マドゥーラの翼
【まどぅーらのつばさ】
ジャンル
|
アクション
|
|
対応機種
|
ファミリーコンピュータ
|
メディア
|
512KbitROMカートリッジ
|
発売・開発元
|
サンソフト(サン電子)
|
発売日
|
1986年12月18日
|
定価
|
4,900円
|
配信
|
3DSバーチャルコンソール:2013年1月30日/500円 プロジェクトEGG:2010年3月30日/500円(税別)
|
判定
|
なし
|
ポイント
|
シンプルなアクション+RPG要素 ビキニアーマーではありません
|
概要
女戦士を主人公に据えRPG的要素を取り込んだ面クリアタイプのアクションゲーム。
キャラクターデザインは、当時サンソフトにデザイナーとして所属していた漫画家「もりけん」氏が担当している。
ストーリー
かつてバダムの地に、伝説の鳥像『マドゥーラ』の存在が伝えられていた。
手にしたものは世界の全てを支配することが出来るというその像を巡って、
人々は長きに渡って争いを続け、栄枯盛衰を繰り返してきた。
ある時代になって、マドゥーラの翼を手にした心ある王が、争いの元にならぬようと
マドゥーラの翼を洞窟の奥深くに封印し、ラメール一族と呼ばれる戦士の一族に守役を命じた。
それから数世紀が経ったある時。
ラメール一族の裏切り者ダルトスがマドゥーラの翼を奪ってアレクス城の地下迷宮に閉じこもり、
魔物を呼び出して世界征服を企み始めた。
ダルトスを倒すべく派遣されたラメール一族の戦士団も魔物たちの牙の前に一人また一人と倒れ、
ついには一族で唯一魔法を使える女戦士ルシアを残すのみとなってしまった。
独りになっても怯むことなく、ルシアはダルトスの待ち構える城を目指して突き進んでゆく。
システム・特徴
-
剣攻撃としゃがみ・ジャンプを駆使し、屋外や洞窟、城や塔(縦長)などの全16面のステージを攻略していく。
-
各ステージにはボスがいるが、一部のボスは、後の面で雑魚として登場する。
-
ちなみにとあるステージでは逆に、大量の雑魚敵がボスとして登場したりもする。
-
ゲーム中に登場する様々なアイテムを入手する事で、攻撃手段が増え、パワーアップしていく。
-
通常の剣以外は「魔法」として扱われ、攻撃時にMPを消費する。剣とブーツ(ジャンプ強化)も含めそれぞれ3段階まで強化でき、攻撃手段の切り替えは任意に行える。
-
ライフ制
-
体力はHP、魔法力はMPで表され、ダメージを受ける・魔法を使うことで減少する。
-
及びHP/MPとも初期値は1000で、アイテムにより最大値は5000まで増える。
-
HPが0になるとゲームオーバー。
-
コマンド入力により、攻略中及びクリア済みのステージから任意でステージを選んでコンテニューできる。
評価点
-
シンプルなアクション+RPG要素
-
横スクロールアクションにRPG要素を加味することで変化が付けられており、アイテムを取得してパワーアップというシンプルな構成ながら、グラフィックやBGMのよさも含めて飽きさせない。
-
ステージセレクト付きコンテニュー機能による配慮
-
電源を切らなければいくらでもやり直せ、稼ぎ易い場所を選んで体勢の立て直しを図れる。
-
美しいグラフィック
-
青空輝く地上、夕焼けの大地、暗い地下洞窟等のフィールドが、ファミコンながら美しく描かれている。
-
幻想的なBGM
-
特に、穏やかで美しいタイトルBGMや、疾走感と躍動感溢れる城ステージのBGMの人気が高い。
-
主人公ルシアの魅力
-
この時代に出始めた露出度の高い衣装を身にまとった女戦士の流れを汲んでいるが、厳密には身にまとった防具はビキニアーマーではないものの、ただ露出度が高めなだけに留まらない、高潔なイメージも兼ね備えた一風変わったキャラクター性にファンも多い。
問題点
-
最終面でラスボスの居場所に行く方法が完全にノーヒント。
-
あるアイテムを取った上で空を飛ばなくてはならないのだが、その事に関する情報や操作方法が攻略本にしか載っていない。
-
