Mortal Kombat (2011)

【もーたるこんばっと】

ジャンル 対戦格闘




対応機種 プレイステーション3
Xbox 360
プレイステーション・ヴィータ
Windows
発売元 Warner Bros. Interactive Entertainment
開発元 NetherRealm Studios
発売日*1 【PS3/360】2011年4月19日
【PSV】2012年5月1日
【Win】2013年7月3日
レーティング ESRB:M(17歳以上対象)
備考 日本未発売
判定 良作
ポイント Armageddon』以前の物語を一新
『4』までの2D格闘の路線に回帰
ウリのゴア表現もトップクラスに
Mortal Kombatシリーズ


概要

海外で絶大な人気を誇る残虐格闘ゲーム『モータルコンバット』シリーズの本編シリーズの9作目。
タイトルが初代と同じく『Mortal Kombat』となっていることからもわかるように、本作のテーマは原点回帰である。
システムを『トリロジー』までのいわゆる「実写時代」及び『4』までの2D格闘に回帰。
ストーリーも『アルマゲドン』の後から過去*2にタイムスリップするという内容になっている*3
初代と区別するため、『MK2011』や『MK9』と呼ばれることが多い。


新システム

  • スーパーメーター
    • 画面左下に表示されているメーターで、スペシャルムーブを発動したりダメージを受けたりすると溜まっていく。 画面内側から順にエンハンスコンボブレイカー、そして下記するXーray MOVEを発動するポイントがあり、そのポイントに達していればそれぞれの技が発動できる。
    • エンハンスは強化されたスペシャルムーブを使うことができ、コンボブレイカ-は相手のコンボ中に発動することで相手を強制的にダウンさせる技で、ガードしながら相手の攻撃に合わせてタイミングよくコマンドを押すと発動できる。
      • エンハンス → コンボブレイカー → X-RAYの順にメーターの消費量が多くなっていく。消費量はポイント単位となっており、例えばコンボブレイカ-では2ポイント分消費する。
  • X-RAY MOVE
    • 上記したスーパーメーターを最大まで溜めると発動できる。いわゆる「超必殺技」に当たるポジションである。
      • 初撃を当てれば一気に相手の体力を3~4割程度奪える一発逆転の技であり、かつ上記のアクションに使うスーパーメーターを全部使うため、使いどころが求められるシステムである。
    • XーRAYの名が示す通り攻撃が当たった際にレントゲン写真のように相手の体を透過して骨がバキバキに折れたり内臓が潰れたりといった痛々しいシーンが写る。中には明らかに脳などの急所を貫通*4するなど、常人なら確実に即死しそうなものも存在するが、人としての原型を留めている限り戦い続けるという本シリーズのキャラクター達のタフさが身をもって実感できる技と言えるだろう。
      • ちなみにこのX-RAY MOVEは、2008年にミッドウェイが出した『Blitz: The League II』と言うアメフトゲーが前身ではないかと思われる。
      • 相手選手に接触した際に挿入される、本作のX-RAY MOVEのような「筋肉剥き出しの体から背骨がヘシ折れたり、血管内が破裂する」などの痛々しい演出は、この時から既に完成されていたようだ*5

