ファミリーサーキット

【ふぁみりーさーきっと】

ジャンル レースゲーム
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 1.25MbitROMカートリッジ
発売元 ナムコ
開発元 ゲームスタジオ
発売日 1988年1月6日
定価 3,900円
プレイ人数 1人
判定 良作
ポイント F1ブーム初期を代表するレースゲーム
見た目はシンプルだが細部にこだわり
ナムコットファミリーシリーズリンク


概要

1988年1月にナムコから発売されたファミコン用レースゲーム、「ナムコットファミリーシリーズ」の第6作目。

F1を題材にファミリーシリーズでスポーツゲームに定評があったナムコと遠藤雅伸率いるゲームスタジオが手がけた本作は操作性の良さと奥深いゲーム性で人気を博した。

特徴

  • トップビュー視点で上から下にスクロールするコースを走行するシステムで、カーブではマシンの向きを左右に動かし進行方向を可変させて走行することになるが回転機能の無いファミコンではコーナーは基本的にS字で構成されている。

ゲーム内容

  • ゲームモードは「セッティング」「フリーそうこう」「スプリントレース」「たいきゅうレース」「かんせん」の5種類
    • 「セッティング」では自分が操作するマシンの性能やカラーリングを設定し英数6文字のコード(パスワード)で設定を保存できる。
    • 「フリーそうこう」は文字通り任意のコースを自由に走行するというもの、ベストラップは電源を切るまで保存される。
    • 「スプリントレース」では全4~16レースを戦いドライバーズポイント総合1位を目指す。
      • 4つのクラスが選択できノービス→Bクラス→Aクラス→スーパーAの順に難易度が上昇する。
      • エントリードライバーのうちCPUの7台は各クラス16台の中からランダムで選ばれる、またスーパーAでは一部2コースからランダムで開催地が選ばれるラウンドがある。
      • 1レースの流れは予選(アウトラップ含め2周)→決勝(周回数はコースによって異なる)。
      • F1世界選手権の再現であるスーパーAで総合1位を獲得するとスタッフロールを見ることができる。
      • この当時、F1グランプリはドライバーズタイトルは「有効ポイント制*1」が取られていたが、ゲーム中では取り入れられていないため無効になることはなく全戦トータルでランキングが決まる。
    • 「たいきゅうレース」は予選→決勝の流れはスプリントと同じだが1レースのみのプレイで周回数が40周前後と極端に多くなっている。
      • 16種類のレースのうち「24H」とつけられたものは規定時間内(約90分)での周回数を争うルールとなる。
    • 「かんせん」はCPUの走行を見るいわゆるウォッチモード。
      • 「おっかけモード」は8人の内1人を中心にスクロールし「じっくりモード」は自由に視点を動かせる。
  • Aクラスは当時の全日本F3000や女性ドライバー、スーパーAは1970~80年代のF1、耐久はル・マンやインディカー等で活躍した実在のドライバーがモデルとなっており名前も濁点・半濁点も1文字扱いとして4文字という制限はあるものの「A.セナ(アイルトン・セナ)」「フロスト(アラン・プロスト)」「マンセル(ナイジェル・マンセル)」「Nピケ(ネルソン・ピケ)」等ほぼ実名になっている。
    • マシンも再現されており、同チーム所属だった「マンセル」と「Nピケ」(ウィリアムズ)、「フロスト」と「ステハン(ステファン・ヨハンソン)」(マクラーレン)、「A.セナ」と「サトルN(中嶋悟)」(ロータス)などは全く同じデザインのマシンになっている。もちろんゲーム中ではコンストラクターズの概念はなくすべて個人戦。
    • また過去のマシンも大体色違いで再現されている。ドライバーの中には「ラウダ(ニキ・ラウダ)」「マリオA(マリオ・アンドレッティ)」など当時既に引退していた者もいるが彼らのマシンは最盛期の頃に所属していたチームのものが再現されている(ただしマシンコードは異なる)。
  • その一方でノービスクラスはナムコキャラ、Bクラスはナムコのスタッフ(トップレーサーの「なかむら」が社長の中村雅哉氏)などの面々が並んでいる。

