じゃじゃ丸忍法帳

【じゃじゃまるにんぽうちょう】

ジャンル RPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 ジャレコ
開発元 NMK
発売日 1989年3月28日
プレイ人数 1人
定価 5,800円
判定 なし
ポイント シリーズ初「戦うさくら姫」
シリーズ初のRPGだけに慣れない感あり
BGMや一枚絵は非常に良いものばかり
忍者くんシリーズ


概要

1989年3月にジャレコが発売したRPG。
同社の看板『忍者くんシリーズ』で初のRPGである。

ゲームシステムは一般的なコマンド選択方式のRPGになっている。


ストーリー

序章

大悪人“なまず太夫”から、さくら姫を救い出したじゃじゃ丸は、その後、修行の旅に出ていた。
そしてある日、久しぶりにさくら姫の城をおとずれたじゃじゃ丸は、殿さまから重大な事を頼まれた。
「じゃじゃ丸よ!人々の噂によると、何かこの国によからぬ事が起きようとしているらしい。どうかそれが本当の事か確めてきてはくれぬか?」
じゃじゃ丸は元気に答えた。
「へへっそんな事、朝飯前さ! まかしておきな!」
「うむっその言葉、信じたぞ。わが娘、さくらもきっとお前の役にたってくれるはずじゃ」
こうして、じゃじゃ丸、さくら姫の2人は国中の事件を解決する為、旅立っていった。

第一章「盗まれた忍の書」

日本中で巻き起こる、数々の大事件…
その謎を追うじゃじゃ丸の元に、生まれ故郷“忍の里”から大事件の知らせが届いた。
先祖代々、妖怪退治の秘術を伝える“忍の書”が盗まれたと言うのだ。
怪事件の影でうごめく妖怪軍団と戦うために必要な巻物が何者かの手に落ちてしまった。
「まさか、忍の里までもが…」不安を胸にじゃじゃ丸は“忍の里”へと向かった。

第二章「江戸城の大妖怪」

人々が集う街、江戸。その江戸へこともあろうに“大入道”が現れた。
恐怖におののく町民たち。どうする?じゃじゃ丸。

第三章「怪!竜神山の主」

ここ、西の国ではひでりのために田畑が荒れ果て、人々が苦しんでいた。
天気を治める神様の一人“竜神”が雨を一滴も降らせてくれないためだ。
「農民思いの“竜神様”が何故?」
何か訳があるにちがいないとにらんだじゃじゃ丸は事の真偽を確かめる為に旅立った。

(以上、説明書より抜粋)


システム

  • 経験値とレベルによる、スタンダードなRPG。
    • 経験値は「たましい」、レベルは「位」、お金は「両」、宝箱は「つづら」と『桃太郎伝説』のように和風アレンジがなされている。
    • 道具屋も「よろずや(万屋)」であり、回復薬も「まんじゅう」や「ひょうろうがん(兵糧丸)」。
    • それに伴って文字もカタカナが使われず、すべてひらがな・一部漢字表記になっている*1
  • 最初はじゃじゃ丸1人での旅だが、章の途中でさくら姫が加入して2人で戦えるようになる。
    • 基本的に、じゃじゃ丸は打撃で戦う白兵戦の戦士タイプで、さくら姫は術によるサポート寄りの魔法使いタイプにあたる。
    • 敵は常に1体だけで、さくら姫が仲間になれば2対1の戦いとなる。
    • さくら姫の行動選択時にキャンセルすると、じゃじゃ丸の行動選択に戻る。
  • 再開はパスワード制で、パスワードはイタコに「おいのり」を聞くことで発行される。
    • 全滅時はお金が半分になり、最後においのりを聞いた町に飛ばされ、じゃじゃ丸のみが蘇生される。
    • イタコは蘇生も担当しており、お金を払って生き返らせてもらう。
  • ストーリーは四章構成になっており、最初に三章までの中からひとつ選び、そこから順番に進めることになる。
    • 順番としては「一 → 二 → 三 → 四」「二 → 三 → 一 → 四」「三 → 一 → 二 → 四」の3通りとなる。
    • 各章はそれぞれのエリアで完全に区切られており、行き来することはできない。
    • 章をクリアすると位や持ち物がリセットされる(四章の時のみ直前の章の状態を持ち越す)。
      • 「章が進んだ」というデータは固定のようで、章クリア時にはたった3文字のおいのりを聞ける。
    • 最初の章をクリアすると、次の章からは始めからさくら姫が同行するようになる。
  • 忍術は特定の位に達したタイミングで習得する、レベルアップに付随した方式。
    • 「修行を積んだことでお釈迦様に認められ、授けられる」という体で覚える。
      • 最初と最後の忍術を覚える際にはお釈迦様からのお言葉がある。それ以外はただ授けられるのみ。
    • じゃじゃ丸は一貫しているが、さくら姫は回復以外の術が章ごとに変わる。
    • 鳥居にいる妖怪を倒すことで、じゃじゃ丸のみが使える攻撃の術(宝玉)を章ごとに3つずつ手に入れることもできる。
      • 宝玉を無視して進むこともできるが、武器の効かない敵も出現するため、宝玉を取っていない場合は逃げるしかなくなる。
  • さくら姫のみ「あい」というコマンドが使える。
    • ランダムで2人の力が上がったり、術が回復したり、何も起こらなかったりする。
    • 宿屋以外で術が回復するのはこれを除けばドロップ品のみで、道中では貴重な回復方法となる。
  • 攻撃するときに「電光石火の一撃」や「連続攻撃」が出ることがある。
    • 前者は『ドラクエ』でいう「会心の一撃」のような強力な一撃、後者は普通の攻撃が2~4回連続して出る。
    • これらが出やすくなる武器も存在する。
  • 敵が「怨霊」を投げつけてくることがある。
    • 怨霊に取り憑かれた状態では1歩ごとに1ダメージを喰らう。体力が0になるとそのまま死ぬ。戦闘中には影響がない。
    • 道具の「おふだ」、町の中の神社での「おはらい」、「はらたまの術」で解呪できる。
    • 取り憑かれると、フィールドではじゃじゃ丸たちの後ろに魂のようなものがくっついてくるようになる。
  • 道具の所持数は装備品やキーアイテム含め1人9個、2人で最大18個。
    • 装備は「武器・着るもの・小物・お守り」の4部位。
    • 同じ装備品は1つしか持てない。
      • 既に持っている装備品は新たに買うことができず、敵からドロップしても消耗品に差し替えられる。
  • 町の近辺には「おさるのかごや」がある。
    • お金を払うことで、イタコに会ったことのある町へ一瞬で連れて行ってくれる。単に町に着いただけでは記録されない。
  • 過去作に登場したキャラクターが本作でもところどころ登場する。

