鉄道にっぽん! Real Pro 特急走行! 名古屋鉄道編
【てつどうにっぽん りある ぷろ とっきゅうそうこう なごやてつどうへん】
鉄道にっぽん! RealPro 特急走行! 名古屋鉄道編 PC Edition
【てつどうにっぽん りあるぷろ とっきゅうそうこう なごやてつどうへん ぴーしーえでいしょん】
ジャンル
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鉄道運転シミュレーション
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対応機種
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Nintendo Switch PlayStation 4 Windows (Steam)
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発売・開発元
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ソニックパワード
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発売日
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【Switch】2022年12月15日 【Steam】2023年4月27日 【PS4】2023年6月22日
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定価
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【Switch/PS4】8,580円 【Steam】980円
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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1個
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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賛否両論
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ポイント
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リアルにもプロにも程遠い内容 特急走行(しかできません) 初心者への配慮は相変わらず
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鉄道にっぽん! 路線たびシリーズ
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概要
『鉄道にっぽん! 路線たび』からの派生シリーズとしてデビューした『鉄道にっぽん! Real Pro』シリーズの第1作。リアルをイメージした追加要素によりゲーム内容にテコ入れが行われている。
収録しているのは、シリーズ初の大手私鉄である「名古屋鉄道」。愛知県と岐阜県にまたがる広大な路線網を持つが、うち本作では名古屋本線・常滑線・空港線からなる名鉄岐阜駅→中部国際空港駅間71.1km(片道)を収録している。
ダイヤは名鉄岐阜→神宮前の急行(3500系)、神宮前→中部国際空港の特急(2200系)、名鉄岐阜→中部国際空港のミュースカイ(2000系)の3つ。ただしSteam版『PC Edition』は、急行以外はDLCとして後日配信予定となっている。
「鉄たび」本編との相違点
基本的な運転操作自体は変わっていないが、ゲームシステムには手が加えられている。
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画面右に「運転モニター」が表示されるようになった。走行位置ごとの速度をグラフ化したいわゆる「運転曲線」を描くもので、目安のラインと制限速度があらかじめ記載されている。
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持ち時間制が廃止され、警笛の鳴らしすぎやドア閉め前の力行によるペナルティが無くなった。
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一方で制限速度については厳密化され、その速度に達してしまうと自動でブレーキがかかるように。同じ区間で3回これを繰り返すと強制的に運転終了となってしまう。
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通常のプレイではまずないが、目安の速度から極端に離れたスピードで走行していても運転終了となってしまう。
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運転終了後の評価は点数制となり、停止位置・時間精度の他に、運転曲線に沿えていたかが評価されるように。100点を超えるとSランクになる。
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また、駅停車時の場内再加速とブレーキ込め直しをしなかった場合に「Professionalボーナス」としてそれぞれ10点ずつもらえる。
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「ワイパー」「喚呼」の操作が追加された。
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ワイパーは通常のモードでは無意味な機能だが、全ダイヤクリア後に出現する「雨天モード」で窓に付いた水滴を払うことができる。
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喚呼は信号や速度制限など運転上確認する事項の声掛けで、ボタンを短押しで「ヨシ!」、長押しで「進行」を喚呼できる。こちらは放っておいても自動で喚呼するうえに評価対象にもなっていない。
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運転ガイドを行う「ガイドキャラ」が追加された。その名も「鉄道にっぽん!四姉妹」。ガイド自体はこれまでもあったが、キャラが左下に表示される。
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4人おり初期設定では長女の「てつこ」が登場する。他の3人は鉄メダル(後述)で使用可能となる。
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ガイドを消してガイドキャラだけを表示させておくこともできるが、逆はできない。
ゲームモード
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運転
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電車の運転を行う。はじめにダイヤを選び、続いて運転区間を選ぶというシステムは過去作同様。評価によってゲーム内通貨「鉄メダル」が手に入り、これで下記ボーナス要素の解放を行う。
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急行をクリアすると特急が、特急をクリアするとミュースカイが出現する。
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ミュースカイを全線クリアすると、車両性能が下がる「雨天モード」と運転曲線の表示が無くなる「リアルプロモード」が解放される。
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名鉄資料館
