FREDERICA

【ふれでりか】

ジャンル ARPG
対応機種 Nintendo Switch
Windows(Steam)
発売・開発元 マーベラス
発売日 【Switch】2023年9月28日
【Win】2023年10月4日
定価 4,980円(税抜)
プレイ人数 1人
セーブデータ 1個(オートセーブのみ)
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 良作
ポイント 7人の使い分けが楽しいハクスラアクション
軽快で快適な操作性
長時間のやり込みにも耐え得るポテンシャル
セーブ周りがやや不便


概要

マーベラスが送る、ハクスラ要素の強いアクションRPGの新規IP。
ルーンファクトリーシリーズ』と世界観を共有していることが明言されており、
共通して登場する用語/敵キャラクター/装備品も存在する。


ストーリー

昔々ある所に平和な王国があった。
しかしある時、王は大きな罪を犯し、
「言葉」を抱いて深い大穴に身を隠した。
それ以来、世界から「言葉」が失われた。
姫は戻らない王を想って泣き続け、いつしか涙が姫を包み結晶となった。

そして長い年月が過ぎ――
大穴から突如、7つの光が飛び立った。
光に導かれ、7人の戦士が結晶の前に集まると、
彼らの胸に姫の想いが伝わってきた。
「世界に『言葉』を取り戻して欲しい」と――


キャラクター

言葉が失われた世界であるため、7人のプレイアブルキャラクター達は意味のある単語を発することがない。
掛け声/息遣い/ごく短い返答などでのみ発声する。

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  • ワンダラー(CV.島崎信長)
    • 爽やかな好青年。何でもそつなくこなすが、得意なことや夢中になれることが無いことを悩んでいる。
      • 片手剣と盾を扱う。近接攻撃・飛び道具・防御技・バフなど取り揃えており、様々な状況に対応できる。バランスの取れたオールラウンダー。
      • 拠点では特定の施設を担当せず、大穴に潜っているキャラの代役としてあらゆる役割をマルチにこなす。
  • ウォリアー(CV.田村睦心)
    • 男勝りな印象の女性。一人前の鍛冶屋になるのが夢。
      • 武器は大剣。振りは遅いが、火力と攻撃範囲が優秀。
      • 拠点では装備品の作成/強化を担当。
  • ローグ(CV.榊原良子)
    • プロのメイド。冷静な仕事人間に見えるが、実際は困っている人を見過ごせない優しい性格。
      • 二刀流の短剣で戦う。デバフや移動しながらの攻撃が豊富で、戦場をスタイリッシュに駆け回れる。
      • 回避がワープ移動のため、敵に囲まれていても離脱できる。
      • 拠点では木材の生産を担当。
  • アーチャー(CV.石田彰)
    • 少々コミュニケーションが苦手な褐色肌の青年。動物達と心を通わせている。
      • 武器は弓矢。射程外から敵を狙撃できるが、囲まれると弱い。
      • 拠点では家畜の世話/乳製品や卵の生産を担当。
  • ファーマー(CV.久野美咲)
    • 限界集落で育った少女。天真爛漫でいつも元気一杯。
      • ピッチフォークを槍のように使って戦う。リーチを活かした攻撃や敵を吹き飛ばす技、敵に状態異常をかけるトリッキーな技が得意。
      • 拠点では農作物の栽培を担当。
  • ファイター(CV.三石琴乃)
    • 名家で生まれたお嬢様。感情的になり易い一面がある。
      • 拳で戦う格闘キャラ。リーチは短いが移動速度や攻撃の振りが速く、手数で勝負する。特殊なバフ技も覚える。
      • 拠点では料理を担当。
  • キャスター(CV.藤本たかひろ)
    • 飄々とした雰囲気の錬金術師。言葉が使えない世界の謎を解明しようとしている。
      • 武器は杖。魔法による遠距離攻撃が得意。最上位クラスになると自分の幻影を召喚できる。
      • 回避がワープ移動のため、敵に囲まれていても離脱できる。
      • 拠点では石材/金属素材の生産を担当。
  • (CV.花澤香菜)
    • NPC。涙の結晶の中で王の帰りを待ち続けている、本作のヒロイン的存在。心優しい性格だが少々天然気味。ピザと雪が大好き。
      • 本作で唯一「言葉」を操ることが出来る。ただし発声は出来ず、テレパシーのような形で意思伝達をする。
      • 拠点で冒険のサポートを行う。他のキャラクターが喋らない分、賑やかしとしての役割も担う。
  • (CV.濱野大輝)
    • NPC。姫と国民を何よりも大切に思っていた彼が、突如姿を消してしまった真意とは…?

