POWER STRIKE II
【ぱわーすとらいくつー】
ジャンル
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シューティング
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対応機種
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セガ・マスターシステム
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開発
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コンパイル
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発売
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セガ
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発売日
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1993年3月
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備考
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日本未発売
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判定
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良作
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ポイント
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舞台は架空の1930年代のイタリア じぇみに広野(広野隆行)が現状最後に制作したシューティング 武器を数字にこだわらなくても取るとパワーアップ 国内では長らくプレイ環境の構築すら困難だった
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コンパイルSTGシリーズ
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概要
コンパイルが手掛ける『アレスタ』シリーズの海外名『Power Strike』の正式な続編。
日本国内では発売されなかったが、『ザナック』『アレスタ』等を開発した「じぇみに広野」の名で知られる広野隆行氏がメインプログラマーを担当している日本製ゲームである。
世界観はこれまでのアレスタシリーズとの繋がりはなく、架空の1930年代のイタリアが舞台となる。
基本的なシステムは過去にMSX2向けにリリースされた『アレスタ2』がベースとなっている。
ストーリー
時は1930年代。
1929年に起きた世界的な大恐慌は多くの貧困者を生み出し、職を失った人達はやがて生き延びる為に空賊へ転向。
空賊達は巨大な飛行艇等を用いてイタリア周辺の空を支配。各地を荒らしまわり、平和に暮らす人々の脅威となっていた…。
ある日、一人の青年が相棒の小型戦闘機と共に空へ駆けようとしていた。
彼の正体は賞金稼ぎ。賞金首となった空賊達の撃墜を生業とする空のハンターであった。
特徴
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これまでのシリーズ作と同じく一撃死、その場復帰制。コンティニューした場合はそのステージの最初からやり直しとなる。全8ステージ構成。
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ボタン1で通常弾・特殊兵器の発射。ボタン2で自機のスピードチェンジ(4段階)。
特殊兵器の強化
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同じ数字のアイテムを取り続ける事でパワーアップする点はこれまでと同じ。
本作は異なる数字の特殊兵器を取得してもパワーアップ状態がリセットされることはなく、3回連続で違う数字を取ることでもパワーアップする。
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特殊兵装一覧
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0番:一直線に高速連射攻撃をする「SHELL UP」
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1番:一直線に加えて周囲を攻撃する「SHOT GUN」
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2番:撃ちながらミサイルを発射する「MISSILE」
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3番:プレイヤーを尾行しながらレーザーを発射する「BURNER」
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4番:敵を追尾する「ABSORPTION」
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5番:複数のミサイルを高速で一直線に発射する「DESTROYER」
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6番:周囲を旋回しながら攻撃する「NAPALM」
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スーパーバースト(溜め撃ち)
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ショットボタンを4秒間押し続けるとチャージ完了となり、その状態でショットボタンを離す事で敵弾を破壊できる専用弾を高速連射する。
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チャージ中でも通常弾・特殊兵装はそのまま発射され続ける。
スピンシールド
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クリスタルの外観をしたオプション兵装。自機周辺を回転し敵や敵弾を防御できるが耐久値の概念があり、耐久値が0になると破壊される。最大2個まで装備可能。
青、黄色、赤の3種類あり、取得した時の色によって通常弾に特殊な効果が付加される。同じ色を2つ装備しても効果が更に強化されることはない。
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青:貫通性能がつく。
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黄色:通常弾が左右に拡散するようになる。
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赤:通常弾の攻撃力が上昇。
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他アイテム
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スーパーブラスト:画面内にいる全ての敵を破壊する。
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1up:残機が1つ増加。
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ランダー君:『ZANAC』にも登場したコンパイルのマスコットキャラ。1upの効果に加えて通常弾・特殊兵装もパワーアップされる。
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評価点
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マスターシステムの限界を引き出したグラフィック
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本作は1993年発売のゲームであるが、ハードは1987年に発売されたものである。マスターシステム末期の作品として、円熟した描き込みのグラフィックを拝むことが出来る。
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作中のドット絵は巧みで今見ても美しく、主人公機が横に向く時も3コマで描画されるなど滑らかにアニメーションする。
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全体的にゲームテンポが良い
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登場する敵の攻撃はバランスよく、分かり易さも健在。
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これまでの『アレスタ』シリーズでは別の武器を取ると能力がリセットされて強化が無駄になったり、『GGアレスタ』シリーズではパワーアップアイテムを取得するまで時間がかかるため仕方なく別の武器を取る羽目に遭うといったゲーム進行になることもあったが、広野氏の指示により、どんな武器を取っても早く強化できるようになった。
