魔導物語 フィアと不思議な学校

【まどうものがたり ふぃあとふしぎながっこう】

ジャンル RPG


対応機種 Nintendo Switch
プレイステーション5
プレイステーション4
発売元 アイディアファクトリー(コンパイルハート)
開発元 スティング
発売日 2024年11月28日
定価 通常版:8,580円
豪華版:17,380円
デジタルデラックス版:10,780円
プレイ人数 1人
レーティング CERO: B(12歳以上対象)
判定 なし
ポイント 世代交代した新生魔導物語
致命的ではないものの不備の多い出来
良くも悪くも王道でライトな世界観
魔導物語・ぷよぷよシリーズ


概要

1990年代にコンパイルによって据置機から携帯機まで幅広く展開された、3DダンジョンRPGシリーズ『魔導物語』の流れを組む作品。
コンパイルハート発のシリーズ作品としては『聖魔導物語』があるが、世界観を一新したそちらとは異なり、本作はセガの許諾のもと従来シリーズ、および『ぷよぷよ』のキャラクターも登場している。

制作には複数の元コンパイル関係者が関わっており、キャラクターデザインに戸部淑や壱ほか、音楽にk.h.d.n(永田大祐・林康)をはじめ、アドバイザーとしてシリーズの生みの親である米光一成、同シリーズでディレクションやシナリオを手掛けた織田健司が名を連ねている。


物語

古代魔導学校。
正しき魔導を学び、志を育てる学校。

大魔導師を目指す少女フィアは、
故郷の地を離れ、魔導を学ぶため、
かつて祖母が通っていた古代魔導学校へ入学する。

厳しくもユーモア溢れる教師たちや、
ハチャメチャで愉快なクラスメイトたちに囲まれながら、
大魔導師になるため、
少女フィアは魔導を学び、成長していく。

※公式サイトより引用。


主な登場人物

教師陣を含めると長くなるため、ここではフィアとカーバンクル、並びにパーティメンバーとなるクラスメイト達に限って紹介する。

  • フィア
    • 大魔導師に憧れる本作の主人公。
    • 古代魔導学校の「運」枠に選抜されており、試験を受けずに入学。しかしカーバンクルが入学式で騒動を起こしたため、他の4人の生徒と共に問題児クラスの一員としてまとめられることとなった。
    • 個性的なクラスメイトに頭を悩ませつつも根は明るくめげない性格であり、また目的のためなら破壊行動や戦闘行為も辞さないことから、従来シリーズのアルルを彷彿とさせる所がある。
  • カーバンクル
    • フィアのお供で、コンパイル時代からお馴染みの黄色い生物。
    • 本作ではアグレッシブで好戦的な性格が押し出されており、騒動の起因となることが度々ある。
  • ウィル
    • 勇者を夢見る少年。後述するロールでは「マジックナイト」にあたる。
    • 従来シリーズのラグナスを想起させるような偏執的な勇者マニアで変人だが、一方で魔導や学業への才能を見せる面も持つ。
  • リーナ
    • 魔導の天才である孤独な少女。ロールは「ウィザード」。
    • 能力は高いが対人関係に問題があり、また入学式中カーバンクルが起こした騒動に巻き込まれる形で、フィアと同じクラスに配属された。
  • トット
    • 金にがめつい商人の少年。ロールは「ウィッチシーフ」。
    • クラスの中でも単独行動が多く、自身の利益のために立場を変える抜け目の無い性格。
  • エスカ
    • 謎の多い竜人族の娘。ロールは「ハーミットハンター」。
    • 入学式でカーバンクルに襲撃されたことからフィアに決闘を申し込むが、敗北後は竜人族の掟に従いフィアに懐くようになる。

ゲームの基本的な流れ

魔導師見習いとして入学したフィアが、「学校で課題を受領→ダンジョンを探索→単位を取得」のサイクルを繰り返し、一定以上の単位取得によって進級試験を受け、大魔導師を目指す…というのがゲームの大まかな流れとなる。

