Shady Part of Me
【しぇいでぃぱーとおぶみー】
| ジャンル | アドベンチャー |  | 
| 対応機種 | Windows(Steam、Epic Games Store) Nintendo Switch
 プレイステーション4
 Xbox One
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| 発売元 | FOCUS HOME INTERACTIVE | 
| 開発元 | Douze Dixièmes | 
| 発売日 | 【One】2020年12月10日 【Win/PS4】2020年12月11日
 【Switch】2021年2月25日
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| 定価 | 【One】2,100円(税込) 【Win】1,780円(税込)
 【PS4/Switch】2,090円(税込)
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| プレイ人数 | 1人 | 
| レーティング | IARC7+ (7歳以上) | 
| 判定 | 良作 | 
| ポイント | 高い演出力と惹き込まれる世界観 光と影をモチーフにしたパズルはユニークでいて分かりやすく、程よく難しい
 周回要素はほとんどなくボリュームも控え目
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概要
フランスのインディーデベロッパー「Douze Dixièmes」による処女作。
公式なジャンルはアドベンチャーだがゲーム内容としてはパズルアクションに近く、
「光を恐れる少女」と「光の中でしか存在できない少女の影」を切り替えながら「出口」を目指して進んでいく。
至る所で文字による演出が挿入されるのも特徴。
登場人物
少女
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光を極端に恐れており、足元に影ができてしまうところに立つと頭を抱えて動けなくなってしまう。
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光源が移動したり消灯したりで少女の足元がすぐに影になった場合は活動を再開できることもある。
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どうやら足元さえ無事であれば良いようで、明らかに横から光で照らされていても問題ない場面もある。
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自ら光に入っていくことはできず、しばらく光に向かって進むと驚きながら飛び退く。
 
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前後左右に3Dマップを立体的に移動できるがジャンプしたりオブジェクトによじ登るといった
 上下移動のアクションがなく、「少女の影」とは別の意味で平面的なアクションとなっている。
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アクションとしてレバーを操作したり、木箱を押し引きして動かすことが可能。
少女の影
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現実の影のように少女と連動して動くわけではなく、任意のタイミングで操作を切り替えて動かす。
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少女とは逆に、光の中でしか存在できない。
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壁面などにできた影を床や壁として、平面を移動する。
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ジャンプしたり金網状の影をよじ登ることが可能で一般的な2Dアクションゲームのような操作感覚だが、
 後半になると凹凸のある壁面を移動するなど2次元とは思えないほど立体的に動く場面も出てくる。
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中盤以降、少女の影が立っている足場を少女が傾けたり、ゆるやかなカーブを描く地形を歩くことで
 横向きや逆さに立つこともできるようになる(影の中の重力は常に少女の影の足元に向かって発生する)。
 
 
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キイチゴのトゲの影に触れたり、影と影の間に挟まれたり、少女の影が投影されている光源が消えたり影を作られるなどすると消滅してしまう。
 死因のほとんどは少女のオブジェクト操作ミスだったりする
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少女側とは異なり、消されてしまってもすぐ光を灯せばセーフということもない。
 
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壁に映ったレバーの影を操作することで現実のレバーも動きギミックを作動させることが可能。
 
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少女とは異なり木箱の押し引きはできない。
    
    
        | + | 後半に追加されるアクション(ネタバレ注意) | 動かない人形に憑依することで少女のように3Dマップを前後左右に移動が可能になる。 少女とは異なり、光のある部分も移動可能で箱を動かすこともできるようになるが、ジャンプはできなくなる。
 任意のタイミングで人形から抜け出すこともでき、その際は人形に憑依する前と同じ向きで影に戻る。
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操作とシステム
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上記の登場人物「少女」と「少女の影」をボタンで切り替えてセッション(いわゆるステージのこと)を進んでいく。
プレー状況はオートセーブされる。
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セッションの最後には少女側に白い円、少女の影側に黒い円があり、2人とも円の中に納まることで次のセッションへ進める
 (片方しか操作できないセッションでは片方のみになる)。
 
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Rボタンで「巻き戻し」が可能。進行に詰まったり謎解きで迷った時に状況を戻すことができる。
 コンティニューも兼ねており、少女が光で照らされて動けなくなったり少女の影が消えてしまった場合も巻き戻しを利用する。
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Lボタンでリスタートが可能。セッションの最初からやり直せる。
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セッションには鳥の形をした折り紙(の影)が配置されていることがある。
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未入手の折り紙が配置されているセッションの始めには折り紙の入手数が表示される。
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白い折り紙は少女が、折り紙の影は少女の影がそれぞれ入手できる。
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全部で98枚あり、この折り紙はジグソーパズルのピースになっている。
 その幕(セッションの集まり)の折り紙を全て集めるとセッションセレクトでイラストが閲覧できる。
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折り紙によってエンディングが変化することはないが、折り紙を入手した際にそれぞれ異なるボイスと字幕が流れる。
 
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要はやり込み要素であり、大抵は見えていてもギミック操作をうまくやらないと手に入らなかったり
 寄り道しないと見えない所にひっそりと配置されていたりする。
 が、場面によっては簡単に手に入るところに分かりやすくたくさん並んでいることもある。
 
評価点
演出と描写
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全編を通して水彩画のようなタッチで描かれており、独特の世界観を見事に描写している。
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開発へのインタビュー記事によるとビジュアルには特にこだわったらしく、なんと本作のために独自のグラフィックエンジンを開発したとのこと。
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静的なビジュアルだけでなく動的なビジュアルも独創的で、大量の本が浮かぶ廊下を少女が進むと
 それらの本が宙を飛び次々に本棚へ収まっていくなどダイナミックな場面もある。
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なお、このシーンはゆっくり歩けば本もゆっくり動き、道を戻れば逆回しするように本が棚から出てきて再び宙に浮かぶ。
 このような演出は随所に存在し、中盤以降ギミックとして利用されることも。
 Rボタンによる時間の巻き戻しも、少女の能力であることが開発者インタビューにて仄めかされている。
 
