Tom Clancy's Ghost Recon

【とむ くらんしーず ごーすとりこん】

ジャンル FPS
対応機種 Windows
Mac OS
PlayStation 2
Xbox
ニンテンドーゲームキューブ
発売元 Ubisoft Entertainment
開発元 Red Storm Entertainment
発売日 2001年11月14日
【Xb】2002年3月22日
判定 良作
ポイント タクティカルシューターの代表作
シビアな難易度と幅広い戦略性
ストーリー性は薄め
トム・クランシーシリーズ


概要

リアリズムを重視した作風で知られる軍事小説家トム・クランシー氏が監修した作品の1つであり、後に複数の続編が登場した『ゴーストリコン』シリーズの第1作。
ただし、他のトム・クランシー監修のゲーム作品とは異なり、原作となった小説は存在しない。

ソビエト連邦の復活を食い止めるべく活動する米国特殊部隊「ゴースト」と、ソビエトの再建を目論む軍事勢力との闘いを描く。


ストーリー

2008年、世界は戦争の危機に瀕していた。

ロシアの首都モスクワでは過激な民族主義者たちが権力を握り、旧ソ連の再興を画策。

ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンなど、近隣の独立共和国は次々とロシアの傘下に入ってしまう。

ロシアの戦車はコーカサス山脈やバルト海の森に鎮座して南や東への攻撃に備え始め、世界は息を殺して待っているしかなかった。

しかし、ある少数精鋭の兵士たちにとっては、戦争はすでに始まっていた。

米軍特殊部隊グループ5、第1大隊、D中隊は、コーカサス地方のグルジア共和国に平和維持任務で派遣された米軍有数の先鋭部隊。この一握りのグリーンベレーたちは、まさに槍の穂先、第一の防衛線を担っていた。

最新の技術で訓練された、迅速で、静かで、目に見えない特殊部隊。

彼らは自らを「ゴースト」と呼んだ。


ゲームシステム

  • 隊員6人・最大3チームで構成される特殊部隊「ゴースト」となり、部隊内の各チームの行動を指示しながら兵士の一人を操作して任務の達成を目指すステージクリア型FPS・RTS。
    • 主に屋内への突入作戦を題材とする『レインボーシックス』とは異なり、東欧の開けた広大なマップが特徴。室内戦はあまり登場せず、平均交戦距離も遠い。

基本操作

  • WASDで移動し、Q/Eでリーン。Zでリロードを行い、Xで姿勢を低く、Cで姿勢を高くする。左クリックで発砲し、右クリックでダッシュ。
    • Nでチームの状態を確認し、Mでマップを確認する。Vでナイトビジョン、Lで双眼鏡が使用可能。
    • 通常武器ではR/Tで画面ズームを行い、狙撃銃の場合はスコープを使用する。スコープ使用時はマウスホイールで倍率を変更可能。
    • F6キーをおすことでクイックセーブが、F7を押すことでクイックロードが可能。回数に制限はなく、いつでも使用できる。

部隊指揮

  • Shift/Ctrlを押すことで「スクワッド・セレクター」を開き、いつでも部隊指揮と操作キャラクターの切り替えが可能。
    • 上方にチーム名、下方にマップがあり、移動させたいチーム(自分が操作中の隊員が所属しているチーム以外)を選択した状態でマップ上をクリックすることでその箇所に自動的に移動する。
    • また、画面左側には各部隊への待機(×)/警戒しつつ通常移動(矢印)/敵の攻撃を無視した全力移動(二重矢印)の切り替え、使用武器の選択といった指示を出すことが可能。
    • プレイヤーが操作中の隊員が所属するチームの隊員はプレイヤーに追従して移動や援護射撃を行い、それ以外のチームの目的地への移動や戦闘

ミッション進行

  • 土地や建物などがシームレスに繋がった広大なマップに降り立ち、指定された作戦目標を達成して作戦区域からの離脱を図るタクティカルシューター。
    • 合計16ステージで構成されており、各ミッションごとに市街地、森林、草原、軍事基地といったさまざまなロケーションが登場する。
    • 達成すべき任務は捕虜救出、要人誘拐、敵拠点制圧、爆弾設置、戦車破壊などさまざま。クリアに必要な任務のほかにクリアしなくても良い追加任務もあり、全ての任務をクリアすることで雇用可能なスペシャリストが増える。