評価点

  • よくできた和の雰囲気。
    • サイコロを2個振って奇数か偶数かを当てる、いわゆる「丁半博打」が各地で行われているが、これが妙に凝っている。
      • 賭け金は10両程度からはじまり、以後10両ずつ上がっていくが、確率が調整されていて単純に1/2では勝てないようになっている。イカサマでは?
      • 賭け金が足りない状態で賭けようとすると、他の客たちからボコられて体力が半分になる。
      • そして余談で後述するが、特殊な賭場が1ヶ所存在する。
    • テキストも凝っていて、たとえば武器屋でじゃじゃ丸の装備を買うとき、本来装備できないさくら姫に持たせようとすると、主人が狼狽し「どこの馬の骨にやるのじゃ?色気づきよって」と言ったりする。
      • 戦闘画面でも敵から逃げるときに「逃げ出した」だけでなく「すたこらさっさ」と表示されるのを筆頭に、逃げるのに失敗した時や攻撃が命中しなかった時にも普段と違うメッセージが低確率で表示されるというようなレアパターンもいくつかある。
    • フィールド上に一軒家が所々にあり、基本的には情報をくれる民家なのだが、中には茶屋(町で言う宿屋)があったりする。
    • と思いきや、敵の中には「あさしん」だとか「じぇいそん」だとかがいたりもする。
  • 章ごとに敵や装備などのラインナップが変わり、新鮮な気持ちでプレイできる。
  • グラフィックはいずれもよく描き込まれている。
    • 店はもちろんのこと、それぞれの一軒家の住人などにもバリエーションがある。
    • 宝玉使用時には、宝玉を掲げたじゃじゃ丸のカットインが入ってかっこいい。
    • エンディングでも一枚絵が惜しむことなく使われている。
  • BGMがかなり多彩で、いずれも雰囲気にマッチしている。
    • フィールドや戦闘はもちろんのこと、賭場でもそれによく似合った任侠映画のようなBGMなどが流れる。
    • おさるのかごや利用時にも、童謡「お猿のかごや」のようなジングルが使われている。
    • 戦闘BGMは、雑魚・鳥居ボス・章ボス・ラスボスと4つも用意され、どれも雰囲気が良く出ている。