  • 課題
    • 学校施設の「教室」で受けられるメインクエスト。
    • ストーリーの進行に関わる必須課題と、授業形式でのチュートリアルや校庭施設の解放を目的とした通常課題がある。
    • いずれもクリアすると、課題に応じたLP(ラーニングポイント)を得られる。
  • 単位
    • 主人公が属する級に応じて獲得できる技能。メニューの「魔導書」から参照する。
    • 要は本ゲームにおけるスキルツリーであり、「ファイヤー」「ウォーター」「ヒーリング」のようなアクティブスキルや、「INTアップ」のようなパッシブのステータスアップなどを、本作では「単位」と呼んでいる。
    • 単位の取得(=スキルの獲得)には課題で得たLPまたはゴールドを要するほか、ほとんどのケースで特定課題のクリアが条件となっている。
    • スキルツリーは級ごとに独立しているが、進級後に遡って下級の単位を得ることもできる。
  • 進級
    • 現在の級ごとに、必須単位を含む規定数以上の単位を取得すると進級試験(ボスバトル)を受けられる。
    • この進級試験がストーリーラインにおける大きな区切りとなっており、概ね章の区切りと同期して物語が進行する。

システム

学校施設

  • 教室
    • 課題の受領と報告を行うための施設。
  • 校長室
    • 単位の振り直しや、後述する「ロール」の再選択を有料で行える。
  • 倉庫
    • ショップ機能、倉庫機能を利用できるほか、アイテムを消費しての「合成」を行える。
    • アイテム所持枠を有料で増加する「かばんの拡張」メニューもここから使用できる。
  • 図書室
    • 郵便物を管理しているという設定であり、ストーリー進行に応じてNPCから届くアイテムを獲得できる。
  • 校庭
    • 後述する「釣り」「野菜栽培」「果樹栽培」「料理」「材料交換」、およびサブクエストにあたる「お悩み相談」の受注・報告を行える。
    • また、ここでも倉庫と合成機能を利用できる。
  • ワールドマップへ
    • 校外のダンジョンへ出発するためのメニュー。

ダンジョン

  • 3D見下ろし型で、入る度にマップ構造が変化する不思議のダンジョン式
  • 基本的には1Fから始まり、フロア内の「青い魔法陣」からどんどん上階を目指して進んでいくが、下階に戻ることはできない。
    • ダンジョンからの脱出はマップ内に設置される帰還用の魔法陣か、専用の消費アイテムを用いて行い、倒した敵の数や獲得アイテム数などのリザルト演出を経て学校に戻る。
  • フィアにはVT(バイタル)という値が設定されており、ダンジョン入場時が最大で、アクションや罠によって少しずつ減少していく。
    • いわゆる「満腹度(空腹度)」であり、0になると代わりに最大HPが減るようになる。
    • HPが無くなると「ばたんきゅ~(=ゲームオーバー)」となり、強制的にダンジョンから退場の上、ペナルティとして所持金が半減する。
    • VTは「カレー」系のアイテムで回復できる。
  • ダンジョン内では武器を振るうことができ、箱や樽といったオブジェクトを壊して中からアイテムを得るのに用いる。
    • 素材アイテムやカレーなど消費アイテムの他、「HP回復」「MP回復」「VT回復」があり、それらを獲得すると即時パーティに対して回復効果が発揮される。
  • ダンジョン内には敵が徘徊しており、接触するとバトルに移行する(シンボルエンカウント制)。

バトル

  • バトルが発生すると画面が切り替わり、専用の円形フィールド内で進行する。
  • ターン制であった旧シリーズと異なり、本作はリアルタイム制。ダンジョン同様にフィールド内を自由に歩き回り、ボタン操作での攻撃や移動による回避を行って進めていく。
    • フィア以外のパーティメンバーは2名まで戦闘に参加し、いずれもオートで行動する。
  • コマンドは「たたかう」「スキル」「大魔導」「アイテム」の4種類で、YAXB / □○△× ボタンにそれぞれ割り振られている。
    • 「たたかう」は手持ちの武器による近接攻撃で、いつでも実行可能。
    • 「スキル」は単位として取得したスキルを発動するコマンドだが、実行すると一定のクールタイムが経過するまで再発動できなくなる。
      • クールタイムの経過は画面隅のタイムライン上を顔アイコンが推移する形で示される。タイムラインにはフィアのみならず、バトルに参加している敵味方全員分のクールタイムが情報として表示される。
      • 通常、バトル開始時にもこのクールタイムが設けられているが、接触ではなく敵シンボルを武器で殴ってバトルを開始した際は、味方側のクールタイムが0の状態からスタートする。
    • 「大魔導」はいわゆる必殺技で、発動に「エレメンタルオーブ」を必要とする。
      • エレメンタルオーブはスキルの発動によって1個ずつ蓄積され、属性に応じて色分けされている。大魔導の種類ごとに要する属性・個数のオーブが溜まったら、任意のタイミングで発動できる(例:火×2→ファイヤーバースト、光×2→ホーリーバースト、光+火+木→ホーリーブラストなど)。
      • スキルは効果範囲が決まっているが、大魔導はフィールド全体に大ダメージを与えるため、スキルで相手のHPを削りながらオーブを溜めて畳みかけるのが基本戦略となる。
      • ただしスキルを発動してもすぐにオーブになるわけではなく、一定時間ボール状のエフェクト(スキルの「残滓」と表現される)がフィールド内に留まってからオーブの表示エリアへと送り込まれる。
    • なお、スキルも大魔導も予めメニューでセットしておかないとバトルで使用できず、セット可能な個数にも限りがある。