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2020年に閉館した「名鉄資料館」を3Dで再現した、主な展示資料の画像を閲覧できるモード。資料は展示場所ごとに分類されており、鉄メダルとの交換で解放することができる。
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画像は一覧での表示とスライドショーでの表示を選択できる。
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名鉄クイズ
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画像を見て問題に答える、名鉄に関する3択クイズ。10問1セットで、全問正解すると印がつく。
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「初級」から「プロ級」まで4段階の難易度があり、それぞれ鉄メダルで解放する。
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正解度に応じてポイントが入り、これを貯めると「鉄分レベル」が上がる。このレベルがゲームプレイに影響するかは不明。
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実績アルバム
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急行・特急・ミュースカイの各ダイヤごとに「Sランクを3回獲得」などの実績が設けられている。実績を全てクリアすると、そのダイヤの車両に関する資料を閲覧できる。
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各種設定
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走行中の画面表示や音量、コントローラー設定、ガイドキャラの設定ができる。
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これらは運転中のポーズ画面から変更することも可能。
問題点
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リアルをうたった全くリアルでない再現
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「リアル」を打ち出したはずの要素が軒並み現実離れし、かつプレイヤー不利に働くものが目立ってしまっている。
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ダイヤ設定がおかしい。再加速や込め直しを事実上減点対象としているにもかかわらず、運転曲線通り走っていると早着したり延着したりすることがしばしば。
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本来制限速度などを確認するための喚呼もひどい。踏切が現れるたびにしつこく「ヨシ!」と喚呼するうえ、目視できる位置に来てからではなくギリギリまで迫ってから発声する。これでは意味がない。
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プレイヤー操作で喚呼を行うこともできるが、「ヨシ!」と「進行」以外言えず加減点要素も存在しないため完全な死に機能となっている。
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また、以下の点もライト層向けの過去作では指摘が少なかったが、リアルを打ち出した本作では問題視された。
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映像の動きがまだ不自然。コマ数が同じなのか、発車・停車の際の動きが合っていないとゲーム中の走行速度に対して極端に速くなり混乱する。
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実車以上に高加速・高減速が可能な挙動となっており、シミュレーションとしては再現と言えるかも微妙レベル。
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停止位置表示が影になっていて見えない駅がほとんど。低速運転ならともかく、高速から停車に至る本作では目標を目視できないのはつらい。
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走行音が手抜き。無論勾配等での細かな変化を取り入れ出したらキリが無いとはいえ、ノッチ段数が違うのにモーター音が変わらなかったり、制動していないのに制動音が鳴ったりとそもそもプレイヤーの操作を反映していない箇所が目立つのはいただけない。
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過去作からの劣化点
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なぜかトップビューの停止位置ガイドがかなり広域表示になっており、目視の情報だけで止めるのが困難。
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キーコンフィグが自由にできなくなってしまった。
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ノッチ段数の横に力行・制動の指示が出るようになったが全くのデタラメ。運転曲線では減速すべきでない時にもかかわらず制動するよう指示が出ることがままある。
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収録内容
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「特急走行」の名に違わず、先述の通り収録ダイヤは急行・特急・ミュースカイの速達種別のみとなっている。7種別もあるうちこの3つだけで、何より普通列車が無いのはかなり残念。
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名古屋本線に存在する待避線の関係と思われるが、『Train Simulator』シリーズのようにその部分だけを取り替えて収録するなどやりようはあるはず。
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また各種別にしても、急行と特急がなぜか神宮前でぶつ切りになっている。同じ区間なのに途中まで/からの運転になってしまうのは擁護不可能である。
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定価を上げていながら、これまでのシリーズの流れに反して片道のみの収録なのも理解しがたい。のちに本作のほぼ倍の路線超を収録した『長良川鉄道編』(Switch版)が登場しているため、容量の問題でもない。
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車両はわずか3形式のみで、本来の規模に比してかなり控えめになってしまっている。走行性能や走行音を再現する気が無い状態で車両名だけ変えても仕方ない話ではあるが…
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路線と車両についてはのちに名鉄岐阜→豊橋を1200系で運転するという極大ボリュームのDLCが発売されたため、資金を気にしなければ解消される。
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資料館の収録方法
