ミスティックアーク
【みすてぃっくあーく】
ジャンル
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ロールプレイングゲーム
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高解像度で見る 裏を見る
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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32MbitROMカートリッジ
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発売元
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エニックス
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開発元
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プロデュース
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発売日
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1995年7月14日
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定価
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11,800円(税別)
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セーブデータ
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3個(バッテリーバックアップ)
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判定
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良作
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ストーリー
主人公は旅の途中、奇妙な術に襲われ
人形
と化し異世界へと連れ去られてしまう。
名も知らぬ孤島に佇む「神殿」の一室。そこには様々な異世界から攫われ集められたフィギュア達が飾られており、主人公もその中の一体となっていた。
しかし、やがて聞こえてきた何者かの呼びかけに応え、主人公は一人元の姿を取り戻す。
その声に導かれるままクリスタルを手にした主人公は、自らの世界に戻るため、神殿から繋がる異世界に隠された「アーク」と呼ばれる鍵を求める旅へと赴く。
概要
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主人公が元の世界に戻るため、神殿から繋がる7つの異世界を探索し、世界の扉を開く鍵「アーク」を探し出す物語。
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猫たちが目的も解らず争う世界、子供しかいない世界、色と音を失った世界、一人きりで彷徨う闇の家、と言った童話的な世界観が特徴。
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32Mbit(『ファイナルファンタジーV』の2倍)の大容量ROMを使用。
ターン制コマンド選択式バトルのRPGであり、実質前作とされる『エルナード』に引き続きシンボルエンカウントに近いシステム(敵は直接見えず、レーダーで位置を把握する)を擁するが、大作ラッシュの時期と被ったためマイナー作品、或いはワゴンセールの常連となってしまった。
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神殿の孤島を探索し、各所に置かれたオブジェクトの謎を解くと冒険の舞台となる異世界への入り口を発見できる。
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オブジェクトを調べた時はコマンド式アドベンチャーゲームのような画面になる。孤島だけでなく、各異世界でもこのモードになる場所がある。
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異世界への入り口がどこにあるかのヒントは哲学的な表現で曖昧にしか伝えられず、謎解きはスライドパズルやチェスの駒を用いたものなど、ミニゲーム的な要素が強い。
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ファンタジーRPGの体裁を採っているが、全体を通して「生命の誕生」と言う哲学的なテーマを有しており、真っ暗な画面にサイレンの音と赤ん坊の泣き声が鳴り響くエンディングが用意されている。
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意図的に説明をぼかした風合いもあり、その強烈な印象がこのマイナーゲームの長く語られる要因になっている。
特徴
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冒険を支える「アーク」の役割
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作中には全7種の「アーク」と呼ばれる存在が登場し、物体に「宿らせる」ことで様々な影響を及ぼす。ゲーム内ではアイテム的な扱いをされるが、属性を司る精霊のような姿を持つものが多い。
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主な用途は、後述の「仲間の実体化」と謎解きギミックの鍵としての機能であり、物語の進行に欠かせない存在である。
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アークは対応した装備品に宿らせ強化することもできる。宿すことができる装備品の種別と効果は各アークで異なる。
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例えば「光のアーク」は、剣、刀に宿らせると、攻撃力+40かつ武器攻撃が雷属性に変化というボーナスが得られる。
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アーク効果の詳細
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名称
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装備品効能
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仲間実体化使用時
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力のアーク
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斧:攻撃力+30
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パワー・ガード+10%
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光のアーク
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剣・刀:攻撃力+40、雷属性 斧・弓・ブーメラン:攻撃力+20、雷属性 兜:毒・石化耐性増加
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使用不可
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知恵のアーク
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盾:即死耐性増加
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スピード・マジック+10%
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火のアーク
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剣・弓:攻撃力+20、炎属性 防具:炎系耐性+20
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使用不可
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木のアーク
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鎧:石化・睡眠耐性増加
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1分ごとにMP1回復
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水のアーク
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防具:氷系耐性+20
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1分ごとにHP1回復
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闇のアーク
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杖:攻撃に石化の追加効果付与
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使用不可
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少々風変りなパーティ編成
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神殿の最初の部屋には、仲間となるキャラのフィギュアが飾られている。アーク入手後はその仲間フィギュアをアイテムとして持ち出せるようになり、アークを宿すことで実体化する。実体化できる仲間は2人まで。
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実体化に使用したアークの種類に応じて、特定パラメータ上昇や自動回復などの特典が変化する。
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持ち歩いている仲間フィギュアは人形状態でも戦闘経験値を獲得しレベルアップしていく。
仲間キャラの性能概要
ラックス
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ロボット:耐久力優秀
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ミレーネ
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魔法使い:攻撃魔法が得意
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リーシャイン
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武道家:肉弾戦特化
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トキオ
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忍者:バランス+晩成 パワーを高めた分身斬りが強力
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メイシャ
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治癒術師:回復・補助魔法が得意
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カミオー
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亜人:やや物理重視のバランス型
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以上の六名。性能面でこれくらいの認識があればとりあえず問題無い。
また各キャラクターには得意武器の概念があり、装備は可能だが得意ではない武器種は性能が低下する。
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重い死亡リスク
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力尽きた仲間はフィギュアに戻り神殿へ転送されてしまう。更に主人公が倒されると仲間が生存中でも即全滅となる。
これは、ドラクエで例えるならば、「力尽きた仲間はその場で、もれなくルイーダの酒場に送られるとほぼ同義」と言えば、その苦境度合いが伝わるだろうか。
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このため本作に、RPGでは一般的な「戦闘不能キャラ蘇生の手段」は一切存在しない。
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ダンジョン攻略中に死人が出た場合、持ち歩いている他の仲間を補欠として実体化し、欠員を埋めるといったアドリブも時には必要となる。
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フィギュア化
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主人公の固有能力として「フィギュア」というコマンドがあり、モンスターをフィギュア化して手に入れることができる。
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孤島の探索が進むと、フィギュア化したモンスターを戦わせる闘技場やフィギュアをアイテムと交換できる施設が開放される。
評価点
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米田仁士・山田章博両氏のキャラデザを最大限に生かした、ドット絵の極致に至る幻想的なビジュアル。
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凝られたテキスト。
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子供にとってはまさに夢の世界である「子供の世界」は大人がやってこそより伝わるものがあるだろうし、
誰も居ない薄暗い洋館の中を一人で進んでいく「闇の世界」は日記の存在も含め、下手なホラーよりよほど怖い。
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ワンダープロジェクトシリーズ等を手がけた森彰彦氏の名曲。本作の幻想的な世界に大いに彩りを添えている。
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特にバトルのBGMは、ザコ戦闘四種、ボス戦闘四種と非常に多くのバリエーションを取り揃えており、いずれの曲も高い評価を誇る。
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またサウンドトラックにおけるクセの強い変わった曲名は現在でも語り種。以下にその一部を記したい。
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闘う君のひとみは、いつも美しい (フィールドバトル)
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闇の手先が、ここにもいたか (ダンジョンバトル1)
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さぁ、ちからみなぎる、おれが相手だ! (ダンジョンバトル3)
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ここはどこ?私は森!
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ヘイ、たたかってるぜ! (ボスバトル2)
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我々がそこで見たものは!?
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洞窟の深淵で僕たちを待ちうけるやつらは,ちょっと手強いぞ (ボスバトル1)
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君のいないこの町は,もう僕には何も与えない
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前略、お元気ですか。こちらは相変わらずの毎日です。
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まだ、夜も明けきらないナナカの町を恐怖が襲う!
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問題点
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単体のRPGとして見ると欠点が多い。
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物語のキーアイテムとなるアークの用途は、フィギュアに宿して仲間にしたり武具に宿らせたりと重要なファクターであるものの、前作とされる『エルナード』で戦局を左右するメインを担っていた事に比べると、あくまで補助的な存在に過ぎない。
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戦闘中、モンスター名・魔法名が表示されない
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今作の戦闘シーンは、コマンド選択時以外の名前の情報が徹底的に省かれている。あらゆる敵の名前は「勝利時」に判明し、敵が放つ魔法は、発動のエフェクトと回復・ダメージ量は見て取れるものの、「発動した魔法の名前」が表示されない。
こちらは仲間が習得する魔法名を見て、実際その魔法を唱えることでようやく魔法名が判明する。
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恐怖の即死魔法
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上記の通り重い死亡リスク、最大三人パーティというゲームデザインには厳しい要素として、即死魔法を扱う敵が存在する。
命中率は低めではあるものの、仲間に命中すればパーティ半壊、主人公に命中すればすなわち一撃全滅である。
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そして恐ろしいことに、今作最凶のボスは即死魔法を扱う三体組という悪夢のような構成である。
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装備品にアークを宿した場合の性能変化把握に調査を要する。
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アークを装備品に宿し強化できる要素において、宿すアイテムを選択する画面でアークを宿した結果が表示されない。
アークと装備品の良好な組み合わせを試行錯誤し探すゲームデザイン…であると思われるが、アークを宿らせる前と後のパラメータを一々確認する工程を経て、ようやく宿らせた結果が判明するというかなり人を選ぶ仕上がりである。
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主人公を含む仲間にはセリフや表情を示す動作が殆ど描かれておらず、仲間にもそれなりに設定が組み込まれているがそれがストーリーに絡むことはない。
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FC時代のRPGを彷彿とさせる露骨な時間稼ぎ(おつかいイベントなど)がかなり多い。
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例を挙げると、
川が干上がったので水源へ行く→大岩が水源を塞いでいるのを確認する→町へ戻り、問題を解決出来るNPCを連れて行く→再び水源へ…
と言った具合。水源へのダンジョンは転がってくる岩を避けながら進むというものだが、2度目の突入で構成が変わるわけでもなく、岩にぶつからなければエンカウントもしないため、完全に同じことを二度やらされることになる。
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また、異世界攻略中には拠点となる神殿へ戻らなければならない場面が幾度かあるが、神殿に帰還する毎に実体化中の仲間はフィギュアに戻り、武器に宿していたアークも外れてしまうため、付け直すのが面倒臭い…といった不便な点も散見される。
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上記のように差別化がされ、仲間キャラに捨てキャラがいないというのは評価できるがそのしわ寄せが主人公にきており、ドーピングを行わなかった場合パーティで最も足を引っ張るのが強制参加の主人公になってしまいがちである。
特に男主人公の場合フルヘルスを覚えるのが女主人公より10レベルも遅いため普通のプレイをしていては一番必要な闇の世界で覚えられないことなどそれが顕著である。
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戦闘自体の戦略性が薄く単調、難敵相手も基本的にレベルを上げて物理で殴れば良い。
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本作の特徴である魔法攻撃のダメージ計算式は、「魔術の威力-相手の魔法耐性(%)」であり、大抵のボスの魔法耐性はどれも50%以上と極めて高い。おまけに魔力は魔術の命中率以外に影響しない為戦闘では魔法攻撃以外不得意なミレーネはボス戦で辛い。
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勿論これはボスに限ったこと。敵が複数いる通常戦闘では物理特化のリーシャインやカミオー、それにトキオよりラックスやミレーネといった強力な全体攻撃を持つキャラクターの方が処理しやすい。この点でも差別化はできていると言える。
総評
今でこそ、リバイバルブーム或いはジャンルの違う続編『ミスティックアーク まぼろし劇場』の存在もあり「隠れた名作」の評価を得ている。
しかしながら、システム面では発売当初で考慮してもかなり古臭い出来と言わざるを得ないため、雰囲気が好きという人以外は楽しめない人を選ぶゲームであるということも間違いない。
…ただし、古臭いと言えども上のリンクの某作品のようにRPGとして破綻したシステムでは無いのでその点は絶対に間違えないように。
余談
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海外ではタイトルが『The 7th saga II』となる予定だったが、発売中止となった。
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前作にあたる『The 7th saga』は日本での『エルナード』であり、同作のナンバリング続編扱いとして発売予定だった。
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両作品は基本システムに加え固有名詞や用語に共通点があり、関連性を考察するファンもいるが公式見解は明らかになっていない。
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また、本作の主人公のデフォルト名はシステム上は全く異なるARPGである『ブレインロード』のキャラクター名と同一など色々と共通点が多い。発売順では『エルナード』(1993年)→『ブレインロード』(1994年)→『ミスティックアーク』(1995年)となっている。
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ファンの間ではこの3作を合わせて「アーク三部作」と呼ばれることも。非公式な呼称であり、正式にシリーズ作品とされている訳ではないが。
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1999年にシリーズ作品としてPlayStationで『ミスティックアーク まぼろし劇場』が発売されている。
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こちらのジャンルはアドベンチャーゲームとなっており、タイトルは受け継いでいるがストーリーの直接の関連はない。
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月刊Gファンタジーにてコミカライズされた。作者は岩佐あきらこ。
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フィギュア化された人間にアークで命を吹き込むといったゲームの設定は完全にオミットされ、普通の冒険物語になっている。
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主人公と行動を共にするのはリーシャインひとり。他の仲間は脇役として登場する。
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上記の即死魔法持ちボス「デスナイト」×3はありふれた名前とは裏腹にRPG屈指の強ボスとして名を残している。
最終更新:2024年07月07日 14:25