特徴

大穴

  • 地の底奥深くまで続く広大なダンジョン。遥か昔、王が言葉を封じるために飛び込んでいった場所。
  • 大穴を下へ下へと降りていき、最深部までたどり着くのがゲームの目的となる。
    • 大穴は「階層」で大まかにエリア分けされている。階層が変わると景観/出現する敵が一変する。
      • 1つの階層は複数のフロアからなり、序盤は10フロア程度。終盤は20フロアを越える長丁場となる。
  • ラスボスは第5階層の最深部に鎮座する。倒せばEDとなるが、さらに深い階層が開放される。
    • また難易度NORMALに加えてHARD/MASTERが選べるようになり、入手できる報酬がより良いものになる。

ルーン

  • 魔力の塊。本作における通貨の役割を果たす。大穴で敵を倒す/宝箱を開ける/悪意のレジリエンスをクリアする などの方法で入手できる。
    • 拠点でのほぼ全ての行動で消費する。装備作成/木材・石材・農作物の作成/料理/鑑定など、何をするにもルーンがいる。
      • 高ランクのものを作ろうとする程、多くのルーンが必要になる。

大穴の中の仕様

  • マップはローグライクのようにランダム生成される。
    • 後述するマモノラッシュ/のろし/ボスがどのフロアで出現するかは決まっているが、それ以外のザコ敵や宝箱の配置、封印された道の有無や悪意のレジリエンスの内容などは毎回変わる。
      • 草や木、岩などの破壊できるオブジェクトも配置されており、拠点でのアイテム生成に必要な素材を入手できる。
  • 7人の主人公から1人を選んで大穴に入る。HPが尽きるとそれまでに集めたアイテムの一部を失い、即座に地上に戻される。
    • 大穴に潜る度にHP回復薬が2個支給され、任意のタイミングで使用できる。
      • 死亡した時に回復薬が残っていれば自動蘇生されるが、手動で使用した時より回復量は落ちる。
  • 「通常フロア」
    • 出口を探してたどり着けば、次のフロアへ進める。ただし出口への道が封印されていることがあり、その場合フロアのどこかにあるスイッチを探して封印を解かなければならない。
      • 一度出口に到達すれば、フロアのどこからでも出口までファストトラベルできる。出口に入る前に隅々まで探索してアイテムを集めておくのも有効。
  • 「マモノラッシュフロア」
    • 閉鎖された狭い円形エリアの中で、次々に出現するザコ敵を倒す。全て倒しきれば次のフロアへ進める。ギミックが配置されている場合もある。
  • 「ボスフロア」
    • 階層のラストフロアに存在。階層によっては中盤にも中ボスがいる。
  • 「悪意のレジリエンス」
    • いわゆる課題。「フロア内の敵を全滅させる」「特定のスキルで敵を〇体倒す」「回復薬を使わず出口に到達」など内容は様々で、ランダムで決定される。
      • 課題をクリアするとまとまった量の経験値とルーンが貰える。レジリエンスが無いフロアもある。
  • 「強力なマモノ」
    • 通常よりステータスの高い強個体。赤く光る身体と、種族名に「?」が付いているのが目印。
  • 「記憶の裂け目」
    • 任意で挑戦できる高難度エリア。入ると別のマップに飛ばされる。通常エリア同様に出口を見つければ脱出できるが、強力なマモノが多数出現する。その代わり出口にはレアアイテムが置かれている。マモノラッシュフロアになっている場合もある。
      • 脱出すると、元のフロアの出口直前まで自動的に運ばれる。
  • 「結晶」
    • 大穴にこぼれ落ちた、姫の涙の結晶。キャラクターの交代や、拠点への帰還が行える。
  • 「のろし」
    • 中間ポイント。ここまでたどり着ければ、次回の探索はのろしのあったフロアから始められる。
  • 「動物達」
    • ランダムで出現するお助けキャラ。HPを回復してくれる。
      • 何種類かおり、クリオネのような姿の動物は回復に加えて回復薬を1個補充してくれる。各階層のボス前には必ずこのクリオネがいる。