ロールと武器スキル

  • 「ロール」はいわゆるジョブであり、フィアの基礎ステータスと装備可能な武器・防具種に影響する。
    • 脳筋戦士の「マジックナイト」、純魔法使い役の「ウィザード」、LUK(運)とSPD(タイムライン速度)に秀でるが防御に難のある「ウィッチシーフ」、攻撃面は中庸だが防御に秀でる「ハーミットハンター」の4種があり、フィア以外のパーティメンバー4名も1つずつ対応している。
  • 本作の武器には固有の武器スキルが設定されたものがあり、装備している間だけ先述のスキルと同様にセットできる。
    • 同じ武器を使い続けて熟練度を溜めるとフィア自身がそのスキルを修得し、対応武器を装備していなくても該当スキルをセットできるようになる。
    • そのため、様々なロールを体験して幅広いスキルを身に着けていく、という戦略を取れるようになる。

属性について

  • 「火」「水」「木」「光」「闇」の5属性が基本となり、各スキル、およびモンスターに設定されている。
    • 前者3属性はジャンケン構造(火<水<木<火<…)で優位性がつけられている。火のモンスターに水スキルで弱点を突けば大きなダメージとなり、火に対して火のように同属性のスキルを当てるとダメージは減衰する。
    • 「光」「闇」は上記3属性とは別軸で、光<闇、かつ闇<光と、相互に弱点属性の関係である。
    • 前者3属性と後者2属性に相関はなく、火のモンスターに光スキル、光のモンスターに火スキル、といった場合は通常相当のダメージとなる。
  • 更にバトル中、前述の「残滓」に異なる属性のスキルを当てると上位属性へと変動する。
    • 火の残滓がオーブになる前に木スキルを当てる(逆でも可)と「火炎」、火+水で「霧」、水+木なら「森」の残滓に変動。
    • 加えてこれら上位属性に「光」か「闇」を当てると2段階目の変動が起こる(例:火炎+闇=マグマ属性)。そのため総合して、5属性+変動3属性+更に6属性で計14の属性が存在する。
    • 大魔導には変動後の属性を要するものがあり、当然、ダメージ量は基本5属性で構成されるものより高くなる。
      • なお変動しても下位互換はあるため、例えば「火炎」と「火」のオーブがあれば、そのまま火炎+火を条件とするファイヤーブラストだけでなく、ファイヤーバースト(火×2)も発動できる。

校庭で行えるアイテム生成要素とミニゲーム

  • 「釣り」:換金用アイテムの魚介を釣るミニゲーム。
    • ゲージ上を魚アイコンが高速で往復するのに対し、ゲージ内の特定ゾーンを通過している間のみボタンを押下する。
  • 「野菜栽培」「果樹栽培」:アイテム変化系の要素。
    • 野菜栽培では種系アイテムを2種類1個ずつ、果樹栽培では消費アイテムを1つ以上消費してからダンジョンを入退場すると、新たなアイテムが収穫できる。
    • 消費したアイテムに応じて、前者は料理用の素材アイテムを、後者は特殊効果を持つ回復アイテムをそれぞれ得られる。
  • 「料理」「合成」:これらもアイテム変化要素だが、栽培と異なりその場ですぐアイテムを獲得できる。
    • 料理ではカレー系アイテムを作成でき、バリエーションは単位取得によって増加する。
    • 合成にはダンジョン内で取得した素材アイテムを用い、回復アイテムまたは装備品を生成する。
      • 学校施設のショップには初期装備相当の物品しか売っていないため、装備を揃えるのは基本的に合成経由となる。
  • 「材料交換」:カーバンクルにカレーなどを渡すことで別のアイテムと換えてくれる。
  • この他、ストーリーが進行すると「学校祭」「体育祭」といった校内イベントが開催されるようになり、ミニゲームの成果に応じたアイテムを獲得できる。