評価点

  • 2D時代の操作性の回帰
    • 3D格闘になり、バトルスタイルも複数用意された『Deadly Alliance』以降どうしても操作が複雑になったりスタイリッシュさが薄れたりといった声がちらほら上がっていたが、本作では2D時代と同じく1つのバトルスタイルになり、シンプルな操作で多数のコンボを組めるようになった。
    • 攻撃のスピードも全体的に速く、キャラクター達の動きもきびきびしているため非常にスタイリッシュかつハイスピードな戦いを楽しむことができる。
    • それでいて難易度も実写時代に比べて抑え目になっており、モーコン初心者から上級者まで楽しむことができる。
  • 実写時代のキャラクターが軒並み集結
    • スコーピオンやサブゼロなどの人気キャラクターはもちろんシーヴァやストライカーなど比較的マイナーなキャラクターもしっかり参戦している。
      • どのキャラクターも実写時代の特徴をうまくとらえたグラフィックと戦い方で、ファンからの評判も上々。
    • ただし『トリロジー』のカメレオン(♂♀)と『3』のモタロー*6は参戦していない。
    • ただカメレオンについては他キャラの技を流用したいわゆる「コンパチキャラ」であり、モタローに関してはその特徴的なフォルムからモデリングやモーション付けが非常に難しいといった背景があるため仕方がない部分もあるかもしれない。
    • サブゼロ(兄)*7や老人姿のシャン・ツンもコスチュームチェンジで使うことができる。姿のみならず声も変わるなど芸が細かい*8
  • 美しいグラフィックとそれを活かした強烈なビジュアル表現
    • HDハードとUnreal Engine 3のパワーをうまく活かしており、グラフィックは歴代シリーズはもちろん当時の他の格闘ゲームと比較しても屈指の美しさを誇る。
      • PSV版はマシンスペックの関係上かなりグラフィックが簡略化されているが、それでもPSVとしては健闘している方で、飛び散る血飛沫や砕け散る骨など残虐描写もきっちり表現されている。
      • グラフィックを犠牲にした分バトル中は据置版と同じく60fpsで動作する。ただし、X-RAY・フェイタリティなどプレイヤーの操作が影響しない部分は30fpsとなる。
    • そしてただ美しいだけで終わらせないのが『モータルコンバット』であり、シリーズの目玉である残虐描写も歴代トップクラスの出来になっている。
      • 前2作で地味な印象を与えてしまったフェイタリティも、本作では美しいグラフィックを活かしてシリーズ屈指のグロさや痛々しさを実現している。
      • 普通なら賛否が分かれそうな部分だが、本シリーズはむしろ「やりすぎなレベルの残虐描写」をウリにしているシリーズであり*9、ファンもそれを期待しているために本作の方向性は多くのファンから高い評価を得ている。
    • 上記した新システムの超必殺技X-RAY MOVEもフェイタリティに負けず劣らずの強烈なものが揃っており好評である。
  • やり込み、サブ要素も充実
    • バラエティ豊かなミッションの下でバトルが楽しめる「チャレンジタワー」は300階もあり、かなりボリューミーである。
      • 上に上がるにつれルールが凝ったものになり、純粋な戦闘難易度も上昇していくため、上級者でもやりごたえのある戦いを楽しむことができる。
      • PSV版はさらに「ボーナスチャレンジタワー」が用意されている。PSVのタッチスクリーンやジャイロセンサーを活用した一味違ったミッションを楽しむことができる。
      • どうしてもクリアできない人のためにスキップ機能も用意されているため、苦手なミッションが出たときでも安心。ちなみにスキップにはゲーム中でためられるコインが必要で、難しいミッションほど多くのコインが必要になる。
    • お馴染み「TEST YOUR ○○」もお馴染みの「MIGHT」や「SIGHT」はもちろん、新たにルーレットでランダムに決めた条件下でバトルする「LUCK」が追加された。
      • 腕、頭がちぎれた状態で戦う等モーコンらしいユニークなルールが揃っている*10。ルールによっては(運やタイミングも影響するが)最高難易度でFLAWLESS(ノーダメージ)も手軽に狙えるものも。
    • PSV版は更に「BALANCE」「SLICE」も追加されている。前者はジャイロセンサーを使って飛んでくる障害物から耐えつつ細い鉄骨から落ちないようにバランスを取るもので、後者は爆弾*11や残り時間が減る赤いタイマーに気を付けながら飛んでくる内臓や人間の頭をタッチスクリーンを使ってスライスするというものになっている。
  • 豪華なゲストキャラクター
    • ホラー映画ファンの間で有名な映画『エルム街の悪夢』のフレディ・クルーガーと、本シリーズと同じく残虐描写をウリにしているアクションゲーム『ゴッド・オブ・ウォー』のクレイトスがゲスト参戦しており、ファンを驚かせた。
      • 双方とも原作のイメージを残しつつモーコンのキャラクター達に勝るとも劣らない戦いっぷりを見せてくれる。もちろんフェイタリティやLADDERモードのストーリーも完備している。
    • そしてこのビッグスター達に対しても容赦なくフェイタリティすることができる。 双方ともいわゆる「そっち系」の作品のキャラクターなのだが、普段は版権など大人の都合上こういったことが妥協されがちなゲストキャラクターに対してもお構い無しに残虐な洗礼を施す光景は流石「モータルコンバット」と言ったところ。
      • 「VS DC」の相手が全世界で有名なヒーローだからとためらってしまった*12反省が活かされていると言えるだろう。
  • ファンサービス要素
    • ステージセレクトでスタートボタンを押してステージを選ぶと、一部ステージでは音源がアーケード時代のそれになる要素がある。対応するステージの場合、選んだ際にナレーターの笑い声が響く。
    • フェイタリティの技に関してもアーケード時代の要素がそれとなく入っており、アーケード時代を知るプレイヤーは衝撃的ながらも懐かしく、感慨深い気持ちになるだろう。
    • そして「トッシーおじさん*13」や「ベイバリティ*14」といったネタ要素も復活している。
      • トッシーおじさんについてはなんとわざわざハイレゾ画質で撮り直してさらにトーストが印刷されたシャツを着て登場するというこだわりぶりを見せ、ベイバリティについては、赤ん坊になった相手キャラクターが個性を活かした可愛らしい仕草を見せる。どちらもシリーズファンなら必見である。

