スーパー競馬
【すーぱーけいば】
ジャンル
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シミュレーション
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対応機種
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スーパーファミコン
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発売・開発元
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I'MAX
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発売日
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1993年8月10日
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プレイ人数
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1人
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定価
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9,700円
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判定
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クソゲー
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ポイント
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不親切すぎる育成システム 間違いだらけの毛色 BGMだけは好評
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フジテレビ関連作品リンク
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概要
『ベスト競馬 ダービースタリオン』の発売から約2年、SFC初の競馬ソフトとして発売された。
フジテレビが東日本地域で1987年から2007年まで毎週日曜日午後3時(準メイン・メインレースの時間帯)に放送していた同名の競馬中継番組とのタイアップであり、出演者が実名で登場する。
(※実在の人物に関する記述が頻出するため、当記事では初出時のみ肩書や敬称を記載し以降は敬称略で記述する)
システム
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牧場主として馬の生産、調教師として調教と出馬管理、騎手としてレースで馬を操り、全GI制覇を目指す。資金が不足し破産するとゲームオーバー。
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ゲームを開始するとまず番組MCの俳優・潮哲也氏が案内するメニュー画面で「牧場」「厩舎」「ジョッキーセンター」「競馬場」から選択する。なおこの画面に戻ると自動的にセーブが行われる。
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「牧場」では馬の生産(種付け)管理や市場での買い付けを行う。放牧中の競走馬もこの画面で確認する。
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「厩舎」では美浦または栗東の厩舎に預託している馬の調教や出馬登録、放牧の指示を出す。
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「ジョッキーセンター」ではゲームに登場する騎手50人のリストが表示され、契約の締結破棄、契約している騎手の体調管理を行う。
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本作では騎手と直接専属契約を結ぶことができ、契約金さえ払えば所有馬に必ず騎乗してもらうことが可能になり、体調管理やダイエットによる体重調整、休養も指示することができる。さらに後述する通りレースで自分の馬をある程度操作することができる。
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体重は軽い方が有利だが、無理にダイエットさせすぎると体調を崩す原因となる。疲労が溜まってくればかぜやストレス、ひどいと捻挫や骨折などのアクシデントに見舞われ馬同様に長期休養を強いられることもある。
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当然ながら騎手名は全員実在の人物の変名となっているが、同時期の競馬ゲームとしては破格ともいえる50人から選べるのであまりメイン競争で見かけないような意外な人選も目立つ。
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なお騎手のランクは獲得賞金額を基準に上から10名がA、以下20名ずつB、Cと割り振られ随時変動する。契約金も獲得賞金額を基準として変動する。
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「競馬場」では当週のメインレース及び所有馬の出走するレースを観戦したり馬券を購入できる。
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本作は最大8頭立てで行われ、馬券は単勝・複勝・連複(連勝複式)の3種類。
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馬券購入の際には番組が誇る3人の解説者による予想を聞くことができる。
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バラエティでもおなじみ競馬評論家の井崎脩五郎氏、競馬界の重鎮大川慶次郎氏、競馬エイトトラックマンの吉田均氏が登場する。
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レース画面ではフジテレビアナウンサー(当時)の堺正幸氏らしき人物が実況してくれる。
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共通して全メニューには「情報」コマンドがあり、番組MCの競馬ジャーナリスト・鈴木淑子氏及び潮が番組スタジオから「どれにしますか?」と語りかける形で日程(番組表)の確認やこれまでの成績、週・月送り(日付の進行)を行うことができる。
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仔馬の誕生、放牧馬の入厩が可能になるなどのイベントが発生すると番組アシスタントの青山美恵子氏が登場しそれらを教えてくれる。
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レースで自分の馬を操ることができる
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所有馬に専属騎手を乗せて出走させると、レース画面で自分の馬に指示を出すことができる。
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画面左下に馬を前に出す「ムチ」、行きたがる馬を抑えスタミナを温存する「手綱」のコマンドが登場し、これを使って指示を行う。
問題点
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説明不足の繁殖システム
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産駒の特徴として唯一分かるのが距離適性なのだが、短距離向けの種牡馬を選んでも長距離に適した馬が生まれたりする。
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種牡馬には距離適性の他に「スタミナ」「スピード」「ダート」「根性」「脚元」「気性」の6項目、繁殖牝馬にはこれに加えて「成長力」「遺伝力」の8項目がA~Cの3段階で表示されているが、産駒にこれらがどのように引き継がれるかが全く明かされない。
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実際は、両親の能力と牝馬の「遺伝」のパラメータにより決定されるという。またスピードやスタミナはA~Cの表示の中でさらに16段階に分かれている、脚質は種牡馬から引き継ぐ、そしてインブリードによる能力の変動は無いといった法則も存在する。
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問題は、これらの仕組みをゲーム中で推測する手段が一切無いということ。牧場長が配合に対し意見を述べたりだとか産駒の様子を教えてくれたりだとかはしてもらえずただ淡々と「種付けしますか?」「○○の仔馬が生まれました」と機械的に進んでしまうのである。
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ちなみにこの能力値のうち距離適性だが、1400-3600や1000-3000、最上位の種牡馬であるノーザンテーストなど1000-3600という事実上距離を問わないという非現実的な馬もしばしば登場する。確かにノーザンテーストに限ってはスプリンターズステークスとステイヤーズステークスの勝ち馬を輩出してはいるが…
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育成システムが説明不足で不親切極まりない。
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繁殖牝馬から産まれた馬を見て分かる特徴は距離適性だけである。強いのか弱いのか、芝向きかダート向きかもわからない。
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馬が成長しても、馬の特徴コメントなどは一切出ない。いつデビューさせればいいのか、いつが引退時期なのかもわからない。
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調教をしても調教師のコメントは馬体重が重いか絞りすぎかと調子に関することしか言わないので、どう成長しているのかも適正体重もわからない。
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2歳馬を購入すると「性格を考えて」とか「その馬に合った調教を考えて」とかランダムで言われるのだが、そもそもどんな馬なのかわからないので考えようがない。とにかくわからない尽くしである。
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ある程度の成績を残した馬なら引退後に種牡馬や繁殖牝馬になれるが、ここでやっと特徴が判明する。最初に教えろよ!