評価点

  • 快適な操作性とスピード感
    • 走行時のボタン操作はAボタンを押すとアクセル、離すとエンジンブレーキ、Bボタンでブレーキ、十字ボタンの左右でハンドル操作というシンプルなもので手動でギアチェンジする必要はない。
      基本操作はAボタンと十字ボタンだけでOK。
  • 練り込まれたゲームバランス
    • 本作はコース脇のショートカット防止を兼ねた障害物、道幅の狭さやコースアウト時のスピードダウンやスピンを比較的シビアに設定しているが、他車との当たり判定を無くしたことで最速ラインでの走行と他車との競り合いを両立させながら緊張感のあるプレイをバランス良く実現させている。
  • セッティング
    • マシンセッティングはブースト圧、ギア比、エンジンブレーキ、ハンドリング、ブレーキ、タイヤの6項目をそれぞれ4段階に設定、
      カラーリングは6種類のグラフィックパターンと26種類のカラーパターンを組み合わせる形と当時としてはかなり自由に設定できる。
      • グラフィックパターンの中にはウィリアムズ風(F)、マクラーレン風(M)、ロータス風(L)、フェラーリ風(S)、ブラバム風(B)、リジェ風(J)などニヤリとさせられる物もある。
      • また、それぞれのカラーパターンとの組み合わせも対象である1987年当時のマシンを忠実でFW(ウィリアムズFW11B)、MP(マクラーレンMP4/3)、BT(ブラバムBT56)、JS(リジェJS29)と、それぞれマシンのコードと同じものが当時のマシンとそっくりになる。
      • 実際のマシンコードとコード全く同じではないがフェラーリ(フェラーリF187)もSF(「スクーデリア・フェラーリ」の略)、ロータス(ロータス99T)もLH(「ロータス・ホンダ」の略)と、何を現しているかがわかりやすい。
    • マシントラブルも燃料切れやタイヤの摩耗、ウイング破損からサスペンション、エンジンの故障といった偶発的なものまで多岐にわたり、 それらはマシンの挙動にも反映される。ラップタイムやマシンの状況はコントロールライン脇のサインボードで確認できる。
    • 走行中ピットに入ることで、タイヤ交換や故障箇所の修理ができる(フリー走行と耐久レースでは給油も可能)。
      その際ピットクルーが作業内容に応じたアクションをとるのも芸が細かい。
  • バラエティに富んだコース
    • コースは全部で41種類*2、国内外の実在サーキットをモデルにしたものに加え大垂水峠や裏六甲ドライブウェイ等をモデルにした峠道も用意されている。
    • ゲームの性質やハードの性能上の限界もあるが、コースレイアウトはある程度再現されている。
    • サーキットはもちろんモンテカルロ市街地コースと比べても極端なワインディングロードとなっている峠道は、タイムアタックよりも障害物に当たらず走り切ることが目的となっている感がある。
  • 全16戦のF1世界選手権を再現
    • ただし、にほんGPがすずか(鈴鹿サーキット)とふじ(富士スピードウェイ)の2つのランダム開催*3などの要素があるが。

賛否両論点

  • マシントラブル時の操作がシビア過ぎる
    • 走行中に足回りにトラブルが出ると、マシン操作が難しくなる。
      • 運が悪いと、カーブを曲がっている最中に縁石のちょっと内側の芝生をかすめただけでサスペンションが壊れてそのまま制御不能ということもある。リアルといえばリアルだが…。
      • ちなみにCPUもトラブルが発生する。長丁場の耐久レースでのんびりゴールしたら自分以外全員リタイヤしていて優勝、なんてこともある。
      • しかしこれらの運要素がリアリティを感じられるとして肯定的に捉える向きもある。