その他ゲーム進行に関わる仕様

  • 探索関連
    • アイテム所持枠内では同一アイテムのスタックがされず、また全員の装備品も個数に含まれる。
    • 釣り用の池と栽培用の畑、および料理用の鍋はダンジョン内に出現することもある。畑は当然学校のものとは独立しているが、ダンジョン内では共有されており、下階で種を植えたあと上階で収穫できる。
    • トラップにかかるとVTにダメージを受ける。
    • シンボルエンカウントではあるが、探索中に「不要なアイテムを投げつけて所持枠に入れようとしてくる」「MPを吸収してくる」といった妨害を行う敵もいる。
  • バトル関連
    • フィアのHPが尽きた際は仲間のHPに依らず「ばたんきゅ~」となる。
    • パーティメンバーはアイテムを使用しない。
    • 状態異常は強化枠弱体枠合わせて1つであり、後からかかったもので上書きされる。
    • エレメンタルオーブを使わずにバトルを終えると、MPが少量回復する。
    • バトルはイベントバトルを除き必ず逃走可能だが、VTを消耗する。

評価点

  • 旧作キャラクターの一部復活
    • キャラクターが完全総入れ替えだった『聖魔導物語』と異なり、カーバンクル、すけとうだら、スケルトンTといった懐かしのキャラクターが復活している。
      • これらの復活キャラの声は、セガ版ぷよぷよシリーズにおける現行声優が担当している。
  • 難易度が3段階で用意されており、ストーリーをさくっと楽しみたい人から歯応えを求める人まで広いプレイスタイルに対応している。
    • 難易度が上がるほど装備や属性が重要になり、より仕様理解の必要が生じる作りとなっている。
    • 途中で何度でも変更できるため、自身のプレイ傾向に応じて難易度を上下したり、素材アイテムの収集中だけEASYにするといった応用が利く。
  • 内容が連鎖していくお悩み相談
    • サブクエストにあたる「お悩み相談」では、その依頼内容同士に相関のあるケースが多く、「モンスターを倒してほしい」→「あのモンスターがいなくなったせいで別のモンスターが町まで来るようになった」→「それも倒したら…」といったように展開していく様子が見られる。
    • 良かれと思ってやったことが思わぬ方向に転がっていくストーリーになっており、クリア報酬と合わせてサブクエストを消化する意義に繋がっている。

賛否両論点

  • 可愛いものの特徴が薄いキャラクター
    • キャラクターデザインは好評。更に会話シーンでは実際に操作する3Dモデルと、立ち絵にあたるLive2Dイラストを併用しているので、動きや表情がより強調されておりグラフィック面での魅力が伝わりやすい。
    • 一方で主人公のフィア以外は人物像が薄く感じられ、特に、魔導物語シリーズとしては「普通過ぎる」といった評価がある。
      • フィアはそれなりにキャラ付けがされており、物事を深く考えない根の明るさや脈絡なく発揮される攻撃性・破壊衝動についてはアルルに通じている。
      • アルル程他者を突き放してはいないもののある種「シリーズらしさ」を請け負っており、そもそもドタバタのコメディ劇において合致したキャラクター性であるため、主人公としての魅力があるといえる。
      • ただ、他の人物については表層的に旧キャラをなぞっているだけであったり、「孤独ゆえに人に心を開いていないツンデレ天才魔導少女*1」のようなありきたりな設定であったりと、掘り下げ不足が見られる。
    • 可愛くて王道という意味ではよく作られているし、実際それがプレイのモチベーションに繋がったという評価がある一方、主人公を除いて内面のクセがなく、他ゲームとの差別化やシリーズの味が感じられにくいという印象もある。
  • 色んな意味で軽いストーリーとキャラクター
    • 全編通して基本的にギャグ調であり、フィアたちを快く思わない教師陣や、退学を賭けた戦いのようなシリアス風の展開はあれど、ほとんどのシーンはドタバタコメディの雰囲気を持って進んでいく。
    • これを深刻になりすぎないほんわかしたムードと捉えたり、あるいはコンパイルらしいライトさと受け取るなら長所とすることが可能である。
    • 反面、行きあたりばったりとも言える内容が多く、困難な課題の解決手段が根拠の無い賭けに頼るものであったり、いかにも伏線めいた思わせぶりな振る舞いがさほど回収されなかったりと、人によってはすっきりしない展開がほとんどを占める。
      • またフィアの退学が係っていながら教師の策謀によってフィア派と教師派に分かれてしまう、というシーンでは、教師派についたトットの動機が「商人として利害が一致した」という打算的な一言でしか表現されておらず、パーティメンバーでありながら無駄にヘイトを溜めるだけになってしまっている。