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資料ごとの接写が少なくズームも不可能であるなど、デジタル資料集としては機能不足。収録できただけでも御の字か。
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スライドショーにすれば一部ズームになるが自由に操作できない。また、スライドショーには含まれるが写真一覧からは見られない写真があるという罠も。
賛否両論点
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キャラクター路線
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本作において突如「四姉妹」を名乗る萌えSDキャラが登場し、シリーズファンを驚愕させた。
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可愛い、助かるという声もあるが、元々そういった要素とは無縁のゲームだったため気恥ずかしい、いらないという声も見受けられる。
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お引き取りいただくことはできるが、これをやると運転ガイド表示まで無くなってしまう。
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一方キャラクター要素は中途半端で、「駅スタンプがマイブーム」「海外の鉄道に詳しい」など4人それぞれに色々と設定はされているがそれがゲーム中の発言に反映されることは全く無い。
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なお四姉妹は続編の宣伝にも登場しており、メーカー側は今後シリーズのキャラクターとして展開していくつもりの模様。
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運転曲線の導入
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さいたま市の鉄道博物館にあった音楽館製シミュレーターなど業務用のマシンでは使われていることもあるが、商業作品では初と思われる。
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この導入により「(非ATC路線での)理想的な運転速度が分からない」という問題が解消。グラフに沿って走らせることで、初心者でもそれっぽい動きで運転を楽しめる。
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ただし、惰性走行をほぼ全く使わないなど運転曲線自体の再現度は低い。先述の通り曲線にぴったり合わせているとダイヤが乱れる場合もある。
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消すこともできるが、消せるようになるのは全ダイヤクリア後の「リアルプロモード」からなので、表示が不要な人が最初から表示無しでプレイすることはできない。
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「プロ」とは名ばかりのヌルゲー化
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「プロ仕様の走行ルールを守り」プレイすると公式サイトにある通り、現実同様のルールを守って運転することが期待されていたが、実際は真逆となり難易度が大幅に低下した。
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上記の運転曲線により、これを守っていれば停車時に少し調節するだけで簡単にSランクが取れてしまう。無論このような表示は名鉄の運転台には存在しない。
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停止位置の合格範囲がかなり緩く、過走は2m、手前側は10mまで許容されている。走って停めるだけならどの作品よりも簡単。
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駅構内再加速や込め直しの未使用にボーナスが追加された点が実質的な唯一のプロ要素といえるが、これらのボーナスを取らなくてもSランクは取得可能なため難易度としてはほぼ変化がない。
評価点
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実写収録のシミュレーター
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再現度にはかなり問題があるにせよ、人気の高い大手私鉄である名鉄の運転ができるゲームという点それだけで一定の価値がある作品ではある。
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「貴重さ」自体は本シリーズ全作品に言えることだが、人気も知名度も高い名鉄の、それもメインの路線を収録したからこそ一般の評価はより高くなった。
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過去作同様にあくまでも「それっぽい」運転操作は可能で、『TS』や『電GO!』のようにシビアなゲーム性も存在しない。再現度を気にせず流しでプレイしたい年少者やライト層からは評価の声も多い。
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このため「小学生の子供に買い与えたら喜んだ」といった、本作の趣旨を考えれば皮肉なことこの上ないレビューもネット上でしばしば見られる。
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映像の質
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本格シミュレーターとしては色々言われがちだが、これでも過去作よりは相当に改善されている。都市部の風景のため、速度によって違和感が生じる箇所も少ない。
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名鉄資料館
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閉館以降、資料は社員教育施設に保管されているため一般人が見ることは不可能。限られた内容とはいえ、著作権等の問題をクリアした上でこれら資料を市販のソフトに収録したことは意義が大きい。
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資料だけでなくその近くの解説板もしっかり写しているのも評価点。
総評
本シリーズに共通する粗い映像や実物に程遠い運転操作は、本格志向を目指さないライトでおおらかな作風ゆえに受け入れられていたものであり、そのクオリティのままでリアル志向を打ち出せばターゲット層から拒否反応を受けるのは当然の帰結であった。
しかも本作においては余計な喚呼や現実感のない走行曲線などの「リアルでないリアル要素」が多数加えられてしまっており、大前提のコンセプトたる「リアル」と「プロ」が共倒れになってしまっている。
ただし実写ベースの商業シミュレーターという点では貴重な作品で、運転モニターの追加により初心者にはより遊びやすくなったことから、ライトな鉄道ファンからは称賛の声も上がっているのは事実である。
結果的に、本来ターゲットとしたかったであろう本格シミュレーターを期待していた層からは大きな失望を受ける一方、「名鉄の実写映像を走らせてみたい」程度のプレイヤーからはまずまずの評価を得るという、コンセプトとは真逆の結果となってしまった。
最終更新:2023年11月26日 11:57