賛否両論点

  • 『4』以降のキャラクターが軒並みリストラされている。
    • たしかに『4』以降のキャラクターの多くは技や容姿にどこか既視感があり、賛否が分かれがちだったのだが、根強いファンが居たのも事実であるため、そうしたプレイヤーからは嘆きの声がちらほら聞かれる。
      • ただ本作は上記したようにあくまで『MK1』~『MK3』の世界が中心なので、仕方が無いところでもある。
    • 一方、例外的にクァン・チーとケンシは続投している。これについては2人共『4』以降のキャラクターでは群を抜いて高い人気を誇っているためであり、この人選についての批判はほぼ存在していない。
  • 強すぎるLADDERモードのボスキャラ達
    • 道中ランダムに選ばれるキャラクターは難易度相応の振る舞いを見せるが、ボスキャラとなるシャン・ツン、ゴロー/キンタロー、シャオ・カーンは最低難易度の「BEGINNER」であっても容赦ない攻撃を仕掛けてくる。
    • シャン・ツンに関してはお馴染みの変身能力とコンボを駆使して戦ってくるが、プレイヤーのシャン・ツンと同じく変身中は攻撃力が上がるため、油断していれば変幻自在のコンボと相まってHPがゴリゴリ削られていく。
    • ゴロー/キンタロー、そしてラスボスとなるシャオ・カーンは高い攻撃力に加えてガード破り・投げ封じの特性を持っている。
      • それに加えて防御力も非常に高く、X-rayを含むこちらのあらゆる攻撃のダメージが半分以下になってしまうため、慣れないうちは長期戦になったりコンテニューを連発したりといったことになりかねない。
      • シャオ・カーンに関しては負け続けると挑発して無防備になる頻度が増えるため、あきらめずに戦えばいずれ勝機はつかめるだろう。

問題点

  • 360版及びWin版について
    • 事情を知っている人なら言うまでもないがクレイトスはソニー・インタラクティブエンタテインメント*15のキャラクターなのでPS3/PSV版のみの参戦となっている*16
    • これだけなら仕方が無い事なのだが、問題なのは360版及びWin版限定のキャラクターや要素が存在していないという点で、コントローラーの操作性にこだわるプレイヤーでなければそちらのユーザーが純粋に損をすることになってしまう。
      • とはいえ、360版はフルインストールすることでロードが早くなったり、PS3版より若干解像度が高かったりと全く利点が無いわけではない。ただ、解像度に関しては比較してじっくり見比べない限り本当に気付かないレベルの微差であるが*17
      • Win版についても一応有志が制作したModが配布されているが、当然メーカーの保証対象外なので使用する際は自己責任で。

総評

原点回帰を図った本作は、これまで(とりわけ『アルマゲドン』にて)迷走を続けたストーリーやシステムを実写時代のスッキリとしたものに立ち返らせ、シリーズの新たな方向性を決定付けることに成功したと言えるだろう。
本作の路線は次回作の『X』でも採用されているため、これからのシリーズの入門用としてもオススメ出来る一作である。
とは言えシリーズの常ではあるものの、本作の残虐描写は本当に容赦が無いので、その部分は心に留めておいた方がいいだろう。


