バズー!魔法世界
【ばずー まほうせかい】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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12MbitROMカートリッジ
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販売・開発元
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ホット・ビィ
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発売日
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1993年7月23日
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定価
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10,780円(税込)
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判定
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賛否両論
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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高評価なキャラデザ・ストーリー 低評価なシステム・バランス 発売翌日に会社が倒産
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概要
伝説のクソゲー『星をみるひと』を世に送り出したホット・ビィの家庭用ハードRPGの3作目にして同社最後の作品。
タイトルの「バズー!」の部分からしてコミカルなバカゲーのように思えるかもしれないが、全然そんなことはない。
パッケージ絵を見てわかるとおり、シリアスな中世ヨーロッパ風の世界観に魔法要素を加えた、王道ファンタジーRPGである。
「バズー!」の部分はシナリオライターが「これだけは外せない」と言って押し切った。ライターが言うんだから仕方が無い。
ゲームシステムに関しては、まともに遊ぶことすら困難だった『星をみるひと』に比べると幾分かマシになっており、
あの『星をみるひと』のインパクトで知名度を得たホット・ビィにしては「よくやった」と言える水準に十分達してはいるが、
それでも普通のRPGに比べて理不尽ともいえるほどバランスの悪いゲームである。
ストーリー(ネタバレ防止のため冒頭のみ)
魔法が支配的地位を占める世界「イアルティス」。
この世界では高位の魔法を使える者だけが高い地位を得られ、たとえその子孫であっても魔法が使えなければ貴族として認められない。
母親に女手一つで育てられてきた主人公は、ある日父親が高名な魔法使いであると知り、自分も魔法使いになるためにそれまでの生活を捨て、魔法の修業をする旅に出る事を決意するのだった。
システム
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最初に主人公の名前と性別、(魔法使いになる前の)職業を決める。
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性別によって装備できる品が少し変わる。また、男だと16歳、女だと14歳から始まる。
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職業は農夫、修道士、船乗り、薬草師の4つ。
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職業によって初期パラメータが微妙に違うほか、イベント時のセリフなども変わる。
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戦闘は二画面分用意されたサイドビューになっていて、敵との距離の概念がある。
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直接攻撃するには敵に近付く必要があり、魔法攻撃も敵との距離があるほど当たりにくい。
評価点
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良質なストーリー。
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無理なく、それでいて旅をする目的のはっきりした、説得力のあるものになっている。
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現在でも「ストーリーが良いゲーム」という話になると名前が挙がるほどである。
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『星をみるひと』同様、練りに練り込まれた世界観。
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最初はただのよくあるファンタジーRPGと感じられるが、ゲームを進めるにつれ、実は非常に奥深く緻密な設定がなされているのだと実感できる。
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魔法の設定には「変容」「精霊」「召霊」など8系統に分かれており、それぞれに8つの魔法があり、その全てについて「どのようにして効果を発揮するか」が説明されている。
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例えば「破魔」なら魔法を撃ち破ってステータス異常を解除する、かけられている魔法効果を打ち消す、魔法を消すバリアを張る、など。
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選んだ職業によって、新しい土地に来た時の主人公の感想が変化する。
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農夫ならその土地で取れる作物のことを気にしたり、船乗りなら港や海流のことを気にしたりする。
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美麗なキャラデザイン。
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イラストレーターはアニメのキャラデザインや小説の挿絵などで活躍している山田章博氏。ゲーム作品としては後に『ミスティックアーク』などを手掛けている。
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仲間キャラはもちろん多数のイベント専用キャラにも顔グラフィックが用意されていて、力の入りようは相当なもの。中世風の世界観とも絶妙にマッチしている。
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ゲーム内には時間の流れがあり主人公たちも加齢して行き、年齢に応じて顔が変わる人物もいる。
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教会での治療費が足りない場合、タダで治してくれる。
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蓄えのない序盤や、魔法を買って金欠になった場合などは非常に助かる。
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慈悲の演出なのか、単にお金が足りない場合のプログラムを作り忘れただけなのかは不明。
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戦闘時の逃走確率は、敵とのレベル差によって決まる。
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事前にしっかりレベルを上げておけば、敵から逃げまくって消耗せずにダンジョンを突き進んでボスにたどり着くことも可能だったりする。
賛否両論点
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世界観を壊さない、洋風BGM。
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ただし音源が悪いのか、音割れがひどかったりするものもある。
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特に効果音がガンガンうるさい。教会の鐘の音などは騒音レベルである。
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魔法は巻物を店で買って覚える方式で、魔法を使えるキャラなら好きなものを選んで覚えられる。
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ただし覚えられる数の上限が18と少なく、冒険に必須といえる魔法も多いため、自由度はあまりない。
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レベルが足りないと高位の魔法を覚えられない。しっかりレベルを上げているなら問題ない。
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主人公はイベントで特定の魔法をタダで覚えられる。
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魔法の師匠を三人から選ぶ事ができ、誰を選ぶかによって教えてくれる魔法が違ってくる。
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経験値が等分制で、仲間を増やすほど得られる経験値が少なくなってしまう。
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戦闘システムの都合上、4人パーティーだと全員が行動する時間だけでもかなりのものになり、レベル上げの効率が著しく落ちてしまう。