問題点

探索関連

  • 「VT」の意味が薄い
    • ダンジョン探索中にVTが無くなると最大HPが減るようになるが、シンボルエンカウント制で戦闘回避が容易であり、当たったとて雑魚敵とのバトルは100%逃走成功するのでほぼデメリットになっていない
    • さすがにボス戦をこなすのは難しいが、ご丁寧にもボスフロアには次回その階から再開可能な帰還用魔法陣が置かれているため、「ボスのフロアまで食べ物なしで進めて、ボス戦前に一時脱出してから再挑戦」という攻略ができてしまう。
    • ボスフロアまでが遠い場合は勿論ピンチにはなり得るが、それでもVTに比べれば減りは何倍も緩やかで、かつ1個でもカレーを食べればVTのついでにHP上限値だけはMAXに戻る。むしろ最大HPがどれだけ減ったらカレーを食べるかという運用でしかなく、レベリングやアイテム収集目的でもなければVTを意識する必要が無い。
  • 装備品もアイテム所持枠に含まれるため無駄に圧迫される
    • パーティメンバー1名のローグライクであれば装備アイテムの取捨選択も戦略要素になるが、本作は味方5名全員の装備品がアイテム欄に含まれる
      • 装備品はロールによるが1人あたり5個前後あり、これだけで最大27個分の枠を要する。対して所持枠の初期値は50しかなく、半分も自由に使えない
      • その上で回復アイテムやカレーは当然常備しておきたいため、ダンジョン内での素材集めに充てられる空きが非常に少なく、すぐに満杯になってしまう。
    • 学園内の「倉庫」で所持枠を拡張できるが、3段階の拡張で5,000G(75個)→30,000G(120個)→100,000G(200個)と、最初の拡張でもそこそこ高額ですぐには手を出せない。
      • 合成や栽培を十分に利用するならダンジョンでの素材集めは欠かせず、何なら拡張したとて十分な量ではなく、定期的に倉庫を使ってアイテム整理をしないと到底立ち行かない。
    • アイテムのロストがなく集めたら集めた分だけ持ち帰りできる普通のダンジョンRPG的仕様に、装備品を含めたやりくりを要するローグライクのシステムが上辺だけ混在しており、ゲーム性よりもストレスの方が強い仕組みとなっている。
    • ちなみにアップデートによる対応前は、拡張してすら100個が上限だった。
  • ダンジョン内にある合成や料理の設備を使う機会がない
    • これは上記の所持アイテム枠のせいで、素材アイテムをダンジョンに持ち込むメリットも余裕も無いため。
      • 設備が配置されるかもランダムな上、合成にも料理にも4~5種程度の素材を要するため、貴重な枠を埋めるくらいなら最初から学校で作った方がマシである。
    • つまりダンジョン内での利用機会は「たまたまその時の探索で都合よく特定の素材を集められ、かつたまたま設備が出現した時」しかなく、むしろその前にアイテム転送装置を見つけて全素材を倉庫に送ってしまっていることも多いため、ほとんど役立っていない。