キャラ育成

  • 「スキル」
    • 戦闘時に使える技能。1レベル上がる度に1ポイント貰えるスキルポイントを振り分けて習得する。同時に3つまでセットできる。
      • 習得済のスキルにさらにポイントを振ると、スキルLVが上がり性能がアップする。
      • スキルには技ごとに設定されたインターバルがあり連続使用はできない。短いもので5秒、長いと30秒以上待たされるものも(料理や装備の追加効果で短縮は可能)。
      • スキルの付け替えやスキルリセットは戦闘中含め、いつでもノーリスクで可能。ただし付け替え直後は該当のスキルが、リセット直後は全スキルがインターバル中になる。
  • 「クラスチェンジ」
    • 初期クラス-上位クラス-最上位クラス の3段階を全キャラが所持。初期→上位へのチェンジは単純に全ステータスが上がるが、上位と最上位は一長一短の関係。
      • 上位クラスはレベルを上げるだけで開放されるが、最上位クラスの開放にはある条件を満たす必要がある。
      • クラスを開放する度に習得できるスキルが3つずつ増え、最終的には9つになる(スキルを使用する際、該当クラスについている必要はない。開放だけでOK)。

拠点で出来ること

  • 工房/錬金窯/牧場/畑での生産には待ち時間が発生する。大穴で戦闘を行うことで生産が完了する。
  • 各拠点施設は生産を続けることでレベルアップし、生産枠が増えたり待ち時間が減少したりする。
  • 「鍛冶場」
    • 装備の作成を行う。装備は武器/リング(防具1)/ピアス(防具2)の3種類。 作成には大穴で拾った「面影*1」と指定の素材が必要。
      • 面影は要は装備レシピで、「ランク」と4段階(コモン/レア/スーパーレア/レジェンダリー)の「レア度」が存在。ランクやレア度が高いほど、攻撃力/防御力/追加効果によるステータス上昇値(力+〇% などの値)が高くなる。
      • 付与される追加効果の数はレア度によって決まっている(レアが1個、スーパーレアが2個、レジェンダリーが3個)。またランクやレア度とは無関係に、後述の「魔石」をはめ込むスロットがランダムで付く(最大1個)。付くのは武器とリングのみで、ピアスにスロットは付かない。
  • 作成済の装備を強化することも可能。強化には面影の廃棄で手に入る「ツヨクナール」が必要。
  • 「工房」
    • 装備作成で使用する木材の生産を行う。生産には大穴で拾った丸太系素材アイテムが必要。
  • 「錬金窯」
    • 装備作成で使用する石材や金属の生産を行う。生産には大穴で拾った鉱石系素材アイテムが必要。
  • 「牧場」
    • 料理の材料となる卵や乳製品を生産する。生産には大穴で拾った牧草系素材アイテムが必要。
  • 「畑」
    • 料理の材料となる農作物を生産する。生産には大穴で拾った種系素材アイテムが必要。
  • 「調理場」
    • 大穴に持っていく料理を作る。料理は3種類までセットでき、「ステータスアップ」「獲得ルーンアップ」「スキルインターバル短縮」などのパッシブ効果が得られる。
      • 効果は一度大穴を出るまで継続。またキャラを交代しても引き継がれる。
      • 大穴でレシピを入手することで作れる料理が増えていく。
  • 「倉庫」
    • 装備を変更する。装備への「魔石」のセットもここで行う。
      • 魔石は敵のドロップなどで手に入る属性付きの石。武器にセットすると属性攻撃ができ、防具に付けると属性耐性が得られる。魔石を使うことで与ダメージ/被ダメージが劇的に変わる。
      • 魔石にもランクとレア度がある。耐性などの強さは変わらないが、付与されている追加効果の数と効果値に関わる。
  • 各種アイテムの廃棄もここでする。
  • 「結晶」
    • 姫が中に入っていて、クラスチェンジをしてくれる。
    • 「チャレンジミッション(=実績)」の確認と、達成済ミッションの報酬受け取りもここで行う。
  • 大穴で時折、内容が不明の面影を拾うことがある。姫に鑑定してもらうことでレシピとして使えるようになる。レア度の高い強力な面影であることが多い。

