デジモンサヴァイブ
【でじもんさう゛ぁいぶ】
ジャンル
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テキストアドベンチャー+タクティクスバトル
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対応機種
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Nintendo Switch プレイステーション4
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発売元
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バンダイナムコエンターテインメント
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開発元
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ハイド
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発売日
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2022年7月28日
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定価
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7,678円(税10%込)
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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判定
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なし
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ポイント
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デジモンゲーム異例の難産タイトル アニメシリーズを意識した演出や設定の数々 陰鬱でハードな展開のシナリオ 賛否あれどシナリオ面は高評価 ゲームそのものは微妙な出来栄え
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デジタルモンスターシリーズ
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異世界に迷い込んだ僕は不思議なモンスターと出会った。
概要
『デジモン』シリーズ久々の完全新作となる作品。
2018年に初めて報じられて以降、開発エンジンの変更やスケジュールの見直しなど幾度かの延期を経てやっと発売された異例の難産タイトルである。
特徴
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ストーリーはテキストで進めていき、時折出る選択肢を選びながら進めていくアドベンチャー形式のシステムとなる。
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ストーリーを進めると、自由探索パートが何度か差し込まれる他、仲間との会話や場所の調査をしていく事で更なる展開へと進展する。
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探索の際には何も表示されない個所が選択される事があるが、この時にスマホのカメラを使いノイズが多く発生する場所を探索することでアイテムを手に入れる事が出来る。
その中には隠し要素としてショートストーリー「認識された記憶」が読める事もある。
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仲間たちと会話する際には選択肢で適切な回答をしていく事で、仲間の親密度が上がっていく。
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親密度は一定以上になると仲間のパートナーデジモンが次の段階へと進化できるようになる他、バトルにおいて回復や追撃などが発生する支援の発生頻度にも関係する。
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他、選択肢でストーリーの分岐やアグモンの進化に関わる「カルマ値」のうち「道義」「調和」「激情」の値が変動していく。
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アグモンのみ主人公のパートナーという事もあり、ストーリーを進めていくにつれ必ず究極体まで進化できるようになっている。
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デジモンバトルはシミュレーションRPG形式となり、デジモンたちを動かして敵を倒していく。戦闘はアクティブターンに近い方式。
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デジモンたちは通常攻撃の他、固有の必殺技を一つずつ持ち、SPを消費することで必殺技を発動できる。
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装備アイテムも存在し、バフ効果や状態異常の防止、更なる必殺技の付け替えなども可能。
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パートナーデジモンたちは成長期のままだとターン終了時にSPが回復する。これはフリーモンスターも同様。
パートナーが成熟期以降に進化した状態だと逆に進化レベルに応じてSPが消費される。
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またパートナーデジモンたちは戦闘中に子供たちと会話することで様々なバフ効果を付けられる。
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バトルにおいて、敵デジモンと会話・説得をすることで仲間(フリーモンスター)へと誘ったりアイテムを貰う事が出来る。
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フリーモンスターを説得する際は各カルマ値に伴い、成功率が変動する。
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なお、フリーモンスターの進化には専用のアイテムを使用する必要がある他、退化はできない。
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バトル中ではアイテムを入手できる宝箱や、妨害や援助をしてくれる装置が登場する。
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バトルはオート操作にも対応している他、合間に挑んでレベル上げやモンスター集めができるフリーバトルも選択可能。
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経験値はユニットごとに撃破での獲得ではなく、クリア時に全ユニットが生死問わず一括で貰える。
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ゲームクリア時にクリアデータを作成することが出来、各パートナーデジモンの進化状態や仲間にしたフリーモンスター、アイテムやモンスターのライブラリ記録率が引き継げる他、強力なモンスターが登場するがクリアする度に多くのドロップアイテムが貰えるフリーバトル「霧幻の追憶」に挑めるようになる。