余談

  • 本作のフェイタリティがあまりに過激だった故か、「検索してはいけない言葉」Wikiにノミネートされてしまった。
    • 危険レベルは7段階で3(検索する際は慎重な判断を)となかなか重い。もっとも、モータリアン(当シリーズを愛するファン)にとっては「むしろこうでないと」と受け止められているが。
      • とりわけ本作のヌーブ・サイボットのフェイタリティの一つである「Make a Wish*18は各地で話題になった。詳しくはここでは伏せるが、本作のフェイタリティの中でも屈指の残虐性と痛々しさを誇るので気になる人は(自己責任で)調べてみると良いだろう。
    • 「検索してはいけない言葉」の名に違わず検索エンジンで「モータルコンバット」と調べただけでフェイタリティなどの本シリーズのグロテスクな画像や動画がこれでもかというほど出てくるため、苦手な人は本当に注意が必要である。
    • 言うまでもないが次回作の『X』ではさらに残虐描写が過激になっており、ますます(苦手な人にとっては)「検索してはいけない言葉」になっている。
  • 本作のクァン・チーの戦闘中の掛け声の1つに「Woolay!*19」と聞こえるものがあり、真面目な悪役として活躍している彼のイメージとのギャップがファンのツボにハマったのか、主に海外でネタにされた。
    • 公式及びクァン・チーの声を担当したRonald M. Banks氏*20もこの事を熟知しているのか、Twitter等でクァン・チー関連の話題の中で「Woolay」と発言したこともある。
    • また、本作のPS3/PSV版にゲスト参戦しているクレイトスと容姿が似ている(スキンヘッド・真っ白な肌・タトゥーなど)ということも挙げられ、これまた国内外でネタにされている。
  • 本作は残念ながら日本国内で正式に発売されていないが、全ハードでリージョンフリーなので、輸入版を購入することで国内の本体でもそのまま遊ぶことができる。
    • ただし、ハードメーカーの保証対象外なのでその点は注意。
  • 本作発売後、追加コスチュームや追加キャラクターが配信されている。前述のフレディもDLC配信キャラの1人。
    • 他に配信された追加キャラは『UMK3』のレイン、『MK:DA』のケンシ、『MKII』のバグで存在が噂されたキャラであるスカーレット。
    • 後にこれら全DLCを同梱した『Mortal Kombat Komplete Edition』が2012年の2月末に発売されている。
    • PSV/Win版の発売は上記した完全版の後の発売になっているため、最初から『Komplete Edition』の形でリリースされている。
      • Win版は現在SteamでもDL配信されているが、いわゆる「おま国」のため日本からストアページを閲覧することはできず、購入も原則不可となっている。
      • Steam以外の外部サイトでSteamキーを購入することは可能だが、日本のIPからだとリージョン制限のため原則Steamキーのライブラリへの登録も不可である。そもそも本作自体が日本で発売されていないのだが。
  • アメリカにおける世界最大規模の格闘ゲーム大会『Evolution Championship Series (通称:EVO)』の2011年大会から3年連続でメイントーナメント種目の1つとして選出されている。シリーズでは初。
    • その後も『X』は2016年、『XL』は2017年のメイントーナメント種目の1つとして選ばれている。

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最終更新:2024年03月20日 10:10

*1 いずれも米国版。

*2 『MK1』~『MK3』までの世界。

*3 つまり、システム上はリニューアルだがストーリー上では繋がりがある。

*4 キタナやバラカのそれが分かりやすい例。

*5 ただし、ゲーム内容があまりにもやりすぎだったらしく、『I』の時点でNFLが激怒しライセンス発行を打ち切り。さらに『II』を出した後にミッドウェイが倒産し、ワーナーに買収されると言う憂き目に遭っている。

*6 ケンタウルスの姿をしたキャラクターで、本作ではモブキャラとして登場。

*7 現在活躍しているサブゼロは弟。兄はスコーピオンに殺害された後悪霊「ヌーブ・サイボット」として甦る。

*8 シャン・ツンに関しては声優は変わらず、老人のような掛け声になる。

*9 わざわざ本作のパッケージ裏に「Brutal Kombat is Back!」「Gruesome Fatalities」と書かれている程。

*10 失った部位での攻撃を繰り出せなくなるのはもちろん、それらを使った投げ技や飛び道具も使えなくなり、X-RAYも封印される。

*11 爆弾は本体を振って爆発させることで点が入る。

*12 「VS DC」のフェイタリティは首をへし折る、炎や爆発で相手を骨だけにするなどモーコンの中では大分ユルめ。流血量も抑え目と、モータリアンには物足りないであろう内容だった。

*13 アッパーカットで敵を打ち上げるとまれに画面右下から「Toasty!」のシャウトと共にでてくるおじさんのこと。正体は本シリーズのサウンド関係を担当するダン・フォーデン氏

*14 敵に止めを刺すのではなく、赤ん坊の姿に変える「~タリティ」の内の1つ。発動方法はフェイタリティと同じ。

*15 当時はソニーコンピュータエンタテインメント。

*16 念のために言っておくと他ハードに出られない理由としては(他作品で例えれば)任天堂の「マリオ」がPlayStationに出られないのと同じ理由だと思われる。

*17 360版はネイティブ720p。PS3版は基本720pだが一部680pまで落ちる部分がある。

*18 本来は「願いごとをする」という意味。

*19 恐らく「Hooray」などと同じく陽気な掛け声を意味する単語と思われる。

*20 『VS.DCユニバース』より担当。次回作の『X』でも引き続き担当している。