ドラゴンボールZ HYPER DIMENSION
【どらごんぼーるぜっと はいぱーでぃめんしょん】
ジャンル
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対戦格闘
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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24MbitROMカートリッジ
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発売元
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バンダイ
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開発元
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トーセ
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発売日
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1996年3月29日
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定価
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9,800円(税別)
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判定
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良作
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ポイント
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SFC最後のドラゴンボール 事実上の超武闘伝シリーズ完結作
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ドラゴンボールシリーズ
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概要
人気アニメ『ドラゴンボールZ』の対戦格闘ゲーム。
タイトルこそ異なるが、基本システムは超武闘伝シリーズをベースにしており、同シリーズの集大成と言っても差し支えない。
超武闘伝シリーズからの主な変更点
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全般的に格闘ゲーム寄りの玄人好みのシステムに。
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ガードキャンセル、空中コンボ、小ジャンプ、ライン移動攻撃など細かいゲームシステムが充実しており、格闘ゲームとしての完成度が高い。
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ステージは大まかに分けられた複数のステージ構成となっており、ふっとばし攻撃で別のステージに移動することも出来る。
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デモ必殺技が廃止され、防御側も自由に動けるようになった。それに伴い「跳ね返す」「かき消す」といった防御手段が廃止された。
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デュアルスクリーンが廃止され、対戦画面が1画面になった。
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例えるなら前作『3』のバビディ宇宙船内のように舞空術が全てのステージで使えない。
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Xボタンでの空中⇄地上の移動が不可能になり、超武闘伝シリーズで問題だった安易な逃げ行動が不可となり、ガチ対戦の側面が強くなっている。
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舞空術廃止に伴い、Xボタンは相手の気弾(飛び道具)を弾き消すコマンドに変更された。
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L・Rによるダッシュ移動がLまたはRを押しながら十字キーの左右を押す操作に変更された。
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ダッシュそのものの速度は超武闘伝と比較すると緩慢。代わりに他の挙動が全体的にスピーディとなり、ダッシュの遅さによる不満点はそれほど無い。ジャンプの挙動も素早い。
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超武闘伝にあった簡単コマンド(Aボタンだけでデモ必殺技等)が廃止された。
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代わりにストⅡ系によくある一般的な必殺技コマンドが主になり、技の出しにくさはあまり無い。
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メテオ技(超必殺技)は常時使用可能ではなく、体力が一定以下(赤ゲージ)になると使用可能なシステムへと変更となった。
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メテオ技を除き、必殺技等の戦闘演出がスピーディーになった。
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フリーザの「かかったね!」やミスター・ブウの「アメ玉になっちゃえー!」等のややテンポが悪い技もある。
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パワーゲージがライフゲージと統合され、気力を溜めるコマンド(Y+B同時押し)が体力回復になった。
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必殺技を使用する際は体力を消耗する上、メテオ技との体力調整の兼ね合いもあり、より重要視されるようになった。
プレイアブルキャラ
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孫悟空(超サイヤ人2)
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ベジータ(凶戦士)
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ゴテンクス(超サイヤ人3)
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孫悟飯(アルティメット悟飯)
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ベジット(超ベジット)
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ピッコロ
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フリーザ(最終形態)
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セル(完全体)
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ミスター・ブウ(魔人ブウ(善))
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ブウ(魔人ブウ(純粋))
※実際のゲーム内では()表記は付かない。