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全体的な世界観は架空の民族神話を絡めたファンタジー色の強い作風となっており、そのためか「デジモン」や「デジタルワールド」といった単語がほぼ一切使われず、作中ではデジモンたちは「モンスター」「ケモノガミ」と呼ばれている。
評価点
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選出されたデジモンのチョイス
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パートナーデジモンなどはこれまであまり日の目を見なかったデジモンたちが多く選ばれており、新鮮味が強い。
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特にファルコモンはアニメ『デジモンセイバーズ』以降の紫色の忍者服を着たタイプではなく、電子ゲーム『デジモンアクセル』にて初登場した個体の方であり、実に17年ぶりにスポットが当てられる事となった。
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アグモンの進化先もおなじみのグレイモン系列だけでなくティラノモンからの恐竜系列やタスクモンといった敵役に当てられがちだったデジモンが選ばれており周回する楽しみがある。
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アニメシリーズをオマージュした演出面の数々
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あらすじからして「世界の各地で異常現象が起きている」「夏休みの課外キャンプに参加した子供たちが異世界へ誘われる」という『デジモンアドベンチャー』を強く意識したものとなっており、
パートナーデジモンの進化演出も「〇〇モン、進化!」と叫び戦闘終了後には成長期まで戻るなど、アニメと同じものとなっている。子供たちの精神状態が進化に影響するという点も同じ。
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また、子供達の性格や言動からも『デジアド』の子供達を彷彿とさせる点が多く見られている。
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なお、直接的にオマージュしているのは『デジアド』及び『02』だが、『テイマーズ』など他の作品を彷彿とさせる要素も多く見られている。
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BGMが良曲揃いであり、本作の神秘的で儚げな印象を強く描いている。
賛否両論点
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『デジモン』シリーズ全体としてみても異例の陰鬱でハードな展開が目立つシナリオ
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アニメシリーズのような子供たちの困難に立ち向かいながらも成長し、友情を育んでいくというジュブナイルや少年漫画のような展開以上に、人間達やデジモン間での不和など精神面の弱さが描かれていく。
発売当時に放送されたアニメ『デジモンゴーストゲーム』でも怪奇路線かつハードな展開が目立つ話が見られていたが、そちらは主要人物の間で不和はあまり描かれないなど方向性が異なったものとなっている。
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発売前のPVの時点で予告されてはいたが、キャラクターたちもストーリー展開によっては死んでしまう事もある。デジモンシリーズとしては味方の子供たちの死が描かれていくのはあまり無い展開であり、上記の仲間内の不和もあり「デジモンでこういう露悪的な話は見たくない」という声も多く見られている。
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特に子供達のひとりである加山シュウジの言動は多くのプレイヤーから「あまりにも不快」と不興を買ってしまっており、その末路についても「もっとレーティングが上の方が良かったのでは」と衝撃的なものになっているが、同時に「悲惨だが自業自得」「こんな奴は助ける気になれない」といった意見も多く出てしまっている。
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簡潔に言うと、もはや救助など望めないと分かり切った状態でもとにかく脱出のための調査に妥協案や代替案も出さず反対しまくる。さらに、自分を省みることなく思う通りにならないのはパートナーであるロップモンが弱いせいだといい、辛辣な態度や嫌がらせでしかないスパルタ特訓を課したりして、勝手にいらいらしていってるという有様。
加えて、ロップモンの気質はいい思い出のない少年時代の自分を想起させるもので、親から受けた仕打ちをまんまロップモンにやっている。完全な八つ当たりである。
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しかし、2周目以降解禁の真実ルートからは仲間から激を飛ばされた後に自身の行いを反省、優しさを取り戻したシュウジと完全体へと進化するロップモンの姿を見ることができるようになるため、絶望に突き落とされたまま…ということは無い。
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また、終盤の分岐ルートとなる「調和」と「激情」についても死亡退場者が多く出るだけでなく悪堕ちする者までも出ており、特に激情ルートはそのラスボスも衝撃的なもので驚いたプレイヤーが続出している。
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ただし、発売前のインタビューにおいて、本作は「小説『蠅の王』をモチーフにしている」と公言されている。
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『蠅の王』は孤島に取り残された少年たちが長い生活を経ていくうちに対立し悲劇的な結末を迎えるという作品であり、同じ漂流物ながら爽やかな雰囲気の冒険譚が描かれる『十五少年漂流記』を『デジモンアドベンチャー』にたとえ、その対照として作られている。
このインタビューを事前に読んだ上で、そういう作品だと受け止めたファンは多い。
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また、他のシリーズと違った、良くも悪くも等身大の子供相応のキャラ付けを評価する意見も見られており、デジモンの進化を人間の精神と特に強く結びつけたシナリオも完成度が高い。
上述のように意外なデジモンの登場や活躍などもあり『デジモンアドベンチャー』の単純な焼き直しに収まらない描き方を評価する意見もまた多い。
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衝撃的な内容を考慮してか、デジモンゲームとしては珍しくスタッフ側からプレイ動画配信に関する注意喚起が出された。内容は発売から2ヶ月は第5章以降の配信を控えてほしいということ、もし配信する場合はネタバレ有り等の表記をしてほしいということで、強制ではなくあくまでお願いという形である。
問題点
単純にゲームとして練りこみ不足な点が多すぎる
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オープニングではアニメムービーが使われているがアニメが使われているのはこの1回っきり。
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テキストパートでは一枚絵が大きく表示されるような演出はなく、漫画のコマ割のようなカットイン演出で場面が主に描かれていく。