バトル関連

  • バトルのUIや操作性がリアルタイム制に合っていない
    • 自分以外の敵味方全員がいっせいに動き回り各所でひっきりなしにエフェクトを発生させる上、キャラクターやHPなど各種ゲージが小さく、戦況が掴みにくい。
    • 敵は基本的に近接攻撃を仕掛けてくることから密着されて乱戦になりやすく、攻撃を避けようにもローリングなどはなくただノソノソと歩いて引き離すしかないため、ほとんどの場合戦略的にダメージを回避することが難しい。
    • 属性相性の影響が強く、また敵の攻撃が分散/集中するかが運次第であるため、持つ時は何も考えなくても持つが、倒れる時は一気にHPを削られてわけもわからないまま戦闘不能になるという事態に陥りやすい。
    • これで仲間2人分の動きや敵のアクションに気をかけるのはかなり難しく、プレイヤーの与り知らないことが常にバトルフィールドのどこかしらで発生し続ける。
    • 更にこうした状況の中、スキルコマンドやアイテムウインドウを開いている間もバトルの進行は止まらないため、回復対象の仲間がコマンドを操作している間に倒されているなど、どんどん状況が変化していきがち。
      • しかもデフォルト設定では、移動は左スティックでコマンド選択は十字キーのため、乱戦模様の中で棒立ちにならざるを得なくなる。
      • なお大魔導コマンドが開いている間だけはバトルの進行が止まる。これはこれで一貫性が無い。
    • 加えて倒した敵は、大したアクションをとらない割に消えるまで1~2秒ほどのラグがある為、倒れているかどうかが分かりにくい。通常のRPGなら問題ないが、本作のバトル仕様においては状況判断を阻害する要因になっており紛らわしい。
  • バトルに戦略性が無い
    • 結局のところ、大魔導を質より量で発動し続けたもん勝ちになりやすい。
    • 2つの異なる属性を掛け合わせることによる上位属性への変動は発想としては面白いが、その手間と大魔導の効果が見合っていない。
    • 例えば「火×2」のファイヤーバーストと「火+火炎」のファイヤーブラストではダメージに2割程度の差しかなく、そのために追加で攻撃スキルを放ってオーブ化を待つほどのメリットがない。
      • 異なる属性ということは一方のスキルは敵の弱点でもなんでもないため、あまりダメージにならないスキルを無駄撃ちさせられているとも言える。
    • 2段階目の変動を狙うとなると更に時間と計画を要するため、状況変化の激しいバトル中に狙ってできるものではない。
      • そもそも14種もの属性をリアルタイム制のバトルで運用することに無理がある。基本属性5種、基本属性の掛け合わせ(火炎・霧・森)で3種ならまだいいが、そこに更に光・闇を掛け合わせてのプラス6種となると、大魔導選択時にその都度確認はできるとはいえ扱いづらい。
      • ちなみにその6種は「火炎+光=幻」「火炎+闇=マグマ」「霧+光=氷」「霧+闇=嵐」「森+光=大地」「森+闇=毒」。属性名としても直感的でなく、無理が感じられる。
    • そのためちまちまと属性変動を狙うくらいなら、味方全員で同属性のスキルを出しまくって、威力が最低ランクでも基本属性2個ですぐ使える大魔導を連発した方が余程効率が良い。
    • また属性変動を狙っている間に決着がついてしまう事も多い。
  • 大魔導の発動演出を飛ばせない
    • 上記の問題が無くとも元々大魔導は「オーブ以外に消費するものが無い」「敵全体必中攻撃」「タイムラインに依存せず発動可能」というお得だらけの仕様だが、それにもかかわらず発動演出が飛ばせない。
    • 演出自体はカットイン挿入の後、発動キャラが詠唱を行い敵にパーティクルとダメージ値が表示されるだけの簡素なものだが、この数秒も何十回何百回と積もるとストレスになる。
    • より強い大魔導になってもセリフが多少変わるだけで演出は同じなので、見比べて面白いものでもない。
  • 魔法名の詠唱が無い
    • シリーズファンにとっては気になる点。
    • 魔導物語やぷよぷよユーザーなら「ファイヤー!」や「アイスストーム!」といった魔法名そのものを叫ぶ詠唱に聞きなじみがあるが、本作では「燃えちゃえ!」「食らいなさい!」など属性ごとの幾つかの汎用セリフしか用意されていない。仲間や敵も同じようなセリフしかなく、シリーズ恒例の要素が明らかに欠落している。
  • 事実上敵の種類が少ない
    • 敵のほとんどが属性に応じた色違い差分で占められている。そのためせっかく複数のダンジョンがあってもバトルに新鮮味が感じられない。
      • 同じ敵でも後のダンジョンに登場するものほど攻撃手段が増えたり、攻撃力や防御力が上がったりはしているが、それでも水増し感が強い。
  • 状態異常を説明するチュートリアルはあるが、説明内容はテキストだけで、実際に表示されるのはアイコンのみ。
    • この為、どのアイコンがどの状態異常を示すのかがわからない。