評価点

ツボを押さえた軽快なハクスラアクション

  • 「繰り返し冒険して素材を集め、強い装備を作って強くなっていく」というハクスラの基本はしっかり押さえている。本作の装備はランクが1つ上がるだけで大きくステータスがアップし、また装備強化の恩恵も馬鹿にならないため強い装備を集める意義は大きい。
    • 多くのローグライクと異なり、本作は仮に冒険途中で力尽きても集めたアイテムが全て失われるわけではない。経験値に至っては全て引き継げるのでやられても徒労感を感じにくく、コツコツと周回を重ねてキャラを強化していく喜びがある。
    • 高ランクの装備には「会心率+60%」「特定のスキル威力+120%」など目を疑うような強力な追加効果がついていることもあり、単純なステータス以上の戦力アップが見込める。これらの強力な武具を引っさげ、以前苦戦した強敵達を蹂躙していくのは爽快。
  • アクションの操作性もかなり良い。
  • 動作は軽快で、キャラや行動にもよるが隙も少なめなので戦闘のテンポが良くサクサク進む。攻撃をキャンセルしての回避も可能で、柔軟な立ち回りができる。
    • 回避のインターバルの長さもキャラによるが概ね2秒前後で再使用が可能になり、スキルに比べればかなり連発が効くのも有難い。
  • 視認性の良い見下ろし型のアクションで、カメラの回転などもないため2Dアクションに近い感覚で操作できる。同行する仲間もおらず、自キャラの動向だけに集中できる。
    • それでいて要所で姫が声をかけてくれたり、仲間と交代できたり、拠点では料理や鍛冶に勤しむ仲間達が温かく出迎えてくれたりするので孤独感がないのも高評価。
  • アクション自体の難易度は決して低いわけではないが、ラスボス・裏ボス含めて理不尽な攻撃をしてくる敵はいない。何度も挑んでパターンを覚えれば、ノーダメージ撃破も充分可能。
    • 回復薬やランダムで配置されるHP回復キャラ、敵の弱点を突いた際のダメージ効率など、救済措置も複数あり間口は広い。他のハクスラゲーと比べるとライト層でもとっつきやすい。
  • 敵の攻撃前後の隙がはっきりしているのでヒットアンドアウェイが有効だが、一方で「連続討伐ボーナス」により経験値が上昇するため、間髪をいれず次々に敵をなぎ倒していくプレイングにも価値がある。また深層やマモノラッシュなど、安全地帯がないほど敵がスシ詰めになる場面もある。
    • 「経験値優先で危険を冒して連続で敵を倒すか、安全策を取るか」「強い装備が完成するまで浅い階層でじっくり鍛えるか、早々に深層に乗り込むか」など自分の腕や装備と相談して様々なプレイスタイルで進められる。初心者から上級者まで楽しめる設計である。

