戦国忍者くん

【せんごくにんじゃくん】

ジャンル アクションRPG
対応機種 ゲームボーイ
発売元 UPL
開発元 NMK
発売日 1991年3月8日
定価 3,800円
プレイ人数 1人
判定 良作
ポイント 『じゃじゃ丸』に続いて『忍者くん』でもアクションRPG
武器や忍術などプレイヤーの使いやすい工夫できるシステム
ゲームボーイ作品らしからぬビジュアルの美しさは必見
忍者くんシリーズ


概要

1991年3月にUPL発売されたアクションRPG。UPLが唯一発売したゲームボーイソフトでもある。
ゼルダの伝説』タイプのトップビューのリアルタイムアクションでシリーズ作品では姉妹シリーズの『じゃじゃ丸撃魔伝 幻の金魔城』(1990年5月29日発売・FC)に近い。
またシリーズ作品ではないが同じNMK開発で前年発売されたゲームボーイソフト『ベリウス ローランの野望』(サミー)の装備システムが用いられている。

ゲームボーイでは『忍者くん』としてはゲームボーイ初作品で、他ハードも含めば『忍者くん 阿修羅ノ章』(AC/MSX2・1987年 FC・1988年)以来となる。
姉妹シリーズの『じゃじゃ丸』を含むと『おいらじゃじゃ丸! 世界大冒険』(1990年9月28日発売)に続くシリーズ2作目となる。


ストーリー

時は戦国時代、忍者くんは飛騨の国で稀代の幻術師「果心居士」を師匠として修業に励んでいた。
そんな頃、織田信長は宿敵の武田信玄が死没したとの噂を耳にした。
噂の真相を突き止めるため忍びの力を借りるべく果心居士を呼ぶのだが、寄る年波の師匠は自分に代わって弟子の忍者くんを向かわせるのであった。


内容

  • 画面見下ろし型のトップビュー方式でスクロールと切り替わりを併用し、マップは特定の区画に区切られており、忍者くんの移動に伴ってスクロールするが、その区画の端に達すると隣の区画に切り替わる。
    • 村や城などもシンボル方式ではなく、この区画に紐づけられシームレスに転換される。
      • その特定区画に入ると人間がいて魔物がいないので、それにより村や城に入ったことがわかる。
    • 洞窟などはフィールドのシンボルから入ることになる。
    • ボスとの戦いの場には基本的に「鬼の紋様」から入って、専用の空間に飛ぶことになる。
  • 装備はAボタンとBボタンで個別に設定できる。
    • 主に刀系武器、投擲系武器、忍術(有限)、アイテム(有限)を装備して戦うことになる。
    • 同じものを両方に宛がうことも可能。例えば初期装備の「星の手裏剣」(投擲系)なら2連射までできるが、A・B両方に宛がうとAで2発、Bで2発で合計4連射ができるようになる。
      • 何を装備しているかは画面の両端に表示されている。有限なものの場合、その個数も表示されている。
  • 経験値という概念はなく特定のアイテムを取ることで体力や攻撃力が上がっていく方式。
    • その対象となるアイテムは宝箱から入手する。
  • セーブデータは2枠用意されている。
    • セーブは村や城にいる人に頼むことになる。
  • やられた場合は、前にセーブした場所で復活する。
    • 特にペナルティはないが、後述の「忍ばしご」や「水蜘蛛」をかけた部分が無効になる。

アイテム

  • 刀系武器
    • 忍一文字
      • 最初から持っている刀で攻撃力なら最強。
    • 村雨の太刀
      • 広い範囲を攻撃できるが攻撃力ではやや劣る。
  • 投擲系武器
    • 星の手裏剣
      • 最初から持っている武器で攻撃力なら強いが、スピードが遅く射程距離も短かめ。
    • 忍の小柄
      • 攻撃力は非常に弱いが、スピードが速く、射程距離も長い。
      • 説明書では刀系に分類されているが、実質的に投擲系。
  • どの武器もレベルがあり、同じマークを宝箱から入手するとそのレベルがアップし性能が上がる。
    • 武器のレベルと力のレベル双方が重なって攻撃力として算出される。
  • 一般アイテム・忍術(どれも15までストック可能)
    • 爆弾
      • 投げると忍者くんの少し前に着弾し爆発して広範囲の敵にダメージ。
    • 木とんの術
      • 木に限らず、その場の地形に化けて敵の攻撃を受け付けない状態になる(術を解除しないと動けない)。
    • 火とんの術
      • 忍者くん自身がその場で一定時間炎になり、突っ込んでくる敵を焼き殺す。
    • 薬草
      • 体力が8ポイント回復。
    • 万金丹
      • 体力が全回復。
    • お供え
      • お地蔵さんに渡すことで通れない場所を通れるようにしてもらったり、ワープさせてもらえる。大抵は前者。
    • 忍びばしご
      • 特定の岩壁にかけて、上り下りができるようになる(通行できるようになる)。
    • 水蜘蛛
      • 川幅が狭い部分に掛けて通行できるようになる。「水蜘蛛」というよりは『じゃじゃ丸忍法帳』にあった「丸太橋」に近い。
  • ステータスアップ系アイテム
    • 力のもと
      • 力のレベルが1上がる。
    • 体のもと
      • 体力の最大値が2メモリ分上がる。
    • お守り
      • 敵にやられて復活した時の体力値(最初は6)が2ポイント上がる。
  • その他のアイテム
    • おにぎり
      • その場で体力が4ポイント回復(ストック不可)。

