シルバー事件25区
【しるばーじけん にじゅうごく】
ジャンル
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ADV
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対応機種
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Windows 7/8/10 MacOS X 10.9 - 10.14
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発売元
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NIS America, Inc. |
開発元
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GRASSHOPPER MANUFACTURE INC., Active Gaming Media Inc.
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発売日
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2018年3月14日
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定価
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2,178 円 |
プレイ人数
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1人
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メディア
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DL販売のみ
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判定
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なし
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ポイント
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『シルバー事件』を楽しめた人向け
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シルバー事件シリーズ 初代 / 花と太陽と雨と / 25区 / 2425
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概要
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『シルバー事件』(以下「前作」)の直接的な続編ADV。
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本作にもモリシマトキオが主人公のPlaceboパートがある(後述)。
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また前作で登場した主要キャラが他にも複数登場している。本記事では前作キャラクターの名前も一部記載するが、詳細な説明は省く。
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携帯アプリとして配信された同名の原作をPC向けに移植した物である。
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シナリオは原作に比べて増補されている。
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グラフィック面では前作同様フィルムウインドウシステムを駆使した演出に差し替えられており、3D描写を含むシーンも大幅に追加されている。
ストーリー
クサビテツゴロウら凶悪犯罪課が深く関わったカムイ事件から6年。
24区をモデルに新たに造られた理想都市・カントウ25区の新築巨大タワーマンション群にて4ヶ月の間に9名もの"自殺者"が出ているという。
その異変に気づいた通産省捜査班は中央警察より先に10件目の事件現場へ到着することに成功した。
通産省捜査班から遅れること数時間、事件の調査にやってきた25区凶悪犯罪課のシロヤブ モクタロウは異様な光景を目の当たりにする。
激しい血しぶきで汚れた部屋。外傷の無い女の死体。被害者の女性の名前はユヅキ ミル。
そしてマンション管理人クルミザワ コウスケの遺体からユヅキミルの大量の髪の毛が検出された。
しかし時を同じくして、郵便事業連合地域調整課のツキ シンカイ、ジャーナリストのモリシマ トキオも異なる事情からこの事件へと巻き込まれていた。
モリシマトキオは独自の調査で、ネットの有料チャットパフォーマー美流がユヅキミルの死亡を予言していたことを知る。
美流曰く「ユヅキミルはゴミ出しの際に燃えるゴミと燃えないゴミを一緒に出していたから」殺されたのだと言う。
登場する組織
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通産省捜査班
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中央警察から転職したコウサカ ミチルが指揮をとっている。
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部下のウエハラ カムイが「Correcteness」の一部パートの主人公となっている。「#00 prototype」ではナツメ サクラが協力者としてウエハラ カムイと行動を共にする。
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中央警察25区凶悪犯罪課
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24区のものと同様、凶悪犯罪者の即時処分(抹消)を任務とする殺人集団。
課長ハトバはコウサカと接触を図る。シロヤブの先輩にあたる不良女刑事・クロヤナギ シンコ、新人のサカキ ヒナなどが所属している。
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中央警察24区凶悪犯罪課
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コダイ スミオとそのパートナーのナツメ サクラ、捜査員コシミズ、そしてクサビ テツゴロウが所属している。
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郵便事業連合地域調整課
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25区の郵便事業連合の"配達屋"を統括する部署。
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課長キリュウの下、ツキ シンカイ、新人のオオサト ヨウタロウ、古参のヤブカワとそのパートナーのササタニ、課長秘書のイチガヤが所属している。
システム
『シルバー事件』同様、異なる立場ごとに以下3つのストーリーが独立して存在している。本作ではプレイヤーがどのパートを先に読むかを選ぶことができる。
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Correcteness
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通産省捜査班および中央警察凶悪犯罪課のメンバーの行動を追うパート。#04だけTransmitterパートに置き換わる。
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Matchmaker
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郵便事業連合地域調整課のメンバーの行動を追うパート。
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Placebo
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記憶を失くし25区工業地帯沿岸のボート内で目覚めたモリシマトキオ視点で事件を調査するパート。本作では原作にはなかった「#06 YUKI」が追加されている。
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Transmitter
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Correcteness#04の代替として1話だけ存在する。前作同様、24区署凶悪犯罪課メンバーの行動を追うパート。
評価点
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まともになったストーリー
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犯人の動機がプレイヤーにも腑に落ちるものが前作よりも増えている。
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ストーリーに記述した最初の事件の真相はPlacebo編#03にて真相が開示されるが、かなり意外なものである。しかし、前作のように動機が全く理解不能というものではない。