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0番の武器はこれまで威力の弱い武器である事もあったが、強化することで最強クラスの武器に成長する。
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溜め撃ちがある作品でチャージ中は通常攻撃が封じられて無防備になることが一般的だが、本作では溜めながら通常攻撃を撃ち続けられる仕様であり、隙のない攻撃が可能。
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良質なBGM
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海外版マスターシステムは日本版とは異なりFM音源が使えずPSG音源のみではあるが、本作発売当時の欧州ではマスターシステムはまだ現役であり、PSG音源でも高品質なBGMを有するゲームも多数存在していた。本作もそれらの例に漏れず名曲揃いである。
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マスターシステムとしては珍しいラスタースクロール
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マスターシステムではハードスペックの都合上ラスタースクロールが実装されないゲームが数多かったが、本作はラスタースクロールを使用した演出が用いられている。
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スタート時のボスの指名手配書の上にステージの名前がラスタースクロールで描画されるところが具体的な使用箇所である。
問題点
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チャージ攻撃のタイミングが分かりづらい
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どれくらいチャージが完了したかをゲーム中では確認する術がなく、チャージ用の効果音もないため、チャージ完了後の自機グラフィックの変化で判断するしかない。
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『R-TYPE』等ではチャージ状況がゲージによって視認できるようになっているため、この点は不親切であると言える。
総評
マスターシステムの限界を極めたシューティングゲームであり、コンパイル時代の『アレスタ』シリーズ集大成ともいえる作品となった。
下記の通り日本では長らくプレイ自体が困難な環境下であったが、プレイできたプレイヤーからはシリーズ最高傑作に挙げる人も少なくない。
現在は『アレスタコレクション』への収録によりプレイが容易になり、難易度もそこまで難しくないため、シリーズに興味がある方にオススメできる作品といえるだろう。
余談
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後述の『アレスタコレクション』に収録されるまで日本国内で本作を遊ぶのは非常に困難を極めていた。
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本作は先述の通り日本未発売のゲームであり、発売当時のマスターシステムはハード末期時代である。知名度も高くなく、ソフト単品も決して安い値段で求められるものではなかった。
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それに加え、欧州のゲームの性質上PAL環境(50Hz)を前提に製作しているのだが、NTSC環境の日本のマスターシステムで起動すると59.94Hzになってしまうため、ゲーム中の全ての動作が8/7倍速で動くなど不安定になってしまう。
本来のPAL環境で遊ぶには欧州版のマスターシステムと50Hzで同期可能なモニター、もしくは50→59.94Hzへ疑似コンバート可能なコンバータを揃えなくてはならないため、ハードルの高さは尋常ではなかった。
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海外版ゲームギアにも本作と同じタイトルである『Power Strike II』がリリースされているが、これは1993年に日本でリリースされた『GGアレスタII』の海外版である。そのため、しばしば両者が混同されることもあった。
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『アレスタコレクション』にはこれらも含めてどちらも収録されている。
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2005年にGAME SOUND LEGEND SERIES 「LEGEND OF GAME MUSIC ~CONSUMER BOX~」にて初音源化した。
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しかし、実際は日本のマスターシステムの実機で録音した59.94Hzでの収録、しかも1ループのみになってしまっており、広野氏は2015年のTwitterで不満を述べている(広野氏のTwitterアカウントの発言)。
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後の2022年の「ALESTE COLLECTION - Music Album」では欧州のマスターシステムの実機で録音した50Hzになり、作品数の少なさのメリットを生かした2ループ制になり高音質になった。
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2020年12月24日にPS4/Switchで発売された『アレスタコレクション』に本作の収録が発表され、日本初上陸かつ初移植となった。
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パッケージ版だけでなくダウンロード版まで発売するようになり、プレミア価格の本作を欧州に行ったり輸入等をしなくても日本国内でプレイできるようになった。
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内容はエムツーの徹底的な解析と研究により、PAL環境の50Hzの動作を再現している。NTSC環境の動作は無い。
PSIIの解析を始めた頃には「50Hzでの動作は難しい」と溢していたが、5年にも渡る研究の結果、本来のテンポでの稼働を可能にした。
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ガジェットは難易度の表示、次の残機を追加するまでのスコア、チップ数等。さらにチャージ攻撃のゲージが表示されるようになった事でタイミングが分かり易くなった。
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デバッグモードも搭載されており、『コレクション』本編ではGAME SETTINGメニューから設定可能、付属特典の『ゲームギアミクロ ホワイト』ではゲーム起動後に2ボタンを押しっぱなしにすることで起動可能。
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インタビュー雑誌「ALESTE History」にて本作の裏話が発売から27年越しに判明した。
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本作の企画の開始時に広野氏はマスターシステムが欧州で現役になっていることに驚き、50Hzで動かすことを考えながら余裕があれば60Hzを構想したが結果的に実現しなかった。
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本作の制作当初は『アレスタ2』の決定版だと思い込んでいたとのこと。
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とんでもない事に開発期間は4ヵ月間、労働時間は1日に20時間も掛かり、疲弊して会社に寝泊りする事態になった。
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本誌において本作の世界観の設定は架空の1930年代のイタリアである事が判明。コンパイルの佐藤氏が考えたアイデアであり、本作を欧州で発売することが決め手となったようである。
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特に言及されていないが、本作発売の前年に公開された映画『紅の豚』の舞台設定を参考にしている可能性も考えられる。
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エンディングの最後に登場するモブキャラの名前が「寺本耕二」であることが判明。メカ好きという設定である。
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元M2の駒林氏がプロデューサーを担当、広野氏がプログラミングを行った『超翼戦騎エスティーク』がFCとNESの実ROMという形で2024年12月に発売された。本作以来30年ぶりとなる彼の新作を心待ちにしていたゲーマーも多数存在した模様。
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FCで動作する作品だが、数度秋葉原Heyで期間限定稼働をしたことがあるという異例の作品。あとカイザーナックルRTAの走者が「上司の作品」という名目で本作を紹介していたことがある。
最終更新:2025年02月19日 11:58