評価点

  • いろいろ自分好みにカスタマイズできる装備システム。
    • 上記の通り、両方に手裏剣を装備して4連射するもよし、刀と手裏剣の王道なパターンだけでなく、片方に爆弾を装備するもよし…自分に合ったスタイルを手軽に作ることができる。
    • このシステムは、リアルタイムでバトルをする本作のような、アクションを兼ね備えたRPGとも相性が良い。
      • 加えて、その操作性も非常にスムーズで、ゲームボーイ作品にありがちな悪癖「操作のぎこちなさ」などは一切ない。
  • 似たタイプである『撃魔伝』にあったような、戦って倒すことが割に合わないゲームバランスが解消。
    • 上記作品は射程の短さもさることながら、連打への順応が不十分だったため倒して得られるお金が少なく、アイテムがいずれも相対的に高額だったこともあって、半ば「逃げるが勝ち」のようなバランスになってしまっていたが、本作では射程こそ短いものの刀系は連打でカバーできたりもするし、お金がシステムに組み込まれていないため、直接アイテムを落とすなどしっかり戦うことが推奨されるバランスになっている。
      • 中にはあえて戦わず、やり過ごすことが効果的なポイントもあるが一時的なものばかりで「逃げ続けすぎてアイテム(忍術)枯渇」などという事態も起きにくい。
  • 武器はそれぞれ個性を持っている。
    • 敵によっては刀系での攻撃でなければ倒せなかったり、ダメージが弱かったりとそれぞれ固有の特徴を持っているため死にアイテムになるものがない。
    • 初期装備である「忍一文字」「星の手裏剣」にしても基本的な攻撃力の上では強いなど、お荷物にならないバランス。
    • 忍術でも攻撃一辺倒ではなく防御でやり過ごすための「木とんの術」など、それらをちゃんと活かせる使いどころが用意されている。
      • なくても何とかなる点もあるが、やはりそういったアイテムを駆使してこそ攻略しやすさが生み出せる点はレベル概念がないシステムをしっかり補っている。
  • ストーリーはシリアスで本格的。
    • 序盤から信長に会うところからはじまり、それから信玄へ向かう最中にも、様々なつながりが見えてきて完結まで、しっかりと一本で結ばれたストーリーはシンプルながらドラマ性がある。
    • フィールド上のグラフィックは『撃魔伝』のように少々チープさが漂うものの、下記の通りしっかり描き込まれた一枚絵を交えて展開され、そのストーリーをしっかり盛り上げている。
    • またゲームの大筋は妖怪との戦いながら戦国の史実との融合が試みられていることなども、これまでになかった新しさを感じられる部分である。
  • 全体マップもしっかりと戦国時代の国構成に準じて組まれている。
    • ただ単に人物を輸入するだけでなく、意外と細かい所まで作り込まれている。
  • ゲームボーイながら描き込まれたグラフィック。
    • 特にストーリーデモの一枚絵などは非常に細かく描き込まれている。
    • 『撃魔伝』はオープニングのみだったが本作はストーリーの要所要所で挿入されている。
  • BGMのクオリティの高さもシリーズ譲りの秀逸さ。
    • それもゲームボーイという限られた容量の中でも、場面場面に応じてかなり豊富に用意されている。
    • 和風なものからファンタジックなもの、雰囲気も勇壮なものや不気味なものなど、その中身も色とりどりで雰囲気を醸し出している。
  • アイテム取得によるレベルアップ形式、強くなった実感を感じやすい敵の配置バランス。
    • 経験値のないシステムはこの当時、そこまで珍しいものではないが本作はレベルがなく強いて挙げれば「ステータス系アップアイテム」や武器のレベルを上げていく方式になっている。
      • 敵の配置バランスがこれにしっかりマッチしており、パワーアップのタイミングが近づくと少々手強い敵が出てくるが、パワーアップを取ることでそれらとの戦いが楽になるポイントが多々用意されている。
      • それにより、後述のアイテム回収の面倒臭さも緩和されている。

