アンセスターズ:人類の旅
【あんせすたーずじんるいのたび】
ジャンル
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サバイバル
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対応機種
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Windows プレイステーション4 Xbox One
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販売元
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Private Division
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開発元
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Panache Digital Games
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発売日
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【Win(EGS)】2019年8月27日 【PS4/One】2019年12月6日 【Win(Steam)】2020年8月28日
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定価
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4,400円 【Win(EGS)】4,380円
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レーティング
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CERO:D(17才以上対象)
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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猿を進化させて人類にする 死にゲーではない
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概要
舞台はおよそ1千万年から200万年前、新第三紀のアフリカ。金色に輝くサバンナの草原は美しくも弱肉強食の過酷な世界。
人類の先祖がまだ猿と人間の中間である猿人、原人を操作して道具を使い、敵対者を倒し、子孫を繁栄させ、人類へと進化させることが目標。
猿が弱肉強食のサバンナで優位に立てる長所が道具の使用と樹上生活能力である。この2つを上手く使用して生き残る必要がある。
食事、睡眠、飲料、寝床の確保、そして子孫の繁栄という猿人特有のサバイバルも重要である。
一族を成長させ、数を増やして優位に立ち、人類の進化の道を生き残れるかを決定する。
世代を重ねるゲームといえば『俺の屍を越えてゆけ』や『ダービースタリオン』のようなゲームがあるが、後述の難易度から考えて似て非なる物である。
特徴
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一族には赤子、大人、老人の三タイプがおり、それぞれを選択して動かせる。また、自分で増やす、余所者の猿にコミュニケーションを取ると仲間にできる。最大18人まで一族に迎えられる。
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赤子は常に恐怖に晒されて、外敵に反撃もできない。一方でニューロンの獲得は大きい。赤子は大人と老人に最大二人までおぶさることができ、大人達と一緒に行動ができる。
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大人は生命力が大きく、探索、攻撃の要である。また子作りできる。
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老人は生命力が小さいが、その分恐怖を感じることが少ない。一応子作りもできる。
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番い
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交尾のことであるが、老人、または大人の猿達を毛づくろいをして、カップルを作ることで、番いが可能となる。親、兄弟の近親相姦はできない。
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寝床にパートナーを呼ぶことでつがい、妊娠、出産ができる。メスは一度に2人までしか産めない。
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スキル定着&世代交代
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世代交代は現在から15年経過させることができる。現在の大人が老人に、赤子が大人になり、老人は死亡する。
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その際に覚えたスキル全ては受け継げず、スキルポイントで定着させる必要がある。猿だから仕方ない。
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スキルポイントは子供の数や、余所者の受け入れによって変化する。
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世代交代の際に近くに仲間がいないと全員死亡するため注意。
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世代交代後、子供をおんぶさせた状態で、死んだ先祖の骨を認識するとニューロンエネルギーが多くもらえる。
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進化&進化の功績
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ゲームを進めていくと、それぞれの行動で「進化の功績」を贈られる。この功績によって年代が進むことができる。そして最終的に200万年前を越すことがゲームの目標である。
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ある程度進化するとそこで、アルディピテクス・ラミドゥスやアウストラロピテクスといった新種に変化して、功績も持ち越しとなる。
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また子供が誕生もボーナスがもらえる。どうしても新種になるのが難しい場合は、何か功績を達成する→子供を作って世代交代を繰り返す事で、新種に行くことも可能。
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ただし、「寿命が尽きること以外で」死亡するとマイナスボーナスとなる。
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学説より早く時間が進んでいる状態で、功績を達成すると「学説より早い+〇年」というボーナスが加算される。
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功績を達成して、ニューロンを定着させたら、進化したほうが良い。
システム
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ニューロンエネルギー
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通常のゲームの経験値に該当する。猿達を動かして、生活をするとニューロンが溜まり、ドットの中央の白い丸となる。溜まったニューロンで新しい能力を見つけ、徐々に人類へと近づいて行く。
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ツリーの方向性には「運動性」「知能」「感覚」「コミュニケーション」などがあり、それぞれ対応した行動を取って経験を積むと伸びていく。
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道具を使う、道具を作ることはもちろん、二足歩行や木に登るということでもニューロンが得られる。
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食事も最初は果物や植物以外は腹痛を起こすが、様々なものを食べる内に雑食性へと進化していく。
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子孫には当然変異がおり、当然変異の子供が成長するとその能力が得られることもある。
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生命力
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アバターにはスタミナ、エネルギー、平均寿命があり画面の中央下に円によって表示される。走ったり、木や崖を登ったりすると緑のエネルギーゲージが減り、エネルギーゲージが無くなると、オレンジのスタミナゲージが減り、スタミナゲージが無くなると、赤の平均余命ゲージが減って行く。平均余命ゲージが無くなると死亡する。