飽きの来にくいゲームデザイン

  • 「同じダンジョンにひたすら繰り返し潜る」という、ともすればマンネリになりがちな構成だが、本作はプレイヤーを飽きさせない工夫が随所に凝らされている。
    • まず7人もいるプレイアブルキャラが非常に個性豊か。「遠距離特化の弓使い」「リーチは最低だが素早い格闘家」「回避行動を移動攻撃に変化させられる、攻防一体のアサシン」など、どのキャラも明確に差別化されている。プレイアブルを変える度に7通りの全く違う使用感が得られて新鮮味がある。
      • 場面ごとの有利不利やボスキャラとの相性などはあるものの、基本的に誰を使っても攻略していけるようにバランス調整されていることも自由度アップに一役買っている。
  • 複数のキャラを使い分けること自体にも意味がある。結晶でキャラを交代すると、引っ込めたキャラに応じたバフ効果を後続のキャラが得られる。
  • また冒険中の装備変更は出来ないが、後半からはフロアごとにメインで出現するザコ敵の属性が入れ替わることが増えてくる。
    • これを見越して別属性の魔石を装備させた仲間を待機させておき、属性が替わるタイミングで交代することで楽に攻略できる。
  • どのフロアにボスがいて、どこでマモノラッシュが発生するかなども事前にわかるのでそれを見据えた戦略も可能。
    • 「乱戦に強いローグでラッシュを切り抜ける→ 高火力のウォリアーでスムーズにボスを倒す→ その先の未踏フロアは何が来るかわからないのでバランス型のワンダラーに任せる」といった自分なりのプランを組み立てていくのが楽しい。
  • 回復薬はキャラ毎に個別管理であることも重要なポイント。回復が尽きたキャラを下げ、HPも回復薬も満タンな後続に繋ぐバトンリレーも可能。
  • 後述するように全キャラを育成することが前提の実績もあるので、多くのキャラを育てることが無駄にならない。
  • やや難易度は上がるものの、特定のキャラだけを使い込んでいくのも勿論自由である。プレイヤーの好みでプレイスタイルを選べる。
  • また1キャラが9つのスキルを持っており、こちらも尖った性能のものが多くある。
    • 「スキルを変えてみたら苦戦していたボスをあっさり倒せた」といったことも。シナジーを持つスキルもあるため、様々な組み合わせを試していく試行錯誤の楽しさがある。
  • 武器や魔石の追加効果も種類が多い。武器の属性を変えたり状態異常付きの武器を使ったりするだけで、殲滅速度が大きく上がったりプレイ感覚がガラッと変わったりするので、こちらも状況や好みに応じた使い分けが捗る。
  • ザコ敵の行動パターンも豊富。階層が変わる毎に新たなギミックも追加される。
    • 周りの風景も「秋の収穫祭→ 雪が降り積もる真冬→ 崩壊した王宮」という風に刻々と移り変わっていき、ビジュアル面でも変化が大きい。
  • 「記憶の裂け目」「ハプニング」などのスパイスとなる要素もあるので、適度な緊張感と刺激を感じつつ冒険を進められる。
  • 総じて「ダンジョンが一つだけ」というシチュエーションとは裏腹にマンネリはかなり感じにくいようになっている。

豊富なやり込み要素

  • 表EDまでおよそ20時間強。NORMALの裏ボス撃破まで40~50時間といったところ。
  • これだけ見るとボリュームは抑え目に見えるが、HARD/MASTERで戦うためにはさらなる装備強化が求められる。全難易度での裏ボス撃破まで視野に入れると100時間に迫ることも珍しくない。
  • さらに膨大な量の「チャレンジミッション」が存在する。いわゆる実績であり、「全ての拠点施設のレベルを最大にする」のように時間さえかければ達成できるものから「連続討伐50体達成」などのテクニックを要するもの、「各階層を制限時間以内にクリア」といったRTA染みたものまであり多種多様。
    • 「各職業で全ボスを倒す」というミッションもあるので完全制覇を目指すなら全キャラ育成も必須になる。ここまでやり込むとなるとボリューム感は相当なものになり、本編クリアの軽く数倍は遊べる。中価格帯のゲームとしては破格のコスパと言えるだろう。

