いけにえと雪のセツナ

【いけにえとゆきのせつな】

ジャンル RPG


対応機種 プレイステーション4
プレイステーション・ヴィータ
Windows(Steam)
Nintendo Switch
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 Tokyo RPG Factory
発売日 【PS4/PSV】2016年2月18日
【Win】2016年7月20日
【Switch】2017年3月3日
定価(税込) 【PS4/PSV/Switch】5,280円
【Win】4,888円
プレイ人数 1人
レーティング CERO:B(12才以上対象)
判定 なし
ポイント 懐古層を意識したシステム
渋さを追求した演出
説明不足なシナリオ



とりもどそう、ぼくたちのRPG



概要

スクウェア・エニックスが新設したスタジオ「Tokyo RPG Factory」による開発のRPG。
キャッチコピーの通り1990年代のJRPG、特に当時のスクウェアとエニックス製のRPGを強く意識した作風となっている。
シナリオライターは『探偵 神宮寺三郎 夢の終わりに』や『新宿の狼』の稲葉洋敬氏。


あらすじ

魔物の活動を静めるために、18歳の少女「セツナ」をいけにえとすべく、最果ての地を目指す隊があった。
仮面の傭兵一族であるエンドは、そんなセツナの殺害を依頼されつつも見送り同行することになった。


システム

  • 骨子は概要のとおり90年代のSFCやPS1の国産RPGをモチーフとしたオーソドックスなRPGである。
    • 「人々のために犠牲になるヒロインを護衛しながら旅をする」という設定は寧ろ2000年代に入ってからのRPGを彷彿させるが、ストーリー自体はそれらとは似て非なるものとなっている。
  • 世界を探索し、出会う魔物たち・ボスに打ち勝ちストーリーを進めていく。

戦闘

  • ATB
    • 戦闘システムは1990年代JRPGの代表格とも言えるクロノ・トリガー』のATB Ver.2.0をベースに設計していると公式に明言されている。
    • バトルで味方が行える行動は、武器で敵を攻撃する「たたかう」と、MPを消費して技や魔法を放つ「魔法」に加え、消費アイテムを使う「道具」の3種類。
    • 敵味方それぞれ、リアルタイムで蓄積されていくゲージ(ATBゲージ)が満タンになった者からリアルタイムで行動するシステム。
    • ATBゲージが満タンになり(かつプレイヤーが行動指示していない)キャラが複数いる状態だと、めいめいの魔法を「合体技」として放つことができる場合がある。
      • こちらも『クロノ・トリガー』の「連携技」に近いシステムとなっており、組み合わせによってさまざまな効果を発揮。
  • 装備
    • 武器と法器(防具)を装備できる。
    • 法器には「法石」というアイテムをセットできる。
    • 法石は味方のパラメータを補助する効果、あるいは特定の魔法が行使できるようになる効果の2つがある。本作では対応した法石を装備していないと魔法や技が一切使えない。
    • なお、キャラごとに装備できる武器・法器・法石が決まっている。
  • 刹那システム
    • ATBゲージのほかにもSPゲージがある。SPゲージはATBゲージ満タンの状態で待機させたり、敵に攻撃したりされたりすることで蓄積。
    • SPゲージが満タンの状態で「たたかう」「魔法」を使った際、特定のタイミングでボタンを押すと、たまったSPゲージを消費しつつ追加でダメージや特殊効果を発生させられる。
    • 刹那システムを使った際、一定確率でに装備している「法石」に特殊効果が付与される。
      • どんな特殊効果が付与されるかは法石をセットした法器に依存する。
    • また使えば使うほど、シンギュラリティと呼ばれるバフ現象が発生し、バトルに有利な状況が起こりやすくなる。
  • バトルメンバー
    • バトルメンバーは3人選出可能。
    • 控えのキャラにも経験値は入るが、バトルに出ているキャラの半分程度。
  • エンカウント
    • ダンジョンの要所要所に敵の群れが待ち構えており、一定距離近づくと戦闘に移行する。
    • 敵に気づかれないままシンボルに接近できると先制攻撃ができ、ATBゲージが満タンかつ、SPゲージが1つ溜まった状態でスタートする。
  • HPとMPの回復
    • バトル終了時およびセーブ時にHP・MPは回復しないが、レベルアップした際や購入した「テント」や「コテージ」をフィールド上で使うことで、HP・MPが回復する。
    • バトル中にHPがゼロになると戦闘不能になる。戦闘が終了するとHP1の状態で復活するが、バトルメンバー3人が全員戦闘不能になるとゲームオーバー。最後にセーブしたところからやり直しとなる。
  • 逃走
    • 戦闘からの逃走自体は可能だが、「ミストーン」アイテムを消費する必要がある。また一部の敵相手にはこのミストーンが使用不可になる。

