リップルアイランド
【りっぷるあいらんど】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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サンソフト
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開発元
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東海エンジニアリング |
発売日
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1988年1月23日
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定価
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4,900円
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プレイ人数
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1人
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配信
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プロジェクトEGG
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PC
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2012年6月26日
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バーチャルコンソール
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3DS
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2014年2月19日
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判定
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良作
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ポイント
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ほのぼの系ファンタジーアドベンチャー カイル! なにやってるのよ 豊富なアニメーションと心温まるストーリー 見た目に反して厳しい大冒険 マルチエンディング方式
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概要
1988年初頭にサンソフトが発売したファンタジー系アドベンチャーゲーム。
メーカー自身が「ほのぼの系」と自称しているように、キャラクターはかわいいタッチで描かれている。
また「アニメーションアドベンチャー」とも銘打たれている。
ストーリー
人間と動物が共存する小さな島「リップルアイランド」。
ある日、その島を治めるドテーラ王の一人娘、ナサレル王女が闇の皇帝ゲロゲールによってさらわれてしまった。
ゲロゲールはその魔力によって、この島を支配しようとしているのだ。このままではリップルアイランドは破滅してしまう。
そこでドテーラ王は「ゲロゲールを倒したものには褒美と姫との婚約を約束する」というお触れを出した。
このお触れを聞いた少年カイルは、早速ゲロゲール退治の旅に出発した。
カイルはゲロゲールを倒すことができるのだろうか…
内容
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アドベンチャーながらも「テキストで示された選択肢を選ぶ王道な形式」ではなく、コマンドに対応した対象をグラフィックウィンドウの中からカーソルで選ぶことをメインに据えている。
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そのため、グラフィックのウィンドウがかなり大きい構成になっている。
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全体的に『水晶の龍』(1986年12月・DOG)のようなシステムである。
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しかしカーソルとコマンド選択の操作はしっかり分離されているので、上記作品よりは馴染みある操作性に近い。
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エリアで進行が区切られており、エリアが「章」のようになっている。
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エリアごとの条件をクリアすると次のエリアへと進み、以前のエリアに戻ることはできない。また選択次第では、本来のエンディングへの到達条件を満たさずして強制的に次エリアに移行してしまう場合がある。
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また、クリアに関わる重要なアイテム以外はエリアを跨ぐタイミングで処分され、持ち越すことができない。
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物語としては上記の通りファンタジーの世界観である。
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シリアスとコミカルを程よくミックスして、触れ込みの通りほのぼのとしたタッチな絵質で描かれている。
主な登場人物
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キャル
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ゲロゲールによって住んでいた家を破壊され宿無しになった少女。カイルと出会い旅を共にする。
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ドテーラ王
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リップルアイランドの王。どてらのような服を着ている。
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ネタバレ注意
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ゲロゲールにさらわれた上にカエルにされてしまう。
進め方次第ではカイルはカエル状態のままの姫と結婚する(というより強引に結婚させられる)ある意味バッドエンドが待っている。
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ネタバレ注意
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その姿は神器の力によって巨大化して進化したカエルである。
サンソフトが発売元のためか名古屋弁でしゃべる。
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この他に様々な動物や人間がいて、カイルたちの冒険を支えてくれたり邪魔したりする。
コマンド
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コマンドはそれぞれアイコンになっている(左から以下の順で並んでいる)。
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移動(アイコン・4方を指した△の矢印)
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十字キーで四方を選んで場所を移動する。移動できない方向に矢印は出ない。
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見る・調べる(アイコン・目だけのついた顔)