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ビジュアルを重視しながらゲーム的な分かりやすさも損なっておらず、移動できるところ・できないところは視覚的にすぐ分かるようになっている。
 
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文字を多用した演出
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少女や少女の影が特定の場所を通過したりギミックを操作すると、彼女らのセリフや心情がステージに表示される。
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表示の仕方もそれぞれ凝っており、文字すらもステージ演出の1つとして違和感なく取り込まれている。
 
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面白いのは、少女や少女の影が歩くたびに「ペタペタ」「ポテポテ」「コツコツ」と足音が文字で表示されることだろう。
 ゲームを開始して間もなくこの表現を目にしたプレーヤーは「文字を読むゲームである」ということを無意識に理解することになる。
 
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少女と少女の影のやり取り
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外見相応の幼さを感じさせる少女と、やや大人びた雰囲気の少女の影はそれぞれフルボイスで話す。
 上述の通りイベントシーンではなくゲームの進行中に会話を行うので、美麗なグラフィックも合わさって
 「アニメのように動く絵画を操作する」というような、ゲームならではのプレイ体験が得られる。
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セッションをクリアすると彼女たちはお辞儀のポーズをとるのだが、中盤仲違いしている場面ではお辞儀をしなくなるといった演出も。
 
ゲーム性
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光と影を使った謎解きは分かりやすいルールでありながら歯ごたえがあり、解けるたびに閃きと喜びが得られる。
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例えば大きな木箱の影が少女の影を通せんぼしている場合、少女は木箱を引いて光源から遠ざける。
 すると木箱の影は小さくなり、少女の影が飛び乗れるようになる。
 その状態で木箱を光源に近づけてやれば少女の影が乗った箱の影はどんどん大きくなり、高いところへ登れるようになる。
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これはほんの一例であり、ほとんどにおいて「以前のセッションと同じ解法」は通用しない。
 「光と影」という身近かつシンプルな要素を最大限利用したギミックの数々は最後まで新たな閃きを提供し続け、プレーヤーを飽きさせない。
 
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難易度もきれいな右肩上がりになっており、セッションの進行にあわせて新ギミックも追加されていく。
 新ギミックの挿入に理不尽なものはなく、初見のものはチュートリアル的な簡単なセッションが多い。
 後半のセッションになれば当然難易度は上がるが、動かせるギミック・行ける場所は限られているため
 「詰む」ということはほぼなく、試行錯誤しているうちに「あっ、こういうことか!」といつかは気付けるようになっている。
 
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一方、強制スクロールや移動するオブジェクトなど少女・少女の影双方で簡単なアクション性が求められるセッションも存在する。
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いつでも巻き戻し可能なこともありアクションゲームとしての難易度は低いが、折り紙を取りに行くとミスを誘発する程度の難易度はある。
 
その他
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海外のインディーデベロッパー作のゲームであるが、日本語ローカライズは高品質。
 一部にやや硬めの翻訳もないわけではないが、やや難しいであろう話し言葉の訳が違和感なくできており誤訳もない。
賛否両論点
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ゲームの進行中に字幕が表示される。
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これは評価点にも書いたことでもあり、確かに演出としては非常によくできているのだが、
 一方で「字幕に集中するとゲームに集中できない」「ゲームに集中すると字幕に集中できない」というジレンマが生じてしまう。
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通常のステージであれば一時的に立ち止まって字幕を読むことができるが、上述の通り強制スクロールのセッションもあり、
 そういったセッションでも容赦なく字幕が表示されることがある。巻き戻して読むことも可能ではあるが、通しで見ることで
 1つの演出として成立しているものを巻き戻して見直すというのも雰囲気を壊してしまいがちである。
 
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しかし、英語(外国語)のリスニングが可能であればこの問題は気になりにくくなる(かもしれない)。
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字幕およびボイスは多言語に対応しており、日本語も字幕は対応しているものの日本語ボイスは無い。
 日本語ボイスがあればこの部分はほとんど問題になり得なかった可能性はある。
 
 
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シナリオの細かい説明は一切なく、セリフ(字幕)とイベント、ステージ演出などから想像させるようになっている。
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エンディングのイベントも非常に短い。プレーヤーになんとなく「こういうお話だったんだろうか?」と予想を思わせる程度には
 描写されるのだが、それが正しいのかどうかという確証が得られるわけでもないので人によってはモヤモヤするかもしれない。
 
問題点
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周回要素とボリュームの少なさ
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折り紙の収集は1つのやり込み要素なのだが、逆に言えばそれくらいしかない。
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パズル・アクションのいずれもランダム要素等は一切無く、解法が分かってしまえば繰り返しプレーした時の面白みはほとんど無くなってしまう。
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尤も、比較的安価なゲームであるためジャンルも考えるとボリューム不足はある程度致し方ないところではある。
 
総評
昨今のゲームとして見るとボリュームにやや難ありではあるが、ゲームというより
「プレーヤーが操作可能なアニメーションムービー」として捉えるとその印象はまた異なって見えるかもしれない。
新規デベロッパーによる処女作ながら低価格帯ゲームとは思えないほどハイクオリティなビジュアルと幻想的な演出が目を引き、
光と影という身近でシンプルな題材でありながら独創的で程よい歯ごたえのあるパズルアクションに仕上がっている。
最終更新:2021年06月03日 19:46