賛否両論点

  • 装備の性能の説明がない。
    • 主だったパラメータ以外も変わるもの、「電光石火の一撃」「連続攻撃」の発生率が高くなるもの、道具として使用できるものなど、店売りの武器に限っても特殊なものが多い。
      • そのため装備はどれも非常に個性的で、強みを持っている。
      • 反面、パラメータの変化は装備すればまだわかるものの、数値外の性能に関しては実際に使うまで効果が把握できない。一部はゲーム内や説明書に書かれているが不十分。
  • 2人とも行動できれば100%逃げられる手段がある。
    • じゃじゃ丸が逃げるのに失敗しても、さくら姫の番でBボタンを押してキャンセルすればじゃじゃ丸のコマンド選択に戻るため、これを繰り返すことで確実に逃げられる。これは当時、ゲーム情報誌の裏技コーナーでこぞって取り上げられていた。
      • 確実に逃げられるというのは高いエンカウント率への実質的な救済措置になっている一面もあるが、「粘ってコマンドを繰り返していればいつかは逃げられる」というのは戦闘の緊張感を壊しかねない。

問題点

  • フィールドでのエンカウント率が高い。
    • ちょっと先に行くだけでもかなりの戦闘をこなさなければならず、うんざりしがちになる。
      • 「おさるのかごや」という移動手段こそあるが、町ごとの移動のため細かい位置指定はできない。
  • 怨霊を投げつけてくる敵が多く、その頻度も高い。
    • 1歩で1ダメージはかなり大きく、おふだが道具欄を圧迫したり、術の消費がかさんだりする。1人ずつに取り憑かれるので、そのぶん消費も増える。
      • 町の中でも容赦なくダメージを受けるので、町の入り口から遠い所にあることが多い神社へとたどり着けずに死んでしまうことも。
    • 怨霊を使う敵はよりにもよって一章の序盤にも出現するため、一章から始めて1人旅で進めようとすると、町を出た直後に怨霊に取り憑かれてUターンという展開になりがち。
    • またフィールドでの移動に1ダメージの演出が挟まるようになり、実質的に移動速度まで遅くなる。
    • この系統の敵を即死させる術が2つあるが、なぜかどちらも二章限定。
  • 分不相応な攻撃を繰り出してくる敵がいる。リターンのバランスもあまり良くない。
    • 典型的なのが三章序盤で登場する「ぬらりひょん」で、頻度自体は高くはないが「かみなりのもと」で16の固定ダメージを与えてくる。
      • この時点でのじゃじゃ丸の体力はまだ30前後といったところであり、軽減する方法もないため理不尽に感じられる。
    • 「しのび」「かげにん」といった忍者系の敵は強力なものが多い。周囲の敵に比べてステータスがひとまわり高く、さらに2,3ターン行動できなくなる「しろいいと」や、固定40ダメージの「ほのお」といった強力な技も多く使ってくる。
  • 戦闘中の行動順はすばやさで決まるため、すばやさゲーの節がある。
    • 相手が先手の場合、体力の低いさくら姫に「ほのお」が連続で来てなすすべなく焼け死ぬ、というようなことになりがち。
    • 逆に相手が後手の場合は回復など対処が容易で、戦闘の緊張感を損なってしまう。
    • レベルアップやおまもりで上がる程度では「ほのお」を使うような相手にはまず足りず、一部武器やドーピングアイテムを使ってようやく上回る程度。
  • 『ドラクエ』でいうミミックのようなものとして、ドロップしたつづらを開けると敵が入っていることがある。
    • これだけなら別にどうということはないのだが、そのようなつづらの場合、ドロップ内容が後に倒した敵のものに上書きされてしまう。
      • 敵の中には、「のみ」(序盤の雑魚敵)をドロップする「おおかみおとこ」(三章終盤の雑魚敵、当然つづらを開けると経験値やお金を大損する事となる)、「くそぼうず」を必ずドロップする「くそぼうず」(経験値、お金共に1の敵。つづらを開ける事を止めなければ無限ループする)など、この仕様を最大限生かしたような敵も登場する。
      • 一応、どの敵が敵入りのつづらを落とすのかを記憶しておけば二度目以降は防げる。
  • メニュー関連
    • メニューを開く際のテンポが悪い。ウィンドウの黒帯が出て、枠や文字が表示され、コマンドを選ぶまでに毎回1秒ほどかかってしまう。閉じる際も同様。
    • どうぐはフィールド・戦闘中問わず相手に使うことはできず、持っている本人が使ってしまう。
    • 死んでしまった側のどうぐは使うことができず、渡すこともできなくなる。
      • 移動用アイテムを持っている側が死ぬとどこにも行けなくなり、全滅する以外に戻る方法がなくなる箇所がある(一章の「ちからのせい」戦後など)。
  • 回復の忍術が単体20回復・全体30回復・単体全回復しかなく、1人を大きく回復する忍術がない。
    • 「ひょうろうがん」が単体80回復だが、どうぐは前述の通り自分にしか使えない。
  • 最大48文字と長いパスワード。
    • 当時のパスワード制の常だが、文字を写し間違えると泣く泣く最初(もしくは書き損じなかったおいのり)からやり直す羽目に。
    • 使う文字の種類が少なく抑えられているわけでもなく、『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』と同じく、「だ」の行がないが「ば」「ぱ」行の区別がつきにくい。

