ここではWindows(Steam/GOG.com)版のみを取り扱う。


Relicta

【れりくた】

ジャンル FPVアクションパズル
対応機種 Windows 7/8/10/11
発売元 Ravenscourt
開発元 Mighty Polygon
発売日 2020年8月4日
定価 1,980円(Steam)
$ 19.99(GOG)
プレイ人数 1人
周辺機器 コントローラーフルサポート
備考 Unreal Engine使用
判定 なし
ポイント まともな日本語あり

概要

  • SFの一人称視点のアクションパズルゲームである。
    • パズルの種類はいわゆる『Portal』系で、『Magrunner』や『タロスの原理』のようにBoxを指定の場所に運ぶものが主体となっている。
      • ルールは『Magrunner』に近く、磁気や重力を操って仕掛けを解いてゆく。ただし『Magrunner』には重力を操る能力は無いため、本作のほうがやや複雑ではある。
    • 序盤は『Portal』や『Magrunner』のようにテストチャンバーをクリアしてゆくのだが、『Portal』や『Magrunner』のようなステージクリア型ではない。かと言って『タロスの原理』のようなセミオープンワールドでもなく、ごく普通の一本道のAADVにパズルをてんこ盛りした感じとなっている。

ストーリー

2118年、テラフォーミングされた月面に遺棄されたチャンドラ基地へ調査に来た女性物理学者 Angelica (アンジェリカ) Patal (パタル)と女性宇宙考古学者 Laia (レイア) Alami (アラミ)は、そこに残された遺物に唸るしかなかった。

  • この前段に、アンジェリカが2120年にチャンドラ基地に封じられたRelictaと呼ばれる未知のオブジェクトを破壊しようとして、返り討ちに遭うシーンが挟み込まれる。
    • 基本情報欄に貼った画像中の紫の物体がRelictaそのものである。

システム

※ 本作は『タロスの原理』『Magrunner』等と同様に、本作に出現するオブジェクトの意味や使い方に関する説明が一切ない。それも本作の楽しみの一つと思われるため、本稿においては極力ネタバレを避けることとする。

  • FPVのAADVである
    • ただし、パズルのあるフィールドはかなり細かい区画に分かれており、新しい区画に移動するために様々なパズルを解く必要がある。
      • 『Portal』や『Magrunner』のようなステージクリア型ではなく、地続きのマップとなっている。
  • 「重力グローブ」にてboxなどのオブジェクトを磁化できる。
    • 同じ色に磁化されたものは反発し、異なる色に磁化されたものは引き合う。
      • 非常に真っ当なルールであるが、『Magrunner』をプレイ済みであると『Magrunner』では同じ色に磁化されたものは引き合ったため、『Magrunner』の方がおかしいのに本作のルールに違和感を覚えることになる。
    • 磁化したものに同じ色の磁性を照射すると、無磁性となる。
    • 磁化したものに別の色の磁性を照射すると、その色に磁性に上書きされる。
  • RBボタン(もしくはマウスの中ボタン)で「重力グローブ」にてboxなどのオブジェクトの質量をなくすことができる。
    • 本作中では"重力操作"と呼ばれている。
      • 地上にあるものは地上にとどまるが、空中のものはフワフワとさらに高度を上げる場面もある。
      • 一度"重力操作"をしたオブジェクトに再度"重力操作"を行うと、質量が戻る。
    • 磁化や重力操作が行えるオブジェクトには、よく見ると紫色のコアがある。 つまり、『Magrunner』は新技術の適応者のテストだったのだが、本作は紫色の物質の性質のテストなのである。
  • HP制ではない
    • 『Magrunner』は宇宙ステージですら落下するとダメージを受けてHPが減り、最悪死ぬこともあったが、本作は舞台が月であり、10階建てぐらいの建物から落ちても死なない。
  • コントローラーをサポートしている
    • しかし、前述の磁力操作や重力操作は素早く正確な AIM (エイム)が必要な場面があり、マウス操作の方が適している場合がある。
  • PDA
    • Yボタン押下で開く。
      • Eメールや電子ドキュメント、拾ったメモリーカードの内容が読める。
      • 収集アイテム(アーティファクト)を拾った場合はその画像と解説が追加される。
  • オートセーブ方式である
    • 任意セーブは全く不可能となっている。