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超武闘伝シリーズとして見るとゴテンクス、アルティメット悟飯、ベジット、魔人ブウ(純粋)は本作初参戦となり、ピッコロやセルは2からの復活、フリーザは1以来の参戦となる。
他に、非プレイアブルや演出・攻撃の一部にクリリンやセルジュニアの他、変身前後の差分形態が登場している。
評価点
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グラフィック
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『3』から完全に一新されており、文句の付け所が無い程にキャラ、背景ともにドット絵は緻密に描きこまれている。
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立ち絵もキャラごとに個性が強調されており、腕組み姿勢が標準のフリーザも原作の「サービス期間」で両手は使わないハンデを踏襲している。
技で普通に両手を使ってはいるが
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OPやデモ演出の悟空の一枚絵等もクオリティが高い。
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待機モーションも超武闘伝で小刻みに揺れる程度だったのが、よく動くようになった。
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今作は立ちモーションにも各キャラかなりの枚数の作画を使用している。
悟空の超サイヤ人2のスパークやピッコロのモーションが非常にわかりやすい。
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加えて技ごとのアニメーションも全キャラ作画枚数が多いためかなり滑らかで美しい。
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演出面の進化
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格闘ゲームとしてのクオリティが向上したが、キャラゲーとしてもおざなりになっていない。
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孫悟空のメテオ技を挙げると、気を溜めて瞬間移動→怒涛のラッシュ攻撃→超サイヤ人3になってアッパーカット(龍拳?)→通常状態で元気玉→超サイヤ人でフィニッシュと違和感も無く、非常に盛り上がる演出がなされている。
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フリーザはゴテンクスやブウ(純粋悪)と異なり、待機モーションは常に空中浮遊しており、上述の腕組みポーズと相まって威厳が出ている。
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原作・超武闘伝シリーズからのリスペクト
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原作から様々な小ネタを取り入れており、フリーザの一枚絵や孫悟飯の立ち絵も原作の一シーンから採用されている。
歩行モーションも各キャラの個性が強調されている。
キャラ選択の時間制限も魔人ブウ(悪)が砂時計を見ながら待つ原作の一場面を取り入れており、コンティニュー画面もクリリンが駆けつけて仙豆を貰うかどうかの自然な演出になっている。
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超武闘伝シリーズの必殺技も一部続投している。
孫悟空の足技全般やベジータのスーパーダッシュや爆発波、ピッコロや悟飯の舞空脚など。メテオの技名や演出などもいくつか引き継がれている。
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格闘ゲームとしてのブラッシュアップ
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超武闘伝シリーズではXボタンの舞空術で簡単に逃げたり、必殺技演出でテンポが悪くなる等、良くも悪くもキャラゲー部分の影響があった。
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本作ではガードキャンセルに小ジャンプやライン攻撃等、空中コンボなど読み合い要素も深く、格闘ゲームとして見ても完成度が高い。
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露骨な壊れ・産廃キャラもおらず、ゲームバランスも秀逸。
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ライトユーザーの間では「タメキャラである孫悟飯でガン待ちして、ガードキャンセルで反撃すれば最強だろ」などと言われることがあるが、当然そんな戦法は人間相手には通じない。それどころか、ガチ対戦においては孫悟飯は最弱キャラである。
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ストーリーモードの復活
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超武闘伝3ではリストラされていたストーリーモードも復活した。敗北しても必ずゲームオーバーになるわけではなく、原作に沿った敗北だとストーリーが進む状況もある。
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キャラクターは選択式ではなく、ストーリーに応じて固定式となっている。
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練習モードの追加
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武闘伝シリーズでは未実装だったプラクティス(練習)機能も待望の実装。より格闘ゲームらしい仕様になった。
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2P側は選択画面の表記こそCOMだが、2Pコントローラーで操作が可能。
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本来はHPが赤ゲージでないと出せないメテオ技も体力・設定に関わらず出し放題となっている。
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舞空術の事実上の廃止
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対戦ステージで空中で戦う場面はあるものの、システム上の舞空術は廃止されている。
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『3』では簡単に逃げられて接近戦が困難、駆け引き要素が乏しくなる等の問題点があったが結果的に改善された。
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その他、超武闘伝シリーズからの改善点
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『3』では悟空と悟飯のボイスが使い回されていたが、本作はちゃんと別でボイスを収録している。
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同様にベジータも声が甲高かったのが修正された。(これに関しては声優さんの演技によるところが大きいのだが)
賛否両論点
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BGM
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全体的に低音重視のシリアス寄りな曲調が多い。『1』の雰囲気に近い。『3』ではアップテンポな曲が収録されていただけに、そういった曲調が無いのは残念。