マップ・探索関連

  • セーブ
    • メニューからセーブ可能。ただし敵が出る場所や村・ダンジョンから出る必要がある。
    • ダンジョンでは、特定の拠点にセーブできるポイントが存在することがある。
  • 素材・食材
    • 本作の金策。マップに落ちているものから拾えたり、敵からのドロップで入手できる。
    • 特定の条件を満たして敵を倒すと、落とすアイテムが増加する。条件を満たした際は倒した敵のところに「○○キル」という言葉が浮かび上がる。
      • 条件としてはトドメを刺す際に「セツナシステムを使う」「連携攻撃を使う」「残りHPに近いダメージを与える」「残りHPを大幅に超えるダメージを与える」「属性攻撃をする」「状態異常にしておく」など。
      • ひとつの敵から複数の「○○キル」を発生させることも可能。重複させればそれだけ多くの素材を落とす。
  • 集落
    • 武器・法器・法石・道具が買えるようなお店が用意してある。
    • 武器・法器はストーリーの進捗に従って次第にラインナップが増加していく。
    • 素材を売りつけることで収入を得ることができる。法石は最初から売られているわけではなく、入荷させるには一部素材を一定数売る必要あり。
  • 料理
    • 食材集めイベントあるいは特定のNPCとの会話で、料理のレシピのラインナップが増加していく。
    • 集落には料理を出す店が存在する。レシピを店に教えると、以降はお金を払うことで料理を食べさせてもらえる。
    • 料理を食べた次の戦闘時にバフなどの効果がかかる。
  • その他
    • 魔法名・アイテム名は『クロノ・トリガー』と同様に『ファイナルファンタジー』シリーズに近いものが採用されている。
      • 加えて氷の魔法が「アイス」「アイスガ」だったり、剣技の「回転斬り」「全力斬り」や各種連携魔法など、『FF』シリーズから直接というよりはむしろ『クロノ』を通して輸入されたと思われるものが多い。
    • バトルメンバーとなる登場人物の名前は、初登場時に限り変更できる。
    • ゲームを一定まで進めると飛空艇を入手し、今まで来た道にすばやく戻れるようになる。

評価点

  • 懐古層を意識したゲーム性
    • デザインやボイスといったキャラゲーらしさに頼るわけではなく、淡々とRPGとしての戦略性やストーリーのある物語に重きをおいたゲーム性である。1990年代のRPGファンの嗜好にあった仕上がりになっている。
    • シナリオも全体的に王道なもの。中盤までは魔物という存在とそれに脅かされる人間の対比で展開されるため、お話自体は分かりやすい。
  • ポリゴン表現関連
    • 人間の登場人物は3頭身のデフォルメ調のポリゴンで描かれる。アクションのモーションが多彩で技を放ったり負傷して足を引きずったりする動作が描かれる。
    • 敵のシンボルに近づくと暗転や硬直を挟まずすみやかにバトルに移行する。戦闘が終わるときも同様。探索中、敵シンボルに接触した場所がそのまま戦闘フィールドになるのも特徴。
  • 戦闘関連
    • 戦闘時にとれる選択肢が多い。ATBではあるものの、あえて待つことで仲間と足並みを揃えて合体技を使うことができるほか、セツナシステムを使って他のRPGにはないような追撃を試みることができる。
    • どのように戦ったかで、装備が強化される「昇華」システムというものもあり、育成要素の奥深さに一役買っている。
  • 図鑑
    • 登場人物や出会ったモンスターは図鑑に登録される。図鑑の説明文はなかなかに凝っている。