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これは睡眠、食事、水分を適度に取ると直る。
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ドット
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リンク付きのドットは現在の一族の数を表す。同行している者と紐づく。二番目の円の外にいるとはぐれている状態である。
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感覚
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猿には『知性』『嗅覚』『聴覚』という探知スキルがあり、それぞれキーを押すと専用の視点に切り替わる。これにより周辺の食べ物/飲み水/動植物などを探し出せる。
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ただし、一度表示させても忘れることもしばしば…。猿だから仕方ない…。
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恐怖
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未知の土地に行く際に恐怖状態となり、画面が乱れる。そのまま放っておくとパニック状態となり、居住区に戻ってしまう。
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猿を落ち着かせるには、知っている物を認知させ、落ち着かせることが必要である。とにかく周りに物を「感覚」で検知する。すると左下の円のゲージが貯まる。
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すると円のゲージが貯まると「周辺状況を理解」と表示され、どこかの方向に白いいくつもの小さな光が流れていくので、その流れの方向に進むと、「恐怖の克服」というUIがでるのでボタン長押しで氏族のホームの範囲拡大ができる。
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戦闘
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戦闘は敵の攻撃に対してスローとなり、その際に体を動かすことで対処ができる。
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カウンター攻撃はスローの際に武器を敵に向けるとカウンターで攻撃仕返しをしてくれて、蛇やムカデのような虫から象やサイのような大きな動物でも有効である。
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回避はスローの際に体を傾けると避けられる。
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ステータス異常の種類&予防
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本作は外敵の影響から様々なバットステータスがある。
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ステータスが正常な時に治療効果のあるものを塗る、または食べると予防になる。
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大抵はそのまま放置でも治るが、出血のステータス異常は放っておくと死ぬので、必ず治療が必要である。
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道具
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道具を作るのは一手間かかる仕様である。また、素材にも複数の使い方があるので様々な方法を試したほうが良い。
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枯れた枝を左手に持ち替えて加工すると余分な枝が取れて棒となる。そして先端を削ると殺傷能力の高い槍となる。
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オオバシダソテツを地面に置き、山に追加をして建築を開始すると寝床となる。居住地を変えるには寝床が必要。
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当たり前だが道具は右手と左手二種類しか持てない。
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上記の通り、多くのやり方を手探りで覚える必要がある。
評価点
猿を進化させるオリジナリティに溢れるゲームデザイン
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初期ヒト科生物を成長させ、道具を使い、敵を倒し1千万年前から200万年前の時代をたどり、何百万年にもわたる人類進化の重要なステージを追って行くという他に類を見ないオリジナリティにあふれるゲームデザイン。
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プレイヤーである人間にはなんてことない発見や知識が、序々にアルディピテクス・ラミドゥスやアウストラロピテクスといった将来の世代に受け継がれ、序々に人へと近づいて行くと胸が躍るように興奮を覚える。
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生物マニア、歴史マニアにもとっても人類への進化を体験できる唯一無二のゲームとして価値のあるゲームである。
良質な古代アフリカ大陸を再現したグラフイック
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猿達は非常にリアルで、実際の猿によくに似たモデリング、モーションであり、高品質を保っている。赤ちゃん猿も非常に可愛らしく再現されている。
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猿以外の生物のワニ、トラ、果てはムカデ、ヘビがリアルで、生物マニアも満足できるモデリングとなっている。「古代のアフリカを歩ける」これだけでも十分に価値は高い。
ニューロン
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本作は、猿がスキルを覚えると、ニューロンとして覚える仕組みとなっている。
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通常のゲームのスキルツリーが、猿の脳内に置き換わっており、本作のゲームデザインとよくマッチしていると高評価。
サバイバル要素
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食料や水、治療薬を確保するといサバイバル体験ゲームとしても充実している。特に古代アフリカをサバイバルできるゲームというのも本作のみであろう。
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後述のようにシビアな難易度であるが、処置を覚えると、実際に猿人の生活を再現できる。
クラフト要素
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猿がどんどんと道具を覚えて、物を作っていく過程は熱中する物があり、序盤は苦労した場面が楽になっていく。
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武器も強化され、序盤は捕食される側だった猿達が、今度は捕食側へと変化し、ついには象やサイすら獲物にするサバンナの王者として君臨する過程を楽しめる。
賛否両論点
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非常に広大なオープンワールド
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1000万年前のアフリカを舞台にして、森、砂漠、草原、沼、海と多種多様な動物が用意されており、フィールドも非常に壮大。
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だが、後述のようにファストトラベルがないので、移動が苦痛。
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生存方法の選択
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進化への道のりは定められていない。どのように障害を乗り越えて同種族を増やすか、また、どの知識を次世代に残すかは全てプレイヤー次第となっていて、自由度が高い。
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一方で、序盤の難しさを考えると不親切極まりないという意見もある。
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戦闘が難しい
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コツを覚えれば難しいものではないが、敵対者に武器を向けるという仕草はなかなかコツがいる。
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しかも、下記のように何度も死ぬ訳にいかないので練習もできない。