各クラス

  • 各兵士は5つのクラスによって分かれており、外見や装備可能な重火器が異なる。
  • ライフルマン
    • どの戦場でも活躍する、M16を装備した多目的クラス。サブウェポンとしてM9ピストル、グレネードランチャー、追加マガジン、双眼鏡を選択することができる。
    • 本作におけるM16は比較的命中率が高く、きちんと育成すれば最終盤まで現役として使用可能。
  • サポートガンナー
    • M249SAWを装備した、射程距離に難はあるが高火力のクラス。サブウェポンとしてサプレッサー付きM9、手榴弾、追加マガジンを選択することができる。
    • 主に中距離戦で威力を発揮するクラス。機動力的なデメリットはないため、交戦距離の短い市街地などでは心強い。
  • デモリション
    • 爆発物を扱うクラス。メインウェポンはM4カービンとほかのクラスに比べやや貧弱だが、その代わり設置型爆弾、クレイモア、手榴弾、対戦車ロケットランチャーを装備できる。
    • その装備の特殊性から、戦車の爆破ミッションや橋脚の破壊ミッションでは必ず編成しなければいけない重要なクラスとなっている。
  • スナイパー
    • 狙撃銃を持ち、高い火力と射程距離を併せ持つクラス。サブウェポンとしてサプレッサー、ピストル、追加マガジン、M9ピストルを選択することができる。
    • 開けた屋外マップなどでは非常に頼もしい戦力として活躍する一方で、メインウェポンの取り回しが悪く市街地や屋内戦、多人数相手の銃撃戦は苦手。
  • スペシャリスト
    • 達成しなくてもクリア可能な追加任務を達成しておくとその次のミッションから恩恵として開放できる、4つのクラスの要素が入り混じった特殊なクラス。
    • 装備できる銃器は通常のクラスよりも性能が高い特殊なものとなっており、また育成もある程度進んだ状態で雇用できるため優秀な戦力となる。

部隊編成・育成

  • ミッション開始時にプレイヤーは6人の兵士を選択することができ、それぞれアルファ、ブラボー、チャーリーの最大3チームにふり分けることができる。
    • 作戦中は操作している兵士が所属するチーム以外のチームの行動を指示することが可能で、最後の一人でなければ操作キャラが死亡しても生きている別のキャラに切り替えることができる。
    • 生存した状態でミッションをクリアした際、作戦に参加した兵士は各種パラメータを上昇させる育成ポイントを1つ獲得できる。しかし、銃創を受けて負傷した兵士はその次のミッションが終わるまで復帰できず、死亡した兵士が蘇ることはない。

評価点

賢いAIと、直観的に操作できる優秀な部隊指揮システム

  • タクティカルシューターなだけあり、味方のAIは基本的に非常に優秀。狙撃兵を適切な位置に配置すれば人間以上の能力で的確に仕事をこなし、ライフルマン部隊を家屋の表口と裏口から同時に突入させれば特殊部隊然とした拠点制圧も楽しめる。
    • 何も考えずに索敵無しで突っ込ませた場合であっても、敵の攻撃を確認した場合はそのまま進まずに立ち止まって自動で攻撃態勢に移るなど指揮の下手さもある程度カバーしてくれる。
    • スクワッドセレクター上での操作も、操作したい部隊を選んで行かせたい場所をクリックするだけと非常に単純。直感的にチームを指揮することができ、非常にストレスフリー。

パターン構築が容易な敵配置

  • 敵の配置や増援の投入タイミングにランダム性はなく完全に固定。このため、一度倒されても再ロード時に場所を把握して先制攻撃ができたり、敵の増援がやってくる曲がり角にスナイパー部隊を配置して帰還ルートを確保するといった戦略が取れる。
    • 初見では非常に難しいゲームではあるが、この把握しやすい敵配置とクイックセーブ機能のおかげで時間さえかければクリアは可能となっている。

使用していてストレスのない各種武器

  • 武器の威力や命中率は基本的に非常に高く、デモリションクラスの持つ弱めのM4カービンであっても人間の敵を倒すのにはさほど苦労しない。
    • 狙撃銃もブレが少なく当てやすいため、こちらが地形的に有利に立てば短時間で一気に目標を片付けることができる。

良好なMOD環境

  • 比較的MODフレンドリーな作品であり、オリジナルマップからシステム周りまで大規模改造されたMODまでさまざまなファンメイドMODが存在している。本編をクリアした後であっても、それらを利用して楽しむことが可能。