育成・学園関連

  • 学園が舞台でありながら学校らしさが十分に表現されていない
    • 魔導学園を舞台にしたファンタジー、といえばシリーズファンでなくとも学園要素を期待したいところだが、クラスのメインメンバー5人以外は教師5名しか普段登場せず他クラスの生徒の姿が事実上無いため、学校らしさがあまり表現されていない。
    • 全く出てこないわけではないし、大規模な学園祭が行われていることからかなりの生徒数を有しているようなのだが、ゲーム中では一部のサブクエスト受注中に限り1、2名のモブ生徒が配置されるだけ。入学式のカットシーンすら全編通してメインキャラが校庭に突っ立っているだけの状況で進行するため、かなり物寂しいことになっている。
    • また、「食堂」や寮の「自室」はマップの行先としては存在するものの、会話イベント用の背景絵しか無く3Dマップが存在しないのも、雰囲気作りの点では惜しい。
  • スキルツリー形式を採用した意味が無い
    • 単位の取得に必要なLPは課題クリア時に余る程貰える*2ため、「限られたリソースでどの技能を伸ばすか」というスキルツリーの醍醐味がほぼ無い。
    • また単位のほとんどはLPだけでなく「特定課題のクリア」も条件に含まれている。そのため、実質「課題をクリアしたら褒美としてスキルを1つ獲得できる」だけのことでしかなく、スキルツリー上での操作がただの無駄なひと手間になっている。
  • アイテム合成の問題点
    • 装備アイテムの合成には基本的にその下位の装備アイテムを要するが、キャラクターが装備中のアイテムは直接素材にできないため、いちいちメニューで外してくる必要がある。
    • これだけでも手間だが、更にメイン武器と防具は入れ替えのみで外せないため、合成のためだけに不要な装備アイテムを調達しなくてはならない。
    • また、合成時に既に入手済みかや装備中かが表示されないので、スペックがどれだけ上がるかをその場で確認できない。
  • 装備品の強化素材の最高ランクであるオリハルコンだけ入手が過度に難しい。
    • 同じく強化素材の最高ランクである不死鳥の羽との入手難易度が体感で4倍近くあり、オリハルコンは足りないのにこちらは過剰にある事が多い。