更に、ラスボスと戦わずにアイテム部屋などに入ると、ラスボス自体が消えてしまいクリア不能となる。
また、ボスを倒した時点でMPが一定量無い場合、ゴールに辿り着けない上にMP回復手段がないため詰んでしまう。
前述のコンテニュー機能を使えばやり直せる分、完全な詰みにならないのが救い。
-
ステージクリア時にMPは最大値まで回復するが、HPの現在値は据え置きのまま。
またコンティニューした場合はHPが最初期の1000の状態で再スタートとなるため、ミスしやすい。
-
面によっては回復の泉(HPを最大まで回復できる)や回復アイテムが用意されているが、それらの部屋まで自力でたどり着く必要が有る。
もしくは、雑魚がたまに落とす回復アイテム(100回復)でちまちま回復していくしかないが、アイテムはたまにしか出ないうえにその雑魚戦すらダメージを受けることが多いので、かえって消耗してしまうことにもなりかねない。
-
特に、ステージ10から先は13まで回復の泉が無いうえに、間の11と12は難易度がかなり高いため、相当慎重に進まなければ厳しい。
-
ボス以外と戦う意味が希薄。
-
雑魚を倒しても無限に現れるうえに時折落とす薬瓶以外メリットがなく、またボスとして出てきた敵も早くて次の面からそのまま雑魚として出てくるため、まともに戦っていてはHPやMPがあっという間に尽きる。そのため、クリアするにはとにかく足を止めずに部屋を巡るだけのプレイになりがちで、ボス以外を倒す必然性や雑魚敵をなぎ倒していく爽快感はあまりない。
-
また、せっかくの多数のマジックアイテムも消費に威力が釣り合ってなかったり、HPMPを温存して進むスタイルになりがちなため使う機会がなく、結局は極一部の武器と魔法、移動速度の強化に必須なブーツを集めれば十分となってしまう。
-
エンディングはあるが、内容が唐突。
+
|
ネタバレ注意
|
-
ルシアが王子らしき人物を助けて結婚するというものなのだが、この王子が何の説明も無く唐突に登場するので、プレイヤーを置き去りにしたまま終わってしまう。
-
後にもりけん氏が自身のサイトで語った所によると、本作は「『マリオ』などの男主人公がお姫様を助けるゲームへのアンチテーゼとして作られた」ゲームらしいのだが…あいにく説明書にもストーリー紹介にも、王子の事はまったく載っていないので、「唐突」の一言でしかない。
|
-
なお、パッケージイラストに描かれている「黒い服の男」は、ルシアの宿敵であるラスボス・ダルトス。ゲーム中ではすでにモンスター化している状態と思しきドラゴンの姿で出てくるため、パッケージ上の姿では出てこない。
-
魔法の「フラッシュ」を使用すると画面が激しくフラッシュするので注意。
総評
ストーリーはシンプルでこの時代のファミコンらしく多くを語らないが、その分、美しいグラフィックとBGMが独特なファンタジー世界を強く印象付けており、更に魅力ある主人公で人気を呼んだ。
ゲーム面では短所も少なくなく良作と言い切れるまでには至っていないが、大きく破綻するようなバランスの悪さや理不尽さも少なく、シンプルながらも卒なくまとまったアクションRPGとなっている。
余談
-
何ともスッキリしない結末を迎えるゲームなのだが、現在でもカルトな人気を誇っている。
-
また、当時サンソフトが運営していたファンクラブの会員証や会報の表紙にもルシアの絵が使われており、当時のシンボルキャラ的存在であったことが窺える。
-
オフィシャルの続編や後日談などは一切存在しないが、以下の様な展開は行われている。
-
ファミコンソフト『バーコードワールド』に、デフォルメされたルシアのカードが同梱された。
-
プレイステーションソフト『メモリアルシリーズ サンソフト Vol.3』に、『かんしゃく玉投げカン太郎の東海道五十三次』とのカップリングで収録された。
-
2013年1月30日より、ニンテンドー3DS専用バーチャルコンソールの配信ソフトに選ばれた。価格は500円(税込)。
-
2024年4月18日に発売されたオムニバスソフト『SUNSOFT is Back! レトロゲームセレクション』に収録。対応機種はSwitch/Steam。