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話す(アイコン・口だけのついた顔)
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キャラクターと会話する。いない場合、キャルとカイルで話したりカイルが叫んだりする。
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取る(アイコン・手)
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アイテム(アイコン・道具袋)
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入る(アイコン・足)
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主に扉や穴などに入る。
上記の「移動」で代用できるものもあるが、行く先が2つ以上ある場合、このコマンドが必須となる。
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押す(アイコン・下向きの矢印)
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ものを押すだけでなく「叩く」という形でも使われる。
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引く(アイコン・上向きの矢印)
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パスワード(アイコン・手帳と鉛筆)
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パスワードを発行する。入力もこのコマンドで行い、パスワードが正しければそのポイントに飛んで再開となる。
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「見る・調べる」「取る」「アイテム」「入る」「押す」「引く」のコマンドはすべてカーソルでグラフィックウィンドウの中から対象を選ぶ格好になる。
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「アイテム」のみ、「持っている何を使うか?」が必要なため、サブコマンドとして持っているアイテムが表示され、使うアイテムを選びカーソルで何に対して使うかを決める。
評価点
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「アニメーションアドベンチャー」という触れ込みの通りで、アニメーションが豊富。
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ファミコンのアドベンチャーでここまで動くアニメーションがふんだんに用いられているのは当時はもちろん、後々まで含めてもかなり少ない。
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それに合わせてグラフィックのウィンドウが非常に大きい構成になっている。
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キャラが動くだけでなく、画面全体に及ぶものまである。
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ストーリー自体は短めだがマルチエンディング方式で、ハッピーエンドも1つではない。
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本当のエンディング以外では、スタッフロールがないとはいえ、それなりにハッピーエンドに思えるものもあるので、幾通りかの物語が楽しめる。
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いかにもバッドエンド候なものもある。
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ほのぼのとした世界観でストーリーは心温まる物語。
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序中盤はまさにほのぼのした展開が続くが、一方で終盤での劇的な展開は引き込まれるものがある。
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ほのぼの系なだけにギャグっぽいバッドエンドでも、それなりに味がある。
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悪役キャラも皆どこか可愛げがあるデザインになっている。
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また、面白おかしく笑えるコントのような一面もある。
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詳細・ネタバレ注意
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エリア2の最後、ムササビに運んでもらう時に地味に扱いがひどいカイル。
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中世ファンタジー系の魔王の居城ながら襖があったり和風の酒瓶や酒蔵などがある。
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魔王的存在のゲロゲールが名古屋弁で喋ったりと、最終決戦なのにどこか笑わせてくれる。
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ハッピーエンドの条件を満たさないと、ナサレル王女はカエルのまま元に戻れずカイルはハナから褒美の金だけもらう気でいるのに、ドテーラ王が「もう式の準備は整っている」と強引に結婚させられる。
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カイルも困った顔でBGMがハッピーエンド時の結婚行進曲を妙にマヌケな雰囲気にしたものになっているなど、細かい部分まで凝っている。
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コンティニューはパスワード制ながら非常に扱いやすい。
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20文字と短めで、使われている文字は「あ」~「の」+「ん」だけで、文字も非常に大きく表示されている。
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よくある「め」と「ぬ」や「゛」「゜」といった間違いやすいものがなく、書き写しミスのリスクはだいぶ小さく抑えられている。
賛否両論点
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進行に必須なのにノーヒントで直感に頼る部分がいくつも存在する。
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キャラがほのぼの系ながら、物語の進行に関わる行動にノーヒントがものがあり難易度が高めな特徴は前年ディスクシステムで発売された『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』に似たところがある。
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ハッピーエンドの条件を満たさないまま進むことができるポイントがあり、そうなると最後まで取り返しがつかない。
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一応、その点はパスワード制なので履歴を取っておけば戻りが効くのは幸いだが、しまらないバッドエンドを見せられるまで、やらかしたことに気づきにくい。