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レースで自分の馬を操るシステムの出来はイマイチ。
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できることは上述した「ムチ」「手綱」の指示のみで、「前が塞がっているので外に持ち出す」「特定の馬をマークし近づく」「後続の馬の進路の前に出て牽制する」といった馬を動かす操作はできない。
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そもそも2つの指示もボタンを押してからの反応が鈍いため、一見するとムチが入った(手綱を引いた)のか分かりづらい。
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このため、実際の競馬でみられるような「最後の直線ラストスパートでムチを繰り返し入れる」という動きを意識してムチを連打しても馬がすぐに動かずじわじわと前に出るように動くため、連打すると押した分だけスタミナを消耗するので最高速に乗らないまま沈んでしまうということが起きる。
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ライバル馬として登場する馬
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名前がもじりなのはともかく、毛色まで全然違うのでイマイチ実在馬と対決している実感がわかない。
賛否両論点
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レースの出走頭数が8頭しかない。GIなどの大レースでも同様。
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競馬としては物足りないが、出走頭数が少ないぶん自分の馬が勝ちやすく、馬券の予想もしやすい。
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レースは本命が勝つことが多く、波乱があまりない。
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そこそこの実力がある馬さえ作れれば、理不尽に負けることが少ない。
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馬券の単勝オッズがなぜか高め。連複オッズよりも高かったりする。
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本命が勝ちやすいのも相まって、本命の単勝馬券を買っているだけで資金が増えていく。
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しかも1投票につき999万9千円まで買えるうえにオッズの変動がないので、実質的に資金を増やし放題である。
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出演者のグラフィック。
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おおむね本人の特徴を捉えており再現度は高い方だが、メニュー画面に登場する潮のガタイがあまりに良すぎる。何度も目にするだけにちょっと気になるところ。
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吉田の顔グラフィックも当時の本人よりかなり老けたように描かれており、どちらかと言えば25年以上が経過した現在出演しているBSスーパーKEIBAで見られる姿の方が似ている。
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「予想」のシステムがやや違和感のあるものになってしまっている。
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解説者3名による予想を聞くことができるが、繰り返し聞くことができ、聞くたびに対象の馬が変わることがある。全ての馬を挙げるわけではないが8頭立てなのに4頭も挙げることがある。
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また、1名あたりのコメントのパターンも非常に少ない。例えば井崎だと「○○はけっとうてきにすてがたい」「○○はなかなかこうちょうのようだね」「○○のちょうきょうタイムはわるくない」といったコメントを繰り返し聞くことになる。3名いる分多少はバリエーションがあるように見えてはいるが…
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番組の再現度が不足気味。
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出演者が登場するのは大きな魅力だが、番組としての再現度は高くない。
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頑張って再現したと思われるのは電源投入後のオープニングムービー。前半が1991年頃の映像に雰囲気が似ていて(BGMは本作オリジナル)、後半のタイトルロゴが出てくるシーンは映像が異なるが1992年~1995年頃のオープニングに雰囲気を似せており、BGMはほぼ完全再現を果たしている。そしてそのタイトルロゴも当時の番組ロゴがそのまま使用されている。
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一方で番組の魅力である「パドックでの全馬紹介→大川による解説」「脩五郎のデータ作戦(予想コーナー)」「重賞レース前の本場馬入場・アナウンサーによる前口上と全馬紹介」などのコーナーが再現されていない。「番組のゲーム化」というより「出演者が登場するゲーム」といった趣になっている。
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なお、当時のGI本場馬入場ではBGMにグラディウスIIIのオープニングのオーケストラ版が使われていたため、この点は再現不可能と思われる。
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続編の『2』ではレース前に番組の流れをなぞるなどこのあたりがある程度改善されている。
評価点
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BGMの出来は良い。
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タイトルロゴ表示の曲には番組のオープニング曲(1992~1995年頃)が使われている。
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番組の出演者のほとんどが登場する。
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こういうことができるのが番組タイアップ作品の魅力だろう。
総評
強い馬の生産の指標、育成する馬の特徴すら教えてもらえないという、育成ゲームにあるまじき欠陥作品。これでは何を目標に育成すればいいのかもわからない。
しかし実質稼ぎ放題な資金を元にして、根気よく走らせ続けるだけでクリアは可能という、妙な所でバランスは取れているゲームである。それが楽しいかどうかはさておき…
BGMだけは本当に高品質で、番組出演者が実名で登場する貴重な作品なので、番組ファンなら買う価値はあるかもしれない。
余談
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SFCの競馬ソフト第1号として最悪のスタートを切る形になってしまったが、その後わずか数か月で『サラブレッドブリーダー』『ウイニングポスト』『スーパー競走馬 風のシルフィード』『クラシック・ロード』が続けて発売され、競走馬育成ブームが巻き起こった。
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本作も
それら名作に紛れる形でブームに乗って売り上げを伸ばしたのか、続編『スーパー競馬2』が出ている。
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電源投入時からAボタンを連打し続け「はじめから」を選んでゲームを開始すると資金がMAXの状態で開始するという裏技がある。
最終更新:2024年02月27日 03:39