-
任天堂のVSシステムを使用したAC版も発表されていたが、業者向け広告での告知がされただけで日本/北米ともにお蔵入りとなってしまった。
-
一部の店舗でロケテストは行われたらしく、映像が動画サイトなどに出回っている。同社の同じ例としては『東海道五十三次』がある。
-
前述の通りルシアはビキニアーマーではなく、パッケージの通りワンピース水着風の鎧を身に付けている。後にもりけん氏が雑誌インタビューで語ったところによると、「ビキニ型は恥ずかしいから腹も鎧で覆った」かららしい。
-
しかし後に『夢幻戦士 ヴァリス』の主人公のデザインを見て「「しまった!」と思った」という。
-
翌1987年1月に徳間書店から「わんぱっくコミックス」のシリーズとしてゲームコミックが発売された。
-
この作品では明確なへそ出しのビキニ型にアレンジされている。上述の通りルシアは公式ではビキニアーマーではないのだが、ビキニアーマー関連で毎回のように取り上げられるのは、このゲームコミックの影響が大きい。
-
主人公や敵キャラなどはゲームと同じだが、ストーリー展開やボスと戦う順番などは大きく異なっている。
-
ちなみに同じメーカー製である『アトランチスの謎』の主人公ウィンも出演している。
-
こちらはアレクス城から偶然上記ゲームのファイナルゾーンにワープしてしまうというトンデモなネタで、ラスボスの吐く炎にやられているウィンに代わってルシアが倒してしまうというもの。
よっぽどの『アトランチスの謎』ファンでもなければマイナス要素はなくネタ的に面白いのでぜひとも一度見ることが推奨される。
-
他に上記ゲームの名物42TH ZONE(ブラックホール)のネタもしっかり載せている。ゲームでは空中のスタート扉から何もない空間にウィンがそのまま落ち続けてゲームオーバー確定だが
ルシアはなんと根性の平泳ぎで脱出した
。さすがはラメール一族の最強の女戦士。
-
一方、全体を通して見るとルシアは散々な目に遭い、エンディングも今一つ報われない。こっぴどい目に遭わされながらも奮闘する美少女ヒロインというと何か別なものに近付いた気も…。
-
バッドエンドも絵のコミカルさで悲痛さは感じないが、普通に考えるとかなりエグいものが多い。
やっぱり『タイムギャル』…。
-
ラスボスのダルトスはなんとルシアに求婚するのだが、これに同意すると「バカめ!まんまとだまされおって!オレにロリコンの趣味はないのだ!」と蹴り飛ばされて大幅にパワーダウンして10ページ(実質的なスタート)に戻される。というとんでもない展開になっている。世界の半分のオマージュなのだろうか。
-
同じ「わんぱっくコミックス」ではキャラデザインを担当したもりけん氏による漫画もある。
-
こちらでは、エンディングにおける王子の登場についての補足がなされている(あくまでコミカライズ上の設定ではあるが)。
-
この漫画はゲームそのものの発売から1年以上経過した1988年2月『リップルアイランド』に併載した形で単行本化されている。
-
実は敵の攻撃のバリエーションは、体当たりと放物線状にバラ撒かれる火球のみだったりする。
-
『いっき』『アトランチスの謎』『わくわく7』などのディープなサンソフトネタが盛り込まれ、一部からは「スーパーサンソフト大戦」とも称される『ブラスターマスター ゼロ 2』では残念ながら本作の直接的な要素こそ無いが、主人公「ルシア」の名前だけは取り入れられている。但し、同作のルシアは故人である。
-
何故名前だけなのかと言うと、同作に登場するキャラとしてデザインされた蛇キャラがケツァルコアトルをモチーフとしていたため、たまたまルシアの頭のアレを思い出し、なし崩し的に取り入れたとの事。
-
しかしその切っ掛けとなった蛇キャラはゲーム中に登場しない。
-
『ブラスターマスター ゼロ 3』ではそのルシアの容姿が判明するが、案の定と言うかやはり本作のルシアに似ている。結果として本作ネタも盛り込まれた事になるのだろうか。
最終更新:2025年04月23日 18:10