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とはいえ厳しい弱肉強食の野生の世界を表現しており、子孫達が進化して象やワニに殺された先祖の仇を打ってくれる胸熱な展開も可能である。
問題点
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死にゲーではない
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本作は、仲間や家族が死んで進んでいくゲーム…ではない。
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まず、死亡すると進化の際にマイナスされるため、安易に殺されると進化の年代を伸ばせない。
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さらに死亡させると、次代に受け継ぐスキルポイントも消えることもある。
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また、居住地以外で死亡すると遺体の認識にも面倒である。
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特に子供は次代に繋げる貴重な存在であるが、弱く、反撃もできないため、敵対者に襲われやすい。
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上記の通り死亡して良いことが全くなく、デスペナルティが高く死を回避するゲームデザインである。
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世代を重ねるゲームといえば『俺の屍を越えてゆけ』が有名であるが、俺屍では親、祖父世代が死亡しても一撃死のペナルティは少なく、何度も子供を産めて救済処置も多い。
初見殺しが多い
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死にゲーではない癖に初見殺しが多い。
動物からの攻撃、出血による死亡、落下からの転落死……など序盤から死が隣り合わせである。
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特にゲームスタートのオアシスのすぐ近くに、倒すことがまず不可能で、攻撃されれば一撃死もありえるワニがうようよしている。
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猿を動かすと、大人達がどんどん死に、気が付くと一族が絶えてゲームオーバーという例がしばしば報告される。
救済処置も少々難易度が高い
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仲間を殺されたら増やせば良いのだが、メスは2頭までしか産めず、新たな子供を作るには余所者を受け入れなければならない。
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だが、余所者の受け入れる方法も薬や食べ物や道具を必要とするため、素材を求めて殺されることもありえる。
オートセーブ&セーブコピー不可能
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「死にゲーではないのであれば、リセットゲーなのか」と思うが、本作はオートセーブ固定。一撃死後で、自動にオートセーブされ、リセットも不可能。
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そのため死にそうになったら、オートセーブされる前にホーム画面に戻ることが好ましい。
進化の功績
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本作の目的である進化の功績を成し遂げることであるが、一部達成が難しいものが多い。
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特に「巧妙なる○○の支配者」は達成が難しい。
ゾウやワニのような捕食者に他の動物を遭遇させ、捕食させる必要があるのだが、動物達がほとんど群れから動かないため達成が難しい。しかも、その割に「進化の功績」での「巧妙なる○○の支配者」種類はワニ、ゾウ、カワウソなど多い。
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一応、全て達成しなくてもゲームクリアはできるが…
手探りな作業が多い。
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道具の作り方、素材の使い方等の説明は一切になく、手探りで覚えなくてはならない。居住地の作成という基礎の基礎も説明がない。猿だから(ry
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また、道具の作り方もコツがいる仕様で何度も失敗することが多い。
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コミュニケーションが分かり辛い
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余所者を受け入れる際のジェスチャーや毛づくろいなどのジェスチャーが分かり辛い。
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特にのどの渇きと食中毒は間違えやすい。
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仲間が無能
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仲間があまり役に立たず、すぐに敵対者に襲われる。反撃できるのもある程度スキルを覚えてからである。
ファストトラベルがない。
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オープンワールドでは、必須のファストトラベルがなく非常に移動に不便。仲間が無能で、死亡もしたくないのだが、その割に功績を埋めるには探索したり、一族を連れて居住地を転々としなくてはならないのでストレスが溜まる。
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猿にも帰巣本能ぐらいあるのだから、つけても良かっただろう。
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また、パニック状態になると強制的に帰れるため、遠出した場合それを利用すると良いかもしれない。
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ロードが長い。
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膨大なマップを読み込むためであるが、ゲーム開始までのロードが長い。
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道具の自由度の少なさ
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素材は決められた道具でしか採れない。そのためココナッツを尖った棒で割れない、ハチの巣に棒に突っ込んで蜂蜜を採取できないなどの理不尽ともいえる仕様がある。
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枝壁、茨の壁
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茨や枝で壁を作れるが、オープンワールドであるため敵対者はすぐに横から侵入でき、無用の長物となっている。
総評
猿から人類を目指す、オリジナリティあるサバイバルシミュレーション。
だが、猿を再現したためか、覚えることやできることも少ない。非常に難易度が上昇している。
またシステムも不親切で、初見殺しが多い割にデスペナルティが大きく、非常にプレイヤーにストレスがたまる。
もう少し難易度を調整すれば良ゲーと評価されてもおかしくなかったゲームである。
余談
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Win版はEpic Games Storeでの1年間時限独占配信として発売された。そのためSteamでの配信開始もちょうど1年後となった。
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なお、検索の際は原題である『Ancestors:The Humankind Odyssey』でないとたどり着けないので注意。
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本作のデベロッパーであるPanache Digital Gamesは、かつて『ASSASSIN'S CREED』シリーズのクリエイティブディレクターを務めたパトリス・デジーレ氏が2010年にユービーアイソフトを退職後、THQモントリオールスタジオのスタジオヘッド職を経て、2014年に立ち上げたカナダのデベロッパーで本作が処女作となる。そして、本作のゲームデザインとディレクションもデジーレ氏が務めている。
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パブリッシャーのPrivate DivisionもRockstar Gamesや2K Gamesを傘下に持つTake Two Interactiveの子会社として2017年に設立された企業である。
最終更新:2022年10月24日 13:46