評価点

  • 美しいグラフィック
    • 『Portal』や『Magrunner』のような殺風景なテストチャンバーが続くのではなく、テラフォーミングされて地球と見まがうほどになった月が舞台であり、美しいとされる『タロスの原理』をさらに上回る、感嘆するレベルのグラフィックとなっている。
      • エリアごとに気候が異なっており、雪原の"タイガ"やトロピカル、果てはビーチまである。
        地球の全ての気候を再現しようと試みた為と説明されている。
    • 敵の表現も『Magrunner』の表現と比べると、禍々しさがある。
  • ストーリーが付いている
    • この系統の作品の祖である『Portal』にストーリーが付いていたため、後発組もそれに(なら)う形で何らかのストーリがついているものではあるが、本作もそれに(たが)わずそれなりのストーリーが付随している。
      • 作品内のストーリーは冒頭のシーンでほぼネタバレしていて、ある意味予想通りの展開であるが、そういう状況になった経緯や世界観は非常に複雑であり、それらは収集アイテムを集めることでおぼろげに判ってくる。
    • なお、結末に関しては賛否両論である。
  • 作品内はまともな日本語訳となっている
    • 各ストアにある本作の説明文(本稿の余談の項にて詳述)はやけに堅苦しく、持って回ったような表現で、本作の和訳の出来を不安に思う人もいるだろう。しかし、製品内の日本語訳はちゃんと意味の通じる口語訳であり、プレイに何ら支障はない。
      • 作品中では「あんたたち、漫才でうまくいかなかったから研究職になったんでしょ」という関西人のような突っ込みもある。

賛否両論点

  • 難点のあるパズルがある
    • まるでサッカーのFKのようにboxの軌道を精密にコントロールする必要のある場面がある。
      • 同系統の解法は『Magrunner』にも存在したが『Magrunner』のものはそこまで細かい精度を必要とするものはなかった。本作ではさらに無重力状態が加わっているため、さらにコントロールが難しい場面がある。
      • 答えは解っているのに技術的な要因で手こずることにストレスを感じる人もいる。
      • ただし、精密なコントロールの要求されない別解がある場合も多い。
    • 偶然解けてしまうパズルがある
      • 無重力状態のboxがフワフワと無秩序に動いた結果、おそらく作者の意図とは違う方法でパズルが解けてしまうことがある。
      • 解法に納得できないなら、メニュー画面から"リセット"すればそのパズルのやり直しができる。
      • ただし、それが正しい解法なのか、ぁゃιぃ解法だったのかの判断が難しい場面がいくつもある。
    • なお、本作のパズルは『タロスの原理』のように多種のフェンスを使用しており、『タロスの原理』ほどではないものの、良問もある。
      • 本作と比べて価格が半額の『Magrunner』を引き合いに出すのは酷かもしれないが、『Magrunner』よりは問題が練られている。

問題点

  • セーブファイルは1つだけである
    • しかもオートセーブのみとなっている。
      • 本作には収集アイテムが13個存在し、1周のプレイでアイテム13個全てを収集して初めて実績「Master collector」が獲得できる仕様となっている。また、データファイルが17個ありこちらも1周のプレイでデータファイル17個全てを収集した場合にのみ実績「Senior researcher」が取得可能となっている。ところが本作のマップはいくつかのエリアに分割されており、一度しか訪れないエリアもある。実績「Master collector」,「Senior researcher」を狙ってプレイしていたのにアイテムの取り忘れをしてしまった場合は最初からやり直すハメになる。
      • アイテムを取得するたびにPDAに情報ファイルが追加されるため、ストーリーをより深く知るためにもそれらのアイテムを集めたほうが良い。
    • 本作は最後にエンディングが分岐するが、ゲーム終了後もその選択肢の直前のセーブデータが残っているため、エンディングを両方見るために初めからやり直す必要はない。
  • プレイ時間表示がないのに、実績にタイムアタック「Faster than light」があり「実績を達成できるか分からない」疑心暗鬼に陥る。
    • 上記の「セーブファイルが1つだけ」「オートセーブのみ」も相まって、クリア後にクリア前状態に戻って短時間クリアし直すことができないことがさらに拍車をかける。幸い、パズルのあるエリア内でオートセーブはされない(PS4版で確認)ため下調べし解法が分かったらクリアせずに終了、ロードし直して短時間クリア、のような工夫で緩和である。
  • 任意のパズルを選んでの再プレイが出来ない。
    • ステージクリア型の『Portal』や『Magrunner』は問題を選んで再プレイが可能であり、『タロスの原理』はパズル区画を出ればパズルがリセットされている。しかし、本作は一本道のAADV風の作りとなっているため、そういった機能を実装するのは一見難しそうには見える。ところがAADV『Mages of Mystralia』では全てではないが、メインメニューから既にクリアしたパズルを再プレイできるようになっている。本作もパズルのあるフィールドと探索用フィールドが明確に分かれており、収集アイテムはパズルのフィールドには落ちていないなどのお膳立てまでされているのに、任意のパズルフィールドを選んで再プレイできないのはもったいない。