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とはいえ、元々ストーリー自体が短めなので手応えを感じられないまま終わることもありうるので多少はやりごたえになる部分は必要ではあるし、マルチエンディングであり、それぞれにプレイ次第で様々な結末を見せるゲームという意味では、あまり的確なヒントを与えすぎてしまうと意図的な自虐プレイをしない限りそれを見せられなくなるので、このゲームの持ち味に昇華しているとも言える。
問題点
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アニメーションがふんだんに取り入れられているのに反して、絵質では少々雑な部分も見られる。
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割と重要度が低いこともあるだろうが、開始直後の草むらなどは、かなり雑な感が否めない。
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このゲームを語る上で必ずついて回る「カイル! なにやってるのよ」。
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ハズレの部分を押したり引いたり取ったりするとたいていキャルの台詞がこれ。見る・調べるの場合「カイル! どこみてるのよ」。
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容量的に仕方ない部分(本作の容量は1メガ)だとしても、それなりにバリエーションがほしいところ。
総評
ほのぼのタッチに似合わずノーヒントが絡んで難しい点に関しては不満に感じやすいが、操作のレスポンス自体は速く、メッセージもスピードがありながらも区切りで飛ばされることもないので、総当りの形式でも煩わしさを感じにくい。
また絵質が少々雑な部分もチラホラ見られるが、この時期のゲームにしてはアニメーションがよく取り入れられており物語を楽しむアドベンチャーとして、それを盛り上げる演出という点では申し分なく、この2~3年後のゲームでもここまでのアニメーションを取り入れたアドベンチャーは有数である。
肝心なストーリーに関してもノーヒントによる難しさから進みにくい難点はあれども全体的な出来は良く、ほのぼのタッチのコンセプトは一貫している。
更にマルチエンディングにより複数の結末に辿り着く展開や、世界観に関しても、この当時あまり見られないものであり真新しさという点でも申し分ない。
当時のソフト売上本数は低かったが、レトロゲームブームが本格化する前の時期にもかかわらず移植が望まれ実現した点からしても紛れもなくファミコン屈指の名作アドベンチャーの1つに間違いない。
移植
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後年の再評価やレトロゲームブームをきっかけに発売から十数年以上を経て下記の移植版が幾つかリリースされている。
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同年6月発売の『超惑星戦記 メタファイト』とともにプレイステーションソフト『メモリアル☆シリーズ サンソフト Vol.4』(2002年2月14日)に移植された。
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まったく同じカップリングされた形でPS3・PSP・PSVitaのゲームアーカイブスで2010年10月13日に配信もされた。
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PC上でレトロゲームを復刻配信している「プロジェクトEGG」から2012年6月26日にWindows版がDL配信されている。
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3DSでもDL専売のバーチャルコンソール用ソフトとして2013年4月10日に単体移植されていた。2023年3月28日にWiiU・3DSのニンテンドーeショップのサービス終了により終売。
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クラウドファンディングでの支援により開発され、2024年4月18日に発売されたオムニバスソフト『SUNSOFT is Back! レトロゲームセレクション』に収録。対応機種はSwitch/Steam。
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『かんしゃく玉なげカン太郎の東海道五十三次』『マドゥーラの翼』とのカップリング移植。
余談
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本作は当初ディスクカードで発売する予定だった。
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開発途中の画像ではセーブのアイコンがディスクの形になっていた(製品版ではパスワードによる継続の為か、先述の通り手帳と鉛筆をモチーフにしたアイコンに変更されている)。
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またロムカセットに変更後も元々は1987年12月に発売する予定だったのが、結果的に間に合わず延期となった。
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このようなケースの場合クレジットは前年のままのが多いが本作はちゃんと「©1988 SUNSOFT・TOKAI ENJIN」と1988年表記になっている。
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メディアの変更や後述の漫画版の掲載誌の休刊、そして発売延期が絡み合った結果による混乱で発売前の知名度とは裏腹に売り上げが低迷したのが後のプレミア化の遠因になったとも言われている。
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徳間書店のわんぱっくコミックスで連載漫画化され単行本化(昭和63年2月20日初版)もされた。作者はゲームのオフィシャルイラストも担当しており同誌での巨匠のひとりに数えられる、もりけん氏。
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ゲーム本編よりもかわいいタッチで描かれており、いかにも「ほのぼの系」という雰囲気が、ある意味ゲーム以上に出ている。カイルが非常に可愛く描かれ一獲千金の野心家にはとても見えない。
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連載時は途中で終わってしまったが、単行本で大幅に加筆されており完全に補完された形となった。また単行本では『マドゥーラの翼』も併載されている。
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なお漫画版の欄外でもりけん氏が「キャルの写真集を出したいな」と書いていたが、これは後に氏のHP上で実現されている(残念ながら現在では削除されてしまった)。
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単行本化されたゲーム系作品では最新作を扱ったものとして最後となった。その後は3月に『リンクの冒険』(2巻)、5月に『スーパーマリオブラザーズ2』(3巻)が発売されたもののいずれもゲーム自体は既存作で、ストーリーも独自のもの。他は『無茶の猫丸』『キョンちゃん』『ど根性ガエル』(1~8巻)とゲームとは無関係なもの。
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現在では非常に入手困難になっており、相当のプレミア価格となっているが、2021年になって遂に電子書籍化を果たしており、気軽に読める環境になったのは嬉しいところ。
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また「必勝テクニック完ペキ版」シリーズではないためゲーム攻略の観点ではほとんど役に立たない。そもそも、本作で難解な部分の1つである中盤が端折られている。
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1994年に発売されたスーパーファミコンソフト「すごいへべれけ」に、今作のオープニングBGMがアレンジされて使用されている。
最終更新:2024年07月19日 17:39