寓話的な世界観とストーリー

  • 本作はストーリー重視のゲームではなく、シナリオはあくまでフレーバー程度。しかし空気にはなっておらず、シンプルながら心に響く内容になっている。
  • 各階層のボス撃破後の石碑を読むことで、王が健在だった当時の王国の様子、変わっていく国民達、そして王の真意が読み取れ、徐々に真相が紐解かれていく構成になっている。王の悲痛な心情を知った時の姫の言葉もまた痛々しい。
    • 究極的には「誰も悪くなかった」と言える物語である。それ故にどうしようもない状況の中で追い詰められていった王と姫の苦しみ、そして姫を守るために断腸の思いで言葉を奪わざるを得なかった王の苦渋の決断がプレイヤーの胸に突き刺さる。
      • 主人公7人が喋れない関係上、姫が会話を一手に担っているために台詞の量が多く、姫に愛着が湧きやすいこともあって真実が判明した時に感情移入しやすい。純粋で一生懸命な姫の性格もプレイヤーに好感を抱かせる。
      • 「美味しそうなお料理ですね」「カッコいい武器です!」などと逐一リアクションしてくれる姫のボイスは過酷な大穴探索の中での一時の癒しとなっている。このボイスは頻度を減らしたり、完全にオフにしたりもできる。
+ 終盤/クリア後のネタバレ注意
  • ラスボス撃破後、世界に言葉が戻ってくる。と同時に主人公達と姫は永遠の別れをすることになる。
    • クリア後の世界では7人が流暢に会話をし始めて感動すら覚えるが、一方で姫がいなくなり、空っぽになってしまった結晶を見ると得も言われぬ喪失感が湧いてくることだろう。
      • 一応ハッピーエンドではあるのだが、姫/王/主人公の立場に立つとどこか寂しさを覚える、いろいろなことを考えさせられる結末である。非常に余韻の残るラストであると言える。
  • 全モンスターに設定されているフレーバーテキストも凝っており、世界観を掘り下げている。これを読んでいくことで王国に何が起こったのかが垣間見えてくる。
  • OPと表EDは昔話のような語り口で綴られており、テーマが普遍的なこともあって寓話のような独特のテイストを生み出している。
    • 登場人物はデフォルメされたSDキャラで描かれているため、ゲーム全体として「絵本の中の世界」といった雰囲気を醸し出している。
  • 表EDで一旦スタッフロールが流れるが、この時の演出は古今東西のあらゆるゲームの中でもかなり珍しい、非常に凝ったもの。
    • EDの少し物悲しい内容や、ここで初めて流れる主題歌フルバージョンと合わさって強い印象を残す。
  • 裏ボス撃破後の真EDで、再度スタッフクレジットが見られる。SD頭身の7主人公の可愛らしいダンスから始まり、ザコ敵やボスキャラの寸劇が挟まり、最後は7人と王と姫が全員で手を繋ぐ。最後を締め括るに相応しく、こちらもかなり感慨深い。
    • この時使われている、ピアノの音色が印象的なしんみりした曲調のBGMもこれまた良曲。

良質な音楽

  • 音楽も手を抜いていない。
    • 神秘的で清涼感のある冬フロアBGM、悲壮感と哀愁が漂う王宮フロアBGMなど、どれも聴き応えがありロケーションにピタリとハマっている。
    • 「神はサイコロを振らない」が手掛ける主題歌「Division」も疾走感があり、気合いの入ったOP映像によく合っている。リアル頭身でダイナミックに戦う主人公達の姿は見応えがある。
      • よく聴くと歌詞が本作のストーリーをかなり意識している。EDを迎えた後に改めて聴くと、歌詞に込められたメッセージをより一層感じ取れるだろう。

バグ/不具合が少ない

  • マーベラス作品にありがちなバグはかなり少ない。エラー落ちの類もほぼなく、快適にプレイできる。
    • 軽微なものがいくつかあるが、それもアプデで適宜修正されている。