総評

FPVパズルでありながら、グラフィックにかなり力が入っている。本作プレイ後は先行のFPVパズルを古臭く感じる可能性が高いため、良作判定の『Portal』『タロスの原理』が未プレイならば本作に触れる前にそちらを先にプレイするべきであろう。それらをプレイして、似たようなゲームがしたいと思ったならば初めて本作に手を出すべきである。
特にルールの面で『Magrunner』の後継作と思われても仕方ないぐらいに『Magrunner』に似ており、同じ解法のパズルもある。また、序盤の問題に『タロスの原理』に酷似しているものがある。
そうやって時系列順に『Portal』『タロスの原理』『Magrunner』とプレイすると本作は「やっぱりモノマネじゃん」と感じる点は多い。しかし、本作は先行作品のモノマネだけで成り立っているわけではない。『Magrunner』になかった重力を操る能力が付加され、隠された収集アイテムが用意されている。
問題の質や問題数から鑑みて、価格が『Magrunner』の倍、『タロスの原理』の半額というのは妥当であると感じられる。


余談

  • 同日にPS4/One版も発売されている。
  • Mighty Polygonはスペインのバレンシアのゲーム制作会社であり、本作がデビュー作となる。
  • 本作の商品説明は分かりにくい上に、内容も間違っている部分がある。

    レリクタは、磁力と重力を巧みに組み合わせてチャンドラ基地の秘密を解き明かす一人称パズルゲーム。場所は月の奥深く。愛娘の命はあなたの科学の頭脳に懸かっている…
    不気味な月面基地廃墟に取り残された、一流物理学者が主人公。重力と磁力を自在に操作しながら、テラフォーミング化された謎深きクレーターを進み、物理パズルを解いていく。真っ直ぐ進んで安全圏を目指すか。それともじっくりと手掛かりを集め、22世紀宇宙政治闘争の陰謀を解き明かすか。月面クレーターの果てしなき闇に、娘の生命を脅かす――あるいは人類の命運を一変させる――秘密が隠されている。自らの研究の行く末に対峙する覚悟はよいか?
    (Steam, Xbox.com, My Nintendo Store, PlayStation.Store より引用)

  • 上記は本作についての説明文で(Switch版は発売元が違うのに)揃いも揃って同じ文章なのであるが、この説明文を読んで本作の日本語訳の出来に不安を覚える人もいるだろう。しかし、製品内の日本語訳はちゃんと意味の通じる口語訳であり、プレイに何ら支障はない。
+ 商品説明がどうしてこんな文章になったのか?の考察
  • 上記の説明文が意味不明なのはそもそも原文の英文が悪い部分もある。原文は持って回ったような表現を多用している。"愛娘の命はあなたの科学の頭脳に懸かっている"の原文をMighty Polygonのサイトから引用すると
    Your scientific mind is the only thing that can keep your daughter alive.
    これはもうちょっと簡潔に書ける。
    Only your scientific mind can save your daughter.
  • しかし、説明文の和訳者を擁護しきれない部分もある。最後の一文の原文をGOGから引用すると
    Are you ready to face the ultimate consequences of your research?
    であり、主人公の当初の目的がチャンドラ基地の調査だったのだから「調査の最終的な結論に対峙する覚悟はできていますか?」ぐらいが適切な訳であろう。
  • さらにこの説明文には誤認や誇大がある。
    "場所は月の奥深く。"とあるが、確かに本作の舞台はクレーターの底にあるとはいえ、地下ではなく月面にある。原文は
    Alone in the treacherous depths of the Moon.
    となっており説明文の和訳者を責められないが、元となったであろう文章をMighty Polygonのサイトから引用すると
    Its dead silence conceals something darker than the depths of Shackleton (シャクルトン) Crater (クレーター).
    となっており、開発とパブリッシャーの間での情報共有に問題があったようである。
  • また、"不気味な月面基地廃墟に取り残された"とあるが、もうそこで2年も普通に生活しており、たまたま他の研究員が別のクレーターに調査に出かけて留守だっただけで、"取り残された"というのは言い過ぎである。
    むしろ、他のクレーターに調査に行って、移動手段のシャトルが運行停止となってしまって帰れなくなっているレイア・アラミ博士のほうが"取り残された"という表現に当てはまるのではないか。
  • 以上から、そもそも開発会社もパブリッシャーも英語が母国語ではないのに英語で情報交換したため情報共有に問題があり、パブリッシャーの和訳担当者も日本語に問題があるが、開発会社が雇った翻訳者は有能であったということのようである。

その後の展開

  • 2020年8月25日にはEpic Games Storeでも配信された。
  • 2021年4月15日にはSwitch版がKoch Mediaから発売された。
    • Koch MediaはRavenscourtの親会社である。
  • Switch版発売と同日に他の全機種のバージョンに対してもSwitch版と同様に2つの無料DLCが配信された。
    • DLC「Aegir Gig」はチャンドラ基地建設当時が舞台の前日譚である。12個のパズルが追加されている。
      • Aegirラボの新任研究者Nicを操作する。Nicの女性上司がマイクロマネジメントをしてくるためかなり不快である。
    • DLC「Ice Queen」は本編のエンディング後のチャンドラ基地が舞台となっている。主人公はレイア・アラミ博士。
      • 本編よりさらにルールが複雑化している。
  • Xboxコンソール版はアップデートにより、XSX/Sにも最適化された。
最終更新:2022年09月25日 18:43