問題点

  • ゲーム途中での中断・再開ができない
    • 本作はバッテリーバックアップ非搭載でパスワードもセッティングの保存のみ。よってスーパーAでは全16戦、2時間以上の通しプレイを強いられる。
  • 一発クラッシュの路肩の障害物
    • サーキットにもかかわらず、何故かコースのすぐ脇に障害物が設置されている。高速でぶつかろうものなら即クラッシュでリタイヤ扱いとなってしまう。
    • ショートカット防止目的とはいえ、「コーナーイン側の障害物はリアルじゃない」と次作『'91』が出たあと『ファミ通』のレビューに書かれていた。
  • スプリントレースでは途中給油ができない
    • このためスーパーAでギア比を加速寄りに設定するとゴール前に燃料切れを起こすことがある*4
      • 当時のF1でも、エンジンの高回転域を使いすぎてガス欠リタイアというケースが時折発生していたので、その辺もリアルに再現しようとしたのだろう。
  • マシン同士に当たり判定がなく、敵車の存在意義が希薄。
    • 実際のF1でよくみられる「ブロック*5」ができず、スリップストリームの概念もない。
    • そのためただ淡々と走るだけになることが多い。
    • 縦幅の狭い家庭用の横置きモニターによる縦スクロール型ゲームで高速なスピード感を実現するためにはコースの見通しを犠牲にせざるを得ず、これに敵車との接触要素を加えると難度が跳ね上がることが予想されるため、ライン取りにゲームプレイの柱を集中させるための配慮としては必然の仕様と言える。
  • リジェマシンがグラフィックの基本パターンに採用されていながら、肝心なリジェの現役ドライバーがいない。
    • ゲーム中、スーパーAでリジェタイプのマシンに乗っているのは「Jラフイ(ジャック・ラフィー)」のみ。しかも彼がリジェで参戦したのは1985.1986年であり1987年シーズンを迎える前に引退している(ただし彼が乗った最後のマシンであるJS27は1987年のJS29とカラーリングは同じ)。
    • 1987年シーズンで上位を占めたターボエンジンのコンストラクターのマシンで固められているかと思いきや、ブラバム(8位)とリジェ(11位)は自然吸気エンジンで戦ったティレル(6位)の後塵を拝している。ブラバムは後に「鉄人」と呼ばれるリカルド・パトレーゼが所属しているということで採用したという理由であれば頷けなくもないが、リジェに関しては特にドライバーも今一つパッとせず同じメガトロンターボエンジンを使っていたアロウズの方が上位だったなどもあって、採用した理由が意味不明である*6
      • また1987年シーズンでコンストラクターズ5位に食い込んだベネトンのエース、テオ・ファビはゲームでも登録されているが、そのマシン「B187」はウィリアムズタイプ(F)に緑っぽい「U」のカラーパターンで代用されており、ベネトンのマシンがそこまでウィリアムズと似ているわけではないので、かなり無理矢理な代用である。チームそのものが1986年に初参戦したばかりなので累積の実績では低いとはいえ前述の通り直近の成績面で劣る上に現役ドライバーもゲーム中で登場しないリジェを基本にするぐらいなら、1年目から勝利を記録して勢いのある新進のベネトンのマシンを基本パターンに持ってきた方がいいのでは?と疑問を感じずにはいられない。

総評

シンプルな見た目ながらコースやドライバー等のデータを豊富に詰め込むという限られた容量内での取捨選択、ピット作業を含めたレーシングドライバーの疑似体験度、
なによりゲーム性の高さで長く楽しめる作品となりFC用レースゲームの最高傑作と評する声も多い。
また当時リアビュー視点のレースゲームが主流になっていた中で、前年発売の『ファミコングランプリ F1レース』とともにトップビュー視点のレースゲームが再評価されたことが「F1サーカス」(日本物産)といったヒット作の登場に繋がっているともいえる。

その後の展開

  • シリーズ作品として『ファミリーサーキット'91』(FC:1991年7月19日発売)、『ワールドサーキット』(PCE:1991年10月18日発売)、『スーパーファミリーサーキット』(SFC:1994年10月21日発売)の3本がある。
    • いずれもセッティングが細かくなり、操作面ではハンドルをより軽く(鋭く斬れる)セッティングできるようになった副作用でスピンしやすくなったため本作と比べて難易度は上昇している。
    • 『'91』は濃密な内容の反動で、安価をウリとした『ナムコットファミリーシリーズ』のFC作品ながら例外的に7,800円と飛びぬけて高額なものになった*7。また野球の『ファミスタシリーズ』を除けばファミコンでの『ナムコットファミリーシリーズ』の最終作となった。
  • 2020年6月18日に発売されたNintendo Switch用ゲームソフト『ナムコットコレクション』の有料追加DLC第2弾として2020年8月20日から配信開始されている。

