ザ・ファイヤーメン

【ざ ふぁいやーめん】

ジャンル アクション
対応機種 スーパーファミコン
メディア 8MbitROMカートリッジ
発売・開発元 ヒューマン
発売日 1994年9月9日
定価 9,300円(税別)
プレイ人数 1人
判定 良作
ポイント 「火は生き物」の格言を生かした消火アクションゲーム
火災現場の緊迫感・臨場感を上手く描写
ザ・ファイヤーメンシリーズ
ザ・ファイヤーメン / ザ・ファイヤーメン2 ピート&ダニー
シネマティックライブシリーズ
セプテントリオン / ザ・ファイヤーメン / クロックタワー


火は生きものだ。どんなによい設計者でも防げない。



概要

ヒューマンのシネマティックライブシリーズ第2弾。消防士を操作する消火アクションゲーム。
『セプテントリオン』同様にヒューマン経営のゲーム開発専門学校「ヒューマンクリエイティヴスクール」の「生徒作品商品化プロジェクト」によって生まれた作品である。


ストーリー

(説明書より引用。)

西暦2010年
文明は進んだと言っても今より少しだけ人の生活が楽になった程度である。

そんなニューヨークの冬、化学薬品の製造をするメトロテック社では、クリスマスパーティーが開かれていた。
午後6:00、パーティーも終わりかけていたころ、厨房から火災が発生した。
火はすぐさま建物全体に広がり、あっというまに大火事になってしまった。

通報を受けたD地区の消防署では大至急消防隊を向かわせた。
その中のピートとダニエルは数々の火災と闘ってきたゴールデンコンビである。
ピートは、D地区消防署第一小隊のリーダーであり、彼のチームは彼を含めて5人編成となっている。
まず、放水員のピート、そしてピートの補助員であるダニエル。捜査員のマックス、ウォルター。最後に唯一の女性、記録員のウィノナである。

現場に着くと彼らは会社の管理者に話を聞いた。
その話によると会社に地下室に開発中のMDL*1という薬品がありその薬品に引火すると大爆発をおこすというのだ。
ピートらは二手に分かれMDL回収に向かうことにした。

ピートとダニエルは東口のケミカルプラント側から突入するのであった…

登場人物

+ 登場人物
  • ピート=グレイ
    • プレイヤーの操作キャラ。D地区消防署第一小隊のリーダーを務める人望厚いベテランの消防士。
  • ダニー(ダニエル=マクリーン)
    • プレイヤーのサポートキャラ。ピートとは長年コンビを組んできた楽天家。
  • ウィノナ
  • D地区消防署第一小隊の記録員の女性。オペレーターとして現場の状況を逐一報告する。
  • マックス&ウォルター
    • D地区消防署第一小隊の捜査員の二人。ピート達とは別の場所で消火活動を行う。
  • フランク=ウェラー
    • メトロテック社ビルの設計者。最初はピートらと反目するも自らのミスを認め、災害収束のための情報提供をする。

特徴

  • トップビュー視点、全方位任意スクロールのアクションシューティング。全6面。
  • プレイヤーは放水員のピートを操作。下記は各ボタンの説明。
    • 十字ボタンで8方向に移動。L・Rボタンのどちらかを押しながら移動することで向きを固定しながらの移動・放水ができる。
    • Yボタンの上放水は前方直線上を放水。画面端まで届くオーソドックスな放水。
    • Bボタンの下放水は範囲が目の前のみだが、移動を阻む床の火災など上放水で攻撃できない火災も消すことが出来る。
      放水中の移動スピードは遅くなるが旋回速度は速いため炎に囲まれた時にも有効。
    • Aボタンで伏せ。高い位置の炎や熱波、爆発の回避が可能で、ボタンを押しながらのホフク移動は高い位置の障害物をくぐることができる。
    • Xボタンで消化爆弾の投擲。高威力で周囲の炎をまとめて消化するが消耗品。
      • 初期ストック数は2個で、ステージ中でいくつか入手が可能。
      • 最大ストック数の3個の状態で取得すると「ハイパーウォーター」状態になり、放水の威力が上昇する。ただし一度でもダメージを受けると状態が解除される。
  • NPCのダニエル(以下愛称のダニー表記)は常にピートをサポートするように動き、近くに火災がある場合は消防斧を振るって消してくれる。
    • 瓦礫の除去による進行ルートの確保やロックされた扉の解除など、先導役も務める。
    • 体力の概念はなく無敵。
  • ライフ制。ライフが0になった場合はその場でコンティニュー可能。3回まで。
    • ライフは各ステージ内の特定箇所にいる逃げ遅れた生存者を救出することで回復する。またステージクリア時に全快する。
      • 生存者が近くにいると「生命反応センサー」が反応し音を出す。距離が近づくほど音は大きくなる。
    • 画面左上のタイムカウントが0になるとライフが強制的に残りわずかまで減少する。
  • 画面上中央にはマップと現在いる階層が表示。入ったことの無い部屋は青、一度入ったことのある部屋は白、階段のある部屋は赤で色分けされる。
  • 難易度はコンフィグ画面でノーマルとビギナーから選択可能。
    • ビギナーでは消化爆弾のストックが3つで開始。被ダメージの減少や火災の動く速さが遅くなるなどの変化がある。
    • 反面クリアしてもスタッフロールは流れず、ノーマルモードへの挑戦を促される。
  • ステージクリア時には消火率が表示。ノーマルモードのスタッフロール後に表示されるプレイヤーランクに影響する。
    • 消火率100%を目指す際には、各部屋で「ごうごう」という炎が燃える効果音が消えることがその部屋の消火が完了したというサイン。
      • 床に広がって通行の邪魔をするタイプの火災や移動して勝手に消えるタイプの火災は消火率には加算されない。