賛否両論点

シビアな難易度

  • クイックセーブこそ可能なものの、同シリーズ初期作品の多くと同じく難易度は非常にシビア。その場に突っ立っていれば敵兵の恰好の的となってしまい、大抵の場合銃弾を一発食らえば即座に死亡してチームメンバーを切り替えなくてはならなくなる。運良く銃創状態のままミッションクリアしても治療に1ミッション分の時間がかかってしまい、その分の育成ができなくなってしまう。
    • 死亡させたままでもミッションクリアは可能だが、最終盤で育成の進んだ兵士が足りずに詰む可能性が高いためロードしたほうが早い。
    • 敵も固定配置だけでなく捕虜奪還を目論む増援兵の襲撃やトラックに乗った増援部隊の到着などに遭遇することがあり、ただマップの端から敵を殲滅していけば安全に進めるというわけではない。

手持ち武器が表示されない

  • あくまで本作のテーマは特殊部隊の戦術シミュレーション。このため武器関連にあまりリソースは注ぎ込まれておらず、主観視点状態の際にクロスヘアのみで武器が表示されない。
    • 非常に広い視界を確保することができ、またリーンしながらの発砲などの場面では武器に邪魔されず狙えるなど利点も多い。しかし一般的なFPSと比較するとやや画面は寂しく、銃の造形や操作自体に魅力を感じるようなミリタリーファンにとっては不満点となり得る部分。

薄いストーリー性

  • 特定の人物が主人公という訳ではないため、ドラマチックなストーリーなどは用意されていない。作風は終始ストイックな空気感が漂う硬派なものとなっており、ゴーストの各兵士もゲームキャラクターとしては個性に欠ける。
    • その代わり、世界情勢に関してはトムクランシー作品特有の緻密な描写が活きており、ラストでの荒廃したモスクワ市街地戦など時代考証面でのリアルさは魅力となっている。

問題点

異常に高難度な戦車防衛ミッション

  • ほかのステージはクイックセーブを駆使して慎重に行動すれば時間次第でクリアは可能なのだが、唯一、中盤の味方戦車と行動するミッションだけは勝手に侵攻していく戦車に合わせて先回りして敵を排除しなければならないため非常に難しい。
    • 追加任務として「全戦車の生存」があるが、この任務を達成するには味方戦車の隊列を先回りして待ち伏せる敵兵、砲兵、戦車をすべて*1片づけていかなければならない。もたもたしていればすぐに追い越されて自滅してしまうため、達成するのは非常に難しい。

車両は利用不可

  • 敵陣営は戦車やトラック、ヘリといった車両を利用して侵攻しているが、プレイヤー側は特殊部隊であり一部ステージに登場する味方戦車を除けば車両の恩恵に預かることはできない。
    • 敵の増援を乗せたトラックを運転手だけ無力化した場合などであってもその車に乗ることはできず、終始徒歩での移動を強いられる。移動させたい部隊をスクワッドセレクターで自動で歩かせて到着後に操作部隊を切り替えるなど労力を減らす手段はあるが、マップが広いため結局どの方法であっても目的地への到着に時間がかかってしまう。

総評

優秀な部隊指揮システムと戦略的自由度の高いゲーム性から高い評価を獲得し、オープンフィールド型のタクティカルシュータージャンルの代表作のひとつとなった作品。
そのリアリズム最重視な高難度の内容から決して初心者向きではないものの、『レインボーシックス』などの特殊部隊モノを好む同シリーズのファンを中心に高い評価を獲得した。

現在もシリーズが続く長寿作品ではあるが、後のカジュアル化路線を嫌い本作のストイックな作風を是とするファンも多い。
発売からしばらく経った現在でもファンによって開発された大型MODが登場するなど、今もなお数多くのプレイヤーに愛されるタイトルである。


その後の展開

  • PS2/Xb/GCと当時の主要コンソール機に移植されており、ブリーフィングなどが日本語で吹き替えられている。
    • その他、Win版ではそれぞれ『Deseat Siese』『Island Thunder』というタイトルで2つの拡張パックが配信された。
      • なお、『Island Thunder』はXbで単独版が発売されていおり、PS2では拡張パックの要素を加えた完全版『Jungle Storm』が発売された。
  • 前述のとおり現在もシリーズ展開が続いており、本作以降にも『Future Soldier』や『Wild Lands』と言った名作が生み出されることになる。
    • なお、2021年10月にはシリーズ初となる基本プレイ無料のバトルロイヤル『Ghost Recon Frontline』(PS5/XSX/PS4/One/Win)が発表されたが、1年も経たない2022年7月に開発中止が発表された。
最終更新:2024年06月01日 22:00

*1 最後に待ち受ける複数の戦車だけは、味方戦車が全て吹き飛ばしてくれるため破壊する必要はない