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逆に人数が少なくなると飛躍的にレベル上げの効率が上がる。
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仲間が加わる際のレベルは主人公を基準にして算出されるので、パーティー人数が少ない時(主人公一人か、安全性を考慮して2人パーティーの時)にレベルを過剰に上げておくと、次の展開が楽になる。
問題点
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とにかく戦闘時間がかかり、戦闘バランスもかなり厳しめ。
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戦闘開始時は敵との位置は離れており、近付かないと直接攻撃ができない。遠くから弓攻撃や魔法を使う敵が非常にウザい。
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特に睡眠魔法(全体)などで動きを止めてくる敵とはまともに戦っていられない。ステータス異常回復魔法もあるが、それを使えるキャラが行動不能になると意味がない。
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戦闘以外でも、リアルさを演出するためのオリジナル的な仕様によりゲームバランスがきつくなっている。
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旅立ち後すぐの段階では自宅で寝て回復できるが、ある程度レベルが上がると母親にさっさと旅立つように言われ、泊めてもらえなくなる。子供がどんな窮地に立たされていようとも、助けてはくれない。
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泊まることで戦闘不能も復活するのだが、泊めてもらえなくなると教会で復活させるしかなくなる。
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最初の町の周囲でマヒ攻撃をしてくるモンスターが出る。マヒは教会で回復できるが、マヒを回復するアイテムはまだ売られていない。
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次の町へ行く途中でマヒしたら、教会へ戻って治すか、敵から逃げて強引に次の町まで進むかしなければならない。
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城門がある町は、夜になると城門が閉まって入れなくなる。
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瀕死の状態で締め出され、朝を待つ間に全滅することも。
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ちなみに宿屋に泊まっても時間の経過はない。夕方頃に泊まったら夕方に出発する。
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魔法の設定こそ緻密であるが、そのバランスはすこぶる悪い。
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ランクの高い魔法ほど消費MPが多くなる割に魔法威力はほとんど上がらず、上位ランクほど燃費が悪く使いづらいという残念なことになっている。
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最高ランクの魔法は現世に存在しておらず、復活させて初めて使えるようになるのだが、どれも燃費がすさまじく悪い。わざわざ復活させる必要あったのか?
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ダンジョン脱出や移動の魔法がない。
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目的を達成したら帰りは歩きである。セーブする前に全滅したら苦労が水の泡。
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戦闘不能から復活する魔法がない。
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教会では「パル」という魔法を使って復活させてくれるのだが、なぜか主人公たちは覚えることができない。
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復活用のアイテムはあるが、かなり高額なため終盤になるまで手が出ない。
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最大MPが低めで、高ランク魔法を使っているとすぐにガス欠を起こす。
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MP回復アイテムの回復量が雀の涙であるため、敵のMPを吸収する「スティル」の魔法はほぼ必須だろう。
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強めの敵からは逃げるか速攻で倒し、弱めの敵はMPを吸いながらのんびり倒すのが基本戦術となる。
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ちなみに敵の最大MPも低め(ボス含む)。
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魔法攻撃主体のボスは強敵だが、MPを枯渇させると悲しいくらい楽に倒せる。
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ストーリーは全五章仕立てであるが、スケジュールの都合で第四章に当たる部分が丸々カットされてしまっている。
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第三章が終わると登場キャラクターの後日談、続いてスタッフロールが始まり「END」の文字が出て一区切りとなる。その後スタートボタンを押すと第五章にあたるエクストラシナリオが始まる。
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三章から五章までの間に10年という長い月日が流れており、登場人物のほとんどが様変わりしている。ストーリーをすっ飛ばされたプレイヤーは完全に置いてけぼりを食らう。
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かつてWeb上にシナリオライターの瑞澄計都氏が第四章のストーリーを公開していたが、現在はリンク切れでアーカイブにキャッシュが残るのみである。→バズー!魔法世界補完のページ(外部リンク)
総評
最高峰のストーリーと最底辺のゲームバランスを兼ね備えた、人によって良作ともクソゲーとも評されるゲーム。
パーティ人数が少ないうちにしっかりレベルを上げることを徹底すれば、多少理不尽なところはあるものの、それほど難しくはない。
しかし、逆にレベルを上げないと地獄を見ることになる。そして地獄を見た人からは、「ストーリー以外は全部クソ」といった痛烈なクソゲー評価を受けることになってしまった。
もし、今後プレイするまたはやり直すのであれば、人数の少ない時期のレベル上げだけは怠らないようにしよう。
余談
発売日の翌日に会社が倒産したといういわくつきの作品であり、当時さまざまな噂が飛び交った。
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『第3次スーパーロボット大戦』と発売日がかぶってしまっており、当時のSFCユーザーの間での認知度は相当低かったと思われる。
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2002年に中古ゲーム専門誌「ユーズドゲームズ」に取り上げられ、発売日翌日に会社が倒産したゲームとして有名になり、一躍脚光を浴びることになる。
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製作期間中に担当プログラマーが失踪したため、急きょ代わりのプログラマーを呼び寄せて制作続行した。
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ゲーム内容に関する質問は前の担当者が作った部分なのでわかりませんと返した。
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イラストレーターは作った報酬をもらっていないとコメントしている。
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ストーリーの出来は本当に素晴らしいゲームなので、ゲームバランスの修正と削られた第四章を追加してのリメイクが望まれている。
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が、このゲームの版権を引き継いだスターフィッシュからのリメイクは出なかった。
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攻略本すらも出ておらず、ネットもなかった当時のプレイヤーは自力で解かざるをえなかった。
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発売から実に23年後の2016年、版権が株式会社シティコネクションに移り、サウンドトラックが発売され一時期話題になった。しかしリメイクの動きは全く出ていない。
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ネタバレになるので詳細は伏せるが、ゲームの最後に世界を揺るがす大事件が起きるのが原因で、世界観や設定を流用した続編を作るのは不可能。
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作ったとしても、それはもう「バズー!」ではない、別の何かである。
最終更新:2023年11月02日 18:50