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だが決してクオリティは低くなく、描きこまれたドットのリアル寄りな雰囲気にマッチしているため、この辺りは人それぞれの好みでもある。
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ストーリーモードの弊害
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プレイアブルキャラの殆どが魔人ブウ編中心のため、ストーリーでの演出に無理が生じている。
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プレイヤーキャラも最初がピッコロくらいで以後、殆どのプレイヤーキャラが孫悟空かベジータのどちらか。
ナメック星編は超サイヤ人2になっているが、ピッコロと悟空で再現出来ているためまだマシな方。
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酷いのが人造人間編で、ベジータが凶戦士の姿で登場し、最終戦もセルゲーム初戦の悟空VSセル戦で終了。
少年悟飯が未登場とはいえ、この戦いが終わると一連の話が
テキストで全て終わってしまう。
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魔人ブウ編は概ね再現出来ているが、ここでも殆ど悟空ばかり。孫悟飯やゴテンクスやベジットの出番はクリア後のスペシャルバトルでしか出番が無い。
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この3人と戦った魔人ブウ(悪)が非プレイアブルであるため、このような扱いになったと思われる。
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対戦モードの戦闘前会話が廃止され、対戦後のみの会話となった。
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特定キャラ同士の専用会話パターンも乏しくなっている。
問題点
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隠しキャラの廃止
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超武闘伝シリーズではお約束だった隠しキャラは本作では実装されていない。
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ジャネンバ、ブロリーといった劇場版キャラや、18号やザンギャといった女性キャラも一切登場しない。
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『3』ではガッカリ扱いだったが、それこそ本作では隠しキャラとして未来トランクスがいたとしてもおかしくない出来なのだが、残念ながら参戦していない。
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参戦キャラ自体は順当な人選であり、各章のラスボスや初登場キャラは96年当時であれば納得の人選ではある。
超武闘伝3では悪い意味で超サイヤ人のバーゲンセール状態だったため、バランスは取れている。
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実質最強形態の魔人ブウ(悪)がプレイアブルにならないのは吸収形態の差分を考慮すると作業量が計り知れないので未参戦は致し方ないと思われる。
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必殺技コマンドのゲーム内マニュアルが無い
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本作のポーズ画面は所謂一時停止のような状態であり、コマンドリストの表示が無い。説明書や攻略本が無い状態では手探りで調べるしかない。
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トーナメントモードにシャッフル機能が無い
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キャラクターを順番に選んだら順番通りの組み合わせで対戦することになる。
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勝利画面もあっさりしたもので、『3』にあったED画面等も特に無い。
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3の天下一モードにEDがあったのは、あちらにはストーリーモードがないから仕方なく天下一モードで入れたに過ぎないという事情もあったが。
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空中ステージに関して
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システム上の舞空術は廃止されているが、空中ステージとして戦うシチュエーションは実装されている。
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地上ステージの移動に上下・斜め移動も可能となった状況だが、挙動に関しては不評。
地上モーションをそのまま空中で出すのではなくあえて空中専用のモーションに置き換えられて制作されているのだが、コレがかなりクセがあり慣れていないと操作が少し難しい。加えて、空中ステージ専用モーションは動きがもっさりし、横軸が合わないことでスキが生まれやすかったりと地上戦との差別化はできているのだが地上戦ほどの面白さは見出だせていない。
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地上とは大きく異なる操作性を楽しめるなら、空中限定ステージもあるので空中戦だけを楽しめるようにはなっている。
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ラッシュバトルの仕様
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地上や空中でパンチやキックがぶつかり合うと発動する。空中はじゃんけんシステムを使った凝った演出で、テンポは悪いものの駆け引きが楽しめるが地上はラッシュがはじまったら相手より先にAボタンを押さなくてはならない。CPU戦ではAボタン入力をコンピューターより先に押すことが難しく、ほぼ確定で負けてしまう。
総評
超武闘伝シリーズの集大成と言っても相応しい、SFCドラゴンボールシリーズの最終作として有終の美を飾った。
それだけに販売時期がSFC末期なのもあり、知名度が低くマイナー作品止まりなのが非常に惜しまれる隠れた名作となった。
余談
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超武闘伝シリーズの恒例だった攻略本が、本作に限っては発売されなかった。
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本作を扱った攻略本はPSの『FINAL BOUT』、『偉大なるドラゴンボール伝説』の攻略と同時収録した「ドラゴンボール最強格闘BIBLE」として出版された。
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現在ではプレミアがついており、他の超武闘伝シリーズやSFCソフト全般の中でも価格が高め。
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2024年現在でも移植や配信は一切無く、本作をプレイ可能なのはSFC実機のみと敷居が高く、手に取る機会が難しい不遇の名作となっている。
最終更新:2024年09月24日 19:53