賛否両論点

運要素の強い装備集め

  • 欲しいアイテムがなかなか出ないのはハクスラゲーの宿命ではあるが、本作はプレイアブルキャラが多いのでこの点が気になりやすい。
  • 「操作キャラの武器が出易くなる」といった補正はなく、完全ランダム。一度も使ったことのないキャラ用の面影ばかり落ちることもしばしば。
    • 確かに複数キャラの育成を促すゲームデザインになってはいるが、それでもミッションコンプリートを目指さない限り、多く育てる人でも精々4~5人程度。残りのキャラの面影は落ちてもただガッカリするだけになる。
      • 一応装備強化用の「ツヨクナール」に変換するという使い道があるが装備強化にはルーンも必要であり、最終的にはルーンの方が圧倒的に足りずツヨクナールはダダ余りになるのでほとんど意味がない。
    • 防具2種は全キャラ共通なので、このような事態にはならないのが救い。

厄介なマップギミック

  • 低階層のギミックは「攻撃すると爆発する爆薬」「当たるとダメージを受ける巨大雪玉」などまだ対処しやすい。しかし深層まで行くと「近くを通っただけで状態異常をかけてくるキノコ」「短い間隔でビームを照射してくるクリスタル」といった厄介なものが増えてくる。
    • 当然敵の攻撃も激しくなっていくため、苛烈な攻撃を仕掛けてくるザコ集団とこれらのギミックに同時に対処する必要があり神経を遣う。
      • 勿論、階層が進むと難易度が上がるのは当然である。また慣れや装備強化で何とかなる範囲であり理不尽とまでは言えないが、アクションが苦手な人には少々ストレスだろう。
  • フロア内の別の場所にワープさせてくれる「モグラ」が移動手段として登場するが、どのモグラ同士が繋がっているのか明記されておらずわかりづらい。

戦闘中の選択肢の少なさ

  • 攻撃+回避+スキル3種で、戦闘中にとれる行動は5つ。『モンスターハンターシリーズ』などに慣れている人にとっては物足りなさがあるかもしれない。
    • ボタンはまだ余っているので「もう一つスキルをセット可能にする」「ジョブ毎の特殊行動を実装する」などの工夫で、より遊びの幅を広げることもできただろう。
  • またスキルも最終的に9つまで増えるがそれには最上位クラスの開放が必要で、これができるのはラスボス討伐後である。
    • 結果、かなりの長期間6つのスキルで回していくことになる。
  • ただし上述のように操作キャラ・装備・スキルを都度変えていけるので、単調にならないような工夫はされている。
  • また本作は世界観や難易度を鑑みるに、複雑な操作の他ゲーについていけない層にも訴求している節が見受けられる。
    • そのような層もターゲットに含めているなら、あまり操作難易度を上げ過ぎるのも考えものだろう。

キャラに個人名がない

  • 「言葉がない世界」という設定なので本作の登場人物達は一様に職業名で呼ばれ、個人名は一切出てこない。*2
    • 全て他のコンテンツでもよく耳にするジョブ名ばかりで個人を表すものとしての印象が弱いため、人によっては感情移入しにくいという意見もある。
      • とはいえこの演出も世界観を表現することに寄与しているし、僅かなボイスからでも彼らの性格はうかがい知れるので、愛着を持たせるための導線は敷かれているのだが。

若干チープさのあるグラフィック

  • グラフィックは美麗とは言えず、同価格帯の他作品と比べてもやや低予算感がある。
    • もっともデフォルメキャラにしたおかげで上手く雰囲気を作ることに成功しているし、この頭身であまりリアルに描かれても困るのだが。
    • またグラフィックで魅せる作品ではなくアクションや育成を重視したゲームなので、そこに力を入れなかっただけなのだろう。