賛否両論点

  • 町や村とフィールドのシームレス転換。
    • 典型的なRPGでは町や城はシンボル化されているので、あまり慣れない方式ではある。後半では階段の上り下りで町区画とダンジョン区画が頻繁に転換することも多い。
    • とはいえ、BGMの雰囲気や武器が出せないことですぐわかるので、慣れるのはそれほど時間はかからない。
    • また自然な形で繋がっているのは、より一層リアルな冒険気分を味わわせてくれる。
  • 回復アイテムまで、わざわざ武器同様に装備してA・Bボタンで使う仕様は煩わしく感じられる一面もある。
    • とはいえ場合によっては回復しながら連打で斬るという手段が有効なこともあるので、使い方次第と言えるだろう。

問題点

  • お金がシステムに組み込まれていないためデスペナルティが皆無同然。
    • 水蜘蛛や忍ばしごをかけ直さなくてはならないという程度しかない。一応体力値が最大でなくなることが多いが、その程度はすぐリカバーできる。
      • そのため、手慣れた人にとっては町に戻るのに自殺した方が早いという珍妙なことを推奨してしまっている。
  • コマンドではA・Bボタンが同等の役目になっている。当時の標準仕様「Bボタン=キャンセル」ではない。
    • このため「いいえ」のつもりでBを押したつもりが、カーソルが「はい」になっていたために「はい」扱いになるミスが発生しやすい。
    • これは非常に慣れない操作であり「Bボタン=キャンセル」という習慣はゲームボーイでも定着しているので少々扱いにくい。
  • 「忍びばしご」「水蜘蛛」「お供え」が手に入って行動範囲が広がると、今まで取れなかった位置にあるレベルアップアイテムの回収のために戻る必要があるので少々面倒。
    • ただ上記の通り、敵との戦闘でその実感を得やすいバランスで気持ちの上での負荷は緩和されていることと、一般的なRPGでは作業的な戦闘でレベルアップしていたことを考えるとその代替と取ることもできるのだが。

総評

トップビューアクションと、ストーリー性のあるRPGが融合されており、またゲームボーイ作品ながら一枚絵も非常に細かい部分まで描かれており、携帯機だから仕方ないという妥協を感じさせない。
武器やアイテム(忍術含)などもそれぞれ個性や独特の役割があるなど無駄なものがなく、また同じアイテムを両方で装備するなどプレイヤーの工夫により自分に合ったスタイルの戦い方を生み出せていくシステムも秀逸。
RPG特有の経験値によるレベルアップこそないものの、成長の感じやすさに配慮されたバランスや、戦闘自体の手軽さもゲームボーイとの相性が良い。
BGMなどシリーズ譲りの良さもしっかりと継承され、初の歴史との融合という真新しさを持ったストーリーとも調和しておりシリーズファンも満足なものだろう。


その後の展開

  • ゲームボーイでの展開は『じゃじゃ丸』も含めて本作が最後となる。
    • 同時期の3月29日『忍者じゃじゃ丸 銀河大作戦』がファミコンロムカセットとして発売。
      • 名前の通り舞台がSFになっておりシリーズでもかなり異色な作品。
    • 『じゃじゃ丸』を除いた『忍者くん』のシリーズ作品ではスーパーファミコンで『すーぱー忍者くん』を1994年8月5日に発売。
      • 初期のような低頭身のままスーパーファミコン化したような作品。

余談

  • 本作と源流を同じくする「じゃじゃ丸」とは兄弟であるということだが、「じゃじゃ丸」の作品としては2年前の1989年3月にファミコンソフトとして発売された『じゃじゃ丸忍法帳』では江戸時代ということになっている。
    • 本作は上記の通り信長健在の戦国時代であるため、いくら短く見積もっても祖父と孫ほどに離れてしまったことになる。
      • しかも作中で柴田勝家、前田利家、明智光秀といった織田家の有力な武将が戦死しており、徳川家康も死こそ明言されていないものの行方不明に。光秀の戦死によって本能寺の変が起こらなくなり、この世界の歴史は江戸幕府に繋がる可能性は低い。
  • じゃじゃ丸が『大冒険』→『忍法帳』→『撃魔伝』→『世界大冒険』→『銀河大作戦』と作品を経るごとに抵頭身のコミカルな姿から高頭身なかっこいい姿までいろいろ変わっていった反面、本作の忍者くんは『阿修羅の章』の頃と変わらない、かわいい姿で登場している。
    • 『魔城の冒険』からは少々様変わりしているが低頭身のかわいらしい姿は後の『すーぱー忍者くん』まで一貫している。
      • この変わらぬ愛らしい姿もまた彼の魅力の1つなのかも知れない。
  • 海外では『Ninja Taro』として発売されている。
最終更新:2023年10月15日 18:13