ストーリー関連

  • エスカの強引な百合描写
    • エスカはフィアに一方的な愛欲を向けるキャラクターとして描写されている。
      • これは決闘イベントに際し、竜人族の慣習に従い「勝った方は負けた方の肉体を食す」という条件をフィアに提示するも拒否され、代わりに結婚を宣言したため。
    • 代替案として無理があるうえ、「負けたので仕方なく」というニュアンスの割には直後のシーンでフィアの膝にもたれて頭を撫でるようねだるなど、行動が唐突に見える。
    • 決闘についてもダンジョンでのアイテム収集量を競い合う程度の勝負でしかなく、エスカがフィアを好く理由そのものが描かれていないため、ただ安易な受けを狙って百合要素を入れたように見え得る。
  • 旧シリーズとの関連が中途半端
    • 既に例としてあげたカーバンクル、スケルトンT、すけとうだらの他は、ももも、アウルベア、トリオ・ザ・バンシー、そしてぞう大魔王しか登板しておらず、旧シリーズの他の人気キャラクターが軒並み出ていない。
    • ストーリーに関わる形で「アルルだと匂わせている」人物はいるが、明言されていないうえ、各登場人物間で言っていることが異なるなど匂わせの整合性すら取れておらず、考察の余地と言うよりユーザーに解釈を放り投げたと言う方が近い。
    • 他にもお悩み相談で「闇のプリンス」との、何となくサタンを想起させる依頼者名は出てくるが、これも無理にねじ込んだ感がある。
    • 本作は時代的に旧シリーズから世代交代した「未来」であることが示唆されており、その関係で旧作そのままの人間キャラクターを出すことができなかったと考えられるものの、それが詳細に明示されることもないため、設定を活かしきれていなかった印象が強い。
  • 大魔導師になるという目標があまり意味をなしていない
    • まず、大魔導師になる前にエンディングになる。
      • 大魔導師への進級試験はあるが、それをクリアしてもこれまでのように進級を褒める会話だけ。スチルも記念品も、あるいは卒業などの学校行事も用意されておらず、達成感が薄い。
  • その他にも各所で細かい不便や不備が多く、微弱なストレスを感じる場面が妙に多い。
    • ダンジョンマップが不便。オートマッピングはされるが、踏破済みの道がその形に白一色で表されるだけで壁は描画されないので、行き止まりと未踏破分岐の区別が付かない。
    • バトルのリザルトで、経験値などの数値が表示されきっても操作不可時間が数秒あり、スムーズに画面送りできない。
    • 装備メニューでキャラ送りする際、現在のパーティ編成が誰であっても送り順が固定であるため、逐一控えメンバーを飛ばさなくてはいけないのが手間。
      • 特に全属性を使えるリーナと防御に秀でるエスカがスタメンになりやすいため、間に挟まっているウィルとトットが邪魔になりがち。
    • 学校内での合成や栽培は倉庫内のアイテムを素材にできるのに、「材料交換」だけは手持ちのアイテムしか参照されず、いちいち倉庫で引き出してこないといけない。
    • 手持ちのアイテムを倉庫へ入れる設備について、校内での該当施設とダンジョン内での該当設備とで、ボタンの効果が一部異なっている。
      • A(○)ボタンが、校内では決定(複数選択したアイテムを全て倉庫に送る)なのに、ダンジョン内では複数選択/解除になっている。この時転送決定はY(□)ボタン。
      • ちなみに共通操作として、ZR(R2)で複数選択、ZL(L2)で選択解除。別の問題になるが、よく考えると選択/解除を2ボタンに分ける意味が無い。
    • クラス担任であるリヴァン先生の会話時汎用ボイスが文脈に合っていない。
      • 特に普段、課題の報告をしようと話しかける度、文面:「どうしたの?」に対してボイス:「こういうのはどうかしら?」が再生されており、意味が異なっているうえ長くてじれったい。
      • チュートリアルを兼ねた授業シーンにおいても「属性を意識しながら使う魔法を選ぼう」と言った趣旨の文面に対して「残念だけど…」というボイスが再生されるなど、食い違いが生じている。
    • 課題受注時点でクリア条件を達成済であっても、再度達成しなおさないとクリア扱いにならない。
      • 特定の野菜を栽培して収穫せよという課題で発生しがち。
    • 大量の課題が同じタイミングで一気に受注可能になるのに対し、報告は連続して行えず、いちいち「先生に話しかける→課題の報告メニューを選ぶ→報告したい課題を選ぶ」というプロセスをやり直す必要がある。
    • メニュー画面での回復時も、いちいちスキルやアイテムの選択からやり直しになるので、複数回・複数キャラの回復が面倒。

総評

オリジナルスタッフを複数招聘し、過去の要素を取り入れつつ新しいキャラクターを中心に作られた新生魔導物語。
しかし結果としては、致命的な欠点は無いとはいえ、細かい不備や仕様の練り込み不足が目立つ出来であり、突出した魅力にも乏しい惜しまれる一作となった。
一応は魔導物語の新しい幕を切り開いたと言えるため、今後の展開に期待したい。


余談

  • 本作は元々、2023年10月からコンパイルハートの経営が新体制へ移行したことに伴い、『魔導物語4(仮)』のタイトルで発表されていた。
    • この時点で先行公開されたティザー画像では5色のぷよ、すけとうだら、カーバンクル、スケルトンTが描かれており、旧来のファンからの原点回帰を期待させるものとなっていた。
    • そして、セガより2024年4月4日にApple Arcadeで配信された『ぷよぷよパズルポップ』にて、それまでのセガぷよでは長らく封印されていた「アルル・ナジャ」「シェゾ・ウィグィィ」といった旧来のフルネーム表記が復活したことで、彼らが新作に復活するのではないかと噂されていた。
    • しかし、発売延期を経て実際に発売された本作はナンバリングが外れてタイトル通り新主人公「フィア」を中心としたものとなり、旧作から復活したキャラクターにはネームドの人間キャラクターはおらず、ごく一部の魔物キャラクター程度に留まっている。
最終更新:2025年08月28日 02:51

*1 しかもデレが早い

*2 実際、単位を全部コンプリートしても余る