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状況が解りづらいというわけではないが、派手さに欠ける。
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またシナリオの大筋は評価されてはいるものの、細かいところでツッコミどころが全くない訳でもない。
例を挙げるとすると地下牢に閉じ込められた際に鉄格子を開けられなくて途方に暮れる場面があるが、デジモンたちが成熟期に進化すればあっさり解決できそうではある。
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シナリオの分岐も明確にルート別になるのがゲーム後半からであり、その分岐した内容も大まかなあらすじ自体はほぼ全て共通しているため変化に乏しい。
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致し方ない事であるが、前述のシュウジが改心するいわゆる2周目以降の「真実ルート」では途中まで共通シナリオに本来脱落していたキャラを組み込むだけの改変になってしまっておりシナリオに違和感が生じている。
特に本来シュウジの末路を目の当たりにした事で何人かが精神的に不安定になった事による不和が発生するイベントでは、このルートでは誰も脱落せず希望が見える内容に変わったため不和が発生する展開が強引になってしまっている。
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バトル部分はハッキリ言ってバランスが崩壊している。
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デジモンたちの移動範囲が全体的に非常に狭く、機動型以外は2〜3マスまでしか動けないこともザラ。冗談抜きでミノルが会話したファルコモン1人だけでマップの半分ほどが行き渡ってしまえる事も。
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必殺技の攻撃範囲も縦横のみ数マス程度のものが見られるなど、不便なものが目立つ。一応スキルの装備で緩和は出来るがこちらはこちらで消費SPが大きめ。
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パラメータ上げのアイテムにも上限が一切無い上にバトルのドロップや探索などで多く手に入る事もあり、ドーピングし放題。
敵味方のデジモンの火力が非常に高く、二回ほどの攻撃で沈む事もしばしばある。
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その割には相性の悪い属性による攻撃ダメージの値が半分近くにまで減るなど、補正も強力過ぎる。
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デジモンたちもレベルの高い成熟期よりはレベルの低い究極体の方が強い事もあるなど格差が露骨。火力の高さもあってか最終的にはレベルを上げて火力の高い必殺技をぶつけてゴリ押しすれば何とかなってしまうようになる。これでは戦術もへったくれもない。
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アニメシリーズを意識してかパートナーデジモンは出撃の際には必ず成長期から始まる事となり、各レベルに伴い強さも露骨に変わるため進化しないまま戦うメリットは薄い。
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演出面も全体的に簡素であり、戦闘アニメもマップ上のユニットアイコンがアニメーションを行う程度に留まっている。
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フリーモンスターがストーリーに絡むことは一切無く、加入する事の言及も全く無いので、異物感が否めない。
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説得の際の選択肢も問いかけと返答がかなり曖昧で解りづらい上に全デジモンずつ正解が異なっているため、かなり煩わしい。
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デジモンの選出自体は好意的に受け入れられているが、その代わり登場総数が117体とかなり少ない。最低2周もすれば登場するデジモン全てに出会えてしまう。
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さらに、主人公たちのパートナーデジモンの進化系と同じモンスターがフリーモンスターとして登場するため、余計に登場デジモンが少ない印象を受けてしまう。そればかりか、フリーモンスターはその次に何に進化するか見えてしまうため、ストーリーを追ってその進化先を確認したいプレイヤーにとってはネタバレ要素となってしまう。
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デジモンの進化シーンのカタルシスが欠如している
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アグモンの完全体及び究極体への進化はルート分岐次第では、折角新たな力に目覚めても結局救う事が出来なかったという後味の悪いものになってしまう事がある。
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他の子供たちのパートナーデジモンの進化が親密度が一定以上でないと完全体以降への進化イベントそのものが発生せず、そのイベントの敵も雑魚敵のため、どうにも消化試合的な印象が拭えない。
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進化イベントも1回起こした後にクリアデータ引き継ぎを行うとそのデータではイベントが発生しなくなる。
煩わしさは減るものの、味気なさもある。
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進化の演出も成熟期から究極体までの全ての演出が統一されていて違いがあまりない。
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他、ボタンレスポンスが悪い・イベントシーンの振り返りが無い・キャラクターを掘り下げたイベントが少ないなど細かい不満点は多い。
総評
久しぶりの『デジモン』新作という期待と4年もの時間を費やした割にはお世辞にも出来は良いとはいえないものとなってしまった。
一方で、良くも悪くもデジモンとしては挑戦的なシナリオやBGMなど良点も多く、そちらを重視して評価する声も多い。
このため、完全なクソゲーとも言い難く、シナリオ重視のゲームとしてなら相応の価値はあると言える。
少なくとも、プレイする時はアニメシリーズとは似て非なる作品である事を念頭に置いた方が良いだろう。
余談
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海外でのみOne/Win版が販売されている。
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上記の通り、不穏なキャラクター関係が多い事もあり、本作に対して「
ギスモン
」という呼び名がある。
ギズモンだと人工デジモンになるので注意
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ルートが3通りに分岐することやモンスターを仲間にしていくシステムなど、『女神転生シリーズ』との共通点を指摘する声もある。
最終更新:2025年02月25日 22:31