問題点

イベントを見返せない

  • 上述のようにストーリーは良い出来なのだが、イベント回想機能がないためにケチがついている。せっかくの感動的なEDや凝った演出のスタッフロールを一度しか味わえないのは勿体なさ過ぎる。
    • 「セーブデータを残しておいて後で見返そう」と思っても、後述のセーブ関連の仕様のせいでそれも不可能。
    • 裏ボス撃破後のスタッフクレジットだけはタイトル画面から見返すことができる。
+ クリア後のネタバレ注意
  • クリア後は姫が拠点からいなくなり、二度と彼女に探索のサポートをしてもらうことができなくなる。それどころかゲーム中で姫の声を聞く機会が二度とない。
    • 長い冒険をともにして愛着を湧かせておきながら唐突に別れを強いて、救済も一切ないのは少々残酷である。

アイテム類のロック機能なし

  • 装備や魔石をロックすることができないため、苦労して作ったレア装備を誤廃棄してしまう危険性が付きまとう。
    • 一応、破棄する前に確認画面は出るのだが。

不自由なセーブ関連

  • 本作は強制オートセーブのみであり、手動セーブは搭載されていない。そして、作れるセーブデータは一つだけである。
    • オートセーブのタイミングは、探索時はフロア移動直後。拠点にいる時はあらゆる行動を取った直後(装備変更、アイテム生成の依頼など全て)。
    • 「探索が長丁場になるので、いつでも中断できるように」「ボス前などでデータをコピーして、何度もやり直しされないように」などこのような仕様にした理由は想像はつく。しかしデータ複製はともかく、ニューゲームでの別データ作成すら封じているのは流石に首をかしげざるを得ない。
      • 何より上述の「イベント回想機能なし」「ロック機能なし」と悪い意味で噛み合ってしまっている。名シーンを一度しか見られないし、大事な装備を誤って捨てたら取り返しがつかない。強制オートセーブにするならするで、この辺りの機能は実装しておいて欲しかったところである。

やや不便な一部のUIやシステム

  • スキルリセット後の振り直しが少々手間。1つのスキルを最大LVにするだけで7~8秒かかり、3つも4つも振り直していると30秒以上かかることもザラ。
    • 「ワンボタンで最大LVにできる」「複数のスキルをまとめて上げられる」といった機能が欲しかったところ。
  • アイテム整理画面で条件を変えてソートが出来るが、画面を切り替えるとデフォルトのソートに戻ってしまう。
  • またソートだけでフィルタはできない。装備作成時などは目的の装備を探すのが少々大変。
  • 装備作成画面で今の装備との比較ができるが、確認できるのは操作キャラの現在の装備のみ。仲間が装備中のアイテムは見られない。

服装だけを変えることができない

  • 服装を変える方法はクラスチェンジのみ。モンハンのように「性能は上位クラスのまま、見た目だけ初期クラスに戻す」といったことはできない。
    • ローグやアーチャーなどクラスチェンジで印象が全く変わってしまうキャラも多い。ゲーム性にはかかわらないとはいえ、チェンジ前の衣装が気に入っていたプレイヤーにとっては地味に痛い。

総評

王道なハクスラゲーで独自性は少ないが、アクション部分も育成部分も出来は良い。
低予算感や、やや不便な箇所も見え隠れするものの、ジャンルとして肝要な部分は外していない。
シナリオ・世界観・音楽といった脇を固める要素も手堅く作られている。
ハクスラファンやルンファクファンは勿論、絵本のような世界観に惹かれた人や、
ライトに遊べるアクションがやりたい人などにも是非ともオススメしたい作品。


余談

  • ルーンファクトリーの関連作ということでカブが異様に推されており、カブ料理の種類はルンファク本編以上。
    • 中には「カブアイス」「カブパフェ」など、味を想像するのが憚られるようなものも…
      • と思いきや、何とシナリオ担当のスタッフが「カブアイス」を実際に作ってみたらしい(参照)。意外にも食べられないような味ではないとのこと。
最終更新:2024年04月27日 08:25

*1 武器の記憶という設定。おそらく過去に大穴に潜り、力尽きた戦士達のものと思われる。

*2 文字すら存在しない設定のため、個人名の概念自体がないとシナリオライターが解説している。