総評

アクションゲームで作られてきた忍者くん(じゃじゃ丸含む)シリーズだが、時代が求めるRPGにモデルチェンジするという新しいことにチャレンジした姿勢は評価できる。
これまで築き上げてきた世界観を活かし非常に細かく描き込まれたグラフィック、それに花を添える多彩なBGMの数々などそのクオリティは看板作らしい高さを誇り、こだわりも十分に感じられる。
しかし、経験不足ゆえか、システムやゲームバランスがしっかり構築できているとはあまり言えないゲームとなった。


移植

  • Nintendo Switch / PS4『忍者じゃじゃ丸 コレクション』(Switch版 2019年12月12日 / PS4版 2021年5月20日、シティコネクション)
    • 本作を含めたFC版5作品の移植に加え、新作を追加。詳細は該当ページを参照。
    • どこでもセーブ/ロード機能があり、前述のパスワードの問題点を無視できる。

その後の展開

  • 同年6月に、双葉文庫「ファミコン冒険ゲームブック」シリーズとして「じゃじゃ丸忍法帳 妖魔退治の巻」が発売されている。
  • グラフィックやサウンドが大幅に変更されてNES用『Taro's Quest』というタイトルで海外版の発売が予定されていたが、未発売に終わっている。
  • 1990年5月にはアクションRPGにモデルチェンジした『じゃじゃ丸撃魔伝 幻の金魔城』を発売。
    • ゼルダの伝説』のような戦闘システムで、レベルアップも経験値ではなくイベントクリア方式が取られており、レベル上げによるゴリ押しが封じられている。

余談

  • 三章「なるとのまち」の賭場は他と違って賭け金は常に5両で上がることはなく、選択肢が「丁」のみで「半」が選べない。そして結果は必ず「丁」になる。
    • つまりAボタンを連打していればいくらでも金が稼げる。ただし一度外に出てしまうと二度と勝負してくれない。
    • その一方で万屋が定価6両の「まんじゅう」を2,000両、定価20両の「ひょうろうがん」を8,000両で売っている。もちろん引き取り額はまんじゅうなら普通に3両。とんだボッタクリ価格である(「たいこ」のみ定価通り)。
  • 同じ装備でも、章によって売値が違うことがある。
    • そのためか、売値より買値のほうが高い装備があり*2、お金を増殖できてしまう。
  • 序盤でさくら姫が仲間になる・章が進むと最初から仲間にいるためあまり気にはならないが、じゃじゃ丸1人旅でも経験値取得時に「じゃじゃ丸たちは~」と表示される。
    • 2人旅になると宿屋の値段が倍(2人分)になる。茶屋は変わらない。
  • イタコに生き返らせてもらう*3時、低確率*4で「隣村のたごさく」を引き戻してしまうことがある。ギャグイベントを挟みつつきちんと生き返らせてもらえるのでそこは安心(たごさくは結局生き返らないが…)。
    • ただ、困ったことにこのギャグイベントは発生の抽選が都度行われているのか、稀に2~3回連続で発生して肝心の仲間の生き返しまでが終わるのに無駄に時間がかかってしまうことも…。
  • エンカウント時の演出で横方向に画面が揺れるが、このとき少しだけマップの先が見える。分かれ道の先を見たい場合などに意外と役に立つ。
  • ライオンの湿布薬で、パッケージに非常口のような青い人型が描かれた「ハリックス55」があるが、本作発売の前年に、同じく赤い人型が描かれた「ハリックス55 温感」が発売された。
    • 三章で「すいき」「かえんき」という同じ地域に出現する色違いの敵がいるが、それぞれ同じような見た目だったため、「ハリックス55コンビ」と呼ばれた。
  • 当作品が舞台を明確に江戸時代とした事により、姉妹作(というか源流)であった『忍者くん』シリーズとは袂を分かつ結果となってしまった。
    • と言うのも、UPLがゲームボーイで出した『戦国忍者くん』(1991年3月8日発売)と設定が乖離してしまっているからである。
    • 後にジャレコの版権を引き継いだシティコネクションにより「忍者くんが兄、じゃじゃ丸くんが弟の兄弟」と改めて言及されてはいるものの、その後の設定の追加により更に乖離が進んでしまっている現状である。
最終更新:2024年02月03日 02:18

*1 HP・MPにあたる「体力・術」の上限値を表すステータス表記はなぜか「MAX」だが

*2 一章では120両の「にょらいのごふ」が三章では22両で買え、60両で売れる

*3 イタコ曰く「天界の扉を開き、黄泉の国から引き戻す」とのこと

*4 テキストでのレアパターンとはまた別