評価点

「火は生き物」の格言を生かし、消防士による消火活動を良質なアクションゲームに昇華した点。

  • かつてセガが発売した全方位STG『エイリアンシンドローム』と似たゲーム性でありながら、敵を火災・主人公を消防士とすることで全く違う印象を受ける内容になっている。
    「消防士による消火活動」というリアル志向になりがちなゲーム内容を既存のアクションゲームに当てはめた上でアレンジした点は発想の転換の好例と言えるだろう。
  • 敵である火災の種類自体も「火は生き物」の通り多数の行動パターンを持ち、それぞれ対処法を考えさせるように作られている。
  • 発売当時の近未来である2010年という年代設定を生かし、背負い式の放水機から無限に水が出たり*2、火災以外の敵として火災で暴走した管理ロボット・ドローンが登場しても違和感が無いようになっている。

火災現場の緊迫感・臨場感を上手く表現したビジュアルと演出ならびにゲーム展開。

  • 火災で焦げ付く床や放水で窓ガラスや照明、花瓶が割れる演出など、細かな描写が光る。
  • 床の崩落や配管・照明の落下やバックドラフトなど、現実の火災現場でも起こりうるアクシデントがダメージトラップとして上手く取り入れられている。
    • バックドラフトは逆に利用することで周囲の火災を一掃するSTGにおけるボムのような使い方ができる。これはゲーム的な発想と言えるだろう。
  • キャラ同士のセリフも頻繁に交わされ、状況が二転三転する中で災害収束のために尽力する人物たちの熱意が上手く描かれている。

とっつきやすいゲームデザインと間口の広い難易度設定。

  • 最初のステージはチュートリアル面として設計されており、必要なアクションの多くを自然に覚えられるようになっている。
  • マップ機能や進行方向の矢印表示、セリフによる状況説明などでゲーム全編で迷うことは少ない。NPCのダニーも積極的に先導・サポートを行ってくれるのでプレイヤーは心置きなく消火アクションに専念できる。
  • イージーモードは被ダメージが少なく、アクションが苦手な人でもクリアを目指しやすい。ノーマルモードはアクションゲーム経験者でも手ごたえのある調整。
  • クリアまでのプレイ時間も1時間程度で程よいボリュームになっている。

アクションゲームらしい熱くノリのいいBGM。

  • ロックサウンドでプレイヤーを鼓舞しているようなイメージの曲が多く、ゲームへの没入感に一役買っている。
  • 音量も効果音を阻害しないような絶妙な調整。

プレイヤーランクシステムによるやり込み要素。

  • エンディング後にはクリアタイム・要救助者の救助率・コンティニュー回数・各ステージの消火率に応じた採点がなされ、ランクが決定する。
  • 最高ランクでクリアすることで「エキスパートモード」をプレイするためのコマンドが表示。さらなる高難度に挑戦できるようになる。
    • 被ダメージ増加、火災のスピード・攻撃頻度増加、消火爆弾の初期ストック1、生存者救助でのライフ回復無し、コンティニュー不可とエキスパートの名にふさわしい内容。

問題点

  • 移動中、入り組んだ部屋内などでダニーと離れすぎるとダニーの動きが挙動不審になり、ピートから離れていってしまうことがある。
    • ダニーがいないとロックされた扉の解除ができず、次の部屋に進むことができない。
  • シネマスコープを意識した画面構成のため、画面の上下の表示が短めで窮屈に感じやすい。移動中に出会い頭で火災と接触してしまうこともある。
    • 火災現場の視界の悪さを表現している、とも取れる。

総評

消防士による消火活動という題材を「火は生き物」の格言を生かし、程よいゲームバランスとやり込み要素も備えた良質なアクションゲームに昇華。
細やかなビジュアル・演出は「シネマティックライブシリーズ」に恥じない内容になっている。
SFCのアクションゲーム全体を通しても中々の出来で、万人に勧められるゲームの一つ。
本作で「火は生き物」ということを体験すれば有事の際に役に立つ…かもしれない。


余談

  • 本作は映画「タワーリング・インフェルノ」、「バックドラフト」からの影響が見てとれる。
  • CSで放送されているゲーム番組『ゲームセンターCX』では第24シーズンの最後という節目において有野課長が本作に挑戦した。

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最終更新:2022年12月29日 19:43

*1 商品名ではなく会社内の開発コードネーム Most Dangerous Liquid (直訳すると"最も危険な液体")

*2 さすがに現実では実現できそうになく、ゲーム的な側面も強いと思われる。