賛否両論点

  • 静けさに拘った世界観
    • 落ち着きがあるが、悪く言えば地味。
    • 「雪」がタイトルに組み込まれているだけあって、マップはとにかく雪が積もっている。
      • 空から降ってくる雪が美しく描かれているほか、キャラクターの歩いた跡の雪が平らにならされるといったグラフィックの工夫がある。
      • 流氷や古代遺跡を攻略することになるなど、決して雪原一辺倒のマップデザインではないが、どうしても背景が白系統の色ばかりではさびしいという声が聞かれる。
    • 「切なさ」というコンセプトや重いストーリーには合致しているのだが、本作が目指したとされる1990年代のJRPGから受けるようなワクワク感とは大分印象が異なる。
    • BGMも質自体は良いのだが、用いられている楽器はピアノのみ。新鮮な体験はできるかもしれないが、これまた1990年代のJRPGのイメージとは異なった物。
      • 世界観は冷たい類のものだが、探索時は暖かい印象を受けるBGMが多数流されるので、一種のコントラストになっている。
  • システムをきちんと理解する必要がある
    • 適当に戦っていても強くはなっていくが、戦闘準備に関して覚えることは多い。
    • 特技は勝手に覚えてはいかず、ショップで特定のアイテムを売ることで入荷するアイテムを購入することで、初めて使えるようになる。
      • 敵もできるだけ条件を満たした「○○キル」で倒すことで、多くの素材を落とす。素材は本作での資金収入源となるので、積極的に「○○キル」を狙う必要がある。
    • 何らかの準備・対策を取らないと、圧倒的戦力差で敗北させてくるボスもいる。逆に言うと、強い技・合体技などを準備すれば、戦闘の難易度がかなり減ってしまうこともある。

問題点

  • セーブポイント・回復ポイントが独特
    • 村に教会やセーブポイントがほぼない。一旦村から出てフィールドマップ上に行かないとセーブできない仕組みなのでやや不便。
    • 村に宿屋が存在しないほか、セーブポイントを調べただけではHP・MPが回復しない。特定の条件下で使える消費アイテムが必要になることが多いので、他RPGの感覚でのプレイができない。
  • 「魔法」のバランス調整
    • 一部の合体技が強すぎる。
    • エンドの「ショック」と、ヨミの「挑発」の連携技である「ブロウビート」がやや壊れ気味。
      • 威力の高い全体技であるだけでなく、混乱・麻痺・スタンという3つの行動不能系の状態異常にできるので、通常戦闘の難易度がかなり低下する。
      • ブロウビートだけでも、「連携技」「大ダメージ」「状態異常」の3条件でトドメを狙える。敵をすばやく殲滅できるだけでなく、金策や法石入荷に重要な素材もガッポガッポ手に入る。
    • 終盤で使用可能になるエンド・クオン・フィデスの3人技「星天停止」と特異版の「天光創刻」はゲームがつまらなくなるレベルのぶっ壊れ。
      • 敵全体にストップ効果&味方全体ヘイストという言わば公式「ずっと俺のターン」で、最初にこれを使えばあとは無抵抗の敵を悠々と殴りまくるだけになる。
      • しかも効果時間が異様に長く、高威力の技を叩き込んでいれば動く間もなく敵が死ぬ。ラスボスはおろか隠しボスすら余裕で完封できる正真正銘のバランスブレイカーである。
  • 終盤からのシナリオが説明不足
    • いけにえなど、世界観や設定には独特なものもあるのだが、それらを充分に説明しきれていない。
    • 核心的な情報が終盤になって畳み掛けるように語られだす。シナリオの変化についていくのがやっとで、シナリオを理解したときの感動を味わいにくい。
    • 設定がきちんと練られているとは言いがたい。行き当たりばったりな印象までは抱かないが、キャラクターが行動をとった理由がなぜなのか説明が不足している。
      • 特に終盤になって敵味方がタイムリープすることになるのだが、なぜタイムリープできるのか、タイムリープしたことで過去・現在・未来の時間がどのように変化するのかの説明が一切無く、一連の描写が強引に感じられる。
      • エンドがなぜセツナの旅に同行することにしたのか、セツナがエピローグ時とった行動の理由がなぜなのか等。
  • イベントのスキップ機能がない
    • ボス前の会話や、それに至るまでの会話シーンを飛ばせない。
    • 確かに1990年代のJRPGにそんな機能など無くて当たり前だったが、本作はボスが強めなほか強力なモンスターが散在していることもあり、事故でゲームオーバーになりやすいので、何度も同じ会話を見なくてはならないことになりかねない。UI的に搭載されていても良かっただろう。

総評

雪とピアノで淡々と描かれる渋くて切ない世界観が特徴。
終盤以降に説明不足となるシナリオ、戦闘バランスがやや極端といった問題点はある。
だが、古きよきJRPGを復刻させるべくキャラらしさを控え奥深い育成システムを引っさげた内容となっている。


移植版

  • 2016年7月20日にSteam版が発売された。
    • ストア表記のみ海外版タイトルの「I am Setsuna (私はセツナ)」名義となっているが、タイトル画面やインターフェイスなど全て日本語対応。
  • 2017年3月3日にSwitch版が本体と同時発売された。
    • 基本的な内容は先発機種とほぼ同じだが、Switch版限定の新要素として同年4月13日より無料DLC「時の闘技場」が配信されている。
    • 時の闘技場では、自身が育て上げたパーティを、他ユーザーが育て上げたパーティと戦わせることができる。
  • 2017年7月18日よりYahoo!が運営するブラウザ型ゲームプラットフォーム「Yahoo!ゲーム ゲームプラス」でも『ファイナルファンタジーVIII』など他のスクエニゲーと共に配信されていたが、同サービスは2020年9月23日に終了となった。

余談

  • 本作は2015年にアメリカで行われたスクウェア・エニックスの「E3 2015」プレスカンファレンスにて「Project SETSUNA」としてサプライズ初発表された。
    • だが、E3発表前の事前告知映像ではタイトルがいくつか伏せられた状態で『クロノ・トリガー』の「カエルのテーマ」のアレンジが流れており、同作の発売20周年のタイミングであったということもあってか、発表時には特に海外ファンから『クロノ』関連タイトルを期待されていた。
    • 一応、本作のバトルシステムは上述したように『クロノ・トリガー』の系譜を汲んでいるのだが、実際には世界観の繋がりは一切なく作風も大きく異なるため、『クロノ』シリーズ新作とは言い難い内容となっている。

その後の展開

本作の後もTokyo RPG Factoryにより「Project SETSUNA」を冠した同コンセプトの作品が2作発売されている。
シナリオも稲葉氏が引き続き手掛けている。

  • 『LOST SPHEAR』(PS4/Switch 2017年10月12日発売 Win 2018年1月24日発売)
    • 「Project SETSUNA」第2弾。本作と同じくATB Ver2.0を採用したRPGだが、搭乗型ロボットが採用されたりとややSF寄りの作風になっている。
  • 『鬼ノ哭ク邦』(PS4/Switch/Win 2019年8月22日発売)
    • 「Project SETSUNA」第3弾。今度はオリエンタルな世界観であり、ジャンルがアクションRPGに変わった。
  • 第3弾『鬼ノ哭ク邦』発売後の公式インタビューで次回作に意欲を見せていたTokyo RPG Factoryだったが、その後は新作を発表することがないまま、2024年1月31日に親会社のスクウェア・エニックスに吸収合併され消滅した(参照)。
最終更新:2024年04月19日 03:05