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Placebo編#00の冒頭で前作の"カムイ システム"の内容を細大漏らさず解説しているため、前作で内容を理解できなかった部分もおさらいできるようになっている。
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アンニュイ&ダーティな世界観に合致するBGM群
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音楽担当は前作の高田雅史から山岡晃、Baiyon、伊藤絵里歌らがメインになった。
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前作とはかなり毛色が異なるものの、無機質でパーカッシブなリズムシーケンスと、対照的にウェット感のあるエレピやアコースティック楽器の組み合わせにより都会的な風合いがよく出ている。
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一方でシンセリードによるチープなサウンドが前面に出た楽曲もあり、デジタル世界を舞台にした本作によく合っている。
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最終話「Blackout」のBGMは高田雅史が担当しており、タイトルと同名の1曲のみでその1話分丸ごとまかなっている。
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ここでは前作のメインテーマ『The Silver Case』、及び前作主人公のテーマである『Kusabi』のフレーズがふんだんに用いられ、非常に盛り上がるものとなっている。
賛否両論点
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最終話の飛び抜けたセンスと狂気のマルチエンディング
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Correcteness「#07 Blackout」のシナリオは須田剛一が手掛けており、ここまでのエピソードで描かれなかった場面の挿話となっている。
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その内容はブッ飛んだなどという生易しいものではなく、「舞台設定が2005年のまま2018年時点の時事ネタが混ざっている」うえに「登場人物がその時系列の乱れを自覚している」会話劇で構成され、パロディ、メタネタを出鱈目に巻き込んだまま進行する。
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そこにクロヤナギシンコが現れ「コマンド出ろ!」と叫び100択の選択肢が出現、主人公に選ばせるという展開となっている。
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さらに、別の登場人物が「選択肢を選ぶと 全てのセーブデーターが消されます」というメタ的な嘘を言ってプレイヤーにプレッシャーを掛ける。
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選択肢がふざけ尽くしており、ある程度作中に合わせたものから、「爆発する」「大爆発する」「ギガ爆発する」「ギガント爆発する」「前田日明の12種類のスープレックスをすべて答える」「水曜日のダウンタウンは愛されている」「サカナクションの新譜を聴く」というマトモでない内容まで様々。
そしてなんと、これら100種類の選択肢をそれぞれ選び、全ての結末を確認することによって真のエンディングへと進行する。
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「Blackout」は6分程度の短い物語だが、100回繰り返せば10時間相当となる。水増しなどという騒ぎではない。
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この展開自体はネタとして完成されており、「まだ須田にこんなセンスがあったとは」とファンを感心させる結果となったが、コンプリートしようとすると作業感が強くなってゆく。というより各選択肢ごとの展開自体はしょうもないものが多いので本当にただの作業である。
問題点
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とんでもなく操作しにくい文字入力UI
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前作同様、謎解きパートではアルファベットや数字の入力を行うが、これが入力可能な文字を各面に記したダイスを回転させるという非常に独特なUIとなっている。つまり数字であれば10面体サイコロ、アルファベットであれば26面体サイコロが画面上に表示され、アナログスティックで目的の字を前面に向けた状態で確定するというシロモノ。
「目的の文字がどこにあるのかわからない」「26面のうち1面を選択する操作が面倒」という理由により操作しづらい。
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しかも直線的なフォントであるため「U」と「V」など区別のつきにくい文字がある。
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さらに入力すべき内容も「11桁の携帯電話番号」などムダに長いものがある。
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発想自体は面白いが、さすがにデメリットが多い。
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『花と太陽と雨と』に登場する暗号入力機"キャサリン"を改良したという"キャサリン・ナノ"が本作に登場する。確かに『花と太陽と雨と』のキャサリンもクセのある入力方法ではあった。が、本作の入力UIはそれを越える面倒さがある。
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「Matchmaker」の演出面の粗さ
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Matchmakerのみ挿絵の画風が異なっており、かなり荒っぽい筆致で描かれたスチルが表示される。
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勢いを感じさせる絵と言えば良いように聞こえるが、悪く言えば「雑」であり、無理に人物の顔を塗りつぶしてシリアスさを出そうとしているのも却って稚拙さの方が目立ってしまっている。
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またテキスト面でも前作に比べると甘く、見知ったはずの同僚の死体を見て「この人は!」と筋違いな発言をしたり、「くっ…まさかアイツが…」のように強者や因縁の相手を匂わせて強引に緊迫感を出そうとしたりといった、質の低い表現が見られる。
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ツキとオオサトの男同士の友情感や、狩る側から狩られる側に回った地域調整課メンバーの焦り、メインBGMの爽やかな風合いはよくできており、惜しいところ。
総評
前作同様、独自の世界観とぶっ飛んだ登場人物によるADV。ゲームをプレイすると言うよりは、もはや須田ワールドを鑑賞するための作品。
前作にも理不尽な部分は多々あったが、本作のUIはさらに改悪されて不快としか言いようがない。前作を愛している人しか乗り越えられないであろう。間違いなく、本作は人を選ぶ。しかし、前作をプレイした上で本作を購入したのなら、あなたはその選ばれた人のうちの1人であるだろう。
余談
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原作にはなく本作で追加された Placebo「#06 YUKI」は舞台が
雛代
となっており、おそらく『ムーンライトシンドローム』(および『トワイライトシンドローム』)の舞台と同じ場所であると思われる。
内容もオカルト色が濃いものとなっている。
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本エピソードの主人公ユキはおそらくシロヤブの妹と思われる。
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Placebo「#06 YUKI」は本作内での時系列で一番最後の日付となっており、本エピソードが追加されたことで「#05」のラストで死んでしまったかと思われたモリシマトキオの生存が確定された。
カップリング作品『シルバー2425』
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2018年3月15日に日本一ソフトウェアからPS4用ソフトとして発売。HDリマスター版『シルバー事件』+『シルバー事件25区』の2本が同時収録されたカップリング作品になっている。本作に合わせてミッシングリンクを埋める新シナリオが登場し、後にPC版にも無料アップデートで追加された。
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2021年2月18日にはPLAYISMから同内容のSwitch版も発売された。
最終更新:2022年10月29日 11:44