余談

  • ドライバー名とサーキット名は実名かそれにかなり近づけておきながら、スタッフロールの最後には「すべてのドライバー、サーキットはじつざいのものとなんらかんけいありません」と架空の名称であると言い張っている。
  • 本作がモデルにしている1987年のシーズンはターボエンジンに過給圧4バールの制限が設けられた(1988年は2.5バール、1989年からはターボ禁止)。一方で自然吸気エンジンは排気量3,500cc(ターボエンジンは1,500cc)や燃料積載などで優遇するようになり格差を縮めるレギュレーション、併せて自然吸気エンジンに限ったタイトルなどが併設されるなど自然吸気を促進する動きが見られた。
    • しかし結果的には自然吸気エンジンを使用したのはティレルなど16チーム中5チームでしかなかった上に自然吸気エンジンを使用したチームがまるで勝負にならず大敗したこともあってか*8、本作では1986年シーズンのように全マシンがターボで固定となっている。
      • 実際本作のマシンのモデルとなっているチームのエンジンメーカーはウィリアムズとロータスがホンダ、マクラーレンがTAGポルシェ、フェラーリが自社製、ブラバムがBMW、リジェがメガトロンといずれもターボエンジンを使用している。
  • 上記の通り本作のノービスクラスはナムコキャラで構成されており、所謂『ファミスタ』の「ナムコスターズ」のような位置付けになっている。
    • しかし、その中にあって看板的存在の『パックマン』がいないというのは、非常に珍しい(上記チームでは4番打者)。
    • またトップレーサーも上記作品でエースピッチャーだった「ぴぴ」(元ネタはF1レースのゲーム『ポールポジション』)ではなくカーアクションではあってもレースゲームではない「ラリーX」(「らりいX」として初代ファミスタでは8番打者で登場)。
      そもそも「ぴぴ」になった理由は上記作の選手名が「゛゜も1文字としてカウントし4文字以内」という縛りのため「ポールポジション」→「PP」→「ぴいぴい」→「ひ°ひ°」となった。
      そう考えると本作はアルファベットの名前が普通に使えるので「PP」と自然な形で通るのだから使わない理由もなさそうだが、敢えて使われていないなど、いろいろその意図を考えさせられるキャララインナップである。

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1988年 FC RCG ナムコ
最終更新:2024年06月30日 10:09

*1 ポイント発生圏内(6位以内)の成績の中でベスト何戦かを合計したもの(この当時なら11戦)が有効で、それ以外は無効となる方式。例えば1987年ワールドチャンピオンになったネルソン・ピケは優勝3回、2位7回、3位1回、4位1回でトータル76だがポイント圏内入賞が12回あるためその内のベスト11回のみが有効(4位の1回=3点が無効)となり73ポイントとなった。このようなややこしい制度を取っていた背景は、かつては1チームあたり3人以上のレギュラードライバーを抱えていたチームも少なくはなく単純なトータル式ではレギュラー2人体制のチームに所属している者が皆勤できて有利になるので公平性を欠くため。だが1980年代にはレギュラー3人以上のチームは限りなくゼロに近くなったことで公平性ではあまり意味を成さなくなったことで遅まきながら1991年シーズンからこの制度は廃止された。

*2 フリー走行で選択できるのは40コース、ポールリカール(ロングサーキット)は耐久レースのボルドール24Hでのみ走行可能。

*3 実際の1987年日本GPの開催地は鈴鹿。富士はこの当時以前だと1976・77年の日本GPの開催地だった。

*4 実際のF1でも1983~93年の間はレース中の給油が禁止されていた。

*5 後続に追い越されるのを防ぐため接触しない範囲で後続の走行ラインを塞いだり狭める行為。現在のF1では順位争いの公平性の確保や事故防止の観点から細かいルールが設けられている。

*6 一応リジェは1987年こそ不振でアロウズの後塵を拝したもののアロウズは1978年初参戦から未勝利(後の話になるがチーム自身が消滅した2002年まで382戦しながら最後まで勝利は得られなかった)のに対し、リジェは過去のリザルトでは通算8勝を挙げ(ただし1981年11戦目のオーストラリアが最後でその後チーム最終年の1996年に最後の1勝を挙げた)たことを含め、ポイントなど全体的なリザルトでも2年早く参戦したことを差し引いてもアロウズより圧倒的に上回っている。ティレルには及ばないがティレルは自然吸気エンジンで参戦したためオミットしたとしたら消去法でリジェというのは納得できなくもない。

*7 これに次ぐのが『ファミスタシリーズ』を含めても『ファミスタ'90』の5,800円。

*8 最高位はティレルの6位、レース単位でも表彰台すらままならず、ティレルのジョナサン・パーマーとフィリップ・ストレイフが4位を1回ずつ取れたのみ。