の飛び降りについて、また違った見方ができるようになるかもしれない。
(公式サイトより抜粋)
特徴
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ストーリーモードで物語を読み進める。
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直哉と綾野は、『5年前の出来事』の真相を探る。
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綾野の語る『物語』をたどり、真相を見出すのが目的となる。
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『選択肢』が表示されることもあり、その場合は分岐する。
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ただし、綾野は15分しか記憶を保てない。最大15分の物語を語ると、『物語』が途切れてしまう。
 
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フラグメントモードで『あらすじ』『選択肢』を作成。
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あらすじを作成し、短期間で綾野に説明をすることにより、物語の続きを聞けるようになる。
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特定の単語やイベントはカードとして、登録される。このカードを使い綾野のためにプレイヤーは『あらすじ』を作る。
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場合によっては、『選択肢』を作り、新たな『物語』の展開を作る。
 
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ストーリーモードを読み進め、詰まったらフラグメントモードで作成。
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いくつかのセクションに分かれている。
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セクションによって主人公が変わる。他視点による補完もあれば新展開もある。
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セクションを終えるごとに、作中作の小説が解禁される。
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本編との繋がりはないため、任意のタイミングで読むと良い。
 
 
評価点
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物語と密接に結び付いたシステム
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物語を読み、解釈し、新たな展開を切り開くことができる。
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難しいが、そのことにきちんと意味がある。
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複雑にもかかわらず、バグの類はなく完全に詰むことはない。
 
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しっかりと練られたシナリオ
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序盤から伏線が張ってあり、ほとんど矛盾なく回収される。
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心理描写も丁寧。どのキャラも自然な考えで行動する。
 
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CG、BGM、SE
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目立ったものはないが、堅実にシナリオを盛り上げている。
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余談だが、深沢氏は絵師に恵まれておらず、過去作はCGで評価を落としていたものが多かった。
 
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千秋が可愛い。
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小学生でありながら、大人びた雰囲気をまとっており、それでいて時折子供らしさを見せる。
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本作はギャルゲーではないので、キャラの可愛さは重視されないが好評。
 
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作中作『ファーストノベル』の出来が良い。
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豪華ライターと絵師による短編はいずれも評価が高い。
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未成年が、元長柾木氏の文章に触れるチャンスでもある。
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氏の作品はコンシューマ移植されていないエロゲーが多かったため。
 
 
賛否両論点
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真実に関して
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作中内の情報ですべてを明らかにするのは不可能であり、プレイヤーは与えられた材料で考察するしかない。
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が、後述するようにシステムの関係で、読み直しは面倒。
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これらを受け入れて、『物語』の真実を考察する魅力を感じるかどうかで、本作の評価は大きく変わってくる。
 
問題点
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序盤が退屈
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序盤は普通の学園での出来事が続くため、ダレてしまいがち。
 
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詰まりやすい。
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物語をよく読めば先は開けるが、一度解釈などを誤ってしまうと先が読めなくなる。
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一応ヒントなどは出るが抽象的なものが多い。
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攻略サイトを参考にするにしても、現状の把握やカードの入手状況を確認する手間がある。
 
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スキップして一気に読み進めることができない。
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ストーリーモードは頻繁に『物語』が途中で止まり、フラグメントシステムで作成する必要があるため。
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スキップしてしまうと、物語が理解できなくなり、フラグメントシステムで回答できなくなる。
 
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「本作を合わないと感じ、気に入らない部分を飛ばす」「途中放棄してオチだけを確認する」といったことはできない。
 
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システム面
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Lボタンでバックログを開き、上ボタンでバックログを戻す。L、上と2度手間である。
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ただしLボタンに設定したのは選択肢などでもバックログを見れるようにするためと思われる。
 
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『あらすじ』を作成するたびに、『あらすじ』を作成した説明が出る。
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説明は既読スキップできるが、テンポを阻害する。表示するのは1回目だけで良かったのでは?
 
 
総評
エンドロールにたどり着くには『物語』を読み込む必要があり、プレイヤーの読解力が試される。
独特のシステムを『作業』と感じるか『物語を作り出す』と感じられるかで評価は変わってくる。またラストも人を選び、合わない人には合わない。
このように人を選ぶ要素の多い作品ではあるが、深沢作品の中では手が出しやすく、体験版で本作に触れることもできる。
よく吟味したうえで合いそうだと感じたら、購入すると良いだろう。
関連作品紹介
以下の作品を連想させるキーワードが『物語』に登場する。
どちらも18歳未満禁止なので注意。後者は一見全年齢対象に見えるが、ライセンスに18禁と記載されている。
書淫、或いは失われた夢の物語。 (2000年7月15日 発売元:Force)
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Forceの4作目。ゲームでしかできない表現により、傑作とされている。
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当時は評価されず、ワゴン価格にまで落ち込んでいた。
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Forceは本作を最後に解散。現在では40万円近いプレミア値がついており、入手困難。
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しかし、廉価版やDL版がないため、遊ぶにはパッケージ版を購入するしかない。
 
忘れものと落とし物 for Windows (2005年12月25日 発売元:LANGuex)
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原作は1997年4月にHTML上で公開されたアドベンチャーゲーム。
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『忘れものと落とし物 for Windows』としてWin向けにアレンジした作品が公開されている。
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日記を読み進める独特なシステムだが、難易度は低め。
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ラストでは『True Color,』の予告編がある。
 
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無料配布されており、任意で金額を支払うカンパウェアである。
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無料ということもあり、『セカンドノベル』の前に遊ぶと良いだろう。
 
参考